第一巻 ~え、死刑??~
黒豆雄による異世界転移物語ミュージック・クエスト。
異世界ファンタジーに音楽を混ぜたこの作品の、シーズン2。
お楽しみください。
スペシャルサンクス・しゃけ
プロローグ
「謀反人・スイタヒトシに死刑を言い渡す!」
俺の名はスイタヒトシ。元演奏者で、魔王討伐の功労者。現職の丞相で、たった今死刑を宣告された者だ。
もちろん、俺は罪など犯していない。
信号無視すらしたことない。
いや、それは嘘かも。
でも、俺は死刑になるようなことは何一つしてない。
むしろ、俺は魔王討伐で、魔王軍の最高指導者である邪神ノイズを倒した功労者だ。
そんな国の英雄である俺がなぜそんなことを宣告されたのか。
話を戻してみるとしよう。
第一章 失脚
1
魔王討伐から一ヶ月が経った。
その日、俺はいつものように、議会で政治について議論していた。
すると、急に誰かが入ってきた。
「陛下!大変です!街にこんな張り紙が!」
「どうしたアスクーシュ、そんなに慌てて。」
アスクーシュは俺の一つ下の役職に就いている大臣だ。
「いいですか?読み上げますよ?」
「うむ。」
「天下に告す。
我こそは、真の王にふさわしき者である。
なので、現王を廃し、我が新たな王としてこの国を治める。
逆らうものは、武力で制圧する。
現丞相 国の英雄 スイタヒトシ・・・・。」
その場にいた全員が俺の顔を見る。
「・・・・は!?何それ!?」
「この張り紙が街の至る所に貼ってあったんです!つまり、スイタヒトシ丞相は国王の位を奪おうとしている謀反人です!」
「違う!俺はそんなの知らない!」
その場にいたみんなが、俺の方を怪しい目で見る。
なんでだよ!
「そ、そんなバカな・・・・。」
「いえ、国王陛下。コイツは凶悪な謀反人です!軍法に照らして死刑にしましょう!」
「待て待て待て!まだ証拠も不十分だろう!早まるんじゃない!」
「では公平に多数決で決めましょう。スイタ丞相、死刑でいいと思う人ー!」
運命の審判が始まった。
2
「なんでだよ!なんでほとんどが手を挙げんだよ!」
俺が死刑でいいという人がほとんどだった。
「だってぇ、別にどっちでもいいし。」
「我関せず。」
「関心ない。」
「議会なう。」
「なんだお前らは!選挙に行かない今どきの若者か!だから安部一強時代ができちまったんだよ!クソが!しかも最後の誰だ!なんで今つぶやいてんだよ!ていうかつぶやくな!」
「スイタヒトシ、黙りなさい!お前は謀反人だ!死刑だ!」
「待ってくれアスク―シュ!スイタ丞相は魔王討伐の功労者だ!死刑は勘弁してやってくれ!」
国王が言った。
「分かりました。陛下がそこまでおっしゃるならば、死刑はやめましょう。では、スイタヒトシから丞相の官職を剥奪し、レベルリセットポーションを飲ませ、流罪にします!」
「なんだって!?」
「陛下、軍法を陛下自身がお破りになるおつもりですか?」
「うっ・・・・。」
「なんでだよ!俺は何もしていない!」
「黙れ謀反人!近衛兵、連れていけ!」
「いやだー!」
3
俺が流されて来たのは、見たことのある街。
かつてこの街を滅ぼした魔王軍はもういない。
そして、この一ヶ月で急速に復興が進み、かつての街に戻ってきているらしい。
そう、ここはかつて俺が転生してきたときに最初に過ごした街、ラタトールだ。
俺は、全てを奪われ、ジャージ一丁で楽器を持って立っていた。
そう、ちょうどあの時みたいに。
しかし、今の俺はあの時の俺とは違う。
幾多の戦いを経験した俺は、かつての冴えない吹奏楽部員ではない。
俺はとにかく、かつての家を訪ねることにした。
俺がかつてパーティメンバーと共に暮らしたあの怪しげな洋館である。
俺はかつての家に向かって歩いた。
そして、着いた。
着いたはずだ。
たしかここだったんだが・・・・。
「なんじゃこりゃ!」
俺の前には、よくわからないセンスの建物があった。
洋とも和とも言い難い、いや、そういう次元を超えた建物であった。
「と、とりあえずノックしてみるか。」
俺がノックしてみると、中からはとても聞きなれた女性の声が帰ってきた。
やはりか。
「はーい、どちらさ・・・・。」
「やあマレーズ。いろいろあって返ってきたぜ。で、この家はどうしたんだ?」
「ああ、リフォームしたのよ。」
「お前らのセンスどうなってんだ。」
第二章 新たな出会い
1
「・・・・それで、死刑は免れたけど、官職を剥がれてレベル一にされて追放されたってわけね。」
俺は二人に、事の次第を説明していた。
「そうなんだよ!レベル千いってたのにリセットされちまった!おそらくこれを計画したのはアスクーシュだろうな。よく考えたらあの多数決も何かウラがあったに違いない。例えば事前に議員を買収してたりな。」
すると、アーブルが不安そうな顔で。
