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シーズン2・第5話:忍び寄る悪意の影

シーズン2・第5話をご覧いただきありがとうございます!

佐藤を手に入れたと満足する水木桃が、今度は再び私(南)に対して陰湿な罠や嫌がらせを仕掛け始める緊迫の回です。

牙を隠した狂犬令嬢の新たな企てと、それに立ち向かう南の決意をお楽しみください!

水木桃が佐藤さんを自分の「所有物」のように縛り付け、周囲に誇示し始めてから数週間が過ぎていた。

父親の命が救われたという事実だけが唯一の救いであるものの、日増しにエスカレートしていく桃の束縛と傲慢な振る舞いは、経営企画部のフロア全体を再び重苦しい空気へと引き戻しつつあった。


佐藤さんは毎日のように桃からの理不尽な食事の誘いや、業務外の同行を強いられていた。借金の肩代わりという絶対的な契約の鎖に繋がれているため、表立ってそれを拒絶することはできない。彼のやつれた横顔を見るたびに、私の胸は締め付けられるような痛みに襲われた。


けれど、桃の標的は佐藤さんを縛ることだけにとどまらなかった。

――彼女の本当の目的は、私を完全に精神的に追い詰め、この銀行から放り出すことだったのだ。


その兆候は、ある日の午後、突然やってきた。

私が担当していた重要企業の融資関連データと、直近の監査資料の束が、私のデスクから綺麗に消え失せていたのだ。


「あれ……? さっきまでここに置いてあったはずなのに……」


焦って周囲を探すが、どこにも見当たらない。締め切りは今日の夕方。もし資料が紛失したとなれば、私の重大な過失として始末書ものどころか、業務上の信用問題にまで発展しかねない大事件だった。

冷や汗が背中を伝う。フロアの行員たちに尋ねても、「さあ、知らないな」「君の管理が甘かったんじゃないの?」と、どこか冷ややかな視線が返ってくるだけだった。かつての「桃の支配」におびえていた頃の空気が、わずかにぶり返しているのを感じた。


そのとき、斜め前方から、ふっと鼻で笑うような冷ややかな声が聞こえた。

顔を上げると、そこには優雅にコーヒーカップを手にした水木桃が立っていた。彼女の唇には、隠しきれない意地の悪そうな笑みが張り付いていた。


「あら、江崎さん? 大切な書類を探しているのかしら。そんなに慌てて、相変わらず抜けているのねえ」

「……水木さん。もしかして、私の資料を……?」


私が声を震わせながら問い詰めると、桃はわざとらしく目を丸くし、それからフッと嘲笑った。

「聞き捨てならないわね。私がそんな下等な真似をするわけないでしょう? ただね、コンプライアンスの観点から言って、あなたのような平社員がそんな重要な機密書類をずさんな管理で机の上に放置していること自体が問題だと言っているのよ。……あ、そうそう。さっき、シュレッダー室のあたりで、見慣れない紙の束が処分されていたけれど……もしかしてあれかしら?」


ぞっとするような寒気が全身を駆け抜けた。

急いでシュレッダー室へと駆け込んだが、時すでに遅し。私が朝から何時間もかけて作成したデータの束は、すでに細断され、元には戻せないゴミの山と化していた。


あからさまな嫌がらせ、そして罠だった。

桃は、佐藤さんを自分の手元に置いたことで満足せず、再び私の尊厳を踏みにじり、この銀行から追い出そうと水面下で牙を剥き始めていたのだ。


デスクに戻った私は、こみ上げてくる悔しさと情けなさに、思わず唇を噛み締めた。

ここで泣き寝入りしたら、彼女の思う壺だ。あのとき、あんなにも強い気持ちで恐怖を乗り越えて前を向いたのに、また同じ絶望の淵に引きずり戻されてたまるものか。


――その夜遅く、誰もいなくなったフロアの片隅で、私はパソコンに向かい、必死の思いでデータの復元と再作成を始めていた。

バックアップのログを辿り、過去のメール履歴から数値をかき集める。終電の時間が近づくなか、一人で黙々とキーボードを叩く私の背中に、ふと、静かな足音が近づいてきた。


「……南」


顔を上げると、そこには疲労の色を隠せない佐藤さんが立っていた。

彼は私のデスクの上にある未完成の資料と、私の赤い目を見て、すべてを察したように痛ましげに眉をひそめた。


「君がこんな時間に一人で残っている理由……想像がつくよ。本当に、申し訳ない……僕が彼女の近くにいるせいで、君にまで牙が向いてしまっている」

「謝らないでください、佐藤さん」


私は首を横に振り、涙をこらえて毅然とした笑みを浮かべてみせた。

「負けません。私はもう、あの頃のただ怯えるだけの私じゃないから。……一緒にお父様を救うために戦うって、決めたんだから」


私のその言葉に、佐藤さんの瞳にハッとしたような強い光が宿った。

彼は深くうなずき、自分のコートを脱いで私の背中にそっとかけてくれた。


水木桃の悪意がどれほど深くとも、私たちが結んだ絆と反撃への意志を折ることはできない。

反撃の狼煙は確実に上がり始めていた。

シーズン2・第5話をお読みいただき、ありがとうございます!

桃による新たな陰湿な嫌がらせと罠に直面しながらも、決して屈せず、佐藤と共に立ち向かう決意を固める南の姿を描きました。


次回、第6話「隠された糸口」では、桃の背後にある資金源や、今回の契約の裏に隠された「重大な秘密」に佐藤が気づき始める緊迫の展開をお届けします。


シーズン2もぜひ応援よろしくお願いいたします!ブックマークや評価、感想などもお待ちしております!

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