シーズン2・第2話:悪魔の条件
シーズン2・第2話をご覧いただきありがとうございます!
父親の命を救うため、途方もない医療費に絶望する佐藤の前に、地獄の底から這い上がってきたかのように水木桃が再び姿を現します。
彼女が突きつける、あまりにも残酷な「条件」とは――? 緊迫の展開をお楽しみください!
父親の重病と、数千万円にもおよぶ途方もない医療費。
その現実を知った日から、私たちの日常は一変して冷たい悪夢へと変わってしまった。
佐藤さんは仕事を必死にこなしながら、定時後や休日を惜しんで都内のあらゆる金融機関や知人に頭を下げ、融資の相談を重ねていた。だが、どれだけ誠実に頼み込んでも、個人の身分で担保も不十分な状態では、どこも数千万円もの巨大な資金を貸し付けてはくれなかった。
「どうか、父を助けてください……!」と血を滲ませるような思いで奔走する佐藤さんの姿を見るたび、私の胸は張り裂けそうだった。私自身も貯金をすべて崩し、少しでも足しにしようとしたが、必要とされる額の前にはあまりにも無力だった。
時間がない。医師の告げたタイムリミットは刻一刻と迫っていた。
父親の心臓はいつ急変してもおかしくない状態であり、専門病院での手術費用を今すぐ用意できなければ、助かる命も助からなくなってしまう。
追い詰められ、憔悴しきっていく佐藤さんを見ているだけで、涙が枯れ果てそうだった。
――あの人が、私たちの前に再び現れたのは、そんな絶望がピークに達した雨の夜のことだった。
その日、佐藤さんは都内の大きな病院から自宅へと戻る途中、病院のロビーの片隅で、一人の女性に呼び止められたという。
黒い高級コートを身にまとい、かつての傲慢さは影を潜めているものの、その瞳に冷酷なまでの執念を宿した人物。
――水木桃だった。
銀行を追われ、実家からも勘当されたはずの彼女が、なぜここにいるのか。佐藤さんが警戒心を露わにして足を止めると、桃は冷ややかな、しかしどこか狂気を含んだ笑みを浮かべてこう告げたという。
『お父様のご病気、大変ね。数千万円の医療費が必要なんでしょう? ……ふふ、あなた一人じゃ、一生かかっても用意できない額ね』
心底見下すような、それでいてどこか嬉しそうな声音。
佐藤さんは歯噛みしながら、「何の用だ」と問いただした。すると桃は、まるで当たり前のことのように、恐ろしい条件を口にした。
『私が資金を出してあげる。私の裏の投資ファンドの資本を使えば、数千万円なんて端た金よ。今すぐ全額をあなたの父親の口座に振り込ませてあげるわ。……ただし、条件があるの』
一拍置いたあと、桃は冷酷に言い放った。
『江崎南と今すぐ別れなさい。そして、私と結婚前提で付き合うこと。それが、お父様の命を救うための「代償」よ』
その話を佐藤さんから聞かされたとき、私は自分の耳を疑った。
自分のプライドを傷つけられ、すべてを奪われた原因が私と佐藤さんにあると信じ込んでいる桃が、復讐のために選んだのは「物理的な暴力」ではなく、最も残酷な「愛の引き裂き」だった。お金に困窮している今の佐藤さんの弱みに付け込み、最愛の父親の命を人質にとって、私を奪い去ろうというのだ。
「そんなの……あまりにも、卑劣だわ……!」
自分のアパートの部屋で、佐藤さんは顔を両手で覆ったまま、震えていた。
いつも冷静で、どんな困難にも正しい道を選んできた彼が、初めて崩れ落ちそうになっていた。彼の指の隙間から、ぽつりと熱い涙がこぼれ落ちるのを見たとき、私の心臓は締め付けられるように痛んだ。
「僕が……僕が別の道を選べば、父は助かる。……でも、そんなことをしたら、君を裏切ることになる。君を傷つけることになる……。そんなの、僕には……!」
佐藤さんの声は絶望に濡れていた。
彼は自分の保身のために悩んでいるのではない。父親の命をとるか、私との絆をとるかという、どちらを選んでも取り返しのつかない地獄の二択を突きつけられていたのだ。
外では冷たい雨が窓ガラスを激しく叩いていた。
水木桃の毒牙は、一度折られたはずのプライドを再び血に染め上げ、私たちの最も大切な絆を容赦なく引き裂こうと、音を立てて忍び寄っていたのだった。
シーズン2・第2話をお読みいただき、ありがとうございます!
窮地に陥った佐藤の前に、すべてを失ったはずの水木桃が再び現れ、「父親の命と引き換えに、南と別れて自分と付き合え」という悪魔のような条件を突きつける衝撃の展開を描きました。
次回、第3話「引き裂かれる選択」では、愛する人の父親を救うため、南が苦渋の決断を迫られる緊迫のストーリーをお届けします。
シーズン2もぜひ応援よろしくお願いいたします!ブックマークや評価、感想などもお待ちしております!




