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ソウルガーディアンズ   作者: HachiHachi
第一章 大樹の守護者
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第二十六話 二度目の対峙

「さあ、アイベル!エヴァルと共に走れ!私が指示を出すまではまずは構えるだけでいい!奴も頭が良い…。いつでも攻撃出来るという圧を奴に見せるのだ。」


「はいっ!エヴァル!」


返事をし大きく声を掛け草原へと飛び出るアイベルを乗せたエヴァル。


「エヴァル…!十年前と同じ個体よ!絶対ここで倒そう!」


手綱を強く持ち、だんだんと加速する。


風の抵抗をなるべく受けないよう身体を屈めるアイベルに、ヒヒィンと応え草原を颯爽と駆け回る。


「いいぞエヴァル。その調子だ…。」


ノワルヴェールは駆け回るエヴァルを見て呟くと樹の上へと移動し、全員の動きを見る。


藍色の竜は自身の周りをエヴァルとデュールが走り回り、尾による攻撃が当たらずイラついている様子だった。

 

その様子をノワルヴェールは見逃さずに藍色の竜を観察し、分析する。


――オラディ村


物見櫓では隊員の交代があり、先程まで監視していた隊員達が地上に降りて来た。


ブルクはノワルヴェールの合図を見た後、地上に降り暫くその場で空を見上げていた。


「ブルク長老。隊長達だけで大丈夫でしょうか?」


「うむ。あの子達は強い…。フィオル、デュール、そして才を見せたアイベル…。そこにノワルヴェールが加わった。ノワルヴェールの強さは誰も敵わぬ速射と洞察力にある…。隊を動かし敵の動きを観察、分析して隊に必ず勝利をもたらす。信じるのじゃ。」

 

隊員が心配する様子を見せるがブルクは空を見上げながら返した。


(今日という日に、あの藍色の竜が再び現れた…。これは何かの運命なのか…。油断は禁物じゃぞ…。)


――ペールデニーズ草原


フィオルは振り回す尾を避けながら藍色の竜の身体に攻撃を浴びせ続け、デュールは藍色の竜の周りを縦横無尽に走り続け、竜の攻撃を盾で確実に防御しながら隙を見つけては脚を切り付けていた。


「二人共凄い…。」


アイベルはフィオルとデュールの戦う様子を見て呟く。

 

二人の身体には未だ傷一つ無い。

 

以前の対峙で、フィオルの一撃により失いかけた方の脚を重点的に狙うデュールの重い攻撃は、何度も当たるもののデュールは違和感を感じ、首を傾げていた。


するとデュールとフィオルは顔を合わせる。

 

(以前傷付いていた翼や身体は再生して、その箇所は色が薄くなっている。だが他の箇所より固いな…。特に脚と切り落とした尾だ。ノワルヴェールさんに…。)


すると藍色の竜との距離を少し置き、フィオルはノワルヴェールに背を向けたまま手をすっと挙げ、攻撃があまり効かないと合図する。


(攻撃を色の薄い所に当てた際に顔を顰めていたのはそういう事か…。色の変わった場所への攻撃はほぼダメージが無いって感じだな。だが、ダメージが無くてもチクチクと飛んでくる攻撃はお前にとって鬱陶しいだろう。)


ノワルヴェールはフィオルとデュールが剣を当てた箇所を全て覚えていた。


(尾の攻撃も心眼を常に使うフィオルにはまず当たらない…。デュールの硬い防御にも手を焼いている様子…。イラついてるな。そろそろ飛ぶだろう。)


草原エリア全体を見回し藍色の竜の行動を読むノワルヴェール。


「脚の血流が…。まさか…!飛ぶのか?」


フィオルが藍色の竜の行動に違和感を覚えノワルヴェールに向かって上に指を差す。

  

「ほらな。飛ぶ準備だ。さて、試したい事もある。これが効かなければ持久戦になるが…。」


そう呟くとノワルヴェールは二つある矢筒から一本矢を取り出した。

 

その矢は全体がツヤがかっていて、腰に付いている小さな麻の袋から粉の様な物を矢に馴染むように振った。


「声も交わさないで凄い…。お互いの行動を読んで、手や目で合図をしながら戦っているのね…。」


アイベルは三隊長の動きに圧倒されていた。

 

