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5-5

エピローグ その後の二人の行く末。


「はぁ……。あの人と君のせいでとんだ寄り道だった」

と、王都に続く山道を歩きながらやはり最後の事実に憤慨しながら呟くノア。

すると横にいるクロームはどこか不思議そうな表情を浮かべてこう言った。

「まあまあ。でもよ。水竜ウェルクルトはあの後一体どこに飛んで行ったんだろうな」

「さあ? でも確かなのは人々が愚かだったら……また水と共に姿を消す事かな」

「まさしく伝承通りの存在って訳か。まああいつ等なら間違いなんてしやしねぇよ」

「ん、あの二人ならきっと間違いなく後世に今回の出来事と真実を伝えてくれる。それに村の名前は未来永劫受け継がれているもの。だから……大丈夫」

ノアはそう言いながら思いをはせる。最初に訪れた時に描かれていた村の名前。

【リング・エルド】=古代語で『輪を保つ』と言う意味合い。それ故にノアはそう呟いたのだが、学識の無いクロームには理由は皆目検討が付かないのは言うまでも無い。

「あ~、さっぱりわかんね。まあ分からないと言えばよく俺達のような見習い召喚技士に太古の竜が応えてくれたよな。もしかして俺達が悪意を全部ぶっとばしたからか?」

「それは無い……と言いたいけど、あながちハズレとも言えない。それに私達だけじゃなくどっちかが『技士』の素質があったから可能になったと思う」と考察するノア。

「なんだよそれ。じゃあノルンかもな。アイツどっかノアと似ている感じがしたし」

クロームは少し残念にしながらも納得した様子で強く頷いた。

「ところで話は変わるけど、さっきから付いて来ているアレ……君の知り合い?」

 だがノアはそんな事も気にせず、後ろの木に隠れる生物を指差して呟く。

「んげ! あれってあの時のカニいいい? な、なんでこんな所にいるんだよ!」

「ん、知り合い? なら君が相手をしてよ。私は前の戦いで疲れてるからパス」

そしてノアは確認を終えるとまるで他人事のような言葉を残し先に歩いていった。

すると残されたクロームは小さく舌打ちをした後こう言い放つ。

「ったく。でも残念だったなカ二公! 今の俺はベェムパンで腹いっぱいなんだよ。あん時受けた屈辱、今こそ晴らして塵に還してやるぜ! さあ幾戦の意思を継ぎし力の象徴等よ、今こそ来たれ! 時空を超えて我が元へ―――ってありゃ? おやや??」

クロームは力強く唱えながら即座に腕輪に手を差し込もうとした。

だが幾ら感触を確かめようとそこに在るべき感触が存在しない。

おかしい思いつつクロームが自らの手を良く見てみると何故か召喚技を補助する腕輪が無かった。思わず血の気が引き前髪が萎れ顔を引きつらせた。

すると途端に目を光らせハサミを鳴らし始めたカニはニタリと笑みを浮かべた。

『おっ、お客さ~ん。脅しは効かないよん。さ、さあ! 今度こそ切らせてねぇえ!!』

「なっ! ちょい待て、マジで待って……うぎゃあああああ!!!」

 そんな切断音と情けない断末魔が鳴り響き、クロームが道なき道を逃亡していく最中、ノアは一人。後ろで行われる騒動に気にも留めず緑の生い茂る山道を歩いていた。

初めて来た時とはまるで違い景色には赤茶けた大地に色彩が生まれ、所々に虫や小動物、そして一部魔物の姿も見受けられるが、どれも皆安らからな表情を浮かべていた。

ノアはゆっくりと深呼吸をした後、青々と茂る木を見ながら腕を伸ばし。

そこで気がつく。クロームの腕輪が自らの腕にすっぽり収まっている事を。

「………ん。まっ、いっか。なんとなるよね。きっと」

ノアはそう呟き軽い足取りでカロンから渡された冷めたパンかじりつつ歩き出した。

パンは少し硬かったものの潤い満たされた味が口の中を漂い溢していき、そんな味を楽しむ暇も無く後ろから凄い勢いで巨大カニに追いかけてくる変な髪形のクロームを見てノアは可愛く微笑み、まだ見えぬ水の王都に向かって緑の大地を駆け出していった。

    

それは遥かなる悠久の時代の物語。

愚かなる人々は神々の怒りに触れ罰を与えられた。空は無くなり海も消され大地から全ての実りが失われ、絶望の淵に身を窶し滅びるのは時間の問題となっていた。そんな中、

英知を携えた者が何処ともなくこの地に降り立った。彼らは自らをエルフィリウムの使者と呼び神に匹敵する術技と技法を用いて救いの光を与えた。最初に無くなった空を呼び出し、翼ある生物を住まわせた。次に消え去った海を呼び出し、水を好む生物を住まわせ、最後に実りある大地を次々と蘇らせ、世界を在るが形にすると生物の中で知恵の高い者達に自らが使役した術技の叡智を教えまた忽然と人々の前から姿を消してしまった。

その後残された者達は幾多の時代を超えてもなお、使者の術技を受け継ぎし者達の事を敬意と敬愛。そして畏怖の念を持って、その名を呼ぶようになった。


これは後に世界に伝わるちょっと変わった二人の見習い『召喚技士』の物語である。

              

               END


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