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第二巻

ミュージック・クエストのシーズン2第二巻です。

プロローグ


新魔王軍。

それは、俺が退治した魔王軍よりもさらに強大な軍隊になろうとしている我々人類の新たな脅威だ。

俺は、いろいろあってソイツらと戦わなければいけないわけだが・・・・。

「うっ、うまい!マレーズ、お前、料理の才能があるぞ!」

パーティメンバーたちと夕食を食べていた。

「ほんとですね!こんな美味しいもの、いまだかつて食べたことないですよ!」

「またまた~!二人ともお上手ねぇ~!」

「そういえば、アーブルはどうした?」

「そういえば、散歩に行ったっきり帰ってこないですね。」

「まあ、そのうち帰ってくるだろ。マレーズ、アーブルの分を残しといてくれ。」

「分かったわ!」

その時、もうすでに魔の手は我々のすぐそばまで忍び寄っていたのだ。











第一章 図書館騒動


   1


「おはようございます皆さん。」

「おはよレクアス。」

「どうしたんですか、あの午前中は起きたことのないヒトシが、今日は私より早いとは、なにか用でもあるんですか?」

「ああ、ちょっと図書館へ行こうと思ってね。なぜか鳴る音のテンポがちょっとずつ速くなる目覚まし時計が役に立ったよ。」

「それは目が覚めそうですね。それにしても、ヒトシが読書ですか。まあ確かに、普段頭脳派を名乗ってますからね。ちょうどいいです。私もちょっと調べたいことがあったので。」

「そう、俺はどっちかと言えば頭脳派なのよ!体力と身体能力のステータスはそこらのカマキリより低いけど、それは俺が頭脳派だからなのだよ、フフッ!」

「そうだったのですか。こないだもノコギリクワガタと互角の勝負を繰り広げてましたもんね。」

「俺は虫が大っ嫌いなのだ!虫よりはアンデットのほうがまだ好きだ!あと互角じゃないぞ!俺のほうがちょっと勝ってたぞ!」

「ふふ、そうですか。」

レクアスの可愛い笑顔に心を洗われる。

いかんいかん、シャキッとしろスイタヒトシ!

