第八十話:ベンチの面談と、新四天王の「再就職試験」
第八十話:ベンチの面談と、新四天王の「再就職試験」
「……おい、ベリさん。休憩時間が五分オーバーしてるぞ。その分の時給は『虚無』に帰していいのか?」
境内の隅、木漏れ日の差し込むベンチ。卒なく(そつなく)現れたのは、ノートPCを小脇に抱えたショータと、油揚げを片手に持った正一位の女神コンだった。
「……ショータ殿。申し訳ない。……旧友が、あまりにひどい顔をして訪ねてきたものでな」
ベリさんが箒を立てかけ、隣に座るルシファーを促した。
「……。そちらの方は? 随分と、高密度の魔力を纏っているようだが」
ショータの【異世界プロデューサー】の解析眼が、ルシファーのステータスを瞬時にスキャンする。
「……。魔王軍の同期、ルシファーだ。……ショータ殿、こいつも魔王軍を『辞めたい』そうなんだ。うちで雇ってやってくれないか?」
「バッ……バカを言え、ベリアル! 私はただ、お前の生存を確認しに来ただけで……っ!」
ルシファーは慌てて立ち上がり、反射的にペコリと頭を下げた。新四天王としてのプライドよりも、ブラック組織で培われた「目上の者(あるいは強者)への礼儀」が、無意識に体を動かしたのだ。
「……ほう。辞めたい、か。コン、どう思う?」
「ふむ。ルシファーか……。顔つきは良いが、少々『真面目すぎて損をするタイプ』の相が出ておるな。……まぁ、話だけでも聞いてやろうではないか」
コンが拝殿の階段にチョコンと腰を下ろし、ショータもベンチの向かい側に「面接官」として陣取った。
「急遽だが、中途採用面接(カジュアル面談)を始める。……ルシファー、座れ。……まず、お前のその『翼』。時速何キロで、何キロの荷物を運べる?」
「……えっ? 武勇や魔力ではなく……運搬能力か?」
「当たり前だろ。うちは今、各国の同盟を結ぶ『超高速物流』のハブを狙ってるんだ。……お前のその圧倒的な機動力、魔王のために浪費させるのはもったいない。……どうだ、うちの『物流部長候補』として、世界を飛び回る気はないか?」
ショータの、現世の「キャリアパス提案」。
「魔界の最高戦力」を単なる運び屋……物流の要へと勧誘し始めたショータ。
ルシファーの瞳に、組織の歯車ではない、自らの「個の力」を正当に評価される悦びが、静かに灯り始めていた。




