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モブな私は自由なはず‥‥なのに私の周りはいつもずっと騒がしい  作者: おかき


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62話 ダリル殿下を守るために

ダリル殿下と側近の登場でテントの中は暫しの沈黙……。


「えっと……お母様達が気になるから戻りますね!」


そう急いで告げると、キャシーは逃げるようにテントから出て行った。


(逃げ足は早いのね!)


エリアナはキャシーの逃げの早さに驚きつつ、黒竜を撫で続ける。視界の端に殿下を目に入れると、キャシーの出て行ったテントの入り口を見ていた。


(もしかして?まさかね……)


エリアナはキャシーに好意が?とは思ったものの、下世話な想像は放り投げた。


今はまた問題が起きそうだし、黒竜の事もある。

神様は黒竜を解放してから話しかけても返事がない…。

一方的過ぎる神様に、エリアナは少しだけ怒っていた。


「キュキュッ」


黒竜の寝言に癒されながら、ダリル殿下達に用事があったのかを尋ねる。


「こちらに来られたのには何か理由がありましたか?」


「いや…そのだな。黒竜を少し見たくて……」


ダリル殿下は耳の先を赤くし少し恥ずかしそうにエリアナへ答えた。


「寝言がとても可愛いのですよ?」


エリアナがダリル殿下に場所を譲り、黒竜の側に座らせた。


「黒竜とは上位種である故、とても強く凶暴だと教えられて来たが……可愛いよな…」


確かに黒竜以上の上位種はとても凶暴で人には絶対に懐かない。

懐かないどころか、殺されるのが当たり前。


「この黒竜と話をしましたが、優しい竜であるのは間違いありません」


「エリアナ嬢がそうおっしゃるなら、そうなのでしょう」


ダリル殿下は優しく黒竜を撫でながらポツリと謝罪を口にした。


「我が国の内政のせいで貴方がたには迷惑をかけてしまいました。申し訳ありません。黒竜もです。ダンジョンから連れ出され足枷の魔道具まで……あのままエリアナ嬢が解除して下さらなければ、黒竜の命も危うかった……」


ダリル殿下は目を閉じ、ギュッと唇を噛んでいた。


「キュッ」


黒竜が小さく声を出した。


エリアナはなんとなくだが「許す」

そう黒竜が言ったように思う。


「魔力はダリル殿下の知る方でしたか?」


セドリックが直球の質問をした。


「ああ……。弟と聖女だった」


ダリル殿下の言葉に、側近達の魔力が揺れた。

怒りだろう。自分が仕える方に危害を加えようとする行為を許せるはずがないのだから……。


沈黙が続く中、外が騒がしくなってきた。


マーティーが外の様子を確認しようとテントに手を伸ばした瞬間、バッと入り口の布が捲り上げられた。


「やばいぞ!第二王子と聖女がこちらに向かっている!」


シリルからの報告に、側近達の空気が変わる。


「殿下の様子を確認すると同時に、聖女が浄化をするとして来るのだろう。チッ」


(ん?舌打ちする程嫌な奴とみた)


「やり返さないの?嫌な奴なんでしょう?証拠の魔力痕もある訳だし、潰せないの?私達で潰す?」


美女の言う台詞だろうか?


ダリル殿下と側近達はポカーンと呆けていた。


「リアはキレると手が付けられないから、気をつけて下さいね。」


セドリックが補足するも、エリアナはムッとしていた。


「だって、頭にくるわよ!黒竜は死ぬ覚悟を持っていたのよ?何も悪い事をしていないのに。それに、下手したらここにいる皆の命の危険もあったのよ?腹が立つに決まってるでしょ!」


