いよいよ一旦ゴール!!…あれ?
「着いた〜!」
「よし、寝よう」
「だから公爵まだシャワー入ってないって」
「あ、そっか…」
「私先ね〜」
ぱっとシャワーを済ませ、足早にベッドに入る。
少しゴワゴワとした布に包まれ、意識を手放した。
次の朝、私が目を覚ますと、公爵がすごく悲しそうにしていた。
「え、なにどうしたの!?」
「殿下ぁ…ベッドが…」
「ベッドがなに?」
「固い…ふわふわじゃない…返して…ふわふわ」
そう言って項垂れた。
そっか、公爵はふわふわ中毒なのか。
「仕方ないよ、全部のホテルがふわふわってわけじゃないし」
「でもぉ…」
どんだけふわふわが好きなんだ、この子。
「ふわふわじゃなきゃ寝れないよ…」
「え、そんなに!?」
「全然寝れてない…」
「移動中に回収してください…」
もうすっかり荷物をまとめるのも早くなった。
そしていよいよ最後の目的地、ジュントスに向かう。
最後に私達がそこでするのは、お買い物!
やっぱりお土産というか、旅の記念は大事だから。
ここからはそう離れていない、すぐにジュントスに到着し、お買い物を初めた。
食べ物は買っても意味ない…と思ったけど、家主に渡さなきゃか。
おみやげコーナーをぐるぐる回って、選んでいく。
「誰かにお土産渡さないの?」
「いや…あたし渡すような人いないし…」
「ノクが居るじゃん」
「あ確かに」
「どれにしようかな〜」
「…そういえば、殿下はみんなにも渡すんだね」
「みんな…?ああ、あの家のね。色々お世話になったし。」
「偉いね、あたしはいいや」
「ただ多すぎて悩む」
「頑張れ」
ポット達には…クエン酸でもあげよう。
デンちゃんには…って、考えていたらきりがない。
よし、みんなに渡せる系のものをいっぱい買おう。
例えばこの潤滑油とか。あとはバッテリーなんかも良いな。
家主には…人間が欲しいものがよくわかんない。食べ物にしとこう。
あ、なんだろうあのポスター。
”天然!巨大ブロッコリー”
うん、あれにしよう。あとは自分のだな。
ここはブロッコリーが有名らしい。ブロッコリーのぬいぐるみがいっぱいだ。
よし、これにしよう。ちょうど公爵も決まったようだ。
「なににした?」
「この可愛い鳥のやつ!」
「えかわいい!ジュントスバト?っていうの?」
「この辺に居る鳩の一種なんだって〜」
「へ〜、私はこれ!ブロッコリーのぬいぐるみを3種」
「3種!?ブロッコリーを!?」
「え、変?」
「すごく変」
「え〜、そんな事ないって」
「なかったら言ってないのよ」
「そういえば、ノクになにあげるの?」
「センサーを拭くやつ」
「私は潤滑油かな」
「じゃ、お会計行きますか」
「うん!」
会計も終わり、増えた荷物を抱えまだ日の浅い外を歩く。
駅につき、あの街へ行く電車を待つ。
時刻表と、駅内にある時計を頻繁に確認してしまう。
もう、一段階区切りがついてしまう。
まだ終わりたくない。続けたい。
でもここまで来てしまった。この国は一周した。
…初めは家出のつもりだったのに、いつしか旅になって。
あの日見た空にもたどり着けて。公爵、レンピアにも会えた。
…電車が来てしまった。二台、少しためらった。意を決して乗り込み、すぐに発車。
「…もう、終わっちゃうね」
「うん」
「私、これからどうしよう」
「少なくとも、あたしとはしばしのお別れ…か。」
「そうだね」
「…あの街に戻るの?」
「それも、一つの手かなとは思ってる」
「そっか」
「少なくともお土産渡したいし」
「…」
「…」
会話の間が辛い。
普段のテンポから一転して、気まずそうなそんなリズムの会話になってしまう。
「もう着くよ」
「随分と久しぶりに来たな、ここ」
「私も、って言おうとしたけど公爵には敵わないや」
「もう5、6年だからね」
駅を出て、家までの道を行く。
途中の公園で、公爵が立ち止まる。
「あたしはいいや。」
「なんで、行かないの?」
「うん、まだ…戻れる気はしなくってさ。」
「…じゃあ、ここでお別れ?」
「そうなるのかな。」
「…またね!」
「うん。…いつかまた、旅の伴侶に選んでくれる?」
「もちろん」
「…ありがと!」
そう言って、彼女は公園にとどまった。
数分、思いに耽っていた。
いろんなことがあって、後悔もたくさん、楽しいこともたくさん。
次は、いつなら旅に出られるかな。
気づけば、あの家の戸の前に居た。
鍵を取り出し、ガチャリ。
出迎えたのは家主だった。
「おかえり。…あいつはいないのか」
「うん。まだ来れる気分にはなれないみたい」
「そうか、なら仕方ない。」
「はいこれ」
「でかいって、しかもなんでブロッコリーなんだよ!?」
「人間の欲しいものなんてわかんない!」
「初めてのお土産がこれか…」
「そうだよ?」
「ま、ネイらしいな。ありがとう」
そういうと、家の奥を向いて言った。
「お前ら〜、大好きな殿下様のお帰りだぞ〜」
口々に「え、まじ?」だとか「おかえり〜!!」だとか、
いろんな言葉とともに、無数の足音がする。駆け寄ってくる。
「「「おかえり!!!」」」」「おかえりー」「「おかー」」
「ただいま!みんな取っていっていいよ、これ」
そういうと、わちゃわちゃ私のお土産を奪い合う。
「で、これからどうするんだ?」
「わかんない。それより、ちょっと散歩でも行ってくる!」
「いってらっしゃい、早すぎだろ再出発。」
この街だって回りたい。あの公園だって、まともに行ったことないし。
遊具とか色々楽しそうだったし、行ってみよう。
着くと、見覚えのある影が。
「あれ、なんでいるの公爵」
「あはは…行く当てないし、ここで黄昏れてた」
「ふーん…私も付き合わせて!」
「いいよ!…色々あったね」
「うん」
「あたし、終わりたくないな〜…
シンプルに、一番気を許せる友達が殿下だけでさ。」
「あ、そうなんだ。嬉し〜」
「だから、一緒に居た〜い!」
「もうシェアハウスする?」
なんて、冗談がよほど刺さったんだろう。
「いいねそれ!!部屋、探しに行くよ!!」
今までにないくらい強く、私のコードを引く。
「えちょちょ、冗談のつもりだったんだけど!!」
「私にとっては違ったの!!」
「嫌じゃないけどいきなりすぎるって〜!!」
やっぱりこうでなくちゃ!
まだまだ、この世界には未踏の地がある!
こんなところで、終わりなんて許せない、許さない!
この世界をも超えて、
すべての世界のひとつなぎの快晴の下を、ただ2台は走り抜けた。
これはチェックポイントに過ぎない。
ゴールなんてない、一生続く旅の”第2回目のスタート”だ。




