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第47話「杖を作ろう」

前回ので総合評価が一気に増えてついに1000点超えてました。正直かなりびっくりしてます。1話だけで300点くらい増えた気がして・・・

毎回読んでいただいてる方には本当に感謝してます。

第47話「杖を作ろう」


ーー道具屋リュミエール(居住区)ーー


ラングランでのお祭りが終わり、クヨウ達が店のかたずけを終わらせたところでアレがやってきた。


「ご苦労様です~。」


配達の業者から受け取った物はクヨウがヨーゼフに頼んでいた物であった。


「クヨウさん、それは?」

「これかい?これはあの依頼を完了させるための杖だよ。」


厳重に封をされた箱をあけると、そこにあったのは煌びやかな装飾は施されてはいない、しかし無垢な純白を思わせる杖だった。素材に世界樹の枝や白蛇の皮を使っているためか、神聖な魔力を帯びているような雰囲気をかもし出している。一言で言えば「浄化の杖」、まさしく名前の通りの杖だった。


「まぁ、今のままだと唯の杖なんだけどね。」


伝承の記載通りの素材を使い、伝承通りの外見をしてようとも、普通に作ったならば能力を持つはずもないので唯の杖なのである。


「これにクヨウさんの力で能力をつけるのね。」

「まぁね。もう依頼の日数も無いに等しいし、今日中にやっちゃうけど・・・・僕の準備がまだだからね。今日は店に出ないから全部任せちゃっていい?」

「ええ勿論。クヨウさんは杖のことだけ考えてなさい。」


そういええ、サクラはクヨウを店の奥に押し込んだ。そのままヒカリを連れて店番に出る。


「お母様?お父様とは遊んじゃ駄目ですか?」

「ごめんねヒカリちゃん。今日のクヨウさんは仕事に集中するから終わるまでは駄目よ。その変わりお店の手伝いをよろしくね。」

「はい、お母様。」


ヒカリが嬉しそうに返事をする。ヒカリにとっては店の手伝いはぶっちゃけると遊んでいるようなものなので大した差はなかった。



一方クヨウはというと、若干緊張した面持ちで部屋に魔力漏出を防ぐための結界を張る。その後、仰向けに寝ていた。というのも心を落ち着けるためである。


「ふ~、いざというときにはやっぱり緊張するね。」


今回は事が事だけに失敗することが許されない。告白等の件で忙しかったせいで完全に忘れていたがこれに失敗すると最悪の場合世界崩壊に繋がるからだ。それと・・・・杖が壊れてしまえば財産のほとんどを使っているので大損害だ。


「あ~緊張する。小市民に勇者の真似事なんて無理だな~。」


異世界に来て魔王を倒せとか言われなくて本当に良かったと思うクヨウだった。とりあえず、落ち着くためにゆっくり深呼吸をする。ゆっくりゆっくり深呼吸をして自分の心臓の音が早い事を確認する。そのまま目を閉じ、何も考えずにただ深呼吸をする。


ふと目を開けると外は夕暮れだ。想像以上にクヨウは緊張していたようで、そんな自分に苦笑するのだった。そして、作ろうとしている杖の能力を思い浮かべ再認識する。


「ふう~・・・・さて、やってみるかな。」


クヨウは落ち着いて箱から杖を取り出す。そしてそのままゆっくりと付与する能力を思い浮かべイメージがブレないように慎重に魔力を込める。一通り込め終わると杖が大量の魔力を発散しだした。


「これは!?グッ!」


クヨウは懸命に杖を治めようとするが収まらず、余波でクヨウが傷ついてしまう。そして、しばらくしてなんとか治まったと思ったら、大きな爆音と共に杖が粉々に砕けてしまいクヨウも意識を失ってそのまま倒れてしまうのだった。


'--------------------------------------------------------------------------------------------------------


ーー道具屋リュミエール(店区)ーー


クヨウが目を閉じて寝てしまった頃、店の方ではちょっとした騒ぎになっていた。祭りで売りにだしたライトストリングやライトイヤリングを買いたいという人が次から次へとやってきていたのである。


