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第26話 最強vs最強

気まぐれに巻き込まれる主人公龍神くん

前回までのあらすじ……



 地底から地上に戻ってきた俺は、龍の提案で人間の里に向かう事になった。道中龍と会話しながら進んでるうち、里が見えてきたので入ると、やはりと言うかなんと言うかこの幻想郷じゃ珍しい恰好の所為でめちゃくちゃ見られた。

 足早にその場を去ろうとした時、肩が誰かとぶつかり、謝ろうとした時、その肩がぶつかった相手が、まさかの元の世界の親友の桐生 誠だった。


 どうやら誠はスウェット姿のまま幻想郷の森の中に放り出され、危うく食われかけたとか。だが、誠は自分の能力に目覚め、これを撃退した。

 それから天界とやらに行き、衣玖と天子と戦って勝利し、そのまま人里に来たと言う。


 数日ぶりだが、もはや久しぶりの感覚である俺は誠とここでの体験を語り合い、時間が過ぎるのも忘れた。夜が更けたので、宿を探し、やっと休むと言うところで、誠は俺との戦いを突然望んだ。

 男の情熱? のようなもの誠から感じた俺は、それに応じて戦闘。結果は、俺の圧勝だったが、誠は嬉しそうだった。








 戦い終えた俺と誠は宿に戻り、休息を取って朝を迎えた。


「ありがとうな龍神! めちゃくちゃ強かったぜ!」


「誠も強かったよ。俺が龍になれなかったら手も足も出るどころじゃなかったな」


 俺が龍に変身する能力を持ってなかったら……それはつまり、能力なんて持ってないって事だから、無論こっちで言うところの妖怪に挑む人間の構図になるな。想像するまでもない。


「まぁそう言うなよ。ところで龍神、俺博麗神社に行きたいんだけど」


 ふと唐突に、誠は博麗神社に行きたいと言い出す。博麗神社は迷い込んだ外の世界の人間を帰す事が出来る唯一の場所ではある。が、"能力に目覚めた者は例外無く帰れない"と誠にも話した筈だが……


「博麗神社? どうして急に……わかってると思うけど、能力持っちまったから俺も誠も帰れないぞ」


「そうじゃない、会いたいんだよぉ! ほら、俺東方好きじゃん? だからさぁ」


 なるほど、そう言えば誠は幻想郷に興味津々だったな。ならば要望に応えるとしよう。


「わかったよ、じゃあ案内するから付いて来てくれ」


「サンキュー!」


 こうして、俺と誠は人間の里を離れ、博麗神社へと向かった。そう言えば自分でも無意識だったが、俺いつの間に変身せずに空を飛べるようになってたんだ? 日に日に体に力が漲るし、衣服も前より更にキツく感じるし、視線も高くなった気がする。

 明日にはまたこの状態が更に進行するのが容易に想像出来る…………俺は一体────











そろそろ完成が近いな。根回しも終わった。


あとは………………











 物思いに耽ってる間に、博麗神社に降り着いた。到着早々、誠は大はしゃぎで境内をウロウロし始める。


「騒がしいわね、誰?」


 神社の裏手から頭を掻きながら気怠げに霊夢が出て来た。取り敢えず軽く挨拶しとくか。


「やぁ霊夢、久しぶり……じゃなくて、しばらくぶり」


「ンンなぁに!? 霊夢っつったか龍神ッ! おわホントだ! 生霊夢だぁぁぁ!!!」


 俺がここ数日の濃密な体験で狂った時間感覚での挨拶を修正した瞬間、誠は狂喜乱舞しながら霊夢の方に向かっていき、大興奮で大発狂していた。

 近くで騒がれたからか、両耳を押さえて眉間に皺を寄せ、同時に何か痛むのか眉を顰めて誠から距離を取った。


「うっさ……なに、知り合い?」


「元の世界の友達だよ」


「────そう」


 元の世界の友達────そう言っただけで、霊夢は顰めた眉を引き伸ばし、眉間のシワも消え失せた。それと同時に、何かを察したように目線が下を向き、それから数秒もしないうちに俺に視線を戻して反応を寄越した。


 八雲 紫の関与を察知したってところか……まぁ、いくらなんでも選択肢が少ないもんな、そりゃ。


 その時、俺は空の方から気配を感じた。この気配を、俺は知ってる。

 そう、金髪で白と黒の服を着た…………


「お? 霊夢以外に人が居ると思えば龍神か。見ない奴がいるが、知り合いか?」


 上空から降りて来て気配通りに魔理沙が現れた。気配の察知や覚えのある気配に輪郭や色を見出す事も出来る、然も当然かのように……俺は一体何なんだ?


