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第68話 蔵前ルルナ その1

「うーん」


 授業中も、ルルナはずっとモヤモヤしていた。

 なにか忘れている。というより、物足りない。


 人生の軸が抜けたような、生きる目的を失ったような。


「なんだろう」


 部屋に貼られた真っ白なポスターも、母が間違えた人物も、きっと関係がある。

 それだけは確かなのに、やはり、思い出せない。


「心が乾いてる感じがする」


 授業どころか、お昼ごはんのときも気が晴れない。

 そうやって一日中焦れったい気持ちに苦しんでいると、


「あ」


 放課後、ルルナは学校から一番近いダンジョンに入っていた。


「え? なんで?」


 どうしてこんなところに来てしまったんだろう。

 本当に無意識であった。

 まるで生活の一部。ルーティンのように自然に来てしまった。


 ダンジョンなんて、まったく興味がなかったはずなのに。


「ダンジョン……」


 無性にドキドキする。

 なにかに会えるような予感。

 自分は、毎日ここで待っていた。


 なにかを。


 友達? 違う。

 家族? 違う。


 もっと、もっと大切な存在。

 神というか、世界が有る意味というか、あらゆる生き物にとっての太陽みたいな。


 少なくとも、ルルナは『それ』のために生きていた。


 そんな人、自分にいただろうか。

 わからない。


 モヤモヤしすぎて頭が痛くなってくる。


「私、ここでスマホをいじっていた気がする」


 というか、ネットにずっと入り浸っていた。

 掲示板を見ていた。


 それほどまでに、自分の人生を侵食していた。

 寝ても覚めても、なにをしていても、ずっとその人のことを考えていた気がする。


 いったい誰なんだろう。

 男? いや絶対に女の子。

 それもきっと、自分好みの、小さくて可愛い女の子。


 明るくて、優しくて、強くって、少し天然で。


 母が間違えた、黒鉄黒小次郎さんに似ている名前の……。


「黒鉄…………くろ……こ……じ……」











「くろこ……」


 膝から崩れ落ちる。

 脳内でビッグバンの如き衝撃が弾ける。

 巡る。記憶が、顔が、声が、彼女への愛が!!


「くろこ」


 これは奇跡か偶然か。

 否、必然である。


 ルルナにとって黒子は生きる目的。

 三大欲求すら凌駕しているのだ。


 さながら、人が寝ていても呼吸をするように。

 さながら、なにも知らない乳児が無意識に母を求めるように。


 本能。


 生活のすべてを黒子に捧げてきた女が、黒子の存在を思い出さないわけがないのだ!!

 ルルナの愛は、関白のスキルを突き破る。


「黒猫、黒子ちゃん!!」


 なんで忘れていたんだろう。

 あんなに大好きな人なのに。

 みんなも忘れてる。いないことになっている。





「黒猫ちゃーーん!! どこにいるのーーっ!!!!」


 デリバリーのHPが消えている。

 いやだ。会いたい。顔をみたい。

 配信に少し映るだけでいいから。


 会いたい会いたい会いたい!!


「教えて私の探索スキル!! 黒猫ちゃんはどこにいるの!!」


 ルルナの体が光る。

 心臓が強く打つ。


 スキルのレベルが、上がった。


 実はルルナのスキルレベルはSS。

 黒子に会いたいがために鍛え上げてきた。

 それが、最後の開花を迎える。


 レベルSSSは、世界に干渉する!!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 トボトボと、ゴーストタウンを化した都内を黒子は歩く。

 このまま何もできずに、死ぬのだろうか。

 誰にも会えず、死んでいくのだろうか。


 関白はどうしているのだろう。


 会いたい。またみんなに。

 駿河、千彩都、ヨルヨ、太郎。

 それに、依頼者さんたちにも。


「みんな……」


 寂しくて涙が零れそうになる。

 そのとき、


『黒猫ちゃーん!!』


 どこから、声が聞こえてきた。


「だ、誰ですか!?」


『く、黒猫ちゃんの声!? わた、私、黒猫ちゃんと会話してりゅ!? うひょおおおおおお!!!!』


 どこだ。

 どこから声がする。

 右、左、前、後ろ、上?


 違う。脳だ。

 脳に直接、誰かが語りかけている。


「いったい誰なんですか!?」


『ル、ルルナ!! 私の名前は、蔵前ルルナ!!』


 レベルSSSになった探索スキルは、効果範囲が全世界まで拡大する。

 たとえ別けられていようが、関係ない。どこかに存在する限り、探し出せるのだ。


 しかも、テレパシーにより会話すら可能。

 これが、ルルナの探索スキル・レベルSSSである。


「ルルナさん……?」


『おんぎゃあああああ!!!! 黒猫ちゃんが私の名前を呼んでくれた!!」


 こんなときでもうるさいやつである。

 若干引きながら、黒子が尋ねる。


「あの、駿河さ……アポカリプスの魔女さんやヨルヨちゃん、あ、飛鳥関白は!?」


『先生? アポカリプスの魔女?』


 知らないのだろうか。

 あんなに有名な凶悪犯や、配信者なのに。


『私、黒猫ちゃんのこと忘れちゃってたけど、愛の力で思い出したよ!!』


 忘れていた。

 関白のスキルの力?


 まさか関白は、別けたのか?

 己にとって不都合なもの。


 自分や、駿河、おそらくヨルヨに太郎、あの場にいた千彩都もだろうか。

 それと、記憶。世界中の人間の記憶すら操作した。


 これが、SSSの力。


「世界を……別けたんだ……。というより、隔離した? 私が生産したアイテムを、分解したみたいに……」


『く、黒猫ちゃんどこにいるの!? 会いたい!! 直接会って話がしたいよ!!」


「私だってそうですけど……」


『黒猫ちゃんが私に会いたがっていりゅ!? おほおおおおおおおおッッ!!!!』


 少し黙ってほしい。


「ルルナさん、まだ話せますか?」


『永遠に!! 永遠にはな……』


「どうしました?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「驚いたな」


 有頂天のルルナの眼前に、関白が現れた。


「私のスキルに反する者を感知したと思ったら、まさか君だったとはな」


「え、飛鳥先生?」


「探索スキルとは案外厄介なものだ。もっと早く始末しておけばよかったな」


「な、なんでここに飛鳥先生が……」


「なんで? うーん、わかりやすく説明してやるなら……君を殺すためかな」

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