第21-2話 「ちょっと?……ちょっと?……」
ゆるーい話。
たまにはこういう世界もいい……って私は思います。
第21-2話 「ちょっと?……ちょっと?……」
次の日の朝、3人は自然と起きる。
とは言え、沙月が一番最後だったのでグラビスとシエラが朝食の準備をしてくれた。
朝食はトーストで、玉子やハム、チーズを載せて焼いたものだ。
テントの中に香ばしい匂いが漂って、沙月が起きたのはそのためだ。
3人はいい感じにお腹が空いていたのであっという間に平らげる。
「朝食食べ終わったら、昼食の準備ね。」
というグラビスの言葉通り、朝食の後、3人はそろって昼食の準備をする。
と言っても、昼食はサンドイッチでパンに好きな具材を挟んで容器に入れるだけだ。
荷物をリュックに詰め込んで、出発の準備はすぐに終わる。食料、お菓子、ジュースをかなり消費したので随分軽い。
沙月は(「他に入れる物ないかな……」) とキョロキョロするが、グラビスもシエラも(「大丈夫よ……。」)という顔だ。
出発の準備が終わると、グラビスが言う。
「沙月。ファイに外の確認お願いできる?」
沙月は夜と同じようにテントの入口を少し開けて、ファイを外に出す。
ファイはすぐに戻って来て、沙月がパーソナルステータス画面を確認する。赤い点はない。ファイが言う。
「魔物の姿はないようです。」
グラビスがニッコリ笑って言う。
「ありがと。……今日は昨日とは違うルートになるから注意してね。作戦は昨日と同じね……。直線ルートを進んで、魔物がいたら避けて進む。……どうしようも無くなったら、テントに逃げ込む。」
沙月とシエラがコクリとうなずく。
3人はテントを出る。まだ朝早くて少し肌寒いが、いい天気だ。
沙月がテントを収納して、マジックボードを取り出してシエラとグラビスに渡す。
「じゃあ、行くわよ。……ついてきて。」
グラビスがそう言って出発だ。
確かに、来た方角とは全く違う方角にグラビスは進んでいく。沙月、シエラの順に後を追う。スピードもかなり早い。
来た時と同じで、魔鉱石の絨毯が終わると岩だらけになって、さらにしばらく行くと平原になる。ファイとシエラは沈黙したままだ。
さらに下ると、目の前に森が見えてくる。沙月は下っている時に気がついたが、左手は谷になっているようだ。このまま真っ直ぐ行くと谷を斜めに横切ることになる。つまり、(「下って、登って……かな……。」) などと思っているとファイが言う。
「沙月様。魔物がいます。」
沙月がグラビスを呼ぶ必要はなかった。グラビスは森の手前で、ボードから降りて2人を待っていたからだ。
沙月もボードから降りて、グラビスに目配せをして、パーソナルステータス画面を出す。シエラも集まって確認する。もう、沙月にも慣れたものだ。3人は無言で位置を確認する。グラビスがいつものようにノートに書き込む。
「谷にいるみたいね……。ふむふむ……。もう少し。西から森に入ったほうが良さそうね。」
そう言ってグラビスは森沿いに少し進んでから、森の中に入る。
……
森に入ると順調……とはさすがに言えなかった。森の中はペースが落ちる。それにファイが2度、魔物を探知して、東に曲がって、西に曲がったので、また、直線ルートに戻ってきた……という感じだ。
しばらくして、小さな平原に出て、少し休憩することにする。もう。お昼を回っているという時間だ。
昨日と同じでかなりハードだ。魔物を探知して集合した時が小休止……という位置づけだ。
「ここで、お昼にしましょ。……沙月とシエラは引き続き、監視よろしくね。」
沙月は今日もパーソナルステータス画面を出しっぱなしだ。コクリとうなずく。
すると、シエラが何かに気がついたように、2人から離れていく。
「あれ?……、何かあるわ。」
沙月とグラビスも近づいてみると、朽ち果てた四角い木材が散乱している。どう見ても人間が加工したものだ。
「何か、建物があったみたいね。……小さな小屋かな?」
グラビスがそう言って、沙月が反射的に言う。
「小屋?、……何の?」
グラビスはニッコリ笑う。
「ごめん。何の小屋かは分からないわ。……木材、きのこ、薬草……、ここに住んでた、もあるかも知れないわ。」
沙月は信じられない……という顔でグラビスを見つめる。(「こんな、危険な場所に?……。」) そんな顔だ。
グラビスはそんな沙月の表情を悟って続ける。
「魔物は古くはヌビ暦以前にもいたらしいんだけど、それほど脅威ではなかったらしいわ。……急に強くなったのはここ百年くらいね。特に、魔王が現れてから、その差は決定的になった。……だから、百年前くらいにここに人が住んでたとしても不思議じゃないわ。」
「そ、そうなんだ。」
沙月達はあまりのんびりも出来ないので、手早く昼食を食べはじめる。
沙月は100年前のことを考えていた。
(「100年前は脅威ではなかった……。100年前……遠い?……つい最近?……。100年前はここに人が住んでた?
