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第45話「お祭りの準備」

今回はなかなか難産でした。予想以上に手間がかかって・・・・



第45話「お祭りの準備」


アゲインからの依頼に目処がついて一週間ほどが過ぎた。バンガードから『頼まれたものは一通り揃った』という連絡を受けたので、クヨウも一安心していた。ただ・・・・掛かった費用はある意味クヨウの予想通りで半端な額ではなかった。今までの稼ぎの9割を使うと言う事態になっていた。クヨウは元々そこまで金のかかる生活をしているわけではないので、問題ないといえば問題ないのだが、それでも支出は大きかった。


「ということなので、お祭りで新しい商品でも出そうかと思います。」

「結局普通に道具を売るのね?」

「面白いアイデアも出なかったからね。」


本当は少し変わった出店でもしようかという話になっていたが、あまり良いアイデアがなかったため、結局そこで落ち着くことになった。


「でも、お祭り時に買う道具なんてあるんですか?」

「いやまぁ、道具というか装飾品になるかな?一応向こうの世界では人気があった物をこっちで商品化しようと思ってるよ。」


クヨウが考えているのは蛍光の腕輪等の玩具だ。勿論、向こうのように科学技術があるわけではないので同じ材料で作れるわけもないのだが、そこは、簡易魔法具として作って売る予定だ。内容はできるだけ簡単にしてある。腕輪用の太目の紐を編みこみそこに模様として術式を作る。術式も大気中の魔力をほんの少し吸い取りその魔力で紐を少し明るくするだけだ。腕に巻きつけて、結ぶと明るくなるようにしてある。あとは紐の色で明るくなる色も変えてあるのでそれなりの種類を出せる。価格もかなり抑えてあるので、子供でも買えるようにしてある。薄利多売になるが、ラングランの街の規模から考えてもかなりの数が売れるだろう。あとは似た感じの指輪やイヤリングを多少値段が上がるものの売る予定にしてある。


「へぇ~、でもそんな紐作れるの?かなりの数を売ることになるんでしょう?」

「商人ギルドを通して職人に依頼してあるよ。向こうの職人さんとも話したけど、なかなかノリが良い人だったね。」

「何時の間に・・・・もしかしてヒカリちゃんと一緒に散歩しに行ったときに?」

「うん。向こうにもアイデアを出してもらったから特許に関しては共同になったけど、おかげで良い物ができた。当日は2人につけてもらう予定だよ。」

「へ~、どんなのか楽しみね。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


次の日クヨウは出店で出す物をある程度決めて、店の奥で休憩ついでにヒカリと遊んでいた時だった。


「クヨウさん~、お客さんが来てるよ~。」

「ん?誰だろう?ヒカリも行く?」

「うん!」


クヨウに抱きついてたヒカリはそのままクヨウの後頭部へ移動する。人でいうと肩車をしている状態だ。それがヒカリの最近のお気に入りだった。クヨウは既に慣れきっているので、そのままの状態で店に出て行った。行った先にいたのはクヨウが蛍光に光る紐を依頼した職人だった。


「どうも、お世話になってます。」

「どうも、お疲れ様です。トルネさんが来たってことはもう出来上がったんですか?」

「ええ、とってもやりがいがありましたからね、楽しくて楽しくて仕方がなかったですよ~。」


クヨウが頼んだ職人、トルネ・ネルウィークは人懐っこい性格が特徴のエルフの女性だ。青白い若干パーマの掛かった髪に大きな丸い眼鏡をかけている。エルフの特徴である耳は横に尖っており、垂れ目とも相まってやさしそうな印象のする人だった。エルフの中でも彼女は少々変わり者で、エルフの種族は選民意識が強い者が多く、他の種族を見下す傾向が全体的にある。彼女は特にそういう傾向はない、というか興味がなかった。服飾の職人としてのプライドは高いがそれは自分の実力に対する自信と誇りであり他の種族を見下すということはない。