「こんにちは魔理沙。俺の友達の誠だよ」


「なんだ、お友達も紫の仕業か? と言うか、しばらく会わないうちにすっかりここに慣れた感じだな龍神! 敬語も無くなったし、どことなく顔のツヤも良いし」


 俺の隣の方で誠が「魔理沙だスゲー!」と言っているが、我関せずで俺と会話する。魔理沙の言葉を受けて、苦笑いしながら俺は思わず手を頬に触れる。慣れたと言うか、体に漲る力の所為なんだが……でもまぁ、敬語の有無に関しては確かに慣れたとは言えるか。


「ん? お前なんかデカくないか?」


「私も思ってたわ。身長は元からとは言え、体が何か……こう、ガッシリしてない?」


「おぉ確かに、最後に会った時より一回りサイズアップしてる気がする。成長期だよなぁ、良いなぁ俺も背高くならないかなぁ」


 普通なら照れたり謙遜したりするだろうが、素直にそんな感情が出せるほど今の俺の精神状態は気楽じゃない。ここは愛想笑いだな……


「あ……ははは……」






さて、やるか





 すると、俺の体が突然蒼い炎に覆われ、見る見るうちに姿が龍に変わってしまった。


 強制変身!? 何のつもりだ!






どう言うつもりだ龍! 一体何を────



これから昔馴染みと戯れる。そんだけだ






 昔馴染みって何だ? 怪訝に思っていると、突如神社の境内が不可思議な大きい揺れに見舞われた。その揺れは龍はともかく、誠や霊夢達も大きな揺れに体勢が崩れる様子が無い。


 しばらく揺れの収まりを待っていると、神社の家屋そのものから何かが飛び出して来た。

 それは徐々に鮮明になっていき、数秒後には紺色の服と緑色の長髪の女性の幽霊? が姿を現した。



「久しぶりだな、魅魔。死んで肉体でも失くしたか?」


「久しぶりね、龍神。そういうあなたは転生したの?」



 魅魔? 龍の知り合いか? と言うか何なんだ? まさか戦うのか!?


「なっ!? 魅魔様!? 消えてなかったのかよ!」


「あんたまだ現世に居たの? 良い加減成仏しなさいよ!」


「スゲェ魅魔様だ! 魔理沙の師匠の魅魔様だぁ!」


 各々のリアクションからやっぱりこの魅魔とやらは幽霊と見て良いのだろう。それに魔理沙の師匠? まさか魔理沙の師匠がこの幽霊ってマジか。まぁ、創作ならではだよな、そう言うのは。


「? 前に会った時より強くなったかしら? でも私もあの時とは次元が違うわよ」


「ぬかせ、確かに当時より力は増してるが、そもそもお前相手に本当の全力を出すとでも? とんだ自惚れだな」


「……なら試してみる?」


「……望むところだ」


 龍と魅魔はお互いを挑発しあい、段々と空高くへ上昇していく。まるで2人の実力が俺達の知るところに無いと知らしめすかのように






 次の瞬間、視界が暗黒に染まり、無数の閃光が迸る!



 いや、閃光じゃない────これは攻撃同士のぶつかり合いだ。視界が暗いのは、あまりの速さに龍の中の俺の認識が間に合わないからだろう。それでも攻撃同士の衝突によって生じるエネルギーが余程大きいのか、閃光として辛うじて捉える事が出来てる。


 なんて凄絶な連撃だ……もう目も体も、なんなら知性だって龍になってる時はかなり良くなってる。それなのに、まだ遥か先の未知の領域がそこにある。


 なんて、なんて……なんて────────








 ────────あれ、俺どうして笑って……












「どうしたどうした!! 準備運動無しじゃ俺に付いて来れねぇか!?」


「ならそろそろエンジンを全開にしないとあなたの方こそマズイわよ!!」


 俺が自分自身に戦慄してる間に、龍と魅魔の戦闘は更に白熱し、更に過激になっていく。

 拳を繰り出す龍に対し、手から光弾を出して対抗する魅魔。それが一瞬の間に万に億に兆に京……いや、それ以上だろうか、とてもじゃないが数え切れない。


 博麗神社の遥か上空で繰り広げられる目に映らぬ超速の攻防に、大地が、空気が、幻想郷(せかい)が震える。あり得ないなんて事はない……龍も魅魔も、幻想郷の器に収まらない強者と言う事に他ならない。