「さ、さて、図書館に行くか!」

「ですね!」


   2


「ヒトシさん、この本面白かったですよ!」

「お、ありがとう。」

「ところで、借りれる本の上限ちょっと越えちゃったんで、ヒトシさんのカードで何冊か借りていいですか?」

「五冊くらいなら借りていいよ。はい。」

「ありがとうございます!」

図書館では、普通の市民なら5冊まで借りることができ、借りるときに演奏者カードを見せれば十冊まで借りれるようになっている。

図書館には結構いろんな種類の本があり、結構楽しい。

俺は演奏者カードをレクアスに渡すと、本を探すのに戻った。

「お、これかな。」

お目当ての本と思われる一冊を手に取ると、パラパラ―っとめくってみた。

「うん、どうやらこれのようだな。」

「ヒトシさん、カードありがとうございます。お目当ての本が見つかったんですか?」

「ああ、きっとこれだ。ちょっと借りてくるから待ってて。」

「カウンターの人、気をつけたほうがいいですよ。」

「え?どゆこと?」

「いずれ分かります。」

俺が満足そうに本を眺め、そして貸出カウンターに向かった。

しかし、俺はカウンターでとんでもないものを見た。

「pon pon pon!俺は図書館の守護者・ビブリオテーク!よろたのぉ~!」

「・・・・なんかすごい場違いな気がしますけど。」

「間違いナイトプール!パシャパシャ!」

やべえ。

これがパリピと呼ばれる人か・・・・。

「こ、これ借りたいんですが。」

「了解道中膝栗毛ェ!」

・・・・しんどいなーこのノリ。

自分では意識していなかったが、俺、どっちかと言えば陰キャなのかも。

「貸出手続き終わりましたぁ!あとこの本、控えめにいっていとをかしなんで読むしかナイトプール!」

「あっ、いいです・・・・って、これは!借りる!借りるぞこの本!」

「あざまる水産よいちょまる!」


   3


「ヒトシ、レクアス、そんなに疲れた顔してどうしたの?」

「疲れた・・・・。」

「疲れましたね・・・・。」

「あのメンタルの強いヒトシが・・・・。一体なにがあったの!?」

「まあいいや、お目当ての本は手に入ったし。思わぬ名作も手に入ったぞ。」

「思わぬ名作?」

「ああ、これだ!黒豆雄の名作『ミュージック・クエスト』シリーズだ!」

「おお、なにか次元のゆがみを感じる上に、名作ってところをツッコまなきゃいけないけどまあいいや!」

「あっ、その本・・・・。」

「ん?どした?」

「いえ、なんでもないです。ところで、お目当ての本はなんだったんですか?」

「ああ、実はミュージック・ストーンについて気になって、調べてみたいなと思ってね。本を借りてきたんだ。」

「ほう、ストーンについて調べたいと。急にどうしたんですか?」

「ストーンは八つのうち六つがノイズが復活に使って失われたけど、まだ二つ残ってる。それが今度の戦いの切り札になると思うんだ!」

「でも、あんたみたいな貧弱なただの人間では、ストーンなんて制御できずに、肉体が崩壊するわよ?」

「そ、それは分かってるけど!調べといて損はないだろ!」

「まあね。」

「さて、今日はレクアスに勧められたこの本でも読んでみるか。」

「おや、借りたんですか。」

「もちろん!勧められたら気になるじゃん。」


そして、深夜。

俺は自室でその本を読んでいた。

こんな時間まで起きてられるのは俺が日々ニートに近づいているということだろうか。

すると。

「ヒ、ヒトシさん!」

「レ、レクアス?どうした、こんな時間に。」

待て待て待て待て。

これは来たんじゃないか?

こんな時間に男を部屋を訪ねてくるなんて、もうアレしかないだろう。

来たな。俺がリア充になるチャンスが到来したようだ。

と、俺がそんなことを考えていたが、現実はそんなに甘くなかった。

「ヒトシさん!アンデットです!」

「!?」

俺がドアを開けると、泣きそうになったレクアスが、急いで俺の部屋に入ってきた。

そして、近づいてくる骸骨たちも見えた。

やべえ、怖え。

俺はレクアスが部屋に入った瞬間、速攻でドアを閉めると、厳重に鍵を閉めた。

「おいなんだあいつら!何があったんだ!昨日まであんなことなかったよな!てかなんでこのシチュエーションでそういう甘い展開にならないんだ!」

「何を言ってるんですか!私はアンデットの気配を感じて、浄化してやろうと部屋から出たら、大量の骸骨が追っかけてきて・・・・、つい一番近いヒトシさんの部屋に・・・・。」

「そうか、そういえばアーブルとマレーズたちの部屋は二階だからな。それにしてもなんだあの骸骨の大群は。新魔王軍の襲来か?」

「そうとは考えられませんね。それならもっとオークとかのはずです。まあ、アンデット部隊もいるらしいですが。」

「どうする?」

「戦いますか。」

「そうする?」

「だって戦う以外あります?私はプリーストですよ!アンデットを前にして戦わないという選択肢はありません!」

「でも、俺対アンデットでは全然役に立たないけど?」

「大丈夫です!骸骨は下級アンデットなので、普通の攻撃でも十分消滅させることができるはずです!」

「そうか、ならなんとかなるか。」

俺は部屋の隅に置いてある楽器を構えると、大きく深呼吸をして。

「さあ、ドアを開けるぞ!」

「はい!」

ドアを開け、廊下へと繰り出していった!


