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モブな私は自由なはず‥‥なのに私の周りはいつもずっと騒がしい  作者: おかき


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55話 エリアナの天敵再び

学園では馬車が出立しても帰る生徒はいなかった。


ギルドマスターや冒険者ヤヌス達と同じ馬車に、なぜエリアナとセドリックが同乗したのか。


学園長や宰相までが見送りなど、異例中の異例。

興味だけではない「何があったのか」それを生徒達は知りたかったのだ。



「早く帰りなさい。」


学園長の一言に、皆は何かを言いかけては止めるを繰り返していた。


「あの馬車が気になるのかな?」

学園長の質問に生徒達はおずおずと頷いた。


「隣国でスタンピードの前兆が確認された。しかも今回のスタンピードは最大級のものになる可能性が高い。

ギルドマスターは現役のSSランクの冒険者であり、エリアナ君はSランクの冒険者。ヤヌスやセドリック君はSに近いAランクの冒険者。宰相殿からの通達を受け、スタンピードの討伐に向かってもらったのだ。」


生徒達からは盛大なざわめきが起きた。


学生でのスタンピード討伐参加などあり得ない。高ランク冒険者であっても、死ぬ可能性が高いのだ。

生徒を参加させた話は過去にも無かったはず……。


何も聞けない生徒達。

学園長の言葉に理解が及ばないのだ。


「君達は何故貴族であるのに冒険者をしなければならないのか。学園でダンジョン攻略が試験にあるのかを、考えた事はありますか?」


学園長の言葉の「何故」を初めて考える。

冒険者ランクを取得するのは当たり前であったので「何故」を、考えた事すら無かった。

ただ、そうしなければならないから。

それだけであった。


その場に残る全ての者が考えていない訳ではない。

貴族とは、領主とは、民を守る事の本当の意味とは……。

きちんと考えたうえで冒険者としてランク上げに励んでいる。


理解しているからこそ、エリアナの領民を守り抜く姿勢に賛同するのだ。


「世界は瘴気と魔物と共にある。どの国でいつスタンピードが起こるか解らない。

この国も明日前兆が起こるやもしれん。

君達は貴族として、領主や当主として、民を守る義務がある。

国を民を守る為でもあるが、自らの命を守る為に冒険者ランクの取得をしてもらっているのです。」


学園長の話にようやく答えを得た。


「国に有事が起きた際の優先順位を理解していますか?王家に連なる方々が第一に優先されます。では、次は?高位貴族?大臣達?それも良いでしょう。

しかし守るべきは、民です。そして作物を育てる領地が優先でしょうか。」 


優先されるべきは、貴族では?

平民なと、最後だろう?


そう考える者は多い。


「スタンピードが起これば国は荒れます。農地も荒らされます。食料は足りなくなりますね?では誰がいち早く作物を育ててくれますか?貴族ですか?商人ですか?

学生の貴方がたですか?」


学園長は生徒達全員に視線をやり、淡々と語りかける。


「貴方がたの一部が平民や農村地帯の貴族を貶めている事は聞いていますよ?

志高く学ぶ生徒に対し、貴方がたが身分が上だからと下位を押さえつけたとして何になりますか?