 戦闘は尚も苛烈さを増していく。

 光弾を幾つも飛ばす魅魔だが、俺が今まで見て来た弾幕では無く、直接相手の命を取るような激しくて、鋭くて、それでいて確実に仕留めるような、フェイントも少なく混ざった『弾幕』ではない『射撃』としての光弾を俺は初めて目の当たりにした。


 だがそれ以上に龍の攻撃を紙一重とは言え躱す事が出来る相手……それも初めてな気がする。

 龍の攻撃は大振りな攻撃じゃない。極めて小さく鋭利に振り、それでも力強く強固に突く。それをこの魅魔は避けている。身を翻し、全身をくまなく駆使しての回避だが、そもそも龍の攻撃を躱す奴が今まで居なかったんだ、魅魔が対戦相手でNo.1と言って差し支え無いだろう。


「ほぉ、俺の攻撃を躱せるようになったとはな。確かに言う通り強くなったようだ。俺は嬉しいぜ」


「何勝手に嬉しくなってんのよッ、ムカつくわねッ……!」


 龍は魅魔を褒め称えた。過去に戦った時より確かに強くなっている事実を純粋に称賛した。

 対して魅魔は感情を露わにしつつ言葉を荒げた。この様子を見るに、さすがに龍の攻撃を躱すのが手一杯だったらしく、思い返すと龍の攻撃時は反撃をしてなく、一度距離を置いた攻撃ばかりだった。


 だが残酷な真実を俺は知ってる。龍は相変わらず手加減をしてる。手加減の具合は古明地姉妹や他に比べたらかなり解いてる方だと思う。だがそれも0.01%が1%になったくらいだろうか、数字の出し方を変えればこの差はそれはもうとんでもなく大きな差だが、所詮砂の1粒が100粒になった程度の話だ。


 と、龍は僅かに力むと、左拳を魅魔の顔の横に突き出した。直後、魅魔の右横を拳と共に突き抜ける衝撃と突風でその先の景色が歪んで波打つ。ふとして見せられた実力差に、魅魔の顔は驚きと恐怖で見る見るうちに汗が噴き出して来た。


「魅魔、提案だ。お前の持ち得る最大の技で来い。まだ見せてない全力が、お前にもあるだろう……そいつを俺に見せてみろ!」


 龍は楽しそうにそう言う。どちらにせよ、今見せた実力差からして、このままやりあっても一方的だ。なら、相手の最大を出させて後腐れなく決着をつけさせてやるのが寧ろ慈悲だろう。不完全燃焼が一番良くない。


「…………いいわ、文字通り次元を超えた絶技、見せてあげるわ!!!」


 魅魔は覚悟を目の奥に宿し、龍よりも更に上空へと飛んだ。上へ、上へ、上へ、更に上へ。どんどんと高度を上げていき、成層圏を突破しようかと言う頃、不思議な事が起こった。






────なッ!? 嘘だろ……!?






 龍の中で俺は驚きを言葉にした。突如魅魔の目の前の景色が渦のように捻れると共に、その先の空間が広がっていく。空間の先の景色は、まさかの見慣れた都心の高層ビル群だった。嘘だ、そんな、どうやって……八雲 紫だけじゃないのか!? こんな真似事!


 更に、背の高いビルのうちの一つに降り立つと、光すら呑み込む黒い翼を広げると、それを背後で巨大な円形に形成し、徐々に巨大化。真っ黒な円の中にスッポリ東○ドームが収まってしまうほどのサイズまで大きくなった後にそこで固定され、そこから円の中に光が集束していくのが見えた。






「フン……空間を突き破るほどの速度と突き破った空間の裂け目のそれを維持出来るほどの魔力で開いたか。だがどうやらお前の知る世界とは違うようだな。ビル群はビル群だが、荒廃した廃墟のビル群だ。死した世界の残留マナを媒介に特大のエネルギーを溜めている」




死んだ世界だって? でも仮にも一つの世界のエネルギーなんだろ? それって莫大な量のエネルギーが貯められるんじゃ……




「それは魅魔自身の限界次第だな。あいつの許容量で威力が決まる。まぁ尤も……無限大まで溜められたとて、俺には届かん────」


 そう言って、龍は少しだけ高度を上げた後、腰を捻って右拳を背中まで引き、そこに力を込め、闘気を集めていく。そこで俺は気づいた。今まで無かった龍の力を溜める構え……これは要するに、龍にとっての最大の技なのではないか? と……