   4


「『ターン・アンデット』っ!『ターン・アンデット』っ!『ターン・アンデット』っ!」

「『フラッター』っ!おいどうなってるレクアス!撃っても撃っても全然減らないんだが!」

「おかしいですね!急にアンデットが集まってくる現象・・・・、これは、なにか呪われたものがこの屋敷内にあり、それに群がっているのかもしれません!」

「・・・・そういえば、なぜかこいつら俺の部屋に群がってきてるな。」

俺たちが同時に見た物はきっと同じ本だっただろう。


「とんでもねえなミュージック・クエスト!絶対呪われてると思ったぜ!」

レクアスがすぐに解呪してくれたおかげで、アンデットたちは急に踵を返して去っていった。

「ふー、一件落着か。・・・・ん?」

「ですね。どうなることかと思いましたけど、なんとかなりましたね。・・・・ん?」

「・・・・下からチューバとネベルの音が聞こえたと思って見に来たら、レクアスとヒトシが同じベッドで・・・・、しかもこんな真夜中に・・・・。あわわわわ・・・・。」

「待てマレーズ!違うんだ!てか同じベッドってなんだ!言い方が卑猥だぞ!」

「そそそそそそうですよ!これはですね、いろいろあって・・・・!」

「広めなきゃ、みんなに広めなきゃ・・・・!」

「「ちょちょちょ、待ってー!」」






























第二章 再会


   1


その日は、大雨だった。

俺は屋敷のリビングでぼーっとしていた。

「ヒトシさん、どうしたんです?いつになくぼーっとした顔をして。」

レクアスが紅茶を片手に優雅に読書をしながら俺に話しかけてきた。

マレーズとアーブルはこの雨のなか、ギルドへ手伝いに行っているため、俺はレクアスと留守番だ。

「いや、実は〝誰か〟が来る気がするんだよ。」

「〝誰か〟とは誰ですか?」

「さあ?でもなんかそんな気がする。」

俺たちがそんなことを話していると、突然、ドアがノックされた。

「あら、誰か来ましたね。噂をすれば・・・・というやつですかね。」

「誰だろう。」

俺はドアを開けると、そこには黒ずくめの服を着た男が。

顔はフードで隠れていて見えない。

「・・・・どちら様でしょう?」

しまった、新魔王軍の手先かも。

本能的に腰に差してあるポーチに手を伸ばす。

この中には、マッピが入っている。

いざとなれば・・・・。

「・・・・どちら様でしょう。」

息詰まるにらみ合い・・・・。

そして。

「やあヒトシ!俺だよ俺!」

「フレイウス!フレイウスじゃないか!」

来客は、まさかのフレイウスだった。


   2


「やあ、久しぶりだなあ。上がれ上がれ。」

「おう、じゃあお邪魔するよ。おや、こちらの女性は?見たところプリーストのようだが。」

「ああ、俺のパーティメンバーのレクアスだ。レクアス、こいつは俺の友達のフレイウスだ。」

「どうも、レクアスです。」

「よろしく。」

「いやー、それにしても、あの後、大臣にならないかという陛下のお誘いを断って故郷に帰ったらしいじゃないか。大丈夫だったか?」

「ああ、今度新魔王軍が暴れだしたんで、俺の故郷もみんな疎開しちまってよ。どうやらお前がここに流されたって聞いたから、こうしてはるばるやってきたってわけよ。」

「おいちょっと待て、新魔王軍がお前の故郷も制圧したのか?」

「なんだ、知らないのか?今新魔王軍は元魔王領の三分の二を制圧したんだぞ。」

「なに!?」

「魔王城はお前らが壊しちゃったから、新魔王は今は確かヴィシュ城にいたはずだ。王都攻略に向けて準備を進めているらしい。」

「何だと!?」

「なんだぁ、知らなかったのか。お前ならもう新魔王軍と戦う気満々だと思ってたんだけどなぁ。」

「そのつもりだ。今からヴィシュ城に行こう!」

「いや、新魔王軍は人類が支配する全ての街に軍を向けたらしい。もちろん、ラタトールにもだ。お前がいないときついだろう。」

「そうか・・・・。」

「じゃあそういうことで。俺はあの角の八百屋の二階に部屋を借りたから、なんかあったら来いよ。」

「そうか、じゃあな!」

そして、フレイウスは去っていった。

「やっぱり来ましたね。」

「いや、これじゃない気がする。」

「まだ来ると?」

「そんな気がする。虫の知らせって奴だろうか。」

「虫の知らせってやつですか・・・・。」

偶然が必然か、このあと、もう一人訪問者が来ることになる。

それも、フレイウスよりもっと予想だにしない客が。


   3


フレイウスが去ってしばらくしたころ、またドアがノックされた。

「お、誰でしょう。」

「ちょっと見てくる。」

俺はドアを開けると、そこには黒ずくめの服を着た男が。

顔はフードで隠れていて見えない。

「なんだ、フレイウスか。どうした?なにか忘れ物か?」

「・・・・フレイウスも来たのか。」

「!?」

その声は、かつてよく聞いた声だった。

「あんたは・・・・。」

すると、その男は懐から短剣を取り出した。

俺はとっさに身構える。

やべえ。

新魔王軍の手先か。

緊張状態がしばらく続いた。

そして、その男は口を開いた。

「久しぶりだなスイタヒトシ。俺だよ、ポッザだよ。これは新魔王から巻き上げてきた結構強い奏法のかかった短剣だ。やるよ。」

フードをとったその男の顔は、かつて何度も見た顔だ。

「ポッザ!死んだかと思ったぜ!」

「この俺がやすやすと死ぬもんか。」

「まあ、上がれよ。」

「それには及ばない。」

「そう?ところで、君は今、何を?」

「新魔王軍でまた諜報員をやってる。」

「またか。いい加減足を洗えよ。」

「ああ、そのつもりだ。忠誠心を試すためにお前を暗殺してこいって言われたんだ。だから、表向きはお前を暗殺しに来た暗殺者だってわけだ。ま、俺は、あの新魔王好きじゃないから、お前に新魔王軍の情報を伝えるためにきたんだけどな。」