「・・・・ほんとに、謀反を企んでないんだよね?」
「企んでねえよ!」
「そう、ならよかった。で?この後どうすんの?」
「そうだなあ・・・・。別にもう王都へ戻りたいとも思わないし、レベル一だし、ここでのんびり過ごすか。」
「待って、作者がこのすば完結巻を読んでからあんたヒキニート化が急加速してない!?」
「そんなバカな。俺はニートでもなければ引きこもりでもない。」
「じゃあ今あんたはこの後どう過ごすって言った?」
「ここでのんびり過ごす。」
「ほら!このままいけばあんた、囲炉裏の火のパチパチ音を聞いて一日過ごしたりすることになるわよ!」
「なんだって!?なんて作者だ!暁なつめ先生と交代してもらおう!」
「それ完全にヒキニートになっちゃうじゃん!」
「でも、そしたらアーブル、お前爆裂魔法とか撃たせてもらったりできちゃうかもしれないぞ!」
「えっ!?ほんとに!?すぐ交代してもらおう!」
2
俺は、ヒキニート防止のため、早く寝た。
そして、夢を見た。
そこは、白い何もない空間。
そして、俺の前には、あの音楽の神様がいた。
「やあスイタ少年。いろいろあったようだな。」
「そうなんだよサウンド。部下のアスクーシュにはめられたんだ。」
「そうか。それは大変だったな。ところで、君はこのあとどうするつもりだ?」
「ああ、この後なー。アスクーシュへの復讐も考えたんだが、結局ここでのんびり俳句でもひねって暮らしていこうかなと思うんだ。」
「ほう、そうか。残念だがそれはできない。」
「え!?」
いきなりこの後の人生計画を否定された俺は、思わず大きな声を出してしまった。
「君には、またやるべきことができた。」
「なんで!?魔王は倒したじゃないか!」
「今度の敵は、魔王軍とは比べ物にならないほどの脅威だ。」
「でも、俺はどうすればいいんだ?丞相の位も剥奪されたし、レベル一だし、今の俺にできることはないよ。悪いが他を当たってくれ。」
俺がそういうと、サウンドは真剣な顔になり。
「・・・・スイタ少年。君、ポケットを見てみたまえ。」
「ポケット?」
言われた通りポケットを探ってみると、そこには何かのカードが。
あ。
これは・・・・。
「・・・・演奏者カードだ。」
「なぜポケットの中に!?演奏者をやめたとき、捨てたはず・・・・。」
「君は、演奏者として、またこの世界を救ってくれ。期待しているぞ!」
ハッ。
なんだ、夢か。
変な夢だなあ。
いや、待てよ。
こういうのって・・・・まさか・・・・。
ああ、やっぱりだ・・・・。
ポケットをまさぐると、そこには何かのカードが入っていた。
2
「昨日までヒキニート一直線だったのに、なんで急に演奏者に戻ろうと思ったの?」
「まあ、いろいろあってな。さて、ギルドに向かうか!」
俺らはかつて毎日歩いたギルドへの道のりを進んだ。
「懐かしいなあ、この道。」
「昔は毎日歩いたもんね、この道。」
「あの頃が懐かしいね。」
そんな感じで、かつての思い出話をしていると、いつの間にかギルドへ着いた。
俺はドアノブをひねり、中へ入っていった。
俺の顔を見た他の演奏者たちは、どうやら俺を謀反人だと思ってるらしく、みんな白い目で見てきた。
実は、この街の復興は進んだのだが、住民は王都からこっちに戻ってくる利点はなく、ここにいる演奏者たちもほとんどが知らない顔だ。
「ねえ、みんなあんたのこと軽蔑の目つきで見てきてるわよ。大丈夫?メンタルブレイクしない?」
「大丈夫だ、俺はこんなのなんとも思わない。」
だって俺は悪くないもん。
そう思って俺は受付へ向かうと、横から一人の女性が声をかけてきた。
その人は紺色の服を着た清純で美人な人だった。
年は俺より一つ下くらいだろうか。
「あなたが、スイタヒトシさんですね?」
「ええ、そうですが。俺になにか用ですか?」
「私は、プリーストのレクアスという者です。それにしてもあなた、謀反なんて大それたことしましたね。神のお赦しがありますように。」
そういうと、その人は、俺に向かって祈るようなポーズをしてくれた。
こんなきれいな人にまで誤解されていたのか。
それは俺のプライドが傷つくなあ。
「あの、ちょっとお話いいですか?」
「なんですか?」
俺は、誤解を解くべく、事の次第を全部説明することにした。
3
「・・・・そういうわけで、俺は部下のアスクーシュにはめられて、官職を剥奪されてレベルをリセットされてこの街に流されたってわけです。」
「そうなんですか・・・・。私はてっきりあなたが謀反を起こしたのだと思っていました。しかし、そうでしたか・・・・。それは許せませんね。アスクーシュ大臣は報いを受けるべきです!」
「そうでしょう。許せないでしょう。」
すると、アーブルが小声で話しかけてきた。
