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「帰路と長い沈黙」
吉野は
サクラナと歩きながら何を話そうか考えた。
しかし、
言葉は浮かばなかった。
しばらく、沈黙が続いた。
何か言わないと。
せっかく二人きりになれたのに。
吉野は焦った。
しかし、
焦れば、焦るほど言葉が出ない。
そうするうちに、
○○駅が見えてきた。
すると、
突然サクラナが、
「あんた、頭が痛いっていうの嘘でしょ?」
と
真面目な顔で尋ねてきた。
吉野が唖し黙っていると、
「やっぱり。
あたし勘がいいんだから」
サクラナはそう言って笑い出した。
「あんただけスケートできなくて、
一人取り残されたからふてくされていたんでしょ?」
サクラナにからかわれた吉野は、
すねたように口を尖らせて言った。
「だって、
この前、またスケートを教えてくれる
って言ったじゃないか」
「教えてあげようかな。
と思ってあんた見たらもうスケートやめていたのよ。
これじゃ、
教えようがないじゃない」
二人はお互いの顔を見合わせる
と同時に笑い出した。