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第二十五話 ソウルガーディアンズ最高戦力

生い茂る木々の影から歩いてくるノワルヴェール。


ノワルヴェールの放った矢は大きく開いた口の中を直撃した様で、上空からは藍色の竜の呻き声、そして暴れる回る翼の羽ばたく音が鳴り響く。


「ノワルヴェール!」


盾を地面に突き刺し振り返るデュール、アイベルを庇うように覆い被さるフィオルは驚き、目を大きく開く。


「なんて格好だフィオル…。」


フフッと笑い二人の元へ歩み寄ると、二人の肩をポンと叩き、寝ている連中をチラッと見た。


「どうしてここに?」


「はぁ。剣撃隊副隊長ジールの息子である私が今日ここに居る事が当たり前だと思わないか?」


呆れた様子で答えるノワルヴェール。


「10年前の戦闘があった跡地の石碑に寄ろうと思っていた所だ。爆発の音と衝撃を感じて走ってきたのさ。私はもうラヴィエルに寄った。フィオル…。待っていると言っていたぞ。」


フィオルの目を真っ直ぐ見て話し、最後に笑顔を送るとノワルヴェールは上空の藍色の竜を見上げる。


「そうですか…。」


フィオルは立ち上がりジールから受け取った剣を見る。


「この状況…全く把握出来ないが簡潔に頼む。」


デュールとフィオルはこれまでの事を話すとノワルヴェールは驚きの表情をする。


 

「アイベルがパラファラを!?」


強く頷くフィオルとデュール。


(まさかそこまで腕を上げているとは…。)

 

ノワルヴェールは眠るアイベルを見ると心の中で呟く。


「アイベル。少し待っていてくれ。」


フィオルはアイベルの手を再び握る。

 

――白い光の世界


(特別な愛…。)


手を握り隣の人影を見る。


「何が起きても手は離さないで…。さあ、目を瞑って。」


白い女性の指示に従いアイベルは目を瞑った瞬間――。


目の前にそびえ立つラヴィエルから大きな枝がアイベルの頭上から落ちてくる。


「……っ!」

 

一瞬スローになる視界。


頭に落下する直前目の前が光に包まれた――。


――ペールデニーズ


「フィオル…!」


フィオルを呼ぶ声と共にフィオルの握る手をパッと離し、目覚めるアイベル。


「アイベル!?」


「あ…あ…。」

 

(手を離してしまった…。)


心の中で呟き、自分の手を見るアイベル。

 

焦点は合うものの、見ていた白い世界の光景と自分が今、現実で目覚めたという状況に混乱している様子だった。


「大丈夫かい?」


フィオルはアイベルの両頬に手を当てた。


「ごめん。私は…?」


落ち着きを取り戻し、自分が現実に居る事を自覚し、自分の身に何が起きたのかを問う。

 

「パラファラの粉を吸ってしまったんだ。一瞬だったから気付かないうちに眠ってしまったんだよ。」


「そう…だったのね。フィオル…。もしかしたら私は眠っている間に自分の中にある、記憶を見ていたかも知れない。」


「本当か!?」


フィオル、デュール、ノワルヴェールは目を大きく開いた。


「それで……」


「おいおい待て待て。」


ノワルヴェールはフィオルの言葉を遮った。


「え、ノワルヴェールさん!?」

 

「急に居て驚かせたな。アイベル。上を見ろ。」


アイベルはノワルヴェールの指を差す方向を見ると目を見開いた。


「あれは…藍色の竜…!?」


――少し時は遡りオラディ村


パラファラの出現から少し経つと、ブルクからアイベルが居るのであれば大丈夫だと聞かされた監視の隊員達。

  

「あの子が弓使いとはな…。しかし凄い腕だな。」


「ああ。パラファラが見えたと思ったら落ちていった…。」


隊員達はパラファラが撃ち落とされる瞬間を目撃していた。


そして、撃ち落とされてから少し経った頃。


「ブルク長老!」


物見櫓から監視をする隊員が声を上げる。


「翼を持つ生物が現れました!恐らく藍色の竜です!」


「本当か!?」


物見櫓を見上げるブルク。


「はい!竜は…ん?パラファラも上がってきたぞ…。」


「竜は何じゃ?」


ブルクが問うとドゴーンという爆音が鳴り響いた。


「竜が火球をパラファラに向け放ち爆発…。煙で見えない…。」


「なんじゃと…!」


爆発により大きく揺れる木々、そして煙が大きく広がる。


ブルクは地面を蹴り、ヒュンという風を切る音を立て、物見櫓へと飛んだ。

 

「見せてみぃ。」


音も無く着地し監視から望遠鏡を受け取ると片目で覗く。


「ん?矢が三本空へ…。あれは…ノワルヴェールか…!」


この時ノワルヴェールは爆発の音を感じた時に空に矢を放っていた。


「なるほどの。竜種と確信した様じゃな。」


さらに続けて空に放たれた三本の矢は増援は要らないというノワルヴェールの合図であり、それを見たブルクは望遠鏡を隊員へ返す。


「ソウルガーディアンズの最高戦力だけで良いか…。随分な自信じゃな。ジールの無念は自分が晴らすか…うむ、信じようぞ。」


――ペールデニーズ


「記憶の話しはアイツを倒してからにしよう。そこの寝ているペルディータの話も詳しく聞きたい。」


尚も痛みに暴れる藍色の竜を見上げながらノワルヴェールは言った。

 

三人は頷き、アイベルは立ち上がる。


「フィオル。あの竜…」


「ああ、俺もさっき気づいた…。尾の長さと先の色が違う。ノワルヴェールさん、デュールさん。あれは…恐らく10年前に対峙した個体です…!」


上空にいる竜の尾は四本に分かれており、そのうちの一本が他の尾と比べると短く、藍色に深みが無くなっていた。


「藍色の竜の尾はご存知の通り変形します。あの時、二本だった尾の一本を切り落としました。ですが、痛みに暴れていた瞬間には、一本だけ先が無くなった四本の尾になっていました。奴が去る時、他の三本はしっかり先まで残っていた記憶があります…。アイツは間違いなくあの個体だ…!」


「間違いないな?」


ノワルヴェールは声を強くして言った。


「はい…!」


「よし…。」

 

(父上…。今日という日に仇が取れますよ…。必ず仕留めます!)