「クヨウさん、彼女はどちら様ですか?」

「昨日話した紐を依頼した職人さんだよ。」

「トルネ・ネルウィークと申します~。服飾作成をしてますので、何かあればよろしくお願いしますね。お二人はここの店員さんですか?ああ!奥様でしたか!?」

「お、おお・・奥様!?」

「私はただの店員です。奥様はこちらですね~。」

「ミリアさん、僕らはまだ結婚してないですよ。」

「あれ?反応がイマイチ。奥様はなかなか良い反応で面白いんですけど、クヨウさんは案外淡白なんですね。」

「僕は開き直ってるだけですよ、大袈裟に反応すると格好の獲物ですから。」


やれやれといった感じでクヨウは答える、実際色々な人から散々からかわれているので既に慣れているのだった。それに比べサクラはどうも慣れないのか未だにテンパっている。


「サクラさんは戦闘時はキリっとして凄いんですけど、中身は乙女なのでこういう方面は物凄く弱くて可愛いですね。」

「そうだね~。」

「お母様、大丈夫?」

「大丈夫だよヒカリ、サクラは照れてるだけだから。」

「おほん、あまり世間話をしているのも何なので仕事の話をしますね。」


自分から話をかき回しておいてその言い方はどうなのよ?と思うミリアだったが、話が進まなくなるのであえてスルーした。トルネは持っていたカバンから3種類ほどの紐を取り出す。主体の色が赤、緑、青の3種類あった。


「これが試作品の紐になります。基本的な構造はクヨウさんと打ち合わせした通りです。光の色の変化は紐の色で変えれるようにしてあります。」

「ああ、なるほど。そっちのほうが簡単だった?」

「いくつか案があった中で、難しさで言えばこれが一番難しかったですよ。ただ、一度作ってしまえば応用が簡単ですからね。後々のことを考えるとこれが最適でした。」


色つきで光らせるのはいくつか案があった。術式で色を指定して光らせたり、紐の中に光らせる専用の物を入れる等である。どれでも掛かる費用はあまり変わらないのだが、後々他に使ったり、或いは応用させて使うには少々面倒な部分があった。特に作成時に手間がかかるのは大量生産には向いていないからだ。今回採用した案は『紐の色を光らせる』という術式になっている。そうすることで同じ術式を大量生産しても紐の色を変えるだけで色のバリエーションが増やせるのだ。


「では早速付けてみてください。」

「どれどれ・・・・お~、いいね~。思ったより綺麗だ。」

「わっ、可愛いわこれ。ヒカリちゃんにもつけてみよう。」


かなりの好評価にトルネは心の中で安堵した。実際蛍光くらいの光しかでないので地味といえば地味なのだ。派手好きには少々物足りないかな~?と思ったくらいなので、クヨウ達の評価は嬉しいと同時に安心したのだった。


「見て見て~。」


嬉しそうにしているヒカリの首元には、首飾りのごとく光る紐がつけられていた。


「あら、可愛いわね~。モデルに欲しいくらいだわ~。」

「ヒカリちゃん、ナイスよ!」


トルネとサクラがヒカリを着飾って楽しんでいた、クヨウも楽しみたかったのだがあることに悩んでいた。


「クヨウさん、どうかしたんですか?」

「ん?いや、紐の欠点をどうにかしたいなぁ~ってね。」

「欠点?」


クヨウも紐の出来栄えには十分満足していた。ただ一つ問題が出てきた。紐を光らせるには輪の状態にしなければならない。そうすることで未使用時には光らせない用にできるし、つなげる事で大きな輪にできるからだ。しかし、その繋ぎの部分が問題だった。紐なので輪を作るには結ばなければならない。一人で結ぶには少々面倒なのである。大人はまだいいのだが、子供には不便になってしまう。その上、拙い結び方だと最悪失くしたり落としたりがあるのだ。


「なるほど~確かにそうですね。でも簡単に付けれるってことは簡単に取れるってことですよね?流石に無理があるんじゃないですか?」

「ん~、実はそうでもないんだよね~・・・・でも金具をつけるわけにはいかないし・・・・ってことは・・・・。」


一人ぶつぶつと考え込むクヨウをそっとしておき、ミリアもヒカリで楽しむことにするのだった。


トルネはヒカリを飾り付けをして楽しんだ後に、クヨウと細かい内容の打ち合わせをした後帰って行った。クヨウの悩んでいた点はトルネとの話し合いの末、マジックテープもどきを作ることにより解決した。これも共同特許ということになり、帰る時のトルネはホクホク顔だった。


