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物語から伝説へ  作者: 愚者の夢
一章…始まり
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一ー参話・・・・・継承の証

 王家の森の中でも塔の周りには不思議な力によって、魔物などが近寄らない一種の安全地帯となっている。平和な雰囲気の中、僕達はセシリアの準備が終わるのを待った。


「私はこれから塔の中に入ります。」


 セシリアの表情は強張り、覚悟を決めた顔の様だ。その顔を見て心配になった僕はセシリアに危険が無いのかと聞いてみた。


「ええ、大丈夫です。中では少し試されることがあるだけです。」


「サークさん、私たちはセシリア様のお帰りをお待ちしましょう。」


「そうそう、セシリアの事を心配するのは分かるが、過保護になりすぎだぞ~ …俺たちは信じて待つ!だ。」


 他の二人からも言われ、もう一度セシリアの顔を見る。




 ……僕は昨日の夜に聞いた話を思い出していた。




 僕は家の外で夜空を見上げながら今日の出来事を思い返していた。暫くすると僕の方へ近づく気配がする。近づいてきたカルロは僕に声を掛けてきた。それから僕達は世間話を交えながら話し込んだ。 …今まで森で生活をしていた僕にとって王都がどんな所か、好奇心からカルロの話を聞いていた。


 不意にカルロが真剣な雰囲気で話の内容を変えてきた。


「…今日は本当に世話になった。改めて感謝する。」


 カルロが語り始めた内容は部外者の僕が聞いてはいけない事のはずだが…


「…セシリア様は知っての通りこの国の王女だ。今回の旅の目的は王位継承の為、王家の塔で継承の証を手に入れることだ。」


「何故、それを僕に教えるのですか? 秘密では?」


「今更だな。サークはセシリアの正体を知ってしまったし、この森の守り人ならある程度の予測はつくだろう? それに味方になってくれると助かるからな。」


「王位継承の為と言いましたが、普通そのまま継承されるのではないのですか? それとも何か事情があるのですか?」


「普通ならそうだ。しかし、セシリアにはとある事情があるのだ。少し長くなるがセシリアの小さい頃は、『全ての神に愛され者』と呼ばれるくらい、光の魔法以外の火・水・風・土の属性魔法も全て同じ様に高レベルで扱えた。」


 僕は魔法を扱えないが、生来の属性魔法以外を扱う難しさは、知識として知っている。2つの属性を操る才能だけでも、周りから賞賛を受けるのに…


「全ての属性をですか…」


 驚きを通り越し、呟きしか出なかった。


「自慢じゃないが、俺は3属性を扱えるぞ!」


 カルロは少し胸を張りながら言った。


「え! 凄いじゃないですか!」


 今度は素直に驚けた。


「話がそれたから戻すが、今から約8年ぐらい前のある日を境に魔法が使えなくなってしまった。今では努力して、多少使えるようになったが素人に毛が生えた程度だ。そもそも王族の血筋は魔力が高く魔法に長けた者が多い。それにより他の者より秀でた存在として王威を守ってきた。」


「そんな背景があり、多少の魔法が使える程度のセシリアでは王に相応しくないという考えの者や、セシリアと別の王族筋の男との政略結婚の話が出てきている。結婚話については、王妃様が頑なに拒否をされているが…」


「そういった輩を抑える為に継承の証を取りに行くのが目的だ。この旅の途中で過激な輩の邪魔が入るかもしれないから、協力をお願いする。」


 カルロは僕に向かって、頭を下げた。


「わかりました。僕も乗りかかった船ですから、協力させてもらいます。」


 僕は笑顔で返事をした。






 塔には入口となる扉などが無く、昔からどうやって入るのか疑問に思っていたが、セシリアは塔の前に立ち、胸の前で手を組み何かを唱えた。


「我、光の血筋に連なる者也、我が声を聞き中へと導き給へ。」


 するとセシリアの足下に魔方陣が現れて光りだした。魔方陣を中心に辺り一面が光に包まれ、僕は眩しさに目を綴じてしまった。




 …辺り一面に広がった光が徐々に収まってきた。


「さて、セシリア様が戻られるまで、私たちはここで待ちましょう。」


「そうだな。サーク…あれ?どこに行った?」


 カルロとレイラは辺りを探したが、サークの姿はなかった。




 …僕は眩しさに目が眩んでしまったが少しづつ目が慣れてきた。しかし、周りを確認すると石壁に囲まれた空間にセシリアと一緒に居た。


「あれ?ここ塔の中だよね。」


「そうです。…え! 何故サークさんが中に入っているのですか?」


 セシリアは驚きの声を上げた。


「う~ん…何故って言われても困るが…」


 僕は少し考えたが両手を上げお手上げの仕草をしながら答えた。


「取り合えず、目的を果たそうか。」


「そうですね。ここで話していても、答えが出できませんし。」


「塔の中で何をすれば良いのかな?」


 周りを見回してみても、上に続く階段があるだけであった。


「塔の最上階に証を手に入れる儀式をする部屋が在ります。先ずはそこを目指しましょう。」


 僕達は、最上階を目指して塔を歩きだした。塔の中は静かで各階に続く螺旋階段があるだけで単純な造りになっている。僕は階段を上りながらセシリアに話し掛けた。


「セシリアは証を取って、どうしたいの?」


「急にどうしたのですか?」


「昨日の夜、カルロに事情を聞いたよ。今のままでは王位を継承するのが難しいから、皆が納得する様に証を取りに来ていると。」


「はい。その通りです。」


「別の王族の人に王位を、譲っても良いのでは? それとも、王位を得て何かしたい事でもあるの?」


「それは…もしお城の中がまとまっていれば、誰でも良いと思います。しかし政治は色々な思惑で動いています。それは全て良い思いだけではないのです。」


 セシリアは悔しそうな表情を浮かべて話している。


「恥ずかしながら、中には民の暮らしより自分の利益を優先しようと考える者もいます。」


「私は全ての民が笑って暮らせる国にしたいのです。それに誰とかは覚えていませんが、小さな頃に交わした約束を守りたいのです。」


 セシリアは決意の固めた表情で、熱く語った。僕は、セシリアの表情を見て、いつもの可愛らしい表情でなく、覚悟を決めた美しさを見た。そしてこの方に仕えて、理想を叶えてあげたいと思った。それは何故か記憶の片隅にあった思いと重なる。