「嬉しい悲鳴というのはこういうことですかね?」

「うん、そうかもね~。でも、もうちょっと落ち着いて欲しいわ。」


やれやれとサクラが顔を横に振りため息をつく。というのも、大量に買い込もうとする人が多いのだ。しかし、祭りの時に大量生産をして祭りが終わったら需要は減るだろうと予想してあまり生産するつもりはなく、トルネのところも今は休みになっている。予想以上の需要に対して在庫は僅かしかないのだ。従って1人に大量に売ることはできないので、サクラは1人1個という限定で販売することにしたのだ。

普通の客ならそれで解決するのだが、行商の類の人はそうもういかない。どうにかあの手この手で売ってくれと頼んでくる。仕舞には完璧な上から目線で店長を出せ!と脅す輩もいる始末だ。ただまぁ、生憎サクラにはその手の脅しはまったく効果はなく逆に殺気を当てられ腰を抜かして逃げ出す輩が大半だった。


「今日はクヨウさんから店の事を任せれちゃったからね、きっちりやらないと。」

「ははは、もうすっかり奥さんやってますね。指輪までしっかりしちゃって。ウラヤマシイナ~。」

「ミリアちゃんだって良い人すぐに見つかるわよ。」


指輪はクヨウが祭りの時に告白した際にサクラにプレゼントしたものだ。半目でサクラと指輪を眺めつつミリアは「本当に誰かいないかな~?」と悩み、サクラがそこを突っ込んでいた。そういった話で盛り上がるサクラとミリアだったが、生憎ヒカリにはまだまだ何のことなのか理解できていなかった。


そして夕暮れ時にそれは起こった。

サクラとミリアが店番をしているときに、店の奥から膨大な魔力が流れてきたのだ。


「え!?何この魔力!」

「すごい力ね。ある程度結界を張って防いでるみたいだけどそれで防ぎきれてないわね。ん~、騒ぎにならなければ良いけど。」


2人はクヨウが中で杖を作っていると予想できてはいたが、まさか杖の魔力が暴走しているとは思っていなかった。


「神様が作った杖の再現っていうんだから、これくらいの魔力があるんでしょうね~。」


ミリアは関心したように頷いていたが、サクラは少し嫌な予感がしていた。


(それにしても、少々乱暴な魔力じゃないかな?この膨大な魔力を杖の中に押し込むのだから少々強引になるのかもしれないけど・・・・)


流石に中の状態までは予想しきれず、嫌な予感を抱えたまま見守るしかなかった。そしてそれは起こった。魔力の破裂とも言うべき爆音がしたのだ。その瞬間、結界が破壊される。幸いなことに店の壁や窓には影響がなかったが、中にいるクヨウの安否が気に掛かる。

サクラは爆音の瞬間、少々驚いたが結界が破壊されたことに気がつくとそのまま店の奥へ一気に駆け込んで行った。


「クヨウさん!」


あまりの出来事にミリアは固まってしまうがヒカリが飛びついてきたので、ヒカリを抱いて店の奥に入っていく。そして、そこで見たのはうっすらとしか呼吸を行っていないクヨウと顔を青くして必死にクヨウの状態を調べているサクラだった。





ーー真っ白い空間ーー


「あれ?ここは?」


クヨウがふと目を覚ますとそこは真っ白な空間だった。


(あれ?何がどうなったっけ?)


