第四十五話:新章開幕、恐怖の三角関係(マルチスレッド・ラブ)
真のデスマーチはここから始まる
「少しだけ……本当に少しだけ、憧れてたのよ、バカ!!」
天才ゆえに孤独だったエレノアが、健二の胸に頭を押し付けて精一杯の「憧れ」を告白する。世界を救った最強のハッカーである健二は、30歳チェリーのコミュ障を発揮して「え、あ、はい……」と完全にフリーズしていた。
世界は美しく再生し、メモリリークも完全解消。あとは大団円を迎えるだけ――誰もがそう思った、その時だった。
そんな感動的な空気の最中。
健二の背後から、「ゴゴゴゴゴ……」と、地竜の襲撃よりも遥かに恐ろしいマナのプレッシャーが立ち昇った。
「……エレノア様」
冷徹な、しかし確実に怒りを含んだ声。
白銀の聖剣を鞘に収めたセリアが、いつの間にか健二の真横に立ち、冷たい笑顔でエレノアを見下ろしていた。
「健二様の書くコード(お体)が世界一美しいこと、そして素晴らしい殿方であることは、妻である私が一番よく理解しております。ですが――」
セリアは健二の右腕をギュッと抱きしめ、エレノアから引き離すように引き寄せた。
「これ以上の『割り込み処理(不倫)』は、我が聖剣の仕様(物理)により一括消去いたしますが?」
「な、なによその女面! あんたただのNPC(護衛)のくせに生意気よ! 私の方が、ケンジと構造的(ロジック的)に深く繋がってるんだから!」
エレノアが負けじと健二の左腕をガシッと掴む。
「構造的? 健二様と私はすでに夜のデバッグ(未遂)を済ませた関係。新参のバグ(幼女)は王宮へお帰りください」
「よ、幼女って言うなー! 私は16歳! この国じゃ結婚できる年齢よ! あんたこそ重い仕様書(重い女)のくせに!」
「あ、あの、二人とも? 俺の腕が物理的に引きちぎれそうなんだけど……」
左右から猛烈な力で引っ張られ、健二のHPゲージがみるみる減っていく。
世界を救った最強のハッカーKenji。しかし、彼の前に新たに立ち塞がったのは、「正妻騎士」と「ツンデレ天才少女」による、互換性ゼロの泥沼三角関係だった。
「健二様、どちらのOS(女)をメインシステムに採用するのですか?」
「ケンジ、私を選びなさいよね! 最適化してあげるから!」
「だ、誰か……仕様変更(助けて)くれぇぇぇ!!」
地底の祭壇に、健二の悲痛な叫びが響き渡る。
世界のバグは直っても、健二のプライベートのバグ(修羅場)は、さらに複雑にもつれ合っていくのだった――。
(30歳エンジニア、異世界へ 〜完〜 ……? いや、デバッグは終わらない!)