トルネの帰った後、ミリアは疑問に思っていた事をクヨウに聞いてみた。


「クヨウさん、どうしてカティナさんに頼まなかったの?」


カティナはリュミエールの服装デザインをしてくれた人だ。クヨウも本来ならカティナに頼もうとしていたのだが・・・・


「実はあの人も祭りの準備でかなり忙しそうだったんだよね。流石に相談とか持ち掛けれる雰囲気じゃなかったんだよね。」

「へぇ~、結構人気ある人だったのね。」

「トルネさんの所は大口の依頼は受けてないから今回はなんとかなったんだよ。」


実際のところ、トルネの店の規模が小さく大口の依頼は受け付けていないのだ。しかし、今回の事でトルネの店が大成功し、カティナの店より大きくなってしまうのは誰も予想していなかった。ちなみに、その事でクヨウがカティナになじられるようになったのは言うまでもない。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


数日後、クヨウは商人ギルドに来ていた。というのも、場所取りのためである。場所取りは出店をする側にとっては死活問題である。大通りから外れれば外れるほど、客足が遠のいてしまう。なので、みんな大通りやその近くへ店を出したがるが、全ての店が大通りへ店を出せるほど大通りも広くはない。昔は自由に場所取りをしてたこともあったらしいが、いざこざが絶えなく乱闘騒ぎにもなることがあったため、今は王宮から商人ギルドが仕切るように指示されている。商人ギルドである程度管理するようになってからはいざこざも減り、治安というかマナーの問題もある程度解消されている。それもあり、出店をする側は商人ギルドへ事前登録をしておき、場所取りを商人ギルドで行うのだ。


「流石に混んでるなぁ~。」


商人ギルドはかなり混んでいる。祭りの規模が大きい為、出店の数が多いのは仕方がないことなのだ。場所取りの仕方は単純である。場所にも集客率の見込める所で1等から3等まで分けてある。それぞれの等級でくじを引き、くじで引いた場所に店を出せるのだ。ちなみに、場所の数より店が多い場合ははずれもある。もしはずれを引いた場合は余った場所のくじを引きなおしその場所に従う。それでもはずれを引いた場合は、禁止エリアと既に決定済みのエリア以外で出店をするしかない。

クヨウが狙っているのは2等の場所だ。1等は流石に大人気であり、はずれを引く可能性も高い。2等なら危険性はかなり下がる。それに店の規模からしても、大通りに店を出すよりは多少外れてた方が効率がいいのだ。単純に人手と物量の問題で。


「おう!クヨウの坊主じゃないか、久々だな。「リュミエール」も出店をするのか~、何処を狙ってるんだ!?」

「ガルムさんですか、お久しぶりですね。僕は2等ですよ。そのくらいが丁度いいですから。ガルムさんは?」

「1等に決まってるじゃないか!男ならドーンとぶつかるのがいいんだよ!堅実にやってもつまらんだろうに。」

「相変わらず豪快ですね~。」

「ガハハハ、当然だろ~。まぁ、その分ライバルも多いけどな。そっちは何番だ?」

「僕は34番です。」

「お!早いな!こっちは329番だぞ!ったくどんだけライバルが多いんだか。」


1等希望は全部で500店舗ある。うち100店舗くらいしか当たりがない。確率は25%。かなり低い。一方2等は120店舗くらいあるうち、当たりは90くらいだ。確率は75%、余程運が悪くなければ問題ない。しかも、クヨウは密かに運気上昇の指輪をちゃっかり装備している。これは非売品であり、一般に知られていない。何気にクヨウもやる事が黒かった。


「よし、25番か・・・場所は・・・うん、なかなかいい場所かな。」


くじで当たりを引いたらその場で登録し、細かい場所を確認するだけだ。ちなみに、ガルムも当たりを引いていた。なかなか運がいいらしい。


「準備も整ったし、あとは・・・・まぁアレの準備だけか、流石に緊張するね~。」


商人ギルドからの帰り道、クヨウは必要な物の最終チェックをしていた。祭りの準備で若干忘れかけていたが、アゲインの依頼も期日が迫ってきている。色々とやらなければならない事が増えてきて忙しくなってきたクヨウはある決意を固めていた。


ちょっとキャラ紹介を細かくしてみました。いつもさらっとしか紹介してませんでしたし・・・でも効果があるのかは微妙な感じですかね?


いつも何処まで書いたらいいかとか悩みまくりで、なかなか進まないんですよね~。改めて執筆の難しさを実感しております。


では~、次回をお楽しみに~。

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