「セシリア様、あなた様の理想を叶える為、私を仕えさせて下さい。」


 僕は、セシリアに向かって膝を付き、頭を下げた。


「…サークさん! そんな事はやめて下さい。貴方は私の恩人で仲間です。手伝って頂けるのは嬉しいですが、仲間としてお願いします。」


 セシリアは僕に近づいてきて、僕を起こして言った。


「しかし、セシリア様は王位継承者としての身分があります。いくら王家に縁のある家系でも、平民である私が、仲間として側にいることはできません。」


 セシリアは悲しそうな顔をし、顔を左右に振った。


「そんなことはありません。私は身分の違いで人の全てが決まると思っていません。身分の違いで、やるべき事の責任が変わるかもしれませんが、人と人は同じだと思います。」


 セシリアの瞳には涙が溜まっていた。


「わかったよ。今まで通りにするよ。セシリア。」


 僕は指先でセシリアの頬を伝う涙を拭い、微笑を向けた。


「はい! そうして下さい。」


 セシリアも笑顔で返してくれた。




 …二人で最上階の部屋の前までやって来た。


「ここが目的の部屋だね」


 セシリアは頷き返す。


「準備ができたら入ろう。」


「ひゃい!」


 セシリアは緊張の為か、少し上擦った声で返事した。


「セシリア、落ち着いて。僕が側にいるよ。」


 セシリアは、落ち着く為に目を閉じ深呼吸を始めた。


 スーー ハーーー スーー ハーーー


 目を開け、覚悟を決めたようだ。


「サークさん、入りましょう。」


 僕はセシリアの横に寄った。


「ああ。行こう。」


「あ! 手を繋いでも良いですか?」


 セシリアは顔を赤く染め、僕の手を握ってきた。


「森で手を繋いだ時に、安心し気持ちが落ち着いたので…」


「いいよ。じゃ、中に入ろう。」


「はい!」


 部屋の中に入ると、中央に魔方陣らしき円陣があり、周りの壁には呪印が施されている。


 僕は部屋の様相を眺めていると


「サークさん、私は円陣の中で儀式を行います。少し待っていて下さい。」


「ああ。気をつけて。」


 僕は何があってもセシリアを守れるように、辺りを警戒した。


 セシリアは円陣の中心で両膝を付き、両手を胸の前で組んだ。


「我は光の末裔也。我は後継者の証を求めし者。光の女神を我が声を聞き届け、我の資格を試せ。」


 セシリアが祈りを捧げて、少し経つと凛として透き通る様な声が聞こえてきた。


『…我が祝福を受けし末裔の子よ。そなたの資格、我が力を持って試そう。』


 声が終るのと同時にセシリアの前に光が現れ、そのままセシリアの体内に入っていった。


 セシリアは苦しみながら、前に倒れた。


「セシリア!」


 僕はセシリアの元に駆け寄り、セシリアを抱きかかえた。


『少年よ、大丈夫だ。すぐに治まる。』


 光の神が言った通り、セシリアの様子は治まってきた。


「…うんん」


「セシリア気が付いた?体におかしいところとかない?」


「ええ、特にないです。…ええ~!」


 セシリアは自分がサークに、抱きかかえられている事に気が付き、慌てて離れた。


『我が祝福を受けし子よ。そなたには封印がされておる。その為本来の力を発揮できない。封印は我が力でも解くことは出来ぬ。しかし証を授けると同時に、光魔法については封印の影響を少しでも抑えられるようにした。』


『少年よ、名は?』


 いきなり僕に話しかけられて驚いたが、何とか返事を返した。


「私の名はサークと申します。」


『サーク殿、貴方の運命はこの先想像の及ばない道が続きます。苦難の道程になるでしょうが、諦めず進んで行くように…』


「私の運命とは? 何かご存知なのですか。よろしければ教えてもらえませんか?」


『お教えできません。しかし、これだけは告げときます。この世は全て表裏一体で成り立っています。一つだけが正しい事はありません。多くの事を知り、広い考えで判断していって下さい。』


「…わかりました。アルテーシア様の意思に添えるか分かりませんが、自分で考えて悔いのない判断をしていきます。」


『今はそれで良いです。では、貴方たちに幸あらんことを…』


 そう言い残し、気配は去っていった。


 僕はこれから先の何が起きるか分からないが、何が起きても良い様に覚悟をした。


「サークさん! どうしてですか?」


「分からないが、神様の忠告だから真摯に受け止めておくよ。」


「いえ! そう言うことでなく、いや、それもありますが、何故にアルテーシア様の御名をご存知なのですか?」


「え! …そういえば何でだろう?」


 神々の御名は、信仰される中心の位の高い者しか、知らないのが普通である。


 故に、一般人は御名は知らずに信仰をしている。


「何故か自然に出てきたんだ。」


「そうですか。」


 セシリアは納得出来ません! って顔をしてこちらを見ている。


 僕は答える事も出来ないので、話題を変えた。


「それより、証を手に入れたなら、急いで二人の元に戻ろう。きっと心配しているからね。」


「そうですね。急いで戻りましょう。」


 僕らは、塔を降りていった。


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