「いつもありがとよ。今度は情報が少なくて困ってたんだ。」

「ああ、用心したほうがいいぞ。新魔王軍はかつての全盛期の魔王軍の十倍は強い。」

「らしいな。」

「ヴィシュ城を落とし、かつての魔王領の三分の二を取り戻した新魔王軍にとって、もはや王国軍など敵ではない。今、王都攻略軍が動き出しているが、おそらく戦にならんだろう。大臣の中にこっち側の人間がいるらしいしな。誰かは分からんが、お前ならだいたい見当は付くんじゃないか?」

「・・・・ああ、絶対にアスクーシュだ。」

マジか。

まさかとは思ったが、やはりそうだったか。

「あと、王都以外も人類が支配する街をぞくぞくと攻めていってる。ラタトールにも来たんじゃないのか?」

「ああ、来たけど全滅させてやった。」

「らしいな。でも今度の敵はあんなのとは比べ物にならないぞ。今度は精鋭二万、率いるは新魔王軍中佐・ヌアザストスだ。奴は頭も切れて、武術にも達者な強敵だ。」

「ほう・・・・。」

「それだけじゃない。新魔王軍は最強の古代兵器を使う気だ。邪神ノイズを祀っている神宮に保存されていた設計図を新魔王軍は発見したらしい。どんな兵器なのかは俺も知らん。いいか、王国軍も太刀打ちできないくらいに成長した新魔王軍を倒せる可能性があるのは、お前だけだ。俺の読みではおそらく、この街は最後の街になる。頑張ってくれ。俺が教えられるのはこれだけだ。」

「最後の街?どういうことだ?」

「じゃあな。俺は新魔王軍に見つかれば殺されちまうから、お前が新魔王軍を倒すまではバレないところに隠れているよ。」

「プ、プレゼントありがとな!」

そして、ポッザは俺に情報と謎を残して去っていった。

「ずいぶん長い立ち話でしたね。誰でした?」

「・・・・俺の友達兼俺を暗殺しに来た暗殺者ってとこかな。」

「どういうことですか?」

「新魔王軍の情報は集まった。」



































第三章 スキル屋再び


   1


ギルドの裏。

かつて俺もお世話になったスキル屋があった場所だ。

かつて店主は、街のみんなを守るため犠牲になった。

そんなスキル屋があった場所だが・・・・。

「な・・・・なんだと・・・・!?」

なんと、リニューアルオープンしていた。

「入ってみるか・・・・。」

俺はとりあえず入ってみた。

中はそんなに変わってない気がするが・・・・。

「いらっしゃい!ようこそスキル屋へ!」

店主が若い男性だ。

「あのー、ここって確か、おじいさん店主がやってた店ですよね?」

「ああ、祖父をご存じですか。祖父がこの店をやってる間、私はずっと王都で修業してたんですよ!そして、魔王軍が解体してからは、ずっと魔王軍の占領下だったこの街に戻ってきて、祖父のようにスキル屋をやろうと決意しましてね。祖父のようにすべてのスキルを習得したんですよ。」