するとピィーと指笛を鳴らし、アイベルに向かって手招きをするノワルヴェール。


「何だろう。エヴァル!」

 

アイベルはそれを目視すると構えていた弓を降ろしエヴァルに戻る様に声を掛ける。


藍色の竜は地面に脚の爪をめり込ませその場で翼を仰ぎ始めた。


地上に降りたノワルヴェールの元へ次々と戻る一行。


「ノワルヴェールさん!藍色の竜は…」


「飛ぶんだろう?」


「はい。脚の血流の動きが早い…。強く地面を蹴っておそらく飛びます。」


「あいつは勝てないと判断したのかもな。最悪のパターンはあいつが逃げる事だ。この先には石碑がある。ここで何とかしたい。」


頷く三人の顔を見て粉を付けた矢を見せた。


「俺が最近発見したこの粉。その粉をこの矢にありったけ付けた。」


「それは何だ?」


デュールが質問するとアイベルとフィオルは粉が付いた矢を凝視した。


「熱を加えると大爆発が起きる粉だ…。」


その言葉に三人は目を大きく開く。

 

「翼が大きく開く瞬間に翼の根元にこれを射る。アイベル…。君が刺さったこの矢に掠めるように矢を射るんだ。摩擦の熱で発火させる。正確射撃なら君の方が上手い。」


「私が…?」


突然与えられた重役に少し後ずさるアイベル。


「最悪外れてしまったらデュール。あれを使え。」


「了解だ。」

 

「アイベル、大丈夫さ。君なら絶対出来る。」


フィオルはアイベルを見つめ言う。


「そして、最後は…フィオル。落ちたあいつにありったけの魂剣で叩き込め。」


「はい…!」


「デュールは奴から30m程のところで盾を構えろ。爆風は凄まじいはずだ。フィオルはいつでもとどめを刺す準備を。矢が命中したら奴も動く。アイベル、エヴァルに乗って確実に狙い、放て!」


「「はい!」」「おう!」


そして、再度散開しノワルヴェールは矢を番えた。


コランは茂みに隠れながら息を殺し、戦いの様子をじっと見ていた。


「皆凄いな…。僕もなれるかな…。」


寝ている二人を横目に、秘かに戦う一行に憧れを持ちグッと拳を握った。

 

草原は月の光に照らされ、静かに流れる風が吹き、草がキラキラと煌めく。

 

ノワルヴェールは片目を閉じ翼の付け根に照準を合わせる。


ギリギリと弦の引く音を鳴らししなる弓。


デュールは盾を構えフィオルはジールから譲られた剣を抜いた。


エヴァルはスピードを出さずにゆっくりと草原を走る。


手綱を持つ手が少し震えているアイベル。


(失敗してしまってもデュールさんが決めてくれる…。でも…私の手で必ず…!)


エヴァルが振り返り鼓舞するように鳴くと手綱を持つ手の震えは納まり始めた。


藍色の竜はバサッバサッと勢い良くその場で羽ばたき、強く地面を蹴り上げた。


地面は草原の下の土が丸見えになる程抉れ、土が舞う。


そして大きく翼を広げた瞬間をノワルヴェールは見逃さなかった。

 

目をカッと開き放った矢は、舞い上がる土の中をすり抜けるように飛んで行き、藍色の竜の左翼の根元に突き刺さった。


「刺さった…!エヴァル行くわよ!」


アイベルはノワルヴェールの放った矢を目視するとエヴァルは駆け出した。


一瞬痛みに顔を歪めた藍色の竜だが高く飛ぶのを急に止め、低空で草原を掠めるように辺り一帯を旋回するように飛び回った。


「くそっ!逃げると思っていたが、なんだこの動きは!?アイベル!構わず放て!!」


ノワルヴェールはエヴァルの動きを見て、遠くから声をあげる。

 

「エヴァル止まって…!竜の動きが…!」


とっさに手綱をギュッと引き急ブレーキを掛ける。


止まると低空飛行で飛び回る藍色の竜を目で追いながら弓を引き続ける。

 