身分が高かろうと排除される事を知りなさい。

この数年。我が国の貴族の怠惰な行動が多く目に余ります。

それにより、学園の規律を厳しくして行く事になります。

この学園に見合わない生徒は去って頂きます。

私が話した事をしっかり考える事ですね。」


学園長は話を終えると、宰相と学園の中へと入って行った。


驕っていた自分に気が付く事が出来るか、出来ないか。


長期休暇明けの学園生活が大きく変わることになる。




生徒達が学園長から話を聞かされている頃。

エリアナを乗せた馬車は、王都を出ようとしていた。


ギルドの馬車は2台用意されていた。

もう一台にも冒険者が乗っているらしいのだが、教えては貰えなかった。


「魔馬で行けば隣国まで三日だな。野営をしながらだが、馬車で移動出来るだけ有難いかな。」


ヤヌスが道中の説明をしてくれる。

魔馬は知らない人を嫌うため、街で泊まる事は出来ない。


冒険者ギルドがある街で、魔馬専用の小屋がない限り街での宿泊はないらしい。


ギルドがある街を通るが、昼間になる為に先を急ぐ事にして野営を選択した。


エルランドさんからはエリアナが作った野営の魔道具の使用は許可されていたため、セドリックがマジックバッグに詰め込んで来ていた。


国境が近付いて来たが、夕暮れになるので野営をする場所を探す。


なるべく道から離れて野営をする。


魔馬が隠れる事が出来る小さな森を見つけたので、森の手前で準備を始めた。


セドリックがマジックバッグからテント等の野営道具を取り出した。


「これが例の道具か?」


エルランドさんが道具を触り、あちこちから眺めながら問いかける。


「説明するので一緒に作りましょう。」


セドリックはエルランドとヤヌス。ヤヌスと、同じパーティーのルアンに声をかけた。

ルアンは魔法師であり、近々ヤヌスと一緒にSランクに上がる予定らしい。


テントの設営の準備をしながら教えてくれた。


エリアナはメルとレイナと夕食を作る。

メルはヤヌスの奥さんで魔法師である。

レイナさんは剣士でルアンの奥さん。


このパーティーは二組の夫婦で組んでいる。

冒険者が憧れる理由は夫婦でパーティーを組んでいる事も理由の一つである。


エリアナが出した魔道コンロにメルとレイナは釘付けになる。

便利なコンロに夢中になって夕食を作っていた。


エリアナがふとある事を思い出し、メルに断りを入れると持ち場を離れた。


セドリックの元に来ると、気になった事を尋ねた。


「もう一台の馬車はどうしたのかしら?一緒に野営しないの?」


セドリックも手を止め、そう言えば……。と、忘れていたもう一台の馬車の存在を思い出す。


「エルランドさん。もう一台の馬車はどうしたのですか?」


セドリックがエルランドに尋ねると、エルランドは深い溜め息を吐いた。


「忘れたままでいろよな……。」

一人、ブツブツ言いながらエルランドが近付いて来た。


「良いか!これだけは伝えておく。俺が誘った訳ではない。あいつらが勝手についてきたんだからな。俺を責めるなよ!」


エルランドの渋い顔を見れば、本当に嫌だったのが解る。


エルランドがエリアナとセドリックを隣の木々で隠れていた場所へと案内した。


あちらも野営の準備をしていたらしく、せっせと準備をしていた。


その光景の中にいる人物をみた瞬間、エリアナがポツリと言葉を漏らした。


「嘘でしょう……。」


視界に入って来たのは、テントを自ら張るキャシーであった。


それにリリアーヌ様の隣にいるのは知らない男性。初めて見るが、距離感を推測するに夫のルーベン様だとエリアナは推測した。


「何故あの人達がいるのです?」

不愉快な声でセドリックが愚痴をこぼす。


その時、エリアナとキャシーの視線が合った。


エリアナはキャシーとリリアーヌに会いたくなかった。関わりたくない存在だった。


エリアナは無意識に不躾な視線を向けていた。


それは一瞬だった……。


ヒュッと風を切る音と共に、エリアナの背後に立つ気配があった。

背後に立つ人物はエリアナの首に剣をあてていた。


セドリックもエルランドもその様子を黙って見ているだけだ。


エリアナの背後に立つのはルーベンであった。

ルーベン優勢かと思われたが、エリアナの首にあてられた剣は氷漬けにされている。

そして、ルーベンの喉仏には氷の剣先が食い込んでいた。


エリアナはゆっくりと振り返りながら、数歩後退した。


ルーベンから視線を離さず、ゆっくりと下がる。


「殺すつもりで来たのです。殺される覚悟が?」

エリアナは無表情でルーベンを見据える。


ルーベンは妻と娘に不躾な態度をとる娘に腹を立て、無意識に攻撃していた。


だが、無意識であろうと殺意はあったのだ。言い訳をするつもりは無かった。


「貴女は何者ですか?」

ルーベンがエリアナに問いかけるが、答える様子がない。


顔を青褪めさせたキャシーがルーベンの前に走って来る。


「エリアナ様。父が無礼を働き申し訳ありません。」


キャシーばガバっと頭を下げた。

その横から、ルーベンの頭を激しく叩きリリアーヌも来た。


「エリアナ様。夫が申し訳ないことをしました。」

リリアーヌ様まで頭を下げるが、やはりエリアナは何も答えない。


ただ、じっとルーベンを見据える。


ルーベンは言い訳をしないと決めていた為に、謝罪を自らがしなければならない事に思考がいっていない。


エリアナは黙ったまま、三人を無視して離れようとした。


「兄上は馬鹿なのか?エリアナが嫁と娘を疎んだからと、攻撃して良い訳ではない。嫁馬鹿、娘馬鹿で他人に迷惑をかけるな!それに、謝罪もせずに事を終わらせるつもりなのか?」


エルランドの言葉にルーベンは肝心な事を抜かしていた事に気が付いた。


「いきなりの攻撃。すまなかった。」

ルーベンは頭を下げ、許しを請うた。


「貴方の負けですから、どうでも良いです。謝罪は受け取ります。」


振り向いてそう伝え、その場から離れようとしたのだが……。


キャシーがエリアナに近付いて来たが、セドリックが前に出てエリアナを庇うように立った。

冷めた視線でキャシーを睨むが、


「エリアナ様!お願い!私の話を聞いて欲しいの。恋ダンの話だけじゃなく、別の物語も動き出したのよ!」


小さな声だが、必死にエリアナに話しかける。

セドリックはキャシーを追いやろうとするが、エリアナがセドリックの腕を引きキャシーの前に出た。


「どう言う事?」

エリアナはキャシーの話の意味が解らなかった。


「話をしたいけど、ここでは無理よ……。」


確かに私やキャシーを転生者と知らない者もいる。


「夕食後、私のテントに来て。」


それだけ伝えると、リリアーヌにもルーベンにも視線をやること無く自分達の野営場に戻った。


テントの中でエリアナとセドリックは二人でキャシーが訪れるのを待った。


エリアナはキャシーの言葉を思い出し、今何が起こっているのかを考える。


(この世界は神様が創り上げているから、絶対に何かを知ってるはずよね。)


エリアナは神様に聞きたいが、神様は神界に戻っていた。


『ずっといたいけどさー。お仕事溜まってるからやっつけてくるね!終わったらまた来るから!』


言うだけ言うと、さっさと帰ってしまったのだ。


「セドはキャシー様の言葉をどう捉えた?」

不安な眼差しでエリアナはセドリックを見た。


「キャシー嬢の話が事実なら、巻き込まれる可能性が高くなるんだろうな。」


「そうよね……。」


「とりあえず、キャシー嬢の話を聞かないとね。」


不安そうなエリアナの顔を覗き込みセドリックの顔が近づいた。

チュッ。と軽く触れる口付けをされ、エリアナの頬が赤らむ。


可愛いエリアナの頭をセドリックがポンポンしていると

「ご、ごほんっ」


態とらしい咳払いが聞こえた。


テントの入口を見ると、スカートを両手で握りしめ顔を真っ赤にしているキャシーが立っていたのだ。


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