「ほー、そうでしたか。」

「で、お客さん。どんなスキルをお求めで?」

「そうですねえ・・・・、なんか必殺技になりそうなスキルないですかね?」

「ほう、必殺技ですか。ちなみには?」

「あ、チューバです。」

「分かりました。では、とっておきのスキルを伝授します。」

「は、はい。」

どんなスキルなんだろう・・・・。

ゴク・・・・。

そして、店主は大きく深呼吸をすると、気合いを入れて・・・・。

「『(・д・ = ・д・)カゲブンシンノジュツ』」

「舐めてんだろ。」

「すいません、今のは冗談です。」

いきなり一部の人しか笑わなそうなギャグをかまされた。

「では、今度こそいきます。」

「『( ・∇・)』っていうのはナシですからね。」

「ゲッ、バレましたか。」

「・・・・前の店主のほうが良かったかな。(ボソッ)」

「そんなこと言わないでください!分かりました!今度こそ本気でいきます!」

「お願いしますよー。」

「これはどうでしょう。『アッパーシフト』というのがありますよ。」

「あっぱーしふと?」

「ええ。単純に口をずらして下唇だけで演奏する奏法です。ペダルトーンをバリバリ鳴らすのに使えます。」

「ほう、やっとマトモなの教えてくれましたね。」

「では、今からやり方を伝授させていただきます。」

そして、俺はその奏法を伝授してもらった。

「これはチューバの奏法の中でも結構強い方です。上手く使えば必殺技になりますよ!さあ、さっそく習得してみてください!」

「はい!」

俺はそう言われて、演奏者カードを見ると、とんでもないことになっていることに気づいた。


   2


「・・・・どうか、されましたか?」

「・・・・レベルリセットポーションって、スキルポイントには関係ないんですね。」

「そ、そうですけど・・・・、それがなにか?」

「スキルポイントが・・・・五千ポイント以上あります。」

「!?」

そう、俺は一応魔王と邪神を倒した物だ。

千以上だったレベルをリセットされてしまったが、スキルポイントには影響がなかったようだ。

つまり、これだけあればいくらでもスキルが習得できる。

「店主!今からありったけスキルを教えてください!」

「ありったけですか!?」

「そうだ!ありったけ教えてくれ!」

「しかし、料金が少々高額になりますが・・・・、大丈夫ですか?」

「大丈夫だ!利子は取らないだろ?」

「ええ、ウチは良心的なので。ええ、良心的なので。」

「よし、それなら大丈夫だ!新魔王を倒したら賞金から払ってやるよ!」

「そうですか、ならいいでしょう!ありったけ教えてあげましょう!」

そして、俺は丸一日、スキル屋に籠り、ただひたすらスキルや奏法を習得し続けた。


   3


そして、次の日の朝。

「ふー、あといくつですか?」

「よく頑張りましたね。あと一つです。」

「あと一つですか。」

「ええ、私のスキル『未来予知』によると、戦いの切り札になるスキルなので、しっかり覚えてくださいね。」

「なんですか未来予知って!それ教えてくださいよ!」

「では伝授していきます。」

「おいスルーすんな!」

「今使ったのが、スキル『スルー』です。」

「そんなのスキルでもなんでもねえよ!」

そして、いろいろあったがなんとか最後のスキルを習得した。

「ふー、終わりか。」

「ええ、これで終わりです。お疲れさまでした。」

やっと終わった。

寝みい。

帰ったらパーティメンバーたちに言い訳してから、すぐ寝よう。

「では、料金はちょっと待たせることになりますが、必ず払いますからね!」

「いえ、今貰ってきます。」

「え?」

今貰ってくる?

どゆこと?

俺が困惑していると、スキル屋の若店主は大きな奏法陣を作り、何かの詠唱をしてから言った。

「今から時空移動奏法を使って未来に行ってきます。そして、報酬を貰ったら祖父に会いに行ってきます。では、ご武運を!『トゥ・コーダ』っ!」

「なんだよ時空移動奏法って!俺にも教えてよー!」

そして、若店主は光に包まれ、未来に行ってしまったようだった。

そして・・・・。

「なんで昨日帰らなかったんですか!心配しましたよ!」

「朝帰りねヒトシ。夜の間になにをしたかは聞かないでおくわ。」

「待て待て待て!俺はスキル屋でだな・・・・。」

「スキル屋ならもうないでしょう!」

「あったんだよ!あったんだけど若店主が未来に行っちゃったの!」

俺はパーティメンバーたちに、必死の弁解をした。































第四章 決戦


   1


ここは、かつてスイタヒトシが苦戦した城・ヴィシュ城。

「新魔王様。王都を始め、人類が治めるすべての街に軍を向かわせました。特にラタトールには精鋭を。」

「うむ、人類の持つ最強の軍隊・国王軍も我が軍には歯が立たないだろう。王都始め全ての街が落ちるのは時間の問題だな。アスクーシュには準備をしておけと伝えろ。」

「ハッ。」

「ところで、例の古代兵器はどうだ?」

「ハッ、現在急ピッチで製作を進めています。」

「そうか。急いでくれ。」

「ハッ。」

「私は人間くずれの前魔王とは違う。必ずやスイタヒトシを倒し、我々魔族が人類を支配する世を作るのだ!フハハハハハハ!」

「ハハッ!」

「・・・・私は幼いころから、人間に迫害されて生きる魔族やアンデットを数多く見てきた。魔族やアンデットたちは、人間よりはるかに強いが、それが災いしてか、ずっと人間に迫害され続けてきた。私は、いつか、魔族やアンデットが人間に迫害されない世の中にしようと私は誓った。そして、今、その誓いが果たされようとしている!おお、すべての魔族とアンデットの同胞よ、ここに集え!今こそ愚かな人類に代わりこの世界を支配する時だ!」