エリアナは本気で怒っていた。

皆命懸けでスタンピードを制圧しようと戦って来たのだから。

納得出来る訳がない。



何やら考え込んでいたマーティーが、セドリックにいきなり頭を下げた。


「セドリック殿。お願いがあります。エリアナ嬢を貸していただけないでしょうか!」


頭を深く下げたまま、とんでもない台詞を吐いた。

セドリックがそんな話を許す訳がなく。


「リアは物ではない!貸して欲しい?ふざけるな!」


セドリックの魔力が昂り、テントが揺れる。


「セド!落ち着いて!マーティー様も、私を借りるってどう言う事なのかきちんと説明してちょうだい」


エリアナはセドを抱きしめ、セドリックの暴走を止めようと必死だ。


「いや、すいません。エリアナ嬢の容姿を借りたいのです。」


セドリックもエリアナも意味が解らず、とりあえず説明をしてもらう。


「第二王子はとんでもない美女好きでして、私の姉に恋慕していました。まあ、姉が一番のお気に入りでしたが、美女を見つけると尻を追うアホなのです。

エリアナ嬢を磨き上げ第二王子の前に出して、一目惚れさせた瞬間にセドリック殿の婚約者でありSランクの冒険者である事を告げて恥をかかせてやります。

また、聖女は美女ではなく普通の顔立ちな為、逆に美女嫌いなのです。

絶対にエリアナ嬢に噛み付いてくるので、遠慮なく苛立ちをぶつけて貰いたいのです。」


((なるほど……。))


セドリックは着飾るエリアナが大好きである。冒険者の装いは自然体で一番好きではあるが、愛する人の着飾る姿を見たい思いは正直ある。

あるのだが……。


「リアの美しい姿を皆の前に晒すのは……」

「セド!面白そうだし、私の苛立ちをぶつけたいから協力して?ね?」


断りそうなセドリックに、間髪入れずに首をコテンとしてお願いポーズでセドリックをうるうると見つめる。


「ウグッ…はぁー。解りました。私がリアの支度をします」


話が纏まったのでダリル殿下を見ると、眉間にしわを寄せて苦い顔をしていた。


命を狙う弟だけど、血の繋がった兄弟だもの。思う事もあるわよね……。

ダリル殿下の気持ちが落ち込んでいるのだろうと、エリアナが声をかけた。


「ダリル殿下。やはり、弟君が心配ですか?」


「いや。全く。」


「え?何だか落ち込んで見えたので……」


「弟が生きていようと死んでいようと、どうでも良いのですが……」


殿下は何か言い出そうとするも、口籠りまた苦い顔をする。


「聖女は第二王子の婚約者候補なのですが、ダリル殿下の方を好いているようで纏わりついて鬱陶しいのですよ。ダリル殿下はまた追い回されるのかと、落ち込んでいるのです」


マーティーの説明で、ダリル殿下の気落ちの原因がはっきりとした。


「ダリル殿下には婚約者がいないのですか?」


「私は側室の子供なんだ。弟が正妃の子でね。まぁ色々あってね」


「王妃様が婚約の横槍をするのですね……」


エリアナの言葉に否定はしないが、肯定もしない。


「キャシー嬢を婚約者とするのはどうでしょう。仮ではありますが、キャシー嬢に協力してもらって婚約者候補として紹介するのはありなのでは?」


「なぜキャシー嬢を?」


マーティーは突然のセドリックの提案に少し驚いてはいるが、乗る気である気がする。


「アルーン国とアスティ辺境領は密約が交わされる程に親しいはずです。リリアーヌ様のおかげで、両国は恒久的に平和条約を結ばれています。アスティ辺境伯のご令嬢となれば、王妃様とて手が出せないはずです」


「なるほど。それは名案です。キャシー嬢に協力していただき、殿下の命を守って頂きたく思います」


マーティーがシリルに確認をとる。


「第二王子は何時ごろ到着の予定だ?」


「今日は来ない。近くの街で泊まって明日の昼間にはここに着く予定だ」


「ならば、念入りに準備が出来ますね」


マーティーの口元が少しだけ上がるのを見て、エリアナはマーティーは腹黒である。

と、きちんと認識した。


「待って下さい!これ以上迷惑をかける訳には行きません。キャシー嬢を婚約者候補だなんて、彼女の意志を無視して話しを纏めるなんて許しません!無理矢理彼女を巻き込むなんて許されない」


