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処分の落とし所

「いったいどういう事だ!」

 スーフィフル・ホスタイル氏にしたら、不愉快極まりない話だった。




 王立学園で上級貴族の子弟を指導する教職を得ていたスーフィフル氏は、まさかのその学園から、不適切な事務処理などというつまらない事由で処分を受けるとは、微塵も考えていなかった。


「不正ではなく、あくまで書類の不備という事で……」

 王立学園上層部は、全て自分の息のかかった者たちばかりだ。独立して準貴族の平民という身であれ、このスーフィフル様は、王弟殿下の覚えがめでたい上にフェアネス侯の右腕ともいうべき重要な人物だ。その私を処分する?誰が?お前らが?



 学長他、王弟派閥内で自分より序列が下の者たちが、申し訳なさそうに上へと掲げた辞令書を奪い取り、文面に目を通す。

 職務怠慢で学園に不利益を与えたため戒告処分を申し渡す、とある。


「いったい何をもって処分するというのですかな?」

 イライラした口調に、副学長が少し怯える。

「いや、教育機関誌にホスタイル先生の事務上の疑惑記事が出ましてね、色々と…。いえ、何も不正などという戯言を信じるわけではないのですよ?しかし確かに数字上で多少の齟齬が出てるのは確かで、これは恐らく意図的な違反なのではなくきっと手違いや手続きの失念などであろうという、まぁ誰にでもあるミスだと思われまして……。ですので確かに記事に指摘された部分は事実であったので、一応書類不備による意図せぬ損失として処理したいと……」



 件の機関誌の記事には、ホスタイル教諭による数々の不正行為とあった。鼻で笑ってしまう。どれも些細なことじゃないか。


 横領?裁量内の予算を使っただけだ。


 パワハラ?教師が指導して何が悪い。


 揉み消し?円滑に進める処世術だ。


 収賄?適材な生徒を紹介しただけだ。



 これらは証拠不十分として考慮されないそうだ。あくまで書類上残っている齟齬のみを対象に処分を出し、幕引きにしたい腹づもりらしい。

 本人に事情聴取もせず素早く仮処分を発表したのは、これ以上記事を大ごとにしたくないためだろう。



 ホスタイル氏に課されたのは、数日間の謹慎と給与1/8ヵ月分の返納だという。


 告発内容からすれば大甘な罰だが、片腹痛い。学園がこのホスタイル様に罰を与えるなど笑わせてくれる。


 はっはっはっとひとしきり笑った後、ジロリと自分の手下の教師どもを睨みつける。分不相応にも自分に逆らおうとするコイツらをどうしてやろうか?と思案したが、震える学園長が「今回の事は丸く収めるようにと王弟閣下からの要請でもあり……」と言う。

 どうやらこの告発には、いずれかの派閥が絡んでいるらしい。揚げ足取られぬよう先に手を打っておきたいのだとか。


(ならば仕方ないか……)

 寄親であるアンモン・ド・ロワイヨーム王弟殿下が、フェアネス家を飛び越えて指示してきたというのなら、従うしかないだろう。自分に逆らう輩が居るというのには腹が立つが、コイツら相手に怒鳴ったところで意味をなさない。



 しかし、時期が悪い。


 処分自体は事由の矮小化で大したことないが、このタイミングでの給料返納は痛い。

(飼料をまとめて発注してしまった後だ。支払いを遅らせるよう命じねばならんな……)


 なぁに、相手は木っ端商人だ。ホスタイル家の意向に反しはすまい、とたかを括る。


 それでも不快感は否めない。

 ホスタイル教諭はその晩、腹いせにしこたま酒場で痛飲してから帰宅した。



 



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