「ねえ、あんたのいままでの話、ちょっと盛ってなかった?魔王城の城壁ぶっ壊したのはあんたじゃなくてあたしじゃなかった?」
「盛ってねえよ!だいたい事実だよ!」
「なによだいたいって。」
俺たちが小声で言い合っていると、
「そうでしたか。では私もあなたに協力しますよ!ぜひ、あなたのパーティに入れてください!」
「えっ!?」
急展開である。
「おい二人とも、どう思う?」
俺は二人に聞いてみた。
「別にいいんじゃない?彼女、なんかいい人みたいだし。」
「プリーストは回復奏法や支援奏法に長けているからね。バランスもいいし、いいんじゃない?」
回復奏法や支援奏法か・・・・。
支援奏法と言えば俺の『アウェイキング』があったが、ぜひプリーストの支援奏法を受けてみたいもんだ。
「じゃあ、とりあえず恒例のテストをしてみるか。」
4
ここはあの草原。
「レクアスさん、あなたはプリーストということで、我々のサポートをお願いします。」
「分かりました。」
「えっと、役職はなんでしたっけ?」
「ネベルです。」
出たよ、マイナー楽器。
しかし今度はガチなマイナーだ。
たしか、ネベルというのは、旧約聖書に名前が載っている、ハープに近い楽器ということだけがしか分かっていなくて、弦の数や大きさなど、ほとんどのことは分かっていないマイナーを極めたような楽器だ。
この作品が文章でよかった。漫画だったらネベルのデザインに一晩はかかるところだ。
さて、作者の気持ちを代弁していないで、そろそろ戦闘準備にかかったほうがいいな。
俺は愛用のチューバを構え、一発放った。
すると、その音を聞きつけ、懐かしのあのモンスターがわらわら集まってきた。
「出てきやがった、ニセベートーベン!」
俺は久しぶりのクエストに、興奮が隠せなかった。
「さあニセベートーベンども、かかってきやがれ!さあレクアス、支援奏法を!」
「分かりました!『ドッピオ』!」
「おおっ!なんか力がみなぎってくる!」
ネベルの美しい音に乗せて放たれた支援奏法を受けた俺たちは、ニセベートーベンどもに一発放った。
すると、普段よりちょっと強くなった・・・・かな?ってくらいの攻撃力なった。
「なあレクアス、あんまり変わってないんだけど!」
いつの間にか言葉がほぐれた俺は、レクアスに言った。
「あ、そういえばヒトシさんはレベル一でしたっけ?これはレベルを一時的に二倍にする支援奏法なので、1×1でヒトシさんのレベルは変わりませんか!」
「マジかよ!他のない?」
「他のですか・・・・。名前が長くて嫌いなのですが、仕方ないですね。『フォイエルシュヴンクフォル』っ!」
確かに長いな。
まあ作者はコピペを使うから問題ないんだが。
俺はもう一度ニセベートーベンどもに一発放った。
「おおっ!」
まるで火のような激しい攻撃が放たれた。
「すっ、すげえ!支援奏法すげえ!」
「さあ、マレーズ!必殺技を見せてやって!」
「必殺技?」
「そう、私には次のクエストのために習得しておいた必殺技があるの!さあニセベートーベン、我が必殺技を受けてみよ!」
「あっ、レクアス、耳をふさげ!あの音は慣れないものが聴くと・・・・。」
「え?」
「『ディスコード』っ!」
間にあわなかった。
マレーズの放った必殺技は、ニセベートーベンどもを一掃し、レクアスにも結構なダメージを与えていた。
そして、すべてが片付いた。
「・・・・ヒ、ヒトシさん。なんですか今の音は・・・・。」
「この世で最も不快な音を出す楽器、ウォーターフォンの凄まじいおたけびだ。美しい音を出すネベルとは正反対の楽器だな。」
「うぅ・・・・この世の物とは思えない音でした・・・・。」
そうやら効果は抜群だったようだ。
そして、新メンバーも加わり、俺のパーティは新たな第一歩を踏み出した。
そしてそのころ、新たな脅威も動き出していた・・・・。
第三章 ダンジョン攻略
1
「ぼーっ・・・・。」
「どうしたの?かつてないほどぼーっとした顔をして。もう武器の製造は飽きたの?」
俺が一人でぼーっとしていると、アーブルが声をかけてきた。
「こないだ、気になる夢を見たんだよ。」
「どんな夢?」
「音楽の神・サウンドが夢に出てきて、魔王軍とは比べ物にならないほどの脅威が現れる的なことを言ってたんだよ。」
「サウンド様が夢に出てきたんですか!?」
俺が夢の話をしていると、レクアスがびっくりした声で俺に話しかけてきた。
そうか、彼女は信心深いプリーストだったか。
「うん。そうなんだけど、なんか心当たりない?魔王軍以上の脅威。」
「そういえば、神話にそんな話が載ってた気が。」
「えっ!?」
「確か、大予言者ヴァストゥムナの予言に、『勇者の誕生は、魔王の誕生を意味する』という言葉があったはずです。」
マジか。
勇者の誕生は魔王の誕生を意味する。
つまり、新たな魔王が誕生したってことか!?
