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第二章 予兆

 マリの祖母が亡くなられてしばらくすると、マリは、少し悲しそうにこんなことを言った。

「駅のプラットフォームにいて横を急行電車が通り過ぎるときに、ふと、線路にとび込んだらどうなるかと思った。」

「え、なんでそんなことを考えるの?理由は?」

「…。」

「そんなこと考えちゃいけないよ。」

「…。」

「マリが死んでしまうなんて考えるのもイヤだし。」

「…。」

「それに、生きたかったのに、病気で死んでしまったお祖母さんに申し訳ないよ。マリは若くて健康なんだから。」

 このとき、マリからの答えはなかった。


 或る日、マリを駅まで車で迎えに行ったのに、なかなか待ち合わせ場所に現れず、三〇分くらい待たされた。なぜ遅くなったのかを聞くと、電車を降りたときにサラリーマン風の男と口喧嘩をしたからだそうだ。どちらが原因かはわからなかったので、物騒な世の中になったねと言ってマリをなぐさめたのだけれど、その頃のマリは、何かがおかしかった。


 マリの祖母が亡くなられてから半年後、マリが女子高時代の友達とスキーに行くというので、カメラを貸した。マリは、一泊して翌日の夜遅くに帰ってきた。それ以降、マリは女子高時代の友達と遊ぶためと言い、別行動で週末を過ごすようになった。

 その頃からマリの化粧も変わった。眉毛をそり落として、外出時に眉を描くようになった。ボクは眉毛を剃り落としたマリの顔は嫌だった。驚いて理由を聞いても教えてくれなかった。

 そしてマリは、僕の行動をけなすことが多くなった。


「あなたは葬式のときに○○すべきだったのに、常識がないと妹の旦那に言われた。」


「あなたの車の運転が下手だと父に言われた。」


でも、あまり取り合わないようにしていた。どちらも主観的なもので、議論すべきものではないと思っていたからだ。


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