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悪役令嬢になったかもしれない彼女とヒロインだったかもしれない少女の《浄霊術》  作者: やなぎ怜


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エピローグ

「もしかしたら……あそこにいたのは、わたくしだった可能性も……ありますわね」


 アリスさんを見送ったあと、おもむろに口を開いたローズマリアの言葉にわたしとクリスタルの声が重なる。


「そんなことない!」「んなわけないでしょ!」


 思わずクリスタルの顔を見やると、彼女はあからさまに「げっ」とイヤそうな顔をした。わたしとセリフが被ったことがそんなにイヤなのか、いつになく弱気な言葉を放ったローズマリアを否定した己に気づいての顔か。


 どちらにせよ、ウィンターフィールド先生には微笑ましく映ったらしく、先生は浮かんだ涙をぬぐいつつ「貴女たちって、仲がいいのね」などと心外なことを言ってくる。クリスタルはそれを受けてますます眉間に寄った皺を深めた。


「あのねーアンタみたいな性格のやつは! ゼッタイ自殺とか選ばないから!」

「その……ローズマリアはそんなことはしないんじゃないかなって、思うよ。うん……」


 ローズマリアはぱちくりと瞬きをしたあと、どこかホッとした顔でクスリと笑った。


「そうね……今ここにいるわたくしには、エマやクリスタルさんがいるもの」


 ローズマリアの言葉を聞いて、わたしはアリスさんを思わずにはいられなかった。先生には「優しすぎる人」と評されたアリスさん。もしも彼女にひとりでも、苦しみを打ち明けられるような友人がいたならば……。


 ……それはしょせん「タラレバ」でしかない。いくら今になって考えても、仕方のないことなのだ。


 先ほどまでアリスさんの亡霊がいた場所を見つめる。いくら見ても、そこにはもう残り香すらない。……それが、死ぬ、ということなんだろう。


 すべては、もう、終わったこと。


 わたしはアリスさんの魂の安寧を祈った。


 ――どうか安らかに。友達になったあなたのことは、一生忘れないから。



 *



 アリスさんの魂を、この地上から解放したことについては四人のみが知る秘密となった。……なにせ、寮の門限をぶっちぎっての「浄霊術」だったので。それと日没後まで校内に滞在するのは明確な校則違反でもある。


 寮長先生にはウィンターフィールド先生が「手伝いを頼んだら気がつけばこんな時間になってしまった」と言い訳をしてくれたお陰か――あるいは、わたしたちがしたことを察してか、お目こぼしをされたようである。


 そしてわたしたちは日常へと戻って行った。


 ローズマリアは相変わらず闇属性というだけで遠巻きにされていたし、そんな彼女と常にいっしょにいるわたしも同様だった。


 けれどもそこにクリスタルが加わるようになったので、以前よりも騒がしくなった。クリスタルはあれだけ抵抗していた魅了魔法封じのイヤリングをつけて、ローズマリアやわたしと共に勉強に励むようになっていた。


 どういった心境の変化があったのかはわからないが、ウィンターフィールド先生は喜んでいたし、深く探るのはやめた。それで機嫌を損ねられでもしたら厄介だし。


 ローズマリアはクリスタルと「仲良くなれた」と認識しているらしく、うれしそうだ。彼女がうれしそうにしているならいいかなと思うにつけ、わたしはローズマリアのことが好きすぎる気がする。


 でも――ローズマリアがいなければ、わたしはきっとアリスさんに「友達になろう」だなんて言えなかった。言いたくても、きっとどんな反応をされるかどうかばかり怖がって、黙り込んでしまったまま、アリスさんを見送ったに違いなかった。


 なにごとにも物怖じせず、突っ込んでいけるローズマリアが隣にいたから――わたしも、自分の信じる行動を素直に取ることができたのだ。


 そして相変わらずここは『ディアりっ!』の世界にそっくりで、『ディアりっ!』に登場するヒーローたち――と似た設定の生徒――とは、よくエンカウントする。


 けれどもやっぱり、今はまだ、異性との惚れた腫れたには興味が持てないでいる。


 それよりも今は、ローズマリアや……それからクリスタルと一緒にいるほうが、なんだかんだで楽しい。


 一六+前世ぶんの年齢で恋愛よりも友情の方がずっと大事だと思うのは、子どもっぽいかなと考え込んでしまうときもある。でも、ローズマリアとクリスタルを見ていると、別にそれでもいいやと思えた。


 ――まっ、こういう青春もアリだよね!


 心の中でひとりごちて、ローズマリアとクリスタルを見た。屈託なく「友達」だといえる存在がいることのうれしさを噛み締めながら、今日もわたしはこの世界で生きて行く。

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