「なあ、魔王って何?」
俺はレクアスに聞いてみた。
「魔王を倒した人が何を言ってるんですか。」
「教えてくれ。魔王ってなんだ?」
「しょうがないですね。魔王とは、強大な力を持った魔族の王のことです。普通は魔族から出るものですが、あなたが倒した魔王のように、人間が魔王になることもまれにあります。」
「そうか・・・・。」
つまり、魔族のなかから、新たな王ができている可能性も十分にある。
「新たな魔王が誕生している可能性があるな。」
「何ヒトシ?また魔王を倒すの?」
マレーズが聞いてきた。
「そうだ。また魔王が力を持って人類の脅威となる前に叩いておく。さあ、行くぞ!俺はもう一度英雄になってやる!」
「でもどこへ行くの?魔王城はすでに王国軍が占拠してるし。」
「そうか・・・・。」
「ヒトシさん。提案ですが、ダンジョンへ潜ってみればいかがでしょう?そこにいるダンジョンの主のアンデットを尋問してみればいいんですよ!それに、深いダンジョンになら、もしかしたら新たな魔王がいるかもしれませんよ?」
アンデットか・・・・。
よく考えたら俺はこの世界に来てからファンタジーではつきもののアンデットみたいなのを見たことがないな。
「ダンジョンか。ダンジョンねえ・・・・。ほら、でも深いダンジョンって遠いでしょ?」
「いえ、確かこの街の近郊にあったはずです。結構深めのダンジョンが。」
「え、マジで?」
そんなのが駆け出しの街の近くにあっていいのかよ。
「そ、そか。じゃあ・・・・行くか。」
「あらヒトシ?さてはダンジョンが怖いのね?」
「な、なんだとアーブル!俺は別に怖くない!ほら、とっとと行くぞ!準備しろ!」
2
「ここか・・・・。」
やべえ、怖い。
なんだこのヤバい空気。
「いいねこの不気味な感じ!ウォーターフォン奏者の琴線に触れるわ!」
なぜかマレーズがこの不気味な感じに興奮していた。
「そんな紅魔族みたいなこと言われても。」
「さあヒトシ!行きましょう!」
「・・・・なあ、マジで行く?」
「行くでしょ。」
「・・・・マジで?」
「何?怖いの?怖ければ帰ってもいいけど?」
「こ、怖くねえよ!ほら行くぞ!」
「だ、大丈夫?」
「大丈夫だ!誰か明かりをくれ!」
「明かり?」
「明かりだよ!なんかないか?」
「アーブル、明かり持ってる?」
「いや?ヒトシが持ってきてると思って。」
「私も。レクアスは?」
「私も持ってないです。明かりはプリーストが用意するものじゃないでしょう。」
「マジかお前ら!今から明かり無しでダンジョンにもぐるのか!?死にに行くようなもんじゃないか!誰かなんか策はないか?」
「その辺に木の棒ないですか?」
「木の棒?木の棒なんてどうするんだ?」
「発光奏法に使います。あっ、これでいいや。」
レクアスは落ちてた木の棒を拾い、構えると、呪文を唱えた。
「『ルーモス』っ!」
「いや、それ世界一有名な発光魔法じゃねえか!」
「まほう?なんですかそれ?」
「もういいよ!とにかく光がゲットできた。さあ中へ入っていくぞ!」
「「「「・・・・。」」」」
「・・・・早く入れよ。」
「お先にどうぞ。」
「なんで俺からなんだよ!こういうのは前衛から入るんだよ!」
「誰よ前衛って!」
「そ、そうだ、ここは光を持ってるレクアスから入ってもらおう!さあレクアス、入るんだ!」
「なんで年下の女子のプリーストから入るんですか!光はあげますからヒトシさん先どうぞ!」
「あらヒトシ、もしかして怖いの?」
「こっ、こっ、怖かねえよ!分かったよ、行ってやるよ!おいレクアス!明かりよこせ!」
「神のご加護を!」
俺はレクアスから明かりを受け取ると半ばヤケクソ気味にダンジョンに入っていった。
「ヤバいね、この空気。」
「ええ、なんか邪悪な空気です。」
「ヒトシ、気をつけたほうがいいわよ。どこからモンスターやアンデットが出てくるかもわからないし、どこに罠が仕掛けてあるかもわからないわよ。」
「えっ、マジで?」
俺は警戒し、弓に矢をつがえた。
この世界はずっと楽器を武器として使ってきたため、弓矢がなかった。
この弓は、俺が丞相だったころに最高の武器職人を集めて作った試作品をさらに改良した、日本の弓には程遠いかもしれないが、一応矢を放って敵にダメージを与えることのできる武器だ。
矢じりには、この作品にもちょくちょく出てきたあの音の結晶を使っているため、結構いろんな敵に通用するはずだ。
俺はどこかのヒキニート冒険者と違って運のステータスはあまり高くはないが、一応レクアスに支援奏法をかけてもらったので当たる確率は高まっているはずだ。
「あっヒトシ!あれ見て!あれ!」
「どれだよ。ってあれか!」
そこには、ニセベートーベンの亜種、ニセモーツァルトがたくさんいた。
そうやらこちらに気づいているようだ。
「ヒトシ、どうする?」
「うーむ、俺が吹き飛ばせばこのダンジョンは崩落して俺らもオダブツだからな。なにかいい案はないか?」
「その弓で全部撃ち殺せば?」
「矢が足りねえよ!そうだ!アーブル、お前の攻撃なら何とかなるだろ!固め損じだのは俺が弓で撃ち殺してやる!」
「分かった!『シュピールツォイック』っ!」
レクアスの支援奏法を受けたアーブルは、ニセモーツァルトのほとんどを固めてしまった。
「よし、こいつらは片付いた!次行こう!」
俺は後ろを向いてみんなに言うと、なぜかみんな酷く怯えた顔をしている。
「どうした?」
「ヒ、ヒトシ・・・・、後ろ・・・・。」
俺が後ろを向くと、そこには小型のドラゴンが。
「おいどうする?このドラゴン。」
鱗に守られているため、とても刃物や矢は太刀打ちできなさそうだ。
羽が退化しているのは、おそらくダンジョン暮らしなので飛ぶ必要がなくなったからだろう。
「あれは?サクランボは?」
「あれはダンシングドラゴンにしか効かないんだ!」
「そっか・・・・。じゃあヒトシ、あれは?ライトセーバー!」
「そうか!その手があったか!」
俺はずっとお世話になってるマウスピース型ライトセーバーを起動した。
「ドラゴン覚悟ォ!」
「アチッ!アチチチッ!」
俺は、ドラゴンブレスをくらって熱がっていた。
「どうすんだこれ!火を吐かれちゃ近づけないぞ!」
「危なかったですね!私の耐火奏法を受けてなかったら今頃死んでましたよ!」
「マジか、そこまで熱くなかったぞ?」
「ヒトシ!新しい案があるわ!これで倒せるはずよ!」
「おお、どうやるんだ?」
「爆裂奏法を習得して、角を曲がらないで話を聞いてもらって、最終的には放つのよ!」
「それって最終決戦でやることだし、それやったらみんな死ぬぞ!」
「じゃあどうするの?」
「どうしよう。」
「そうだ!ダンジョンには罠があるだろう!」
「あるね。」
「見ろ、ここに上からぶら下がってる紐と、ちょっと他のところと高さが違う場所がある。これが何か分かるか?」
「ああー分かった!引っ張ったら上からでっかい針がゆっくり下りてくるやつだ!」
「違うだろ!落とし穴だろ!」
「そう?」
「そうだよ!だから、あのちょっと高さが違うところにドラゴンが立った瞬間にこの紐を引けばあのドラゴンは奈落行きだ!」
「さあ、ドラゴン、こっちへ来い!」
俺は鱗の薄そうな部分を狙って弓を放ち、敵を煽った。
案の定、ドラゴンは怒ってこっちへ向かってきた。
ふふ・・・・作戦通り!
