第76話 無限の収束
~王都トパーズ~
いつか私の前に現れると信じていた―――
私はこの日を恐れてたのか?
それとも待ちわびていたのか?
胸を高鳴らせるこの鼓動。
「その能力・・・間違いない・・・・・貴様が『-の災厄』。」
皇帝ルート・アレフゼロがミナスを前にそう口にする。
「ボクの事を知っているのかい?」
皇帝はミナスを知っている?
これまで帝国兵の何人も戦ってきた。
皇帝がミナスのことを知っていても何らおかしくない。
しかし、これはそういう感じじゃない。
皇帝の眼は邪魔な敵を見るとかそんなこととは少し違う。
もっと、こう・・・恨みの籠った忌むべきモノを見るそんな感じの眼だ。
「知っているといえば、そうなるな―――」
「貴様はこの世界に存在してはいけないモノ。」
「滅ぼさなければいけないモノ。」
皇帝は確かにそう云った。
「君がボクを滅ぼしてくれる?」
ミナスは目を輝かせて云った。
自分を滅ぼせる存在がいるのか?
いるならぜひ、滅ぼしてくれ―――
今にもそう言いたげな感じだ。
「試してみるか?」
皇帝は少し笑う。
挑発するかのようだ。
自分に向けられる殺意。
心地よい。
幾千の殺意を向けられてきたが、それ等全てが自分の命を脅かすことはなかった。
もしかしたら・・・そんな期待を少しは抱いたっていいだろう?
皇帝は静かに手を伸ばす。
そして、一言こう呟く。
「無限なる軌跡―――」
破壊、再生、収束、無限へと続くその技名。
「えっ・・・!?」
リアは何が起こっているのか分からない。
ミナスの腹が捻じれ、中心へと飲み込まれていく。
ただ静かに、吸い込まれるように。
「収束点を決める・・・ただそれだけの術。」
「うっ、ううぅぅ・・・・!?」
ミナスがいつもと違って、苦しそうな顔をしている。
まさか、皇帝の術が効いている?
あの不死身のミナスが?
「苦しいだろう?それが生きている証拠だ―――」
「死にたがりの貴様にはいい気付けになる。」
「目が覚めたそんな心地か?」
「痛みなんてないよ・・・でもなんだこれ?不思議だ。」
「ボクの身体、どうなっている?元に戻れない。」
「こんなのヒドイよ・・・ボクは君を許せない!!」
「能力値降下!」
ミナスが反撃をした。
上手く身動きが取れない。
しかし、意識はハッキリしている。
皇帝の術で身体が壊されているのと同じ速度で身体が元に戻ろうとしている。
そんな均衡状態のせいで身体が上手く動かない。
これを解除するには術者である皇帝を殺す必要があると考えた。
「それが-の術か・・・。」
「悍ましい・・・実に悍ましい・・・」
「そんなものがこの世界にあるからいけないのだッ!!」
「無限の収束―――」
皇帝が今度は左手を伸ばした。
そして、術式が展開される。
複雑な・・・どれも見たことがないようなモノばかりだ。
素人が見ても分かる。コレはとんでもない代物だと。
「皇帝・・・貴方はどこでそんなものを・・・!?」
ミナスから放たれる-のオーラが皇帝の放った小さな球体の中に吸い込まれる。
その小さな球体の中で何かが行われている。
「ウっ・・・ソ!?」
ミナスは驚いた。
これまでどんな強敵でも一撃で殺してきた必殺の術。
避けられたり、逃げられたりしたことはあった。
しかし、真っ向から破られたことはこれまで一度もなかったのに・・・
それが今日、この眼の前の相手に破られた。
「君は一体・・・何者なんだ?」
人に興味が湧かなかった。
この世界に来て、リアと初めて出会って、彼女に惹かれた。
これで二度目だ。
他人に興味が湧いたのは。
「ルート・アレフゼロ・・・この世の『皇帝』。」
「そして、貴様を滅ぼす者だッ!!」
迷い無き瞳、まっすぐとこちらを見てくる。
己の信じる道をしっかりと見定めている。
そういう者がする眼だ。
「面白いよ・・・こんな気持ちになったのは久しぶりだよ―――」
ミナスもまた昂っていた。
この世界にリア以外に自分を殺してくれそうな人間を見つけたからだ。




