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第13回

第25回新風舎出版賞、最終審査落選作品(笑)

 7月、梅雨も明け、暑い夏がやってくるこの季節、奴らの行方の手掛かりは突然やってきた。

 今日も21時に家を出ると、自転車に乗り込んだ。21時といえども、今日は25℃を超える熱帯夜だった。ペダルをこぎだすと、ほんの少し走っただけで大量の汗が吹き出てくる。家からその土手までは自転車で5分位の所にあるが、着いた時には汗だくになっていた。自転車を置き、俺は土手の上からあの時奴らに引きずり込まれた芝生のスペースを見下ろした。あの時油断さえしなければ...油断さえしなければ奴らにやられるはずがなかった。視線の先の芝生には、ボロボロになった自分自身の情けない姿が映った。ここに毎日訪れるのは、奴らともう一度遭遇する為ともう一つ、こうして現場を見つめる事によってあの時の記憶を蘇らせ、己を奮い立たせるのもその理由だった。

 俺は奴らを絶対に許さない。この手で必ずぶち殺す!

 こうして今日も俺はあの時の事を思い出すと、奴らに対する怒りは膨れ上がっていった。

 ある種の儀式が終了し、俺は来た道を戻ろうと自転車の方に体を反転すると、その時足下に何かがあるのが目に入った。辺りは薄暗く、見下ろすだけではそれがいったいなんなのかが識別出来なかった。俺はそれを確認する為そこにしゃがみ込むと、その物体の20cmの所まで顔を近づけた...。財布?俺はそれを手に取ると、暗がりの中よく見てみた。どうやら黒い財布のようだ。すかさず中を開けると、金は一銭も入っておらず、いくつかのクレジットカードのような物が入っているだけだった。と、その中に、運転免許証が入っている事に気がついた。もしや...俺はそれを含めたカードをその財布に入れ直すと、その黒い財布をズボンの右ポケットにしまい込み、家まで自転車を飛ばした。もしかしたらこれが奴らの手掛かりになるのかもしれない。そう思うと、俺のペダルをこぐ足も自然に強くなった。その時の俺は、とても興奮していた。

 いつもより早い時間に家へと戻って来ると、すかさず2階に駆け上がり、自分の部屋へ入った。服の下に流れる汗も気にせず、ズボンの右ポケットから黒い財布を取り出した。中を開けると運転免許証だけを抜き取り、外は暗く見えにくかった為、改めてじっくりと見てみた。顔写真を見てみると、30代後半だろうか、どこにでもいるような短髪の男がそこには写っていた。住所は...近い!やはりあの土手の近くに住んでいるようだ。名前は『青葉拓志』。生年月日を見ると、歳は『36』だった。

 俺が思うに、この男も俺と同じようにあの土手を通りかかった時に何者かに襲われ、そして財布を抜き取られ、中身だけ取られて財布だけ投げ捨てられたのだろう。俺のこの考えが確かなら...。

 まずは明日この家に行って確かめてくるしかない。

 俺はやつらと再び遭遇する。明日この男に会えばと、なぜかそのように確信していた。

 俺はエアコンのスイッチを入れ、ベットに仰向けになり、天井の一点を見つめ、そして拳を握りしめた。

第14回へ続く...

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