「さあドラゴン!この俺に向かってきたことを奈落の底で後悔しろ!」
俺はドラゴンがそこに乗ったその瞬間、紐を引っ張った!
すると・・・・。
「なんで上からでっかい針がゆっくり下りてくるんだよ!」
どうやら俺の読み間違いだったようだ。
「ねえヒトシ!これってドラゴンどころか私たちも一緒に死ぬんじゃないの?」
「そうだな!今までありがとう!」
「なんでよ!何とかしてよ!だから言ったじゃない!」
「うるせーな!俺はダンジョン向きの人間じゃないんだよ!」
「ああ、神よ・・・・我々をお救いください・・・・。」
「もう終わりよ!THE ENDなのよ!」
みんなが焦る中、レクアスの祈りが通じたのか、その時、俺は素晴らしいアイデアを思いついた。
「なあ、この罠の動力ってどこにあるんだ?」
「真ん中じゃない?」
「よし、真ん中だな!」
俺はチューバを構えると、真ん中に向かって一発放った!
「何してるの!?」
「頼む、これで止まってくれ!」
俺の祈りが通じたのか、罠は止まってくれた。
そして、ドラゴンはこっちに向かってきた。
「よし、レクアス!発光奏法だ!」
「どれにですか!?」
「決まってんだろ!あの針全部にだ!あとみんな、目をふさいどけ!」
「ま、まさか!」
「さあレクアス、やってくれ!」
「『ルーモス』っ!」
すると、数十本はある針から光が発せられ、ドラゴンは視覚を失った。
「なるほど!目つぶしね!」
効果はあったようで、ドラゴンは視覚を奪われたようだ。
よし、今だ!
「ドラゴン覚悟ォ!」
俺はドラゴンに気づかれないように後ろに回り、ライトセーバーで切りつけた!
「フー、なんとか片付いたな。」
「ねえ、まぶしいからそろそろ発光をやめさせてくれない?」
「あっ、分かりました。」
アーブルがそう言うと、レクアスは一本残して発光をやめさせた。
「いやー、それにしても発光奏法がこんなところで役に立つとは。さすが噂通りのお方ですね!ヒトシさん!」
「だろ?」
「レクアス、どんな噂かは知らないけど、ヒトシは一人だったらクソ雑魚だからね。」
「さて、次行くか!」
3
「ここから先がボスの部屋のようだな。」
俺らはボスの部屋の前に来ていた。
「もうボスか。そんなに深くなかったな。」
「ドラゴンであんなに苦戦してたくせに、よく言うわ!」
「さあ、とにかく行ってみよう!」
俺はもはやダンジョンの不気味な感じにも慣れ、ずんずん進んでいった。
そして、最下層には・・・・。
「フハハハハハハ!よくぞここまでたどり着いたな演奏者どもよ。私がこのダンジョンの主、ヴァンパイアのアシュヴィパンである!」
「!?」
そこにいたのは、いかにもボスみたいな感じのやつだった。
すると、レクアスが口を開いた。
「あ、あなたは・・・・、アシュヴィパンさんじゃないですか!私ですよ、私!レクアスです!」
「レクアスだと!?」
「おいレクアス、知ってるのか?」
「ええ、私のいた教会によく来ていました。それが一年前くらいから急に来なくなっちゃって。どうしたんだろうと教会のみんなも心配していましたよ?」
「そう、俺は一年前、急に騒音の美しさに目覚めてしまったのだよ。俺はなぜだか騒音を追い求めたくなった!しかし、この音楽の世界で騒音を追い求めることは、神に背くことなので、気づけばこうしてヴァンパイアになっていた。そして、かつての魔王様にこのダンジョンを頂いたのだ!ああ魔王様、あなたはまことの名君だった・・・・。感謝します!」
「そうでしたか。じゃあ浄化しますね。」
「おい待て待て待て!」
ニコッと可愛い微笑みを浮かべて浄化の準備を始めたレクアスを慌てて止める。
プリーストとか女神とかがすぐにアンデットを浄化しちゃうのは有名な話だが、一見マトモそうなレクアスもそうなのか。
「こいつから新たな魔王の話について尋問するんだよ!レクアス、勝手に浄化するんじゃないぞ!」
「えー。」
「おい、アシュヴィパンとか言ったな。新たな魔王について聞かせてもらおうか。」
「新たな魔王?そういえばなんか聞いたな。新たな魔王の噂。」
「本当か!?聞かせてくれ。」
「確かなー、前の魔王様が討たれて、しばらくが経ったとき、魔族の中から新たな王を選んだらしいな。確か新しい魔王は魔族のなかでもトップクラスの強さを誇る、ノーライフキングだったらしいな。まあ俺は魔王様以外のやつに従う気なんてないから無視してたけど。でもお前は魔王と我々に力を与え続けてくれたノイズ神を倒したヤツとして賞金が懸かっているからな。魔王様の仇も取れて一石二鳥だ!スイタヒトシ、覚悟!」
「なんだと!?」
アシュヴィパンが牙を光らせこっちに向かってきたその時、レクアスの声がダンジョン中に響いた。
「『ターン・アンデット』っ!」
ナイスタイミングでレクアスが放ったアンデットの浄化奏法を受けたアシュヴィパンは、だんだん薄くなって、ついには消えてしまった。
そして。
「危なかったですねヒトシさん!あなたもヴァンパイアになるところでした!」