「おい、魔王様が一人で喋ってるぞ、これヤバいんじゃないか?(ボソッ)」

「しっ、黙れ!魔王様にはきっとお考えあってのことだと・・・・思うけど。(ボソッ)」

「ん?どうした近衛兵よ。なにか言ったか?」

「「いえ、なにも!」」


   2


「・・・・と、まあ、こういうわけなんだけど。」

俺はとりあえず手に入った情報をパーティのみんなと共有していた。

「へー、フレイウスが来たのね。あとで会いに行ってみよう。」

「なるほど、人類が支配する全ての街に軍が送られたのですか・・・・。まあ、王国軍がそうやすやすと負けることはないでしょう。」

「それにしても新魔王は今ヴィシュ城にいるのね。まあ、私のウォーターフォンでぶっ壊された魔王城に暮らそうなんて考えないでしょうね、フフフ。」

「ああ、そういうわけだ。というわけで、新魔王軍襲来に向けて、各自準備をしておくように。」

「分かった。」

その返事と、ギルドの緊急警報は、ほぼ同時だった。

「緊急警報!緊急警報!新魔王軍の襲来を確認!住民の皆さんは速やかに避難してください!演奏者の皆さんは至急ギルドに集まってください!」

「噂をすれば・・・・ってやつですかね。」

「だな。」

俺はあのボロい防具を身に着け、楽器と矢筒を背負い、左手には弓を持ち、腰にはマウスピースの入ったポーチ、懐にはポッザからもらった短剣が入っている。

「よし、行くぞ!」

「「「オオ!」」」


ここはギルド。

俺たちがギルドに入ると、演奏者のみんなはすでに揃っていた。

よく見ると、フレイウスもいる。

「スイタさん!お待ちしていました!今度の敵はかなりの強敵ですよ!」

「ああ、そうらしいな。精鋭二万、率いるは新魔王軍中佐・ヌアザストス。」

「そこまでご存じでしたか・・・・!」

「敵は今、どこに?」

「城の跡地のあのクレーターに陣を張っています。」

「敵は二万。我々は百人足らず。よし、策アリだ。」

「どう攻めますか?」

「夜襲だ。だから夜までは待て。敵を刺激するな。どうせ敵は長旅でへばっている。今から攻めてくることはないだろう。今のうちに、敵に気づかれないように戦闘準備だ。作戦はこうでこうでこうで・・・・。」

「分かった。」

「レクアス、支援奏法をありったけ頼む。」

「分かりました!任せてください!」


   3


そして、夜が来た。

「さて、そろそろか。みんな、準備はいいか?」

「いつでもOK。」

「よし、全員行くぞ!」

「オオ!」

そして、闇夜に紛れ、演奏者たちは新魔王軍の陣地へ向かって行った。

「ヒトシさん、あれが敵陣です。」

「よし、柵を取り払え。」

俺の指示で、柵が取り払われた。

「よし、みんないいな。敵は二万、こちらは百名足らずだが、この作戦を使えば絶対に勝てる。あの柵は結構強力な奏法がかかっていて、攻撃すると破ることは困難だが、やさしーく取り払えば普通に取り払える。俺の合図で柵を取り払ったところから突撃だ!とにかく騒いで大人数で攻めてきたと思わせろ!」

「OK!」

よし。

きっと勝てるはずだ。

新魔王軍の精鋭二万対演奏者百人足らず。

しかもここは駆け出しの街なので、ほとんどの煙硝者が普段ニセベートーベンなどのザコモンスターを狩ってるような奴らだ。

・・・・大丈夫かな。

ここにきて、少し不安が頭をよぎる。

「あの・・・・ヒトシさん。」

「ん?どうしたレクアス?」

「・・・・神のご加護を!」

不安を振り払うかのように、そんなことを言ってくれるレクアス。

「ありがと。やる気が出てきたぜ!」

大丈夫。

うん、きっと勝てる。

俺は誰だ、俺の名前を言ってみろ!