デュールは尚も藍色の竜に向かって盾を構え続けるが、フィオルは予想外の動きに心眼が一瞬途切れる。


そして低空で飛び回る藍色の竜の四本に分かれた尾の内の一本がフィオルの目の前に迫った。

 

「…フィオル!」


弓を構えていたアイベルは手を下げ、とっさに声を上げた。


「ちっ!アイベル!構わず狙って放つんだ!」


その様子を見るノワルヴェールは叫ぶように大声を出すがアイベルは矢を放つことが出来なかった。



鞭のような尾がフィオルの顔に当たる寸前――。

 

ガキィィという金属同士がぶつかる様な音が鳴り響く。


フィオルを押し、デュールが盾で尾を防ぐ。


「デュールさん…!すみません!」


「アイベルー!こっちは気にするな!集中しろー!危なかったなフィオル!少し後退だ!心眼も直ぐに使え!」


「はい…!」


アイベルに叫ぶように声を掛け、続けて振り返りフィオルに声を掛けたが、既に目の前には藍色の竜の牙が迫っていた。


「まずいっ!」


すかさずノワルヴェールは藍色の竜の横顔へ向け矢を放つ。

 

射った矢は頬に直撃し、間一髪で牙はデュールの目の前で止まり、痛みに身体を震わせ藍色の竜は悲鳴を上げた。


「一旦下がれ!」


ノワルヴェールの掛け声にフィオルとデュールは藍色の竜と距離を置く。


(やはり…今のアイベルには無理なのか…?!)


ノワルヴェールは唇を噛み、横目でアイベルの動向を確認する。


藍色の竜とアイベルの距離は70m。


エヴァルはその距離を保ち左右に動き、アイベルは再び弓を番えている。


その場で痛みに暴れる藍色の竜。


間一髪で藍色の竜の攻撃が、フィオル達の前で止まるとアイベルの焦り、そして手の震えは無くなり、深く息を吸い、スッと止める。


(今しかない…!)


最大限に弓を引くと大きくしなる。

 

「「「アイベル!!」」」


三人も今が好機とアイベルの名を叫ぶと、大きくしなった弓から矢が放たれた。


ビュンと音と共に風を切り、左翼に突き刺さる矢に向けて飛んで行く矢。


次の瞬間―。


ピキピキという音を立たせ煌めく鱗が動き出すと、藍色の竜の目は血走り、怒りの目に変わる。


草原の音が一瞬消える。


四本だった尾が八本に変形し鞭のように自身の周りを振り払い、あと少しで届くはずのアイベルが放った矢を無惨にも打ち落とした。


その様子に、その空間が凍ったように一行は固まる。


「…まだそんなに動けるの…?」


アイベルは藍色の竜の強靭さに唖然とし、一度弓を降ろす。


鞭のように辺りを打ち付ける尾は、地面を無差別に抉り、大きく土が舞う。


「こんな変形も可能なのか…!?ノワルヴェールさん!デュールさん!以前には無かった変形です…!」


八本に分かれた尾の変形にフィオルは驚きを隠せず、二人に声掛ける。


「常に振り続け土が舞ってしまっては防戦一方だ!近づくのも困難だぞ!」


デュールは大声でノワルヴェールに次の行動を促す。


(もはや結界ではないか…!どうしろと…。)


考え込むノワルヴェールのこめかみからは汗が伝う。


「ノワルヴェールさん、デュールさん!魂剣を使ってなんとか切り落とします!アイベル!必ず決めるんだ!」


フィオルはジールから授かった剣を抜き力強く握った。


「あの攻撃に向かって行っても大丈夫なの…?」


アイベルは一瞬不安になるがフィオルがこちらに向かって頷くと決心し弓を引く。

 

「大丈夫なのか!?」


「ノワルヴェール…!フィオルを信じろ!切り落とした瞬間に俺がフィオルを連れ戻して爆発を回避する!」


「そうだな…!頼んだぞ!アイベルー!チャンスは一度だけだ!」


そしてフィオルは二人に向かって頷くと藍色の竜に向かって走り出した。

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