グラビスは以前こう言った。"プラスの面もあればマイナスの面もある……。" マイナス面は小さくない……。まるで、手足を縛られているような窮屈さを感じる。きっと、グラビスが感じているのもこの窮屈さ……。そして、グラビス……つまり今の私達はその呪いのような束縛に抗っている……。」)
そんなことをぼんやりと考えていた。
「沙月。そろそろ行くわよ。」
グラビスにそう言われて沙月は我に返る。グラビスが言う。
「もう少し行ったら、きのこ採取場の近くだから。……がんばってね。」
すると、シエラが思いつく。
「あっ!、きのこ採取して帰るのも手ね。……リュックに入る分だけだけど。……2つ分くらい?」
そう言われて、グラビスも納得した様子だ。沙月とアイコンタクトして言う。
「ほんとね……。それもありだわ。じゃあ、とりあえず、きのこ採取場を目指す……でいい?」
沙月とシエラがコクリとうなずく。
「じゃあ、出発するわ。……ついてきて。」
グラビスが地図を確認しながらそう言って、出発する。沙月とシエラが後を追う。
確かに、ほんの少し、軌道を修正したようだ。
…
その後の彼女たちはほぼ順調だ。ファイが1度だけ、魔物を探知するが、この辺りになるとグラビスにも馴染み深いようだ。
「この先に小さな小山があるから、そこをグルっと回るような感じで進むわ」
グラビスはそう言って、弧を描くような軌道で魔物を回避する。
そして、しばらくして……見事にきのこ採取場に出る。
(「す、すごい……。」)
沙月は素直に感心している。時々、パーソナルステータス画面の地図を見ていたものの、どっちに向かってるのかさえ分からなくなっていた。シエラほどではないけど、どちらかといえば方向音痴だ。それに引き換えグラビスは……という驚きだ。
もたもたしている暇はない。3人の動きは機敏だ。
沙月とシエラのリュックを空にして、荷物をグラビスのリュックにまとめると、グラビスが麻袋のようなものを取り出して、沙月とシエラに渡す。
(「クッ……用意がいい。」)
沙月は感心しながらクスッと笑う。
3人で、きのこを収穫しては麻袋に入れていく。これくらいかな……と思うまで数分という感じだ。麻袋をリュックに詰め込んで、再出発する。
沙月の予想通り、崖の大きな岩で最後の休憩だ。
ここまでくれば、沙月とシエラにも馴染み深い。帰ってきた……という印象だ。チス国まであと数時間……、暗くなる前には十分帰れる……。そんなことも考えられる。
グラビスがリュックからジュースを取り出してコップに注いでいく。
「ジュースはこれで終わり……。ぴったりね。」
グラビスがニコリと笑いながら言う。
沙月がつぶやくように言う。
「確か……3日分よね。」
シエラがニコニコしながら言う。
「沙月が飲み過ぎなのよ。」
沙月も応戦する。
「シエラこそ。」
グラビスはクスクス笑って2人を見ている。
沙月は昼食の残りを食べ終えて、お菓子に突入している。
「さあ、このお菓子も食べきってね。……荷物軽くなるでしょ。」
グラビスがそう言って、リュックからお菓子を取り出す。フルーツたっぷりのケーキのようなお菓子だ。
沙月とシエラは次々に手に取っては口に放り込んでいく。
「食べないとダメっていわれると……食べないわけにいかないわ。」
シエラがそう言うと、沙月も応じる。
「ほんとね。グラビスのためだから……、食べないわけにいかないわ。」
食べないとダメ……と言われると、罪悪感なく食べられるようだ。
ここもやはり、そんな2人をグラビスはクスクス笑いながら見ている。
…
その後、マジックロープで崖を2つ降り終わって、グラビスを先頭に森の中を進む。グラビスの手には頼りになるノートが握られているが、ほとんど見ることも無くなっている。頭に入っている……ということだろう。ファイもシエラも沈黙したまま森を抜けて平原に入る。
平原まで来るとさすがに隊列が崩れる。緊張も解けたようだ。シエラが沙月に追いついて、沙月の手を取る。沙月はちょっと嫌な予感だ。
(「またあれ?……。ちょっと怖いって言ったでしょ……。」)
そう思ってシエラを一睨みするが、シエラに任せてみることにしたようだ。
