プロローグ
彼女はジグソーパズルで遊ぶのが好きだった。内容のわからないアニメの絵柄のそれを、母親が買ってきたのがきっかけである。時間は掛かるが、自分で完成させたパズルは楽しく、ずっと眺めていられた。
あまり多くの玩具を買ってもらえる家ではなかったので、同じジグソーパズルを何度も解体しては組み合わせる。傍から見れば単調な繰り返しだが、飽きることはなかった。むしろ、どのピースがどこに当てはまるのかを覚えていることに誇りを感じるほどだった。
だから彼女が、その山中で迷った時、不安や悲愴を感じることはなかった。山中で拓けたその場所には、大小の石が散在していたが、それらが一つの物体だったのではないかと直感した。麓に戻れない可能性も考えず、彼女は石の配置をひたすらに考え、動かし、やり直し、夢中になってそのジグソーパズルを完成させたのである。
その瞬間、彼女は意識を失った。寝食を忘れての作業によるものではなく、何らかの衝撃が、彼女の内と外から与えられたような感覚だった。雷に打たれたような、という表現があるが、もちろんそのような事実はない。
雷ではないが、雨が降り始め、彼女に降りかかる。しかし、その雨は彼女の体温を奪うものではなく、むしろ活力を与え、水分補給の役割を果たしているように見られた。
やがて意識を取り戻した彼女は、麓まで難なく戻り、大人たちを安堵させる。怒られもしたが、特に感情を震わせることはなかった。なぜなら、すでに彼女の半分には別のものが入り、自分が何をしているか、何をされているか、半ば判別できなくなっていたからである。




