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おにポチャで転スイ(転生)しました!?  作者: (万寿)ぷりん
第3章

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155/155

155 ピカピカしちゃった!?子亀の緊急信号!?






 僕たちが、不穏な気配の漂うミラソムの町へ向かっている、その途中だった。

 相変わらず空気が、どこか重い。

 風は吹いているのに、音が少ない。

 胸の奥が、ざわつく。


 そんな時――



 (禁書よ、無事か)


 低く、深く、水底から響くような思念。


 僕には聞こえない。でも、腕の中のホンホンが、急に“ぽよん”と弾んだ。

 びくっ。


 (萬介くん! ぽよぽよしてるけど、ホンホンは元気だホン! なにかあったのかホン?)

 ぽよん、ともう一回。


「わぁぁ、ホンホン急に跳ねたら落としちゃうよ! じっとしてて!」

 あわてて抱え直す。本なのに、なんでこんなに弾むのさ。

 ホンホンは無言のまま、ぴたりと静かになった。



 ……今、誰かと話してるみたいだ。ああ、テレパシーで会話中なんだろうな。



 (……その“ぽよぽよ”が気になっておるのだ)

 ホンホンの頁が、ほんの少しだけ震える。

 (禁書が弾むとは、前代未聞だぞ)


 (ホンっ、禁書だって弾むときは弾むホン! 今日はちょっと魔力の巡りが良すぎただけホン!)

 ぱらり。

 淡い光が、頁の隙間からこぼれた。



 ……相手は、亀様だろう。

 亀様こと、泉萬介さま。(ホンホン命名)直接は聞こえないけど、ホンホンの反応で、だいたい察しはつく。

 しばらくして、空気が少し冷えた気がした。



 (……世界各地に散らばった子亀たちが、騒いでおるぞ。一部じゃがな)

 ホンホンが、今度は小さく“ぽよ”。

 (騒ぐ? それは可愛いホン? それとも……厄介なやつかホン?)


 (ふむ、可愛い騒ぎならよいのだがな)


 僕は歩きながら、耳を澄ましてみる。返事は聞こえないけど、胸の奥がざわっとした。

 それに合わせたかのように、風向きが変わる。遠くに見えるミラソムの町の上空、雲が不自然に渦を巻いている。

 ……嫌な感じだ。ホンホンが、ほんの少しだけ“重く”なった気がした。


 亀様の思念は直接聞こえなくても、心の表面に波紋だけ残す。目には見えない水滴みたいだ。

「ねぇ、ホンホン。亀様、なんて?」

 少しの間。そして、そっと答えてくれた。

「……騒がしい子亀がいるホン。ちょっとだけ厄介かもしれないホン」

 “ちょっとだけ”なんて言いながら、声は、いつもより軽くない。


「うわぁ、各地に異変が広がってるのか」

 僕は息を吐いてから、顔を上げる。

「わかった。じゃあ、ツバネとタリクとセリアンたちに、アクア・スパイラルで合流しようって伝言頼むね」


「子亀たちに伝えてもらうホン。任せるホン!」

 頼もしいのか、心配なのか、どっちだろう。僕はホンホンを抱え直して、小さく息を吸う。

「……行こう。何が起こっているのか、確かめないと」


「オレがついてる。影なら任せろ!」

「良いわ~!カゲミちゃんの気合! その調子でワントゥアタックよ!」

「……いけばわかるさ」

 カゲミと母さんは、妙に息が合っている。

 僕と父さんは目でうなずき合った。


 大丈夫。ひとりじゃない。

 僕たちは揃って、アクア・スパイラルへ向かうんだ。


 そして――


 ミラソムの門が、はっきりと見えてきた。空気が、ぴたりと張りつめる。

 まるで、町そのものが息をひそめているみたいに。





 かつて乾ききった土地だった面影はもうない。水に恵まれた穏やかな村――メリフル。


 村長執務室。ツバネの肩に乗っていた子亀が、突然――


 ぴかっ。

 ぴかぴかぴかっ。


「きゃああ! 変身しそうなくらい光ってますわ!」

 リウラが両手を頬に当てて跳ねる。子亀はまるで星みたいに強く明滅していた。

 ツバネは目を細め、光を見極める。

「おちつけ、リウラ」

 いたって冷静な声で告げる。

「これは変身なんかじゃない。亀様からの連絡だ」

 子亀の甲羅に、水紋のような紋様が浮かぶ。


「……アクア・スパイラルに集合、か」

 瞳に一瞬、蒼が宿る。


「セオトは……無事に決まってる」


「……ツバネったら。この輝きにときめかないなんて、もったいないですわ!」





 水龍の棲む滝近く――ラグ・ノートリア村。


 タリクの足元で、子亀が規則正しく点滅する。

 ぱっ、ぱっ。


「発光が確認できました。データ更新します」

 ゲルが淡々と告げる。タリクはしゃがみ込み、光を覗き込んだ。

「ゲルさんよ。こいつは自然現象じゃねぇけどな……」

「……どういうことです?」


 光のリズムを指先でなぞる。

「……呼び出しだ。しかも優先度高ぇ」

 子亀が真っ直ぐ見返す。

「ちっ、ミラソム絡みか?」


 甲羅にはアクア・スパイラルの水紋が浮かんでいた。

「準備しろ。移動だ」





 トロワルの石畳の広場。


 歌う場所を探して広場にいたミラの腕の中で、子亀が震えながら光りはじめた。

 ふる、ふる、ぴかっ。


「見なよ、セリアン!」

 ミラは目を輝かせる。

「この震え、最高の演出じゃないか!」

「師匠……それ緊急信号です!」


 子亀がびくんと強く震えた。空中に広がる水紋。

 浮かび上がる蒼い螺旋――アクア・スパイラルの紋章。


「……共演じゃない?」


「緊急集合です!!」




  同時刻。離れた村々にいた仲間の元で。


 子亀たちが、同じ紋章を描く。

 同じ方向を示す。


 流れはひとつに収束する。

 ――アクア・スパイラルへ。






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