心の中でジールに誓うノワルヴェール。


それはあの日対峙したフィオルとアイベルも同じだった。


(命を繋いでくれた皆さん…!ジール副隊長、アルムさん、ファリートさん…!必ず倒してみせます!)


(私を知りもしないで命を懸けて助けてくれた…。今は私だって戦える…!絶対今日ここで…!)


三人の藍色の竜に対する眼の力に必ず倒すという大きな意志を感じ、デュールも剣をギュッと握る。


 

必ず倒すと心に誓い藍色の竜を見上げる一行。


藍色の竜は痛みに慣れたのか振り返り森の奥へと飛んでいく。


「逃がすか…!奴の飛んで行った方向は開けた草原だ。その先に石碑がある。あんな所まで行かせるものか…!草原でなんとかアイツを撃ち落としたい…。エヴァルと寝ている連中をこのままにはできん。デュールあれを使えるか?」


「ああ。勿論だ。」

 

デュールは背中に背負う武器に触れる。


その瞬間、森の奥から足音が聞こえエヴァルが目を覚ましヒヒィンと鳴いた。


「あれは…馬だな。敵意は感じ無いが…。」


一行の横を素通りし、すっと立ち上がるエヴァルに三頭の馬が近寄るとエヴァルに頬を擦り寄せた。


「これは…?アヴェニール洞窟調査団の焼印だ…。」


指を差し体毛を掻き分けデュールが焼印を見つける。


「エヴァル…。もしかして、あの時逃がした馬達なのか?」


エヴァルはフィオルの問いに答えるように鳴く。


当時ジール達が藍色の竜に討たれ、あの場から逃げる際にフィオルはアイベルと共に馬を森へ解き放った。


散り散りに逃げた馬達のおかげで一時は、フィオル達は藍色の竜の火球から逃れる事が出来た。


あの時に燃えた森で全滅したかと思われていたがこの馬達は火の手から逃げれたようだ。

 

「丁度いい…。寝ている連中を乗せて貰おうか。乗せ次第追うぞ…!」


「「はい!」」「おう!」


寝ている者を紐で縛り、落ちないように乗せ藍色の竜を追う。


駆け足で進むと森が開き、目の前には草原が広がった。


藍色の竜を退けた草原――。


草原の奥に見える森は10年前の藍色の竜の火球によって焼け野原になり、焦げて朽ちた木々がそこら中に倒れ、今では新たな芽を生やしていた。


草原の中央にゆっくりと降り、こちらを振り返る藍色の竜。


「ほう。ここで命を懸けるみたいだな。」


ノワルヴェールは武者震いをしながら言う。


寝ている者を乗せる馬達を、大きな樹の後ろの茂みに隠すと、コランが目を覚ました。


「寝てしまったのか…。」


フィオルはコランに繋がる紐を解く。


「竜の出現だ。ここで寝ている二人と待っててくれ。」


「え…。はい…!」

 

馬からコランを降ろし隠れるよう告げると藍色の竜に向き直る。


「よし。準備はいいか。指示を出す。」


デュール、フィオル、アイベルは頷き武器を手に取った。


「フィオル。お前は常に心眼を使ってくれ。やつの行動に異変を感じたら直ぐに合図を。接近戦になるが頼んだぞ。デュール。とにかく走って意識を攪乱させろ。そして、フィオルに攻撃が飛んできたらガードだ。」


「「了解。」」


するとすぐさまフィオルとデュールは藍色の竜へと走って向かう。


「アイベル。」


「はい!」


「竜との実戦は初めてだろうが私達がいる。安心しろ。君はエヴァルに乗ってデュールと同様に奴の周りを走って攻撃してもらう。馬に乗りながら矢を射るのは大変だが気流覚を研ぎ澄ませるんだ。」


アイベルはノワルヴェールに、気流覚が使える事を伝えておらず、思わず驚きの表情をし返事が出来なかった。

 

「何故それを…?」


「俺はスターキイさんの一番弟子だ。彼の一番近い所で弓撃隊にいたんだぞ?気付かない訳ないだろう。頼ん…」


「ノワルヴェールさんっ!」


話している途中にフィオルから叫ぶ呼び声。


アイベルが声を上げたフィオルの方を向いたその時――。


ヒュンと風を切る音が二度訪れ、フィオルの先にいる藍色の竜は呻き声をあげる。


アイベルは何が起きたか分からずノワルヴェールに向き直ると矢を射った姿が目の前にあった。


「…頼んだぞ、アイベル。」


肩に手をポンと当て笑顔のノワルヴェール。


(あの一瞬で矢を射ったの?…早すぎる…。)


アイベルはノワルヴェールの速射に圧倒されたのだった。


「さあ、今日ここで!終わらせる…!」

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