俺の名はスイタヒトシ。神に選ばれし、音楽の勇者様だ!

「よし、行くぞ!」

そして、俺は、深く深呼吸をすると。

「攻撃開始ィ!」

合図を発した!

そして、みんなは一斉に騒がしく音を出し、敵陣に突っ込んでいった。

「レクアス!負傷者を見つけたらすぐ回復奏法だ!」

「任せてください!」

俺は改良型弓と大量に作った矢でオークどもを次々と射抜き、近づいてくるやつらはライトセーバーで斬っていく。

しかし、矢は連発するとまたすぐなくなってしまう。

「さて、そろそろ矢は温存しとくか。ポイントの許す限り習得し、覚醒した俺のスキル&奏法を見せてやる!『アッパーシフト』っ!『フラッター』っ!」

そう、俺はスキル屋で奏法やスキルをめちゃめちゃ習得したのだ。

そんな今の俺にとって、怖いものなんてない。

「ヒトシさん!敵です!オークが大量に寄ってきてますよ!」

マジか。

やべえ。

いきなりやべえ。

しかし、覚醒した俺は対処法だって持っている。

「そうだ、あれやって見るか。」

「何やるんですか?」

「見てろよ!『(・д・ = ・д・)カゲブンシンノジュツ』っ!」

すると、俺がもう一人出てきた。

意外にすげえな、これ。

「おい分身!俺はこっちやるから、お前はそっち頼む!」

「なんでお前の命令を聞かなくちゃならねえんだ!いやだね!」

そう、影分身は分身とは違い、意思を持っているのだ。

「なんでだよ!いいから従え!ええいこの無能影分身め!」

「なんだとオラァ!誰が無能影分身だ!いいだろう!てめえ足手まといにならねえように頑張れよ!」

「それはこっちのセリフだ!せいぜい頑張れ!」

はたから見たら同一人物の言い争いである。

そして、俺たちはお互いに背を向け、迫りくるオークを相手に戦っていた。

「ヒ、ヒトシさん?何をしてるんですか?てかどっちが本物ですか?」

「「こっち!」」

そして。

「ヒトシさん!そろそろじゃないですか?」

「そうだな!撤退の合図を出そう!」

そして、俺はチューバを構え、ベルを夜空に向けると。

「『照明弾』っ!」

すると、ベルから光が発射され、空で花火のように爆発した。

これも今回習得した、合図を出すときに使うスキルである。

それを合図に演奏者たちはどんどん退却を始めた。

混乱した新魔王軍は何が何だか分からず、人影を見たら敵だと思い込み、ついには同士討ちが始まった。

「よし、作戦成功だ!」

俺たちも撤退しようとしていると、敵の親玉みたいなやつが俺に気づいたらしい。

あいつがおそらくヌアザストスとかいうやつだろう。

「おい見ろ!あいつがスイタヒトシだ!やつの首を取れば幹部になれるぞ!くらえ!『レルム』っ!」

ヌアザストスの攻撃をくらいそうになり、俺が死を覚悟したその時。

「危ないっ!」

とっさに俺を庇ってくれたのは・・・・!

「影分身!」

「俺の分まで頑張ってくれ・・・・。本物(オリジナル)・・・・!」

「影分身ー!」

そして、俺の影分身は、俺の胸の中で、ゆっくりと息を引き取った・・・・。

「・・・・同じ顔が抱き合ってる。」

「うるせぇ!よくも俺の影分身を!こうしてやる!『アッパーシフト』っ!」

俺の本気のアッパーシフトをかましてやり、俺たちは退却していった。

「追え!追うんだ!あいつの首を取れば幹部だぞ!幹部になれば一生遊んで暮らせるぞ!」

「おお!」

・・・・そういうわけで、俺は新魔王軍からめちゃめちゃ標的にされていた。

しかし覚醒した上にレクアスの支援奏法をたっぷりもらった俺は超余裕である。

「『アッパーシフト』っ!『フラッター』っ!『ダブルタンギング』っ!フハハハハハ、ついてこいついてこい!なあレクアス、ヌアザストスって頭が切れるんじゃなかったのか?」

「欲が勝ったんでしょう。確かにヒトシさんの首には高額な賞金が懸かってますからね。」

「そうなの?まあ、欲望に負けた決断は、必ず後悔するもの。さあ新魔王軍諸君!この俺についてきたことを後悔するんだな!さあ諸君、攻撃開始だ!『照明弾』っ!」

「な、なんだ!?」

俺の合図と共に、左右から伏兵が現れた!