 裂け目の先で魅魔の黒い円に光が溢れんばかりに溜められていくのと同時に、龍の右拳にも闘気が集中していく。十数秒後に魅魔の黒い円が白い円になるほど充填され、龍も右拳が龍の顎の形をした闘気に覆われて、溜めの最終段階が完了した。


 遥か遠く離れた場所で互いの視線が合わさった時、魅魔は黒い翼の光を一瞬凝縮させると、それを一気に解き放つ。



「『トワイライトスパーク』ッッッ!!!!」



 荒廃した世界が夕方、黄昏だったからそう名付けたのか、元からそう言う名の技だったのかは不明だが、解き放たれたエネルギーは空間の穴を己の破壊力だけで更に押し広げ、幻想郷へと飛び出して龍まで一直線。

 だが、龍はそれを待っていたかのように捻った腰を戻し、その勢いのまま力と闘気が溜め込まれた右拳を突き出して解放した。




「────────『龍拳』ッッッ!!!!」




 解き放たれた力と闘気は超巨大な黄金色の胴長龍となり、放たれたベクトルに従って凄まじい速さで魅魔の放ったエネルギーに接触する。大口を広げた胴長龍はトワイライトスパークと接触した瞬間から拮抗する事なく、最初はゆっくり徐々に押し込むスピードを上げていき、空間の裂け目まで到着した瞬間になんと、胴長龍はトワイライトスパークを呑み込んでしまった。


 ついに抑える源が無くなった事で、胴長龍は一瞬で魅魔の立つビルの頂上の、その真上に大顎を構えた。直後に自分の勝敗と結末を察知した魅魔は柔らかな笑みを浮かべた。

 それが見えた瞬間に龍は突き出していた右拳を引く。すると胴長龍は魅魔を顎で噛むのでは無く掴み上げ、そのまま荒廃した都市から裂け目まで抜けた。龍の指示がそこまでだったのか、魅魔を引っ張り出し終えると、そのまま空気に溶けるように消えていった。

 当然、空中に放られる魅魔は呆気に取られたまま落下を続け、フワリと速度が緩まってから硬い何かに背と脚を抱かれる。


「俺の勝ちだな」


 龍はそう言って、ニヤリと笑うとまた突然俺の視界が白くなった。まただ、これで何度目だ?

 この白い視界は俺の外界へのアクセスができない状況だ。何も聞こえない、何も見えない…………




 それからおよそ1分後、俺の視界は晴れ、気が付けば元の姿に戻っていた。いつも通り服は龍の特殊な力で戻ってる。


「お、おぉ龍神! 大丈夫か? 頑張ったなぁ! うん!」


「無事で良かったわ。魅魔もね」


 魔理沙がいつもより様子のおかしい態度で接して来るのでそれに戸惑っていると、霊夢が魔理沙の後ろから肩に手を掛けながら無事を静かに喜んだ。魅魔も霊夢の言葉を受け、霊夢の少し離れた位置から照れくさそうにそっぽを向いた。


 何事もなく終わったのだと思ったその時、俺の名を呼ぶ声がする。


「……龍神」


 声のした方を振り向くと誠が居るものの、いつもとは違う真剣な面持ちに、俺は内心驚いた。


「俺はお前よりは弱い。だからこれから先、お前が困難にぶち当たった時には役に立たないかもしれない……でも────俺は、ずっとお前の味方だからな」


 途中言葉が詰まるような様子はあったものの、決心した顔つきで俺に抱きついてきた。


「よせよ、どうしたんだ急に」


「────なんでもない! そうだ俺、今日ここに泊まるわ!」


「そうなのか、じゃ俺も……」






いや、次は守矢神社に行くぞ。早苗に顔を見せてやれ



え、えぇ?






 戸惑いが俺を支配する。龍の急な提案はいつもの事として、どうして誠はあんな真剣に……

 取り敢えず、伝えておかなきゃ……


「あー……ごめん、俺は守矢神社の方に行くよ。また明日な、誠」


「あぁ! また明日な!」


 そう言って俺は龍に変身してから守矢神社の方へと飛び立ったのだった。
















「しかし酷な運命だな、これが試練ってやつか」


「私達にはどうにも出来ないわ、私達は龍神ではないもの……」


「彼がここに来た理由が、嫌でもわかってしまったわね」


「龍神、必ず勝てよ……!」











続く……!

最強vs最強の戦いを終え、龍神は守矢神社で疲れを癒す事に……


しかし、それが必然とは知らずに。


これが、彼の運命の終着点────────



次回、東方龍神録、復活版──最終話 東方龍神録 です。お楽しみに

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