正体と思い違い
最近……忙し過ぎて辛すぎる
ピリッとした緊張感が漂う中に、対峙する2人。
それを遠巻きに眺めながら、嫌そうな顔をこちらに向ける野次馬達。
そんな空気の中ーーー先に動いたのは火球使いの方だった。
「ファイア・バレット!!!」
火球は通用しないと考えて『ファイア・ボール』ではなく別の技を使って来た。どうやら学習能力は多少あるらしい
手のひらに赤い魔力が集約。その手を振り抜く事により、炎の拡散弾を飛ばす魔法のようだ
火球使いーーー改め、炎使いは俺の後ろにいる野次馬など全く考慮せずに、先程の様に直接的に飛ばして来た。
ほんの少しだけ、後ろに目を向けて野次馬の様子を見る。アイツらは俺がこの攻撃を食らうと思っているのか、自分達の方向に魔法が飛んできていても逃げる素振りが無い。子どもの目を塞いでる人は何人かいるみたいだが
………何勘違いしてんだろ?コイツら
俺がこんな火花程度に当たるとでも?
襲い来る拡散火弾を一瞥してから左側に跳躍して躱す。俺からしたら避ける作業にも手加減しなければ地面ごと吹き飛ばしてしまう。その為に3割を意識して避けている。
しかしながら、『速度16027』の3割くらいは大体5000程度。この世界では速度2000で常人は既に目で追う事は出来ないーーーつまり、知覚出来ない速さの倍のスピードで動く俺は、まさに瞬間移動と呼べる領域に達していた。
つまり、どういうことかというとーーー
「ま、魔法がこっちに飛んで⁉︎」
「ギャァァァァァーーー!!!」
「誰か、誰か!!駐屯騎士団と水魔法使える奴を呼んできてくれ!」
避ける素ぶりを認識出来ない奴らは、躱す事も身構える事も叶わずに、『ただ俺の後ろにいた』という理由だけでとばっちりを受ける羽目になっていた。
てか、駐屯騎士団って何だ?警察みたいなもんか?そんなの居るなら早く呼んでくれればいいのに……観戦なんかしてるから
「………貴様、何故避けられる?」
後ろの方で聞こえる阿鼻叫喚に1%くらい同情(嘘)していたら、炎使いが若干動揺しながら疑問を投げかけてきた。
お、会話が成立するタイプか、それはいいな。
「いや、その魔法お前が打ったんだろ?」
「後ろに人が居たのに気づかなかったのか?」
「最初から気づいていたけど?」
「ならば、何故尚更避けた⁉︎貴様は人を助ける人間の筈だろうが⁉︎」
………前言撤回、コイツ何言ってんの?
苛立ち、喚きながらフード越しに頭を掻き毟る相手をポーカンと見つめていたら、顔を隠していたフードが取れてしまった。
「…………お前、は。」
「…………何故だ、何故奴らを庇わない」
炎使いの正体はーーーリューネに一方的な暴力を振るったクズ男だった。
クズ男には、勝算があった。リューネみたいな『呪われた子』を助ける様なお人好しだ。それならば間接的に人質を取ればあの超高速でも約に立たないだろう。
そうすれば、いくら速くてもあの野郎に簡単に復讐する事ができる。そう確信して臨んだのだ。
しかしながら、誤算と思い違いがあった。
まず、誠が『人なんて助けない人物だった事』
リューネが例外的に助けられただけで実際には思っている様なお人好しではなかった。
そして、誠が本気で助けるつもりだったら、そもそも詠唱などさせる事無く吹き飛ばしてしまう事。彼は目立つ事は嫌いだが、それ以上に自分の気に入らない事がもっと不快に感じる。
それを解消する為ならば、どんな手段も厭わないくらいに歪んで居る事。
喧嘩っ早くて、自信過剰な男は自分の考えを疑う事無く即座に実行に移した。コレが圧倒的に敗因になった。最も情報を集めていたら挑む事すらなかったかもしれないが……
理解出来ずに怒り狂う男と、会話が成立しないと悟って遠い目をしている誠の対決はーーー
「駐屯騎士団だ!!!双方、武力行使を辞めろ!!!」
第三者による仲裁で、幕を下ろす事になった
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