その56
あの日あたしは奏先輩にぶたれた。しかも思いっきり。奏先輩って意外と容赦ないんだな。頭ふっとんだと思うくらい強烈なビンタだった。
奏先輩に怒られてすっかり縮こまったあたしはごめんなさいと呟いた。
今までチヤホヤされてあたしのわがまま気ままでどうにでもなると思っていたんだけどやっぱり通用しない時もあるんだね、皆あたしが甘えれば許してくれたのは運が良かっただけなんだ。
だから嫌いだった奏先輩にぶたれて怒られた時は相当ショックだった。でもだからって奏先輩をもっと嫌いになったというわけでもない。
なんなんだろう?よくわからない。
もう嫌いなのかどうなのかもわからない。
だから奏先輩にもう一度会いに行こうそうしよう。
そして奏先輩の家にお見舞いという事でおじゃました。
奏先輩はまたあたしが現れてビックリしていた。まぁそりゃあそうか。
「なんですか?人をお化けでも見たかのように見て!」
「み、岬ちゃんが来るとは思わなくて」
「相変わらずムカつきますね、奏先輩は!」
そのまま奏先輩の部屋に行き奏先輩のベッドに座った。
「喉乾いた!」
「え、えっと何か飲む?」
「暑いからアイスティー!」
そう言うと奏先輩はいそいそと階段を降りていった。こんか人にあたしはぶたれたのかと思う。
「はい、どうぞ」
奏先輩がアイスティーを持ってきた。ひとくち飲んだ。ん?奏先輩がこちらを見ている。
「なにか?」
「あっとその岬ちゃんがこの前のことで落ち込んでなくて安心したっていうかなんていうか」
「はぁああ?」
奏先輩は本当に心配していたのだろう。いつものあたしだということでホッとしてる。あれだけ嫌がらせしたのに‥
「なんかつまんない!帰る!」
あたしは急に恥ずかしくなってそう言い玄関に向かった。
「待って!岬ちゃん!」
奏先輩が後ろから追いかけてきた。
あ、一応ちゃんとこの前のこと謝っておこう。クルリと奏先輩に向き直った。
「奏先輩!こないだは本当にすみませんでしたッ!」
そして急いでドアを開け奏先輩の家を出る。
ウゲッ、優先輩がいる。後その他2人、奏先輩の友達か。嫌なとこで会ったなぁ。
すると奏先輩の友達の女性が怖い顔してこちらに向かってきた。
あたしも負けるもんかと思い正面で迎える。よく見たらこの人もあたしと同じくらい可愛い。奏先輩の友達って可愛い人多いのかな?
「フンッ!」
あたしはそっぽを向いてさっさと帰る。
でもなんだか少しだけつっかえていたものが消えて満足した気がした。




