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「忘れられた巨人」カズオ・イシグロ
カズオ・イシグロ「忘れられた巨人」416ページ 早川書房 日本語 2015/5/1
何を書いても面白く読ませてしまう技はさすがで、今回は形式がファンタジーだが違和感はない。昔話ならば「アクセルとベアトリスの竜退治」とでもなろうか。最初の発想がどの時点で生まれたのか知らないが、特にここ数年の世相を映すような現代性が際立っている。異なる神の信者たちの諍いが忘却の川に忘れられた世界と書けば「ウルトラマン・ネクサス」を想起するが、あちらは恐怖がスペース・ビーストの餌になるのでレーテで鎮める。こちらは竜の息がその役を果たすが、その竜を巡り、老若の戦士が対立する。視点のずらし方も素晴らしく、あるエピソードを生かした終わり方もまた深い。もっとも必ずしも比喩を読み足る必要はないだろう。個人的には、これまでの最高傑作が「日の名残り」で、一版好きなのが「充たされざる者」――あの話をつまらないと思う人が多いらしいのはとても残念――と思っているが、カズオ・イシグロのことだから、これからも傑作を物してくれるだろう。最後になったが、いつもながら情景が美しい。短編でも同じだが、特別な表現を使わずに描かれる世界の美しさを堪能させてくれる。
美しい情景をありがとう。




