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モブな私は自由なはず‥‥なのに私の周りはいつもずっと騒がしい  作者: おかき


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69話 聖女が聖女じゃない?

広場に静寂が広がる。


広場にいる者はその異様な光景にただ黙りを貫くしかなかった。


目の前でアルーン国の聖女が氷漬けにされているからだ。

メラニーから白い息が吐かれるのを確認し、生きていることに広場にいる者はほっと息を吐いた。


ゆっくりと近付くエリアナにメラニーは恐怖で肩で息をし涙を流していた。


「弱いわね。そんな実力で黒竜の浄化が出来ると本気で思っているの?学園の生徒の方がよっぽど強いわよ?それに、こんな実力もない者を聖女にするなんて、アルーン国は大丈夫なのかしら?」


エリアナは真剣にそう思っていた。

聖女と崇められるくらいなのだから、それなりに実力があるだろうと思っていたが予想以上に弱かったのだ。


「メラニーは浄化も出来ますが、治癒も行使できるのです。それこそが聖女としての証です」


ファルナがエリアナに教えてくれるが、その視線にエリアナの体に鳥肌が立つ。


(ぞわぞわして気持ち悪い。生理的に無理!)


エリアナは走って逃げてテントの寝袋に潜り込みたい!ぞわぞわする体をさすりたい!この場から離れたい!その衝動を必死に堪えた。


「そう、治癒……ね」


エリアナは少し考えていたが、エルランドを視界に入れると近づき耳打ちをする。


「聖女の魔法は治癒魔法ではない気がします。治癒を行使出来る割には魔力量が少なすぎますし、治癒魔法の魔力の色は光魔法を行使するなら黄色。セドのように治癒に特化したものは金色なのです。

属性を出来たら調べたいので聖女が治癒魔法を使う際に鑑定をかけたいのです」


「魔力の色で判別出来るのは聞いた事はあるが……」


エルランドが一瞬考え込むと後ろに控えるアードに声をかける。


「アードは他者の魔力を感知できるが色として見えるのか?」


「色は見えますよ?むしろ普通では?」


当然のように答えるアードに、


「いや、高ランクは他者の魔力量はわかるが、魔力の色は見えんぞ?」


「「え?」」


アードと同じく声を出したのはエリアナだった。


「はぁー、まあいい。聖女の魔力の色を見てくれ。金色でないなら治癒ではないらしい」


エリアナはアードを連れて聖女のもとに戻ってきた。

レーニアは涙は止まっているが顔色が悪いことに変わりはない。


「大丈夫。氷の中でも空気は通るようにしてあるから死にはしないわよ?」


(((いや!そういうことじゃない!)))


人を氷漬けにしていることが異様な光景であるのに、それを全く気にしないエリアナが恐ろしい。


「聖女様が本当に治癒が出来ているのか確認したいのですが、よろしいですか?」


エリアナは絶対に使いたくなかったが、首をコテンと傾げて上目遣いでファルナにお願いしてみる。

一瞬殺気を感じたがその発信源に心当たりのあるエリアナは、終わってからのお仕置にため息が出そうになる。


「ええ。聖女と呼ばれる事がどういう意味があるのか、知って頂くいい機会です」


ファルナがエリアナに許可を出した。

レーニアは治癒魔法を使えば聖女である事を証明できると、青褪めていた顔色を戻すとフンッと鼻息荒くしていた。


「怪我をされている方は、こちらにきていただけますか?」


タダで治癒してもらえるならと、数人の冒険者が出て来た。


「では、一人ずつ治癒をしていただけますか?」


「はぁー?ここから出しなさいよ!治癒出来ないでしょ!」


レーニアがわめくが涼しい顔で、


「出しませんよ?貴女は私に負けたのです。理解していますか?」


エリアナは一人の傷が深い冒険者をレーニアの前に立たせた。


「こんな場所で神聖な治癒魔法を使う訳にはいかないわっ」


「貴女は聖女なのですよね?傷付いた者を助けずに聖女を名乗るのですか?それに、討伐に出向けばもっと悲惨な光景の中で治癒をするのですよ?もしかして、前線の経験がないのですか?聖女なのに?神殿で祈れば戦いで負傷した者が回復するとでも思っています?まさかそこまで馬鹿ではないでしょうが」


