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旅する電化の奔走。  作者: 未完畑の柑結
殿下の出発
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14/14

いよいよ一旦ゴール!!…あれ?

「着いた〜!」

「よし、寝よう」

「だから公爵まだシャワー入ってないって」

「あ、そっか…」

「私先ね〜」

ぱっとシャワーを済ませ、足早にベッドに入る。

少しゴワゴワとした布に包まれ、意識を手放した。

次の朝、私が目を覚ますと、公爵がすごく悲しそうにしていた。

「え、なにどうしたの!?」

「殿下ぁ…ベッドが…」

「ベッドがなに?」

「固い…ふわふわじゃない…返して…ふわふわ」

そう言って項垂れた。

そっか、公爵はふわふわ中毒なのか。

「仕方ないよ、全部のホテルがふわふわってわけじゃないし」

「でもぉ…」

どんだけふわふわが好きなんだ、この子。

「ふわふわじゃなきゃ寝れないよ…」

「え、そんなに!?」

「全然寝れてない…」

「移動中に回収してください…」

もうすっかり荷物をまとめるのも早くなった。

そしていよいよ最後の目的地、ジュントスに向かう。

最後に私達がそこでするのは、お買い物!

やっぱりお土産というか、旅の記念は大事だから。

ここからはそう離れていない、すぐにジュントスに到着し、お買い物を初めた。

食べ物は買っても意味ない…と思ったけど、家主に渡さなきゃか。

おみやげコーナーをぐるぐる回って、選んでいく。

「誰かにお土産渡さないの?」

「いや…あたし渡すような人いないし…」

「ノクが居るじゃん」

「あ確かに」

「どれにしようかな〜」

「…そういえば、殿下はみんなにも渡すんだね」

「みんな…?ああ、あの家のね。色々お世話になったし。」

「偉いね、あたしはいいや」

「ただ多すぎて悩む」

「頑張れ」

ポット達には…クエン酸でもあげよう。

デンちゃんには…って、考えていたらきりがない。

よし、みんなに渡せる系のものをいっぱい買おう。

例えばこの潤滑油とか。あとはバッテリーなんかも良いな。

家主には…人間が欲しいものがよくわかんない。食べ物にしとこう。

あ、なんだろうあのポスター。

”天然!巨大ブロッコリー”

うん、あれにしよう。あとは自分のだな。

ここはブロッコリーが有名らしい。ブロッコリーのぬいぐるみがいっぱいだ。

よし、これにしよう。ちょうど公爵も決まったようだ。

「なににした?」

「この可愛い鳥のやつ!」

「えかわいい!ジュントスバト?っていうの?」

「この辺に居る鳩の一種なんだって〜」

「へ〜、私はこれ!ブロッコリーのぬいぐるみを3種」

「3種!?ブロッコリーを!?」

「え、変?」

「すごく変」

「え〜、そんな事ないって」

「なかったら言ってないのよ」

「そういえば、ノクになにあげるの?」

「センサーを拭くやつ」

「私は潤滑油かな」

「じゃ、お会計行きますか」

「うん!」

会計も終わり、増えた荷物を抱えまだ日の浅い外を歩く。

駅につき、あの街へ行く電車を待つ。

時刻表と、駅内にある時計を頻繁に確認してしまう。

もう、一段階区切りがついてしまう。

まだ終わりたくない。続けたい。

でもここまで来てしまった。この国は一周した。

…初めは家出のつもりだったのに、いつしか旅になって。

あの日見た空にもたどり着けて。公爵、レンピアにも会えた。

…電車が来てしまった。二台、少しためらった。意を決して乗り込み、すぐに発車。

「…もう、終わっちゃうね」

「うん」

「私、これからどうしよう」

「少なくとも、あたしとはしばしのお別れ…か。」

「そうだね」

「…あの街に戻るの?」

「それも、一つの手かなとは思ってる」

「そっか」

「少なくともお土産渡したいし」

「…」

「…」

会話の間が辛い。

普段のテンポから一転して、気まずそうなそんなリズムの会話になってしまう。

「もう着くよ」

「随分と久しぶりに来たな、ここ」

「私も、って言おうとしたけど公爵には敵わないや」

「もう5、6年だからね」

駅を出て、家までの道を行く。

途中の公園で、公爵が立ち止まる。

「あたしはいいや。」

「なんで、行かないの?」

「うん、まだ…戻れる気はしなくってさ。」

「…じゃあ、ここでお別れ?」

「そうなるのかな。」

「…またね!」

「うん。…いつかまた、旅の伴侶に選んでくれる?」

「もちろん」

「…ありがと!」

そう言って、彼女は公園にとどまった。

数分、思いに耽っていた。

いろんなことがあって、後悔もたくさん、楽しいこともたくさん。

次は、いつなら旅に出られるかな。

気づけば、あの家の戸の前に居た。

鍵を取り出し、ガチャリ。

出迎えたのは家主だった。

「おかえり。…あいつはいないのか」

「うん。まだ来れる気分にはなれないみたい」

「そうか、なら仕方ない。」

「はいこれ」

「でかいって、しかもなんでブロッコリーなんだよ!?」

「人間の欲しいものなんてわかんない!」

「初めてのお土産がこれか…」

「そうだよ?」

「ま、ネイらしいな。ありがとう」

そういうと、家の奥を向いて言った。

「お前ら〜、大好きな殿下様のお帰りだぞ〜」

口々に「え、まじ?」だとか「おかえり〜!!」だとか、

いろんな言葉とともに、無数の足音がする。駆け寄ってくる。

「「「おかえり!!!」」」」「おかえりー」「「おかー」」

「ただいま!みんな取っていっていいよ、これ」

そういうと、わちゃわちゃ私のお土産を奪い合う。

「で、これからどうするんだ?」

「わかんない。それより、ちょっと散歩でも行ってくる!」

「いってらっしゃい、早すぎだろ再出発。」

この街だって回りたい。あの公園だって、まともに行ったことないし。

遊具とか色々楽しそうだったし、行ってみよう。

着くと、見覚えのある影が。

「あれ、なんでいるの公爵」

「あはは…行く当てないし、ここで黄昏れてた」

「ふーん…私も付き合わせて!」

「いいよ!…色々あったね」

「うん」

「あたし、終わりたくないな〜…

 シンプルに、一番気を許せる友達が殿下だけでさ。」

「あ、そうなんだ。嬉し〜」

「だから、一緒に居た〜い!」

「もうシェアハウスする?」

なんて、冗談がよほど刺さったんだろう。

「いいねそれ!!部屋、探しに行くよ!!」

今までにないくらい強く、私のコードを引く。

「えちょちょ、冗談のつもりだったんだけど!!」

「私にとっては違ったの!!」

「嫌じゃないけどいきなりすぎるって〜!!」

やっぱりこうでなくちゃ!

まだまだ、この世界には未踏の地がある!

こんなところで、終わりなんて許せない、許さない!

この世界をも超えて、

すべての世界のひとつなぎの快晴の下を、ただ2台は走り抜けた。

これはチェックポイントに過ぎない。

ゴールなんてない、一生続く旅の”第2回目のスタート”だ。

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