自分がどうしてここにいるかが、全く思い出せない。それでも悩むクヨウの目の前に1人の人物が現れた。


「ほっほっほ、久しいのぉ。元気にしておったか?」


その人物とはクヨウとレンヤをこの世界に入れた張本人であり、この世界の管理人だった。しかし、クヨウは全く気がつかず悩んでおり、完璧無視している状態だった。


「お~い、お主話を聞いておるか?」

「え?」


そこでようやく目の前の管理人に気がついた。気がついたのだが、誰か判別できていなかった。


「え~と、どちら様でしょうか?あの世だと仮定すると死んだ爺さんとか?」

「わしの事を覚えておらんのか。わしじゃよ、わし!」

「新手の詐欺?ごめんね~お爺ちゃん今僕お金ないんだよ~、だからまた今度遊んであげるね~。」


管理人も流石に詐欺やボケた爺さんとかと勘違いされると流石に青筋を浮かべだした。


「わしをおちょくるつもりか?そろそろボケ倒すのを辞めないならそのままあの世へ案内してやってもよいぞ?」

「え~と、ごめんなさい。」


クヨウと若干遊びすぎたことを反省し謝罪する。


「それで、僕はなんでまたここにいるんですか?」

「お主覚えておらんか?ここに来る直前まで何をしておったかを。」

「それがさっきから思い出せないですよ、何してましたっけ?」

「やれやれ、まぁよい。まずは思い出してもらおうとするかのう。」


そして管理人がクヨウが浄化のための杖を作っていたことを説明する。半分くらい話してからようやくクヨウも思い出してきた。


「ん~?もしかして、僕死んだ?」

「いや、死んではおらぬよ。ただ、今のおぬしは魂だけの存在じゃがのう。」

「魂って・・・・じゃあ肉体は?」

「向こうにおいてある。今回はお主の魂だけを呼び出した形じゃからの。ああ、安心せい。別に死んだわけじゃないから肉体も生きておるよ。」


魂が抜けておるがのうと笑う管理人に若干クヨウは呆れる。しかし、ある程度の事情を思い出し把握したクヨウは一安心する。


「理解してもらえたようで何よりじゃ。それでは本題じゃ。」

「僕を何故呼び出したか・・・ですか?それは杖の件ですか?」

「うむ、まぁ原因じゃしのう。」


ここに来る直前と記憶があれば誰でも推測することはできる。そしてその理由も。しかし、クヨウの予想は良い意味で裏切られることになる。


「別に説教をするつもりはないぞい。まぁやりすぎじゃがな。今回あれは失敗したのではなく失敗させたのじゃ。」

「???どういう意味?」

「あれを成功させてしまうとお主の魂が神格化されてしまうのじゃよ。何せ神と同じ事をやり遂げたのじゃからな。無論わしが与えた反則に近しい能力のおかげとはいえな。なので、人間のままでいさせるために失敗させたのじゃ。」


神格化すると輪廻の輪からはずれてしまうし、肉体からして人間を遥かに上回る存在になってしまうのだ。今までのクヨウを生き方を見て、本人がそれを望まないだろうと推測していた管理人はそれを阻止したのだ。


「なるほど、それはありがとうございます。色々厄介な状態になる寸前だったのですね。」

「何、礼には及ばんよ。わしが与えた力の監督をするくらい造作もないことじゃからな。」


クヨウとしてはかなり助かることだ。しかし、同時に困ることでもある。依頼を解決させる方法が途端場でなくなったのだ。かといって、神格化して依頼を解決するわけにもいかない。しかし、管理人もそれは見越していた。


「ああ、心配するでない。失敗させたとはいえ偉業を達成したことには違いが無い。その杖はわしが与えようではないか。ただし、効果は1度きりじゃ。使用後は粉々になって消滅するから気をつけるように。」

「ありがとうございます。あ~良かった。これで何とか依頼を達成できるか。」


ホッとするクヨウだが、管理人の要件はこれだけではなかった。


「それとお主から、その能力ははずしておいた。もう2度と使うことはできないだろう。」

「え!?どうしてですか?」

「あれはのう、元々補助具のような意味合いでつけておいたのじゃよ。いきなり異世界へ送ってもなかなか生活できる物でもないからのう。しかし、お主は既にそれを克服しておる。かの地に根を張り1人の人間として生きておる。そんな者には補助具は必要なかろう。既にお主とてそれがなくとも生きていける自信はあるのじゃろう?

