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MONDE ー光を鳴らす物語ー  作者: ぽちな
第一部 始まりの光ー第六章 光
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43/57

40.光

◆ 光 ◆


ユキの部屋でMDをMDコンポに入れ、遥は震える指先で再生ボタンを押した。


――♪


優しいメロディが流れる。

水面に映る月の輝きのような、そんな光の曲。


(ああ、ユキくんの音だ。ユキくん……)


遥の頬を、また涙が伝う。

ユキの母親も涙を拭っていた。

陣も哲央もNOも涙を止めるのに必死だった。


(この音……伝えたい……)


ユキのメロディが、遥の心にじんわりと温かい想いとなって広がっていく。


「あの、このMDを……いただいてもいいですか?」


遥は震える声で聞いた。


「はい。あの子の想い……、ぜひ連れていってください……」


「ありがとうございます」


遥は頭を下げた。


それから、ユキの母親を囲んでユキの話を少しした。

みんなで声を震わせながら代わるがわる、練習でのユキ、ライブでのユキのこと。

母親は、嬉しそうに何度も「うん、うん」と頷きながら聞いてくれた。


MD、イメージノート、衣装、ギターをそれぞれ受け取ることになった。


みんなでユキの母親に深くお辞儀をして、ユキの香りの残る家を後にした。

遥は、また涙を流した。


(ユキくんの家、今もユキくんがいるみたいだった……)


そっと後ろを振り返った。ユキの家が遠くなる。

ユキの匂いが、外の空気に混ざり合い……消えてゆく。



みんなで、一度遥の家に戻ることにした。


「ユキの部屋、音楽一色だったな」


帰り道、NOが呟いた。


「ああ、ユキだなって思った」


哲央の返事に遥と陣も同意した。



遥の家に帰ってくると、みんなでもう一度MDを聴いた。

曲を聴くたびに遥の目から涙が零れ落ち、目はすっかり腫れぼったくなっていた。


「……わ、たし、……伝えたい。ユキくんのこの曲、……想いを」


言葉につかえながら、それでもはっきりと遥は言った。


「うん! 僕もそうしたい」


同じく涙を溜めていた陣が頷く。


「もちろん!」


哲央とNOも力強く頷いた。


「みんな、ありがとう……。ありがとう」


遥は、何度も感謝の言葉を繰り返した。


「遥、これ」


痛みに耐えながら目元を拭う遥に、NOがユキのノートを差し出した。


「……これって」


「これはさ、俺より遥が持ってたほうがいいと思うんだ」


NOはじっと遥を見つめた。


「でも……」


ためらいがちにノートに手を伸ばす。


「伝えるんだろう。ユキの想い」


うっすらと瞳に涙を溜めたまま、NOは微笑んだ。

その笑顔を見た瞬間、遥はノートをしっかりと握った。


「伝える! 私、約束したんだユキくんと」


ノートを胸に抱く。


「作曲するって」


みんなの顔が明るくなった。

そして、哲央はみんなを見渡した。


「これからのこと、話し合うまでもないよな」


哲央はライブ前の円陣と同じように拳を前に出した。


「もちろん。俺たち、このまま続けるだろ」


NOも拳を出した。


「続けるよ」


陣も拳を出した。


みんなの視線が遥に集まる。

その視線を受け止め、ノートを抱きしめたまま、息を吸った。

ゆっくりと腕を伸ばし拳を出した。


「MONDEは行くんだ。もっと先へ。ユキくんの曲と一緒に!」


4人の拳が合わさる。


「よし! これからも……鳴らそう。俺たちの世界!」


哲央が声を詰まらせながらも掛け声をかけた。


「おっし!」


遥の部屋にみんなの声が響き渡った。


陣と哲央は、二人でなにか話したあと、遥に声をかけた。


「はるちゃん」


陣と哲央がユキの衣装とギターを遥に差し出す。


「この2つも、お前が持ってろよ」


「えっ、でも、それじゃあ……」


「会いたくなったら、ここに会いにくるからさ」


陣は、確認するように哲央とNOを見た。

二人とも「ああ」と頷いた。


「ありがとう……。私、大切に保管する」




夜。

みんなが帰った静まりかえった部屋で、遥は一人ユキのことを想う。


(ねえ、ユキくん。本当は、まだ全然辛いよ……)


遥は、また流れてくる涙を押さえながら、ギターケースに手を伸ばす。


(でも、だからこそ、音を鳴らし続けたい)


ゆっくりと青いギター、ラピスを取り出した。


(あなたの音を消さないために)


そして、壁に掛けたユキの白いギターを見つめる。


(私に音楽っていう居場所をくれた。ユキくん、あなたはずっと私の光)


遥は震える指で一音、ギターを鳴らした。

ラピスの上に、涙が落ちた。


(ユキくんの光、絶対に消さない)



MONDE―光を鳴らす物語― 

第一部 『始まりの光』 完。


ここまで読んでくださった皆さま、ありがとうございます。

MONDEは10年以上温めてきた物語です。

ここまで形にできたことを、とても大切に感じています。


遥の物語はまだ続きます。第二部でまたお会いできれば嬉しいです。


これは、光を失ったあとも、それでも音を鳴らし続ける物語です。


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― 新着の感想 ―
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なろう版、全40話のアップロード、本当にお疲れ様でした! 登場人物、一人ひとりのドラマに想いを馳せながら、2周目をじっくり堪能させていただきました。 ヴィジュアル系の世界にあまり馴染みがなかった私…
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