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オーバークロック・ノア  作者: くじらちさと
その手で、守るために
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section2『交戦』

廃墟の静寂を破り、ついに“それ”は現れた。

相対するのは、敵か、それとも——

緊張の糸が張り詰める、最初の火蓋が切って落とされる。

瓦礫とひび割れたコンクリートに囲まれた廃墟の一角。

 錆びついた階段を抜け、半ば崩れた通路を進んでいた一行の足が、ふと止まる。


「……誰かの気配がする」

 白鐘 鳴が立ち止まり、あたりを睨む。識刻眼がわずかに光を帯びた。


「生き物か?」と隼人。


「多分……人間。けど、ノアの反応が微弱に混じってる。すぐ近くに二人――」


その瞬間、崩れた壁の向こうから声が響いた。


「……誰かいるのか?」


真が目を向けると、瓦礫の影から二人の男が現れる。

 片方は短髪でがっしりとした体格。もう一人は痩せ型で、目つきの鋭い青年だ。

 どちらも明らかに警戒心をあらわにしていた。


「……おい、マジでいたのかよ。“どこからともなく現れる連中”って……噂だけじゃなかったのか」


「見ろよ、服装も装備も明らかに浮いてる。……ここで生きてる人間なんて、普通じゃねえ」


その言葉に、真たちもすぐ構えを取る。


「止まれ」

 真が静かに言い放つ。「そっちの目的はなんだ」


「目的? いや、それはこっちの台詞だろ」

 短髪の男がじりじりと間合いを詰めてくる。


「……実在してたとはな、“突然現れる連中”。こりゃ報告モノだぜ」


痩せ型の男が顔をしかめる。「未確認の存在ってだけで厄介なのに、こいつら……見たところただ者じゃなさそうだな」


「……どうする?」


「決まってる。捕まえて、吐かせる」


会話の間にも、両者の距離は縮まり、空気が張り詰めていく。


その直後――


短髪の男が地を蹴った。

 吠えるような気迫とともに、拳が真に向かって突き出される。


ガッ――!


隼人が割って入り、拳を受け止める。

 ノアで強化された腕が正面からぶつかり合い、瓦礫が小さく震える。


「……っ、なっ……!?」

 短髪の男が目を見開いた。「今の、防がれた……!?」


「ノアだ……こいつら、ノア使いだ!」


「……チッ、面倒なことに」

 痩せ型の男が腕を払うと、宙に鎖が展開される。鋼のような質感を持つそれは、まるで意思を持つかのように音を立てて蠢いた。


「状況変更。拘束して、持ち帰るぞ!」


次の瞬間、鎖が数本放たれる。鋭くうねる金属の軌道が地面や壁を裂きながら迫ってくる。


「くそ、完全に敵意アリか!」

 真が叫ぶ。「澪は下がってろ!」


すでにレイラが澪の手を引き、背後へと誘導していた。


「俺たちが前に出る。隼人、行くぞ!」


「おう!」


凪もノアを展開し、冷気を帯びた気配が周囲を包む。

 迎撃体勢の中、空気が一気に戦闘の緊張感に切り替わる。


交差する視線と気配。次の一手が、戦局を大きく動かそうとしていた――!

初めての遭遇。

その一手、その判断が、生死を分かつ現実へと変わっていく。

戦いの始まりは、あまりにも突然だった。

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