「あ、ああ。ありがと。」
「さあ三人とも、新魔王について聞き出すという目的も達成しましたし、帰りましょう!」
「そうだな。今日はもう帰って、ギルドで報酬を貰って、ちょっとお高めの肉でも買って帰ろう。」
俺らは談笑しながら街に帰っていたこの時、新魔王軍がラタトール征服に動き出していたが、俺らはそのことを知る由もなかった。
第四章 演奏者の帰還
1
「緊急警報!緊急警報!オークの集団がこの街を襲ってくる気配あり。緊急警報!緊急警報!」
それは久しぶりに聞くギルドからの緊急警報だった。
魔王軍が解体されてからは滅多に聞かなくなった緊急警報。
おそらくオークの集団というのは新魔王軍だろう。
「おいみんな、急警報を聞いたな。すぐ準備して行くぞ!」
「えー、行くのー?」
「行くよ!新魔王軍だぞ!興味はないのか?」
「うーん、まあないこともないけど。」
「じゃあ行くんだよ!どうしたんだよ!ヒキニート化が進んでるぞ!」
「えっ、マジで!?じゃあ行かなきゃだね。」
俺は昔からお世話になってるあの防具を装着し、いつものあのチューバを背負うと。
「さあみんな、行くぞ!」
意気揚々と、屋敷を出た。
ここはギルド。
ギルドのお姉さんが集まった演奏者に向けて状況を説明している。
「演奏者の皆さん、お集まりありがとうございます。大軍が、この街をうかがっています。その大軍とは、オークなどで構成されている、そう、魔王軍のような軍です。敵の数は約二千。率いているのは元魔王軍少尉・ウルガデルです。現在はこの古城にて軍を整えています。いつ攻めてくるか分かりません。」
そう言って、ギルドのお姉さんが地図に指を指したそこは、かつて魔王軍が必ず基地にしていたあの古城だった。
みんな、解体したはずの魔王軍そっくりな軍が攻めてきたことに困惑を隠せないようだった。
しかし、俺は痩せても枯れても魔王退治に貢献した英雄である。
こんな奴ら、蹴散らすのは簡単だ。
「みんな!聞いてくれ!」
俺はそんな中、みんなに向かって声をかけた。
しかし、誰も反応しない。
みんなそっぽを向いて、俺のことを無視する。
「みんな、聞いてくれ!どうした、なぜ無視するんだ!俺には策がある!」
しかし、誰も答えない。
俺が困惑していると、一人の演奏者がそっぽを向いたまま言った。
「・・・・反逆者として流されてきたやつの命令は聞けない。」
「なんだと!?まさか、みんなも俺のことを反逆者だと思ってたのか!この期に及んで!?」
すると、演奏者のみんなは、困惑しながらも、次々に頷いていった。
そう、ここにいる演奏者のほとんどは、俺のことを謀反人だと思っている。
マジかよ。
「そうか・・・・。それなら仕方ない。とても残念だ。」
そう言うと、俺はギルドを後にした。
「ヒトシは反逆者なんかじゃないわ。弱っちいのに国のために全力で戦い、魔王と邪神を倒した英雄よ。」
「ええ、ヒトシは部下にはめられ、反逆者扱いされて、位を剥奪されて、レベルをリセットされて・・・・。それでもなお、国のために、みんなのために新たな脅威に立ち向かおうとする真の勇者よ。」
「あなたたちと共に戦えず残念です。神のご加護を。」
そして、パーティメンバーたちも、ギルドを後にした。
2
俺たちはギルドを後にし、街から少し離れたあの古城の近くまで来ていた。
どうやら城の中のやつらにはまだバレていないようだ。
「ねえヒトシ、どうするの?私たち四人だけじゃ、お得意の兵法も使えないわよ?」
「そうだな・・・・、むむ、どうしよう。」
「四人だけで頑張ってみる?」
「ダメだ。ここは平地だから数が少ないほうが不利になる。俺らなら秒殺だろうな。」
「じゃあどうすんのよ。」
「知らん。4人で二千の兵を相手にする方法なんて知らんし前例もない。」
「なんでよ!知らないなら知ればいいじゃない!前例がないなら前例を作ればいいじゃない!」
「うーん、そう言われてもなあ・・・・。」
俺は知恵を振り絞って考えた。
石造りのため、火は使えなさそうだし、平地にあるため、水も使えないし、人数が4人では包囲して兵糧攻めも無理だし、誰かおとりになって移動させればおそらくおとりが死ぬし・・・・。
そして、思いついた。
「おい、誰かゴーレム作れねえか?」
「ゴーレムですか?作れますけど。」
「よしレクアス、土でゴーレムを作るんだ。ありったけな。そして、古城の門を土で塞ぐんだ。奴らが外に出てこれなくなれば、勝ったと思え。」
「わ、分かりました。『クリエイト・アース・ゴーレム』っ!」
レクアスは作れるだけゴーレムを作り、ゴーレムは、土を運び、門をどんどん塞いでいき、やがて、活動時間が尽きたゴーレムは、土に戻り、また門を塞ぐ。
これを大量のゴーレムがやるので、瞬く間に門は塞がれていった。
「どうでしょうヒトシさん、だいぶ塞がれたんじゃないですか?」
「うん、これでOKだ。ありがとうレクアス。」
よし、勝機あり!