「ええ~、そりゃあまぁなんとか。」


クヨウも目立つことを嫌って極力能力を使わない事を選んだのだ。不便と言えば不便にはなるが、そこまで困ることでもない。


「能力に頼りきりだったらそのままでもよかったんじゃが、お主はそうでもないからのぅ。1人前になったという証じゃと思えばよい。」

「ん~、そういうことなら。まぁいいか。」


既に決定事項っぽかったので、クヨウも反論する気はない。それに自分の力でもなんとかやっている自信はある。


「さて、そろそろあちらへ戻そう。お主の心配をしている者もおるじゃろうしのう。」

「うん、まぁ色々とありがとう。」

「うむ、もう会うことは・・・・多分ないじゃろう。達者で暮らせよ。」


クヨウの意識はそのまま闇に落ちていった。




ーー道具屋リュミエール(居住区)--


「ううん・・・」


クヨウがゆっくり目を開けるとそこには泣いて心配しているサクラがいた。


「クヨウさん!?あ~よかった気がついたのね。どう?大丈夫?どこか痛かったり調子の悪いところある?」


クヨウはゆっくり起きて体の調子を確かめる。体全体が少々痛む程度で特に酷いところはない。


「ううん、大丈夫だよ。ごめんね、心配かけたみたいで。」

「よかった。本当に死んだみたいで怖かったのよ。」


サクラはクヨウに抱きつく。クヨウは突然のことに驚くが、サクラの体が少し震えていたのがわかったので、何も言わずただ抱きしめた。


それから少ししてミリアが医者を連れてきた。そこである程度見てもらい問題ない事がわかり、念のため細かい検査を後日行うことになった。


「本当に良かったですよ。まさかあんな失敗するとは思わなかったですからね。」

「あはは、ミリアさんも心配をかけてごめんね。」

「いえいえ、無事でなによりです。それにしても依頼はどうするんですか?杖は見るからに粉々になってますからね。」

「あ~、それに関してはこれを・・・・。」


クヨウがポケットから取り出したのは、かなり小型になった杖だった。もっとも杖から放たれる神々しさは粉々になった杖の比ではない。しかし、同時にどこか儚さをかもし出していた。


「クヨウさん、どうしてそんなものを?」

「うん、今からそれを説明するね。」


クヨウは気を失って倒れたあとの事を全て話した。最初は驚いているサクラとミリアだったが、杖があることが何よりの証明なのでもう感心するしかなかった。


「でも、1回だけじゃ試せないわね。」

「んまぁ、管理人がわざわざくれたんだから使えないってことはないと思うよ。」

「そうですよね~。」


説明も済み一段落したところでヒカリがクヨウに飛びつき顔を舐めてきた。ヒカリもヒカリでかなり心配していたようだった。流石に今まではヒカリなりに空気を読んでいたようで、大人しくしていたがそれも既に限界だったようだ。


「お父様、大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ。ヒカリも心配かけてごめんね。」

「ううん、いいよ。お父様今日は一緒に寝て良い?」

「あはは、いいよ。じゃあ3人で寝ようか?」

「うん!」


大喜びのヒカリに対し、サクラは顔を真っ赤にしている。流石に同じ布団で寝るのは恥ずかしいようだった。


「サクラさん顔を真っ赤にしちゃって可愛いですね~。じゃあ私はそろそろ帰りますね~、お邪魔虫は早々に立ち去らないとね。サクラさん、御馳走様。」

「ちょっとミリアちゃん!?」


ミリアは後半はサクラにしか聞こえないように囁いて帰っていった。サクラは変わらず顔を真っ赤にしている。


「サクラ?どうしたの?」

「お母様?お顔が真っ赤ですよ。」

「ああううん、大丈夫、大丈夫よ。」


大分ミリアにからかわれるようになったサクラはしばらく顔を赤くしたままだった。


クヨウの杖作りは失敗したが、それでも依頼を達成させるための物がそろった。あとは期日を待つばかりである。


これで杖を完成させたら神様もびっくりしますよね~ってことで失敗させました。

ついでに能力もなくしました。1人立ちって意味では丁度いいのでね。


ちなみに、レンヤの場合は既に身体能力便りではなくちゃんと技術もあるので既に1人立ちしてます。身体能力減とかにはなりません。


では~、次回をお楽しみに~。

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