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第十九話「由来」

静かな場所だった。


 音が、ほとんどない。


 犬塚信乃は、気づけばそこに立っていた。


 現実ではない。


 だが、夢でもない。


 “呼ばれた”。


 そう理解する。


 前方。


 霧の中に、あの姿。


 伏姫。


 今度は、はっきりと向き合う。

挿絵(By みてみん)

 「……あんたは何なんだ」


 問い。


 沈黙。


 だが——


 今度は、返ってきた。


 声ではない。


 “記憶”。


 流れ込む。


 森。


 祠。


 珠。


 そして——


 “祈り”。


 人ではない何かに対して。


 守るための。


 繋ぐための。


 「……これが、始まりか」


 理解が、形になる。


 珠。


 それは、力ではなかった。


 “記録”だ。


 人と何かを繋ぐための、


 媒体。


 だが。


 それは、変わった。


 観測され、


 解析され、


 最適化された。


 今の“システム”に。


 伏姫の視線が、揺れる。


 悲しみ。


 それに近い何か。


 「……奪われたのか」


 答えはない。


 だが。


 否定もない。


 つまり——


 そういうことだ。


 これは、もともと。


 人の側のものだった。


 それが。


 “向こう側”に利用されている。


 信乃は、拳を握る。


 「……取り戻せるのか」


 伏姫が、わずかに目を細める。


 その意味は——


 簡単ではない。


 だが。


 “可能性はある”。


 次の瞬間。


 世界が崩れる。


 現実へ戻される。


 残ったのは、一つだけ。


 “これは奪還の話でもある”

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