俺はちょっと高い丘に登ると。
「俺の弓の威力を見せてやる!とっときの矢を使ってやる!」
俺は弓に矢をつがえ、古城のてっぺんに向かって放った。
その矢は爆音を出して爆発した。
そう、この矢は、当たってから三秒後に爆発するようになっている。
突然城が爆発し、上からがれきが落ちてきて、オークどもは逃げまとっている。
「見たか新魔王軍ども!俺の名はスイタヒトシ!魔王と邪神を倒した男だ!」
俺はさらに矢を放ち、城はどんどん崩れていく。
「フハハハハハ!見たかオークども!」
外に出ようにも土で門が塞がれていて出れない。
まさに生き埋め状態であった。
ふと横を見ると、れクラスが古城に向かって祈るようなポーズを取り、死んでいったオークたちの霊に祈りを捧げていた。
さすがプリースト。
そんな時、アーブルの焦った声が耳に入ってきた。
「ヒトシ!門が破られた!」
「何だって!?」
城のほうを見ると、確かに一つの門が破られている。
クソッ、土をどかせやがったか。
オークは城から脱出すると、真っ直ぐこっちへ向かってきた。
「ヒトシ!こっちに向かってきたけどどうする?」
「戦うしかないだろう!レクアス、支援奏法を頼む!幸運値を上げてくれ!なんせ幸運値だけで魔王を倒せちゃう時代だ!」
「わ、分かりました!『グルーク』!」
レクアスの支援奏法を受けた俺は、矢を弓につがえ、オークに向けて放った。
その矢は見事に一匹のオークの眉間を射抜いた。
「いいわよヒトシ!その調子で全部射抜いちゃって!」
「矢が足りねえよ!おいレクアス、ゴーレムだ!ゴーレムをまた作って早く門を塞げ!アーブルとマレーズは俺に加勢してくれ!」
「『シュピールツォイック』っ!」
「『ディスコード』っ!」
二人の必殺技が炸裂し、オークどもは結構討ち取ったはずだ。
しかし、破られた門から、あとからあとから出てくる。
「レクアス、早く頼む!」
「そんなこと言われても、ゴーレムがオークに倒されちゃうんです!戦闘用に作ってないからすぐ負けちゃうんですよ!」
「困ったな・・・・。これはマジで俺らだけでこいつら倒さなきゃならないのか・・・・。」
俺が一瞬不安を抱いたそのとき、横から攻撃が放たれ、オークが一掃された。
「スイタさん!反逆者呼ばわりしてすまなかった!加勢するぞ!」
見ると、さっきの演奏者たちがいた。
みんな、分かってくれたようだ。
「ありがとう、みんな!」
よし。
勝てる。
二千の兵だから、生き残っているのは多く見積もって千五百だろう。
きっと勝てる。勝てるぞ!
「いいか、他にも破られるかもしれないから、それぞれ門を包囲してくれ。ゴーレムを作れる人は土でゴーレム作って門を塞いでくれ。ゴーレムを襲うオークがいれば俺が弓とライトセーバーでゴーレムを守る。へたにチューバでも吹けばゴーレムごと吹き飛びかねないからな。門を塞げばあとは俺が生き埋めにして上に木をいっぱいおいて燃やしてやる。」
「分かりました!」
「よし、攻撃開始ィ!」
俺の合図と共に、みんなが一斉に攻撃を開始した。
ゴーレムを襲うオークは矢で射抜き、近づいてくるオークはライトセーバーで斬る。
しかし、支援奏法は受けているものの、剣道も弓道もやったことない俺は、見様見真似のメチャクチャな我流である。
どう考えても無理があるだろう。
「どうだレクアス、門は閉じたか?」
「もうすぐです!なんとか頑張ってください!」
「分かった!なるべく急いでくれ!あっ、いってえ!このやろう、やりやがったな!殺してやる!」
俺はオーク相手に苦戦を繰りひろげていると、突如、あの聞きなれた不気味な音がオークを跳ね飛ばした。
「ヒトシ、大丈夫?怪我はない?」
「ああ、命に別状はねえよ。あとでレクアスに回復奏法をかけてもらえば秒で完治するくらいの軽傷だ。」
「そう、そりゃよかった。あんたは一人じゃ弱っちいんだから、気を付けたほうがいいわよ。」
「分かってるよ。俺はどっちかと言えば頭脳派だからな。ありがとなマレーズ。」
俺はマレーズに助けてもらった礼を言うと、戦闘に戻った。
そして。
「ヒトシさん!門を塞ぎました!」
やっと待ってた時が来た。
「ほんとか!よくやったぞ!よし、あとは任せろ!」
「ヒトシさん!後ろから5体くらいオークが襲い掛かってきてますが!」
「ほんとか!」
俺は後ろを向くと、確かにオークが5体襲い掛かってきていた。
俺は爆発する矢を弓につがえ、真ん中のオークに向かって放った。
すると、その矢は爆発し、周りにいたオークも道連れにされた。
「よし、ジャマはなくなった!城を跡形もなく消し去ってやる!」
そして俺は矢筒に手を伸ばしたその瞬間、やってしまったことを知った。
「・・・・矢がない。」
「「「えー!?」」」
「あれが最後の一本だった。」
「どうすんのよ!」
「仕方ない、こうなったら少々もったいないがこうしてやろう。」
「どうするの?」
俺がポケットから出したのは、卵くらいの大きさの石。
「そ、それは・・・・。」
「ああ、矢じりに使う石だ。これを放り込めば、ものすごい大爆発が起こる。」
「し、しかしそんなことをすれば、巻き込まれるかもしれない上に、封じ込められているものすごい爆音が鳴るから、鼓膜が持たないかもしれないわよ!」
「その危険もある。しかし、やらなきゃならないんだ!」
「カッコよくいってるけど、ただのあんたのうっかりじゃん。」
「う、うるせえ!全員安全なところまで下がっとけ!」
「わ、分かった!」
レクアスの支援奏法を受けている俺は、きっと死なないはずだ。
うん、大丈夫。
きっと、大丈夫。
・・・・怖いな。
俺が石を持って躊躇していると、レクアスが俺に向かって言った。
「ヒトシさん!・・・・神のご加護を!」
ニコッと笑って俺を励ましてくれるレクアス。
「ありがとう!」
俺はレクアスに向かって親指を上に立てると、城のほうに向かって大きく振りかぶった!