正論と悪意をてんこ盛りにぶつけられたレーニアは、どの言葉に反論していいのかわからなくなってきた。


「ファルナ殿下。聖女様は治癒を拒否されています。本当は出来ないから言い逃れをしているのでは?ファルナ様と聖女様は恋仲みたいですし、もしやグルですか?」


先ほどの可愛らしいお願いの仕草から一点、冷たく疑いの視線を向ける。


エリアナに幻滅されたくないファルナは


「レーニア!聖女の証明をせよ!さもなくば、聖女の称号を剝奪する」


ファルナはレーニアにビシッと指をさし命令する。

が……。


(称号は神殿が与えるので、殿下は剝奪できないのよ?)


ファルナ以外は全員がそう思っている。


「そんな……」


レーニアは絶望の表情になっていく。、味方と思っていたファルナの言葉にショックを受けたようだ。


(え?レーニア様も知らない?この二人は本物のお馬鹿?面倒くさくなる前にお馬鹿をさっさと片付けよう!)


「はぁー、やるの?やらないの?やらないのであれば聖女ではないと自身が言った事になるわ。いいのね?」


「やるわよっ!」


冒険者は腕に魔物の爪痕が深くついていたが、瞬時に治った。


その様は聖女として相応しい治癒を見せた。


ドヤ顔の聖女にエリアナは次々と冒険者を並び替えて治癒させていく。


「いい加減にしてよね!」


レーニアの叫びとともに、冒険者の傷の治りも悪くなる。


周りがざわつき始めると、「魔力がたりないからよっ!」と叫んだ。


「魔力は減っていませんよ?私がずっと回復魔法をかけていますから」


「なっ…………」


「魔力が減っていないのに治らないってそんなことあるか?」


「最初の奴は綺麗に治っただろう?」


周りはざわつき、レーニア自身も困惑している。


エリアナはアードに聖女の魔力が見えたかを尋ねると、小さく頷いた。

するとアードが聖女の前に歩み出た。


「私は冒険者Sランクのアード。魔力についての知識に長けている者として、ギルドに登録されている」


エルランドに全員の視線が集まる。


「アードの言葉は真実」


エルランドが言い切ると、再び皆の視線がアードへと移る。


「魔力には色があり、属性によって色が異なります。治癒を行使する魔力の属性は光であり淡い黄色。治癒に特化した魔法を行使する者。例えば切り落とされた四肢を元通りにしたり、瀕死の者の命を繋いだり……。そして、その者が持つ色は金色なのです」