シエラはニコッと笑って、ブロウを発動する。
(「……そういえば、シエラ、森の中ではブロウ使ってなかったな……。まあ、スピードも遅かったからかな……。」)
などと沙月が思っていると、あっという間に、グラビスに追いつく。
グラビスも笑顔だ。沙月は迷わずグラビスの手を取る。道連れだ。
でも今回、シエラは気を使ったのか、ほんの少しスピードをあげてそのまま進んでいる。
沙月もマジックボードには大分、慣れてきた。これくらいのスピードなら大丈夫だ。
突然来る上下動に沙月は集中しているので、あっという間に東門まで辿り着いた……という印象だ。
東門を抜けるとグラビスが言う。
「みんな、おつかれ。……カラカスさんの所に行きましょ。きのこだけね。……ほら、鮮度って重要だから。」
カラカスの所に着いて、沙月とシエラがリュックから麻袋を取り出す。
するとカラカスが言う。どうも、沙月に向かってだ。
「おや、今日はピクニックか何かですかな?……ほう、きのこですな……。」
沙月が何て言えばいいかと戸惑っているとグラビスが助けてくれる。
「まあ、そんなところね。カラカスさん。明日もまた来るから、代金はその時にまとめて……でいい?、ちょと、ヘトヘトなの。」
カラカスが満面の笑みになる。
「ほう、もちろんですな。はっはっはっ、ヘトヘトですか……。はっはっはっ、……出荷はしてもよろしいですかな?」
「ええ、もちろん。」
「はい。わかりました。じゃあ、明日も楽しみにしとります。はっはっはっ。」
3人が家に帰るとエリスが満面の笑みで出迎えてくれる。やはり、一泊した……ということで、いつもと様子が違う。
「ご無事でよかったです。」とか 「心配してました。」などと連発している。
沙月は真っ直ぐ部屋に戻って、部屋着に着替えると、ベッドに倒れ込む。
シエラは着替えないで、すでにベッドに倒れ込んでいる。
グラビスは少し遅れて部屋にやってきてベッドに倒れ込んでいる2人を見てクスクス笑う。
グラビスは沙月を見習ったようだ、着替えてからベッドに倒れ込む。3人は無言だ。
…
しばらくして、エリスがジュースとアイスを持ってきてくれる。ベッドに倒れ込んでいる3人を見てクスクス笑う。
「みなさん。ジュースとアイスをお持ちしました。フルーツたっぷりです。」
アイス、フルーツたっぷり……と聞いて3人が飛び起きる。
「わーい。……アイスだー。」
「ありがと。……わー、おいしそうね。」
「アイス……、フルーツたっぷり……、完璧だわ。エリスさん。」
シエラ、グラビス、沙月の順だ。沙月もテンションが上っている。
エリスは満足そうに、ニコニコ笑って、
「お風呂も準備しておきますね。」
そう言って、お風呂場の方に消える。
"おやつ"にはかなり遅い時間だ。夕食はあまり食べれないかな……と思いながらも、3人はアイスとフルーツとジュースに抗うことは出来なかった。
ニコニコ笑いながら、食べ終えると、シエラはまたすぐにベッドに倒れ込む。沙月もそれに倣ったようだ。
…
グラビスが言う。
「先にお風呂……なんだけど。……どうする?」
お風呂……に反応したのは沙月だ。
「お風呂……入りたいわ。」
一方、シエラは反応なし……だ。お先にどうぞ……ということらしい。グラビスがニコニコ笑いながら言う。
「じゃあ、私と沙月が先に入りましょ。」
---
(「お風呂……、お風呂……、お風呂……。」)
たった、1日入らなかっただけなのに沙月のテンションは上がる。
『マジックボードの上に立っているだけのように見えて疲れる。』……このことを痛感しているようだ。
疲れている……動きたくもない……でも、こんな時にこそお風呂は最高だ。
2度掛け湯をして、湯船に入る。
「はーー。……お風呂、……お風呂……。」
あまりの気持ちよさに、これ以上の言葉はないようだ。
「はー。シャワーもありがたかったけど、やっぱり、お風呂ね……って言うか、シャワーがなかったら……って、考えたくもないけどね……。はー、グラビスに感謝しなきゃ。」
ファイに話しかけているのか独り言なのか良く分からない調子だ。
「そうですか。お疲れさまです。」
「うん。……ファイもありがと。……とにかく、無事で良かったわ。」
