ラン・フォー・マイ・ジャーニー!
!注意!
この世界の電化製品は
最低でも高校卒業、製造元によっては大学卒業程度の教育をされてから出荷されるようです。
出てくる場所は別の並行世界であり実在が確認できないため、
私達の世界におけるフィクションであり、同名の実在の場所との関連はないとされています。
申し上げます、申し上げまくります。
あの家主はひっどい!!ひどい!!
もーマジで耐えきれない、こんなところにはもう居られない!!
まず第一にスケジュールがひどい。
あいつが寝てる間、家にいる間、更には居ないときでさえ働かされる。
そういう点ではエアコンさんのほうが過酷かも知れないけど、
エアコンさんは掃除をしてもらえる。
でも私なんて1年に1回拭かれるかどうかで、
窓際に置かれるから黄ばむし、ただでさえこの町は年がら年中暑いのに
ちょっと比較的涼しい季節は収納されて
暑苦しいし埃っぽいクローゼットに押し込まれる。
極めつけには外出禁止。
なんで私の家はダメなんだ。他の家の子はみんな出れてるのに。
いろんなことが原因で前々から超キレてたのだが、
家出しようというところまではいかなかった。
外には出たい。でも、やっぱり怖い。友達だって居ないわけだし。
ただ、その不安さえも吹き飛ばすような出来事があった。
愛を叫ぶ虫の声が耳に入り、家主への怒りに燃える日の午後。
ふと、なんの気なしに窓の外を見上げた。
どこまでも続く青いキャンパスに、暑さと眩しさが塗り拡げられていて。
手掛けたのは夏だった。
それを見た瞬間、
「あの空のもとを歩けたら…」なんて
思ってしまったら。
それと同時に
「もうこれ以降、今いる場所でこの空を見ることは叶わない」なんて
思ってしまったら、旅に出るしかないと決意した。
そして今日、私はこの監獄の扉の目の前にいる。
そしてそのドアノブを回した!!
「ガチャリ」と音がした。慎重にその扉を押してみたらば、
合いていく隙間から、眩しさが飛び込んでいく。
完全に開け放つと、瞬く間に私の体は熱気と湿度に覆われる。
第一歩を踏み込んだ。
「これが…外!!」
溢れかえりそうになる感情を必死で抑え、私は駅へと向かった。
少し駆け足な足音が聞こえたのはその後すぐだった。
振り返って確認すると、家主が追ってきている!
「うぇぇぇぇ!!??」
言いながら駆けた。
「待って〜!!」とか「ちょ、1回止まってよ!!?」
「え〜こんな止まってくれないことあるう!?」とかなんとか言ってたな。
そんなの気にしない、もしこれで捕まりでもしたら最悪だ。
走るのに向いた設計はしていない。
ちょっとでも気を抜いた走りをすれば、追いつかれる!
とにかく必死で走った。
流れていく景色すべてが面白い。
すぐそこの角にパン屋さんがあって。
謎の雑貨屋連続ゾーンやらデカい本屋やら飲み屋やら。
新鮮さを噛み締め、外の最高さを実感する。
まだ家主は追ってくる。どんだけ執念深いんだ。
踏みしめる地面の感触が嬉しい。
しっかりと舗装された道も未舗装の道も、
固く冷たいフローリングよりもずっと優しくを足を押し出してくれる。
7月の空気を切り裂いて、駅を、ピエニ駅を目指した。
小さいけれど、私が行きたい場所に行くための、大事なチェックポイント。
朝から賑わう商店街を、微笑みの目で見られながら駆け抜けた。
私の旅のために、走り続けた。
「あ〜!幸先の悪いスタートだなあ〜!」
でも楽しかった。誰かから逃げる以前に、
家から外に出て歩き走ることが初めてだったから。
それすらも楽しい。嬉しい。もっと早く知っておきたかった。
その分も全力で楽しもう!!
いろんなことを考えて、そうやってずーっと進んで、
ピエニ駅にたどり着く頃にはもう家主の影はなく。
私は路線図を眺め、最初に行くと決めた場所…
「オ・イニツィオ中央駅!」
…を目指した。
空は澄んだ青をしていた。そこに蒸しパンの山のように積み重なった
もこもこの雲がうかんでいた。
主人公:ネイチャー⋯扇風機の女の子。外に対してとんでもないほどのあこがれを持っている。
外に出ることと、仲の良かった友達が大好き。