アードの説明に全員耳を傾ける。


「聖女様はそのどれにもあてはまりません」


アードがそう断言した。


「噓よ!今傷を治したじゃない!」


氷をドンドン叩きながら猛抗議するレーニアだが、アードの言葉を聞いたファルナは顔面蒼白になっていく。


ファルナは反論したい。

だが、Sランクのアードが断言したのだ。虚偽を申告すればアードは斬首の罰を受けることになる。

それを承知で断言したのだ。ファルナはどう立ち回ればいいのか、正解が解からなくなっていた。


「聖女様の魔力の色は無色です。無色は全属性持ちとみられる場合もありますが、それではありません」


アルーン国の聖女は聖女ではないとアードが告げた。


レーニアがわめいて煩いので、エリアナが防音の魔術を氷にかけていく。


「で、ですが……確かに聖女が傷を癒したのは事実ではありませんか」


ファルナが震える声でアードに伝える。


「それは私が答えます」


エリアナがファルナの前の来ると説明を始めた。


「私は……魔法そのものを見ることができます。誰がどの属性か直ぐにわかります。証人はエルランドさんがしてくれます」


エリアナの鑑定のスキルを知られるのは厄介なため、曖昧な表現を使う。


ファルナがちらりエルランドに視線を向けると頷いてエリアナの能力を肯定した。


「聖女様の魔法は<時間逆行魔法>です。この魔法は怪我をする直前まで時間を遡るのです。怪我をする前まで戻るので傷が治ったのではないのです」


広場がざわついていく。そんな魔法があるのかと…………。


「ただし……残念なことに、魔力の少なさのせいでせいぜい二日ほど遡るくらいが限界ですね。それ以上は実力不足で無理ですわ」


時間逆行魔法と聞いて「凄くないか?」と騒いでいたが、エリアナの言葉で微妙な空気となる。



「聖女は光魔法もしくはそれ以上の治癒を行使する者を聖女と位置付けているはずです。よってレーニア様は聖女と呼ぶことは出来ませんね」


エリアナはファルナとレーニアに一瞬視線を向けるが直ぐに外し振り返るとアードの隣に並ぶ。


ざわざわする広場に突然神官が歩み出てくるとエリアナとアードの前に膝をついた。

エリアナは驚くが「Sランク以上への挨拶の礼儀ですから」

と、アードがこっそり教えてくれた。


「私はアルーン国の聖女付きの神官ラスと申します。突然のご無礼をお許しくださいませ」


ラス神官は頭を下げるとゆっくりと立ち上がった。


「アルーン国の聖女レーニア。いえ、元聖女でしょうか。貴女を今この時をもって聖女の地位を剝奪します。これは大司教様の決定です」


レーニアは茫然としたままラスを見つめる。

今、ラスが何を伝えたのかレーニアは理解出来ているのであろうか……。


「こちらに出立する前になりますが、神より大司教にご神託がおりその事が事実なのか、確認も兼ねて私が同行いたしました。神のご神託は『いま聖女はこの世界には居らず。偽物を祀り上げることは許さぬ』そうご神託がおりたそうです」


神託を偽ることは出来ない。神の名を出し言葉を紡ごうとしても噓であったならば言葉にすることは出来ない。

となると、レーニアは聖女ではないとなる……。


(さて、どうしたものか……)


エルランドは、事態をどう収束に持って行くべきかを考える。


「今更ですか?治癒も浄化も満足に出来ない者を聖女として担ぎ上げておいて。今更神託がおりたからと剝奪って……意味が分からない。レーニア様に責任を全て押し付ける気?光魔法ではなく、時間逆行魔法だった。知られていない魔法だったかもしれない。でも、ギルドで鑑定すれば解ったことでしょう?それすらせず、聖女と崇めてきたくせに。ちょっと都合よすぎじゃない?」


神官ラスに冷ややかな視線を向ける。

ファルナにもその視線がうつると、ファルナはビクッと肩をはねさせた。


「貴方は王族よね?自分の側に侍らせる者をしっかり調べないなんて、どう教育をされてきたの?勉強が苦手なのかしら?教えてもらっても意味がないのかしら?側近も無能なのね」


ファルナは怒りで顔が真っ赤になり言い返そうとした瞬間、エリアナはくるりと振り返るとファルナを無視してレーニアへと話し始めた。


「レーニア様は聖女になって気が大きくなりましたか?人から敬愛されて悦に浸り、自分の気分一つで他者を傷付ける。そこそこの実力しかない事は自覚されていましたか?自覚ナシなら論外ですが。それに、聖女として必要とされる清廉潔白には全てにおいて程遠いですわね。とても醜いですわよ?」



エリアナに嫌味の雨を降らされた三人は、誰にも見えない雨に打たれると地面に突っ伏してしまった。


腹にたまった鬱憤を全て吐き出し満足するエリアナと、濡れ鼠状態の三人をどうすべきか……。


エルランドは頭を抱えたのだった。


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