「はい。何とかなりましたね。」
「うん。……でも、やっぱりだったわ……。」
沙月の顔から笑顔が消える。何かを考えているようだ。
「……何がですか?」
「ん?……あっ、ほら……、動物を結構見たでしょ。……鹿、猪、リス……、あと、他にも名前の知らない動物とか……。」
「ああ。そうですね。」
「これまでのトレジャーハントでも時々は見かけてたけど、やっぱり、動物はかなりいる、ってことが分かったわ。」
「はい。子連れの動物もいましたね。」
「うん。……つまり、魔物と共生してるのね。……ほら、魔物のエサになるんだったら、普通の動物に勝ち目はないでしょ……。あれだけの大きな体だから、普通に考えると相当、食べるはず……。猪だったら、1日1匹とかね。……でも、そんなに食べられたら、猪なんてあっという間にいなくなってもおかしくないわ。」
「はい。そうですね。普通ではないということですね。」
「うん。……そんなに食べなくても大丈夫?なのか……、実は草食?……、まあ、雑食とか?かな……。あるいは……、魔物同士?。……うん。……魔物同士の食物連鎖はあるかもしれないわ。」
「なるほど。そうですね。」
……。
暫し、沈黙だ。
沙月はファイの答えが余りにもあっさりしてるのが気に入らなかったようだ。
「ん?……あれ?……、それだけ?……。ファイはどう思ったの?」
「すみません。まだ情報不足ですね。」
「そう。……そうね。まだまだ、魔物は謎ね……、うーん。もっと調べないとダメだわ。……そう言えば、失敗したわ。……魔鉱石、もっと調べておくんだったわ。」
「魔鉱石ですか……確かに難しいです。でも、どう調べるんですか?」
「う、うーん。いろいろ、収納してみる?……。でも、身近で調べられそうなのは……ない?……照明とかも……魔道具として認識されそうだし……。」
「はい。そう思います。それに魔鉱石は変質します。……例えるのは難しいんですが、木材は椅子になったりテーブルになったりします。それに加えて、木材が金属になったりする感じでしょうか……。あるいは、人に例えるなら、医者であって、画家であって、数学者であって、音楽家であって……、というような天才のようなものとも言えるかも知れません。……特定したつもりでも特定出来ません。」
沙月はそれを聞いてプッと笑ってしまう。
「そ、そうなんだ……。え?、えっと……、木で作った椅子だと思ってたら、金属で作ったテーブルだった……みたいな感じ?」
「はい。そんなイメージが近いと思います。」
「プッ……、なるほど……、難しい……っていうか、分かり得ないって感じね。」
「はい。でも、医者でもあるので、医者としても働いてくれます。」
「なるほど……天才のほうね。……まあ、分かったわ。……とにかく、難しいってことは。」
「はい。」
---
沙月はまた、長風呂しすぎたかな……と思いながら部屋に戻ると、部屋には誰もいなかった。
ベッドに突っ伏して寝ていたシエラもいない。
(「シエラもお風呂に入ったのかな……。グラビスは1階で仕事かな……。」)
などと沙月は思う。
床にペタリと座り込んで、ぼーっとすることにする。
何となく、変な感じがする、まだマジックボードに乗っているようなフワフワした感じだ。
そして、(「少しまずいな……」)と思い始める。
たった1泊しただけでこれだけの疲れを感じている。これではファイアーラビット攻略は難しい。
(「体力?それとも慣れ?……マジックボードに乗ってる時に無駄な力が入ってる?……。」)
そんなことをぼんやり考えていると、シエラが戻ってくる。
「はー。……気持ちよかった。……やっぱり、お風呂は最高だわ。……あれ?……、グラビスはいないのね。」
シエラはニコニコしながらそう言って、沙月の髪を乾かしてくれる。
「ありがと。……ほんとね、疲れてると特にそう思うわ。……お風呂は最高よ。」
沙月は少し気になっていたことを聞いてみることにする。
「ねえ、魔鉱石を探す時、目を閉じて探してたでしょ。あれってどんな感じなの?」
するとシエラが考え始める。シエラが考えてるのは分かりやすい。
「どんな感じ?……、うーーん。……難しいわね……、うーーん……。」