「それは当然です。仮とはいえ王太子殿下の婚約者候補となるのです。

キャシー様には全て説明をし、納得して頂いてからに決まっています。断られたら他の策を考えるだけです。

キャシー様には私から説明します」


エリアナはプイっと顔を背け、テントを出て行った。


ダリル殿下はエリアナの不機嫌が理解出来ず、そろそろとセドリックに視線を向けた。


「殿下はリアがキャシー嬢の意志を無視して事を運ぶような酷い人だと、そう言ったも同然の言葉を言われました。エリアナは少しだけ憤慨しただけてすので、大丈夫です」


セドリックは苦笑いしてエリアナが不機嫌になった理由を説明した。


「そうか……そうだな。キャシー嬢の気持ちを無視するような方では無かったな……」


ダリル殿下が項垂れて行くのを見て、セドリックが背中をポンと叩いた。


「ダリル殿下。もっと堂々とされて下さい」


「そうだね。エリアナ嬢やセドリックどのを見習うとしよう」


とりあえず、キャシーの答を待つ間にセドリックはダリル殿下の身の回りの話しを聞く事にした。




「私はそんなに冷たい人に見えるのかしら?キャシー様の気持ちを優先するに決まってるじゃない!」


ブツブツ、プリプリしながらエリアナはキャシーを探していた。


「エリアナ様?私をお呼びですか?」


不意に声をかけられ振り向くとキャシーがいた。


「話があって探していたの。今は時間大丈夫かしら?」


「全然大丈夫です。どこか人気がない場所に行きますか?」


「そうね。森の方で話をしましょう」


駐屯地の中はアルーン国の騎士達が走り回り騒がしくなっていた。


「急に騒がしくなりましたね」


「アルーン国の第二王子と聖女が明日ここに来るそうよ」


キャシーはエリアナの言葉を聞き立ち止まると顔色を悪くした。


キャシーは物語を思い出し、何かが起きると不安に駆られていた。


「その事で話があったの。キャシー様の協力が必要だから」


それだけ伝えるとエリアナは足早に森へと向かう。

少し遅れてキャシーが後を追った。



「平原なら誰か来ても解るから」


森の入口には誰もいないので、そこで話をする事にした。


「黒竜を使いダリル殿下の命を狙ってスタンピードを起こしたの。その首謀者が第二王子と聖女なの」


エリアナはキャシーにダリル殿下の事を知る限り伝える。



側室の子であること。

第二王子と王妃様はダリル殿下の命を狙っている事。

第二王子と聖女は黒竜を自分達で仕掛け、自分達が後から現れ浄化をする。ダリル殿下が生命を落とすか、浄化をして功績を上げ排除する足掛かりにするつもりな事。


ダリル殿下は王妃様の横槍で婚約者すらいない事。


聖女がダリル殿下を狙っている事。



「ダリル殿下の命を守る為にも、アルーン国と友好関係であるアスティ辺境伯令嬢の立場が必要になる。仮ではあるけれど、婚約者候補になってもらえたら。と……」


エリアナは説明を終えると、キャシーが答を出すまで待った。


「側室の子……ならば、王宮では辛い生活を過ごされたのかしら。

王族の継承権争いなんて、この世界では当たり前なのよね。

でも、知り合いになった以上、誰かに死んで欲しいなんて思わない。

それに、第二王子も聖女にも腹が立ちます。自分達の都合で黒竜を使い、スタンピードを起こさせるなんて。命を何だと思っているのでしょうか!

いいですわ!婚約者になります。候補ではなく、婚約者です。私がダリル殿下を守りますわ!」


キャシーは勢い良く立ち上がり、拳を握り決意を現した。


「え?えっと……仮の婚約者よね?お芝居よね?」


エリアナが興奮状態のキャシーに問いかけた。


「違います!正式に婚約しますわ。ダリル殿下には、アスティ辺境伯へ婿入りしてもらいます」


(婚約者を引き受けてくれたのは有難いけれど、どうしましょ?キャシー様の正義感が燃え上がってしまったわ……)


「と、とりあえずダリル殿下達の所に戻って話しをしましょうか?」


「そうね。早く話をして、お母様に了承してもらわないと。早く行きますわよ!」


キャシーはエリアナを強引に立たせ、走って駐屯地へと向かう。



(色々どうしましょうか?)



上手くいったのか、いかなかったのか……。

悩みながらもキャシーの正義感を有難く思い感謝しよう。



そして、後は殿下達に丸投げする事にした。


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