この伏兵は、マレーズとアーブルがそれぞれ率いていて、照明弾を合図に打って出るように伝えてあったのだ。

もともとの人数が少ないのであんまり効果はないが、それでも敵を混乱させるのには十分だ。

またしても同士討ちが始まり、新魔王軍は大混乱に陥った。

「フハハハハハ!見たか新魔王軍ども!」

「クソッ・・・・、退却だ!ひとまず退却し、陣に籠って軍を立て直すんだ!」

新魔王軍が算を乱して逃げ出す中、俺はチューバと弓矢を上手く使い分けて敵を倒していった。

そして。

「も・・・・燃えている・・・・。」

そう、ここにもフレイウス率いる別動隊を行かせて、空っぽになった陣に火を点けてもらっておいたのだ。

「さあ、叩きのめせ!」

そして、フレイウス率いる別動隊も合流し、新魔王軍は四方から攻められる形になった。

そして、この戦乱の中、俺は敵の親玉に声をかけられた。

「スイタヒトシー!」

「ヌアザストス、なんだ?」

「この私を破るとは、噂通りの奴だな。」

「だろ?早く帰って新魔王に伝えろ。スイタヒトシは最強説ありますってな!」

「残念だがそれはできない。こんな負け方をしては、新魔王様に合わせる顔がない!」

ヌアザストスはそう言うと、懐から短剣を取り出し、刃を自分の首に向けた。

「何をするつもりだ!?」

「もちろん責任を取るのさ。どうせ帰ってもこうなるだろう。それより気を付けたほうがいいぞ。新魔王軍は全ての目的を果たそうとしている。」

「なんだと!?」

「さらばだスイタヒトシ!お前と戦えて光栄だった!」

そして、ヌアザストスは自害し、新魔王軍はほとんどが討ち取られ、逃げ帰ったのは百人足らずの兵だった。


「勝ったな・・・・。」

「ええ、勝ちましたよ・・・・。」

しかし、街を守りきれたのはラタトールのみだったようだ。

数日後、俺たちはこの街で最終決戦に臨むことになる。








































エピローグ①

「新魔王様!ラタトール征服に行っていたヌアザストスが負けたとの情報が入りました!」

「なんだと!?どいつもこいつも役立たずだ!」

「新魔王様、どいつもこいつもの中に私は入ってないです・・・・よね?」

「くそっ、それにしてもまさかヌアザストスが負けるとはな。まあいい。王都を始め、ラタトール以外のすべての街は我が新魔王軍の手に落ちた。よし、ラタトールは私が直々に行ってやろう!」

「魔王様直々のご出陣ですか!?」

「ああ、あとラタトールさえ落とせばこの世界はすべて私のものだ!」

「あんな小さな街、ほっといてもいいんじゃないですか?」

「そうもいかない。あのスイタヒトシというやつの首を取らねば、私は枕を高くして眠ることができん!すぐに出陣じゃ!アレの準備をせい!」

「あ、アレをですか!?」

「そうだ。アレだ。」

「アレですね!」

「アレだ!」

「・・・・ドレですか?」

「ええいこの役立たずめ!」

「やっぱり私も入ってたんですか!?」



エピローグ②

「・・・・そこで俺は言ってやったわけよ!敵は我々の目を西側に向けるために西側を攻めてくるでしょう。なのでここはあえて、東側に兵を置くべきです!ってな!それで、俺はエイウヒ要塞を守り切ったのだ!」

「さすがヒトシさんです!」

俺たちは、戦勝祝いに、みんなでギルドで宴会をしていた。

「そこでな・・・・ん?」

宴もたけなわのころ、突如奏法陣が現れ、光に包まれた人影が現れた。

どうやら、誰かがテレポートしてきたようだ。

そして、その光が収まったとき、みんなポカンと口を開け、唖然としていた。

「こ、国王陛下!?」

テレポートしてきたのは、まさかの国王陛下であった。

「陛下、なぜここに!?」

「スイタヒトシ、まずいぞ。王都を始め、ラタトール以外のすべての街は、新魔王軍の手に落ちた。私は、殺されかけたが、なんとか逃げてきて、人類最後の街になってしまったここ・ラタトールへ落ち延びてきたのだ。」

「「「「「え!?」」」」」

俺はそのとき、ポッザの言った『最後の街』の意味を完全に理解した。





ヒトシたちの大いなる冒険は続く・・・・

次:最終巻

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