「『エクスプロージョン』っ!」
そして、俺はあの有名な呪文を唱えて石を投げた。
石は爆音を立てて爆発し、城を吹き飛ばした。
城は跡形もなく消え去り、超デカいクレーターが残った。
いや、残ったのはそれだけではなかった。
今にも壊れそうなヒビが入ったシールドを張ったヤツが一人残っていた。
どうやらコイツが大将のウルガデルとか言うやつらしい。
「そんな・・・・、この大爆発に耐えるなんて・・・・信じられない・・・・。」
みんながその耐久力にちょっと引いていると、ソイツは俺らに向かって言った。
「我こそは、元魔王軍少尉にして新魔王軍中尉、ウルガデルである!」
「そうか、俺の名はスイタヒトシ。あの、魔王と邪神を倒したスイタヒトシだ。」
「なんだと!?死んだはずじゃ・・・・。」
「俺は新たな魔王を倒すまで死なねえよ!さて、ではお前も死んでもらおうか。」
「面白い、やってみろ!」
ウルガデルは背中に背負っている俺のほうに向けてトランペットを構えた。
「くらえ!『スタッブ』!」
ウルガデルの攻撃をライトセーバーで跳ね返すと、俺はチューバを構え、昔スキル屋で教わったあの呪いを使った!
「『カース・オブ・チューバ』っ!」
「なっ、なんだこれは・・・・っ!手・・・・手が重い・・・・っ!」
「今だ!くらえっ!」
俺はライトセーバーを起動し、ウルガデルを切りつけたその時・・・・!
ウルガデルは懐から短剣を取り出し、俺の腹をぶっ刺した!
「ぐっ・・・・。」
「フハハハハハ!甘かったな。俺は強い奏法抵抗力を持っている。あれは芝居だ。」
「ぐっ・・・・。」
「ヒトシ!大丈夫!?」
「ヒトシさん!」
「うう・・・・、くらえ!」
俺はウルガデルが油断した瞬間に首をはねた。
「ヒトシ!大丈夫?レクアス、すぐに回復奏法を!」
「わ、分かりまし・・・・。」
そして、そこから俺の意識はだんだん遠のいていき・・・・。
3
気づくと、俺は何もない白い部屋にいた。
目の前を見てみると、そこには音楽の神・サウンドが。
「ここは・・・・。」
「やあ少年。よく頑張ってくれたな。」
「俺は、死んだのか?」
「いや、意識を失っているだけだ。そのうち意識を取り戻せば、戻れるだろう。」
「そうか・・・・。」
「私が遣わしたプリーストの少女が、回復奏法をかけてくれているからな。」
「ああ、レクアスはあんたが遣わしたのか。」
「ああ、彼女はとても優秀だ。しかも優秀なだけじゃない。今はまだ何もないかもしれんが、そのうち君と彼女の関係が・・・・、おっと、そろそろ意識を取り戻したはずだ。お別れだな。」
「おい待ってよ!なんて言おうとしたんだよ!最後まで言ってよ!俺とレクアスの間に何が起こるんだよ!もしかして・・・・?」
「どうかな。それは神のみが知ることだ。」
「お前神だろぉー!」
気づくと俺は、自分の家にいた。
「あっ、よかった、意識を取り戻したようね!」
「ほんとによかったです!神に感謝しましょう!・・・・どうしたんですかヒトシさん。なんで私の顔を見て照れてるんですか?」
「いや、なんでもねえよ。さて、出血のせいで俺はちょっと貧血気味だし、今日は貰った報酬で、レバーでも食うか!」
「「「賛成!」」」
そして、俺は死にかけたものの、なんとか日常が戻った。
しかし、新たな脅威・新魔王軍の本当の恐怖を、俺たちはまだ知らない。
数日後、俺たちはさらなる脅威と対決することになる。
エピローグ
「魔王様、大変です。ラタトール征服に行ったウルガデルの軍が大敗し、ウルガデルも討ち死にしました!」
「なんだと!?」
「どうやら、スイタヒトシが関わっているようです。」
「なんだと!?スイタヒトシは死んだのではなかったのか!おいアスクーシュ、どうなっておる!」
「はっ、スイタヒトシは死んでおりません。ラタトールへ流罪にしました。」
「何をしておるのだ!あの者はこの新魔王軍の最大の脅威になるから殺しておけとあれほど言ったはずではないか!」
「申し訳ございません。しかし、現在最強の暗殺者を向かわせております。」
「その者の名は?」
「・・・・ポッザ。」
ヒトシたちの大いなる冒険は続く・・・・