……
あれ?……結構、難問のようだ。
(「あっ?……質問……取り消す?……もうちょっと待ってみる?……」)
沙月がそんなことを考え始めると、シエラがようやく話しはじめる。
「うーーん。……ほら、魔法を発動する時に似てるかも?……。いや……、全然違うような気もするわ……。」
……
意外……だが、これで、沙月は何となく理解したようだ。
魔法を発動する時を説明しろ……と言われても難しい。全然違うなら良くわからないが……。
「う、うん。……何となくは分かったわ。」
沙月は少し後悔している。何となく、"目を閉じると光の点が見える……" とか "光の線が見える……" 等という映像を想像していたがそうではないらしい。そうなると、"はじめての魔法"と同じだ。言葉で説明できないこともある。
(「スポーツに似てるかも……」)
と沙月は思っている。一流選手のプレーを見て、「あんな風に動きたい……」と思う。でも、簡単に出来るものではない。
それに、言葉で説明されても普通は"さっぱり"だ。もし、理解できてその通りに動けるなら"一流選手だらけ"になる。
しばらくすると、グラビスが戻ってくる。ニコニコしている。
「ねえ、今日はやっぱり、パーティーよね。……魔鉱石トレジャーハント?……成功記念パーティー、ね。」
すると、反応したのはやっぱりシエラだ。
「おーう。……えっと……、魔鉱石奪取作戦……、コードネーム……、"山頂に咲く花……"、成功記念パーティーね。」
どうも、シエラにはパーティー名が気に入らなかったようだ。
…
沙月はやはり少し固まる。
(「また、シエラが変なこと言い出した……。」)
そう思いながら、グラビスと目配せをするが、考えている。
一瞬、コードネーム?……と思ったが、(「あれ?……山頂に咲く花……は良いかも……」) と思う。あの光景が目に浮かぶ。
「そうね。……えっと……、"山頂に咲く花" ミッションクリアパーティーね。」
沙月は"良いかも……"と思ったようだ。
シエラもニコニコ笑って同意だ。
「おーう。それよ!、 "山頂に咲く花" ミッションクリアパーティー。」
グラビスはニコニコしている。
(「名前なんてどうでもいいんじゃ?、、、」)
でも……、シエラと沙月は満足そうだ。
グラビスが続ける。
「……それでね……、会場はこの部屋にしましょ。……ということで、運ぶの手伝って欲しいんだけど……。」
この部屋で夕食……というのははじめてだ。
(「なんだか、楽しそうね……。」) と思いながら沙月とシエラはグラビスと一緒に食堂に向かう。
食堂にはエリスがいて大きなポットをテーブルの上に置いたところだった。テーブルには大皿が2つとお皿やコップが置かれている。
大皿には唐揚げや焼き鳥、ソーセージ、フライドポテトなどが乗っていて、もう一方はお寿司のような感じだ。魚の他、お肉もあるし、漬物だろうか野菜のものもある。
沙月はちょうどライスが食べたかったので、テンションが上がる。
グラビスと沙月が大皿、シエラがポット2つ、エリスがお皿を持って2階に向かう。テーブルを部屋の真ん中に移動して、大皿を置くと、まさにパーティーという感じだ。
3人がペタリと床に座って、グラビスが始める。
「えっと……。 "山頂に咲く花" ミッションクリアパーティー?、……はじめましょ。」
「おーう。」
ポットの中はスープで、あっさり系とこってり系だ。味が変わって、食欲も進む。沙月は夕食はあまり食べれないかな……と思っていたので、大皿形式はありがたかった。
とはいえ……、そんな心配は不要だったようだ。3人とも次から次へとパクパク食べていく。
とにかく、ミッションクリアだ。3人はそのことを素直に喜んでいる。
特にグラビス。グラビスにとってもはじめての経験だ。
(「冬ではない季節に行けた……」)という達成感に満ちあふれている。
沙月とシエラもそんなグラビスを見ていると、喜んでいいのかな……と思う。
それで、グラビスの笑顔に引っ張られる感じで喜んでいる。
(「ちょっと、怖かったけど……何とかなるものね……。」)
沙月とシエラもそう感じているようだ。ニヤニヤしている。
21-2話完




