22 モンスターボールを投げる側か、投げられる側か
モンスターボール、投げるか?
今ならいける気がする……。
「って、こんな2人しかいないサークルに入ってくれる物好きはいないか……」
桂香さんが肩を落とす。
引かないでよそこで!
「去年は先輩が5人いたんだけどね~。みんな卒業しちゃって。それで私1人になっちゃったの。サークル崩壊の危機! と思って、竜次くんをがそこらへんにいたから誘ったの」
竜次くんを誘った理由雑すぎるだろ。
「だからそいつめっちゃ弱いっしょ?」
たしかに。ルール覚えたての僕と互角だからあやしいと思ってた。
「桂香さん、僕の扱い酷すぎますよ! あのこと言いますよ?」
あのこと?
「ちょ! だめだって! でね、2人だけってのもさみしいと思ってて、よかったら2人もサークルに入ってほしいなーって。だめかな?」
桂香さんが願ってもない提案をしてくる。
「あのことってなんですか?」
「よかったら2人もサークルに入ってほしいなーって。だめかな?」
「あのことってなんですか?」
「よかったら2人もサークルに入ってほしいなーって。だめかな?」
ドラクエの住民かよ。
「いいですよ。そのかわり条件があります。あのことってなんですか? 教えてください」
メリットを享受しつつ、メリットを享受しにいく。おいしい。
「桂香さんが恥ずかしいなら俺が言いますよ!」
竜次くんが声を上げる。
「健太郎さんとめぐみんさんが昨日帰ったあと、桂香さんが話してたんですよ。2人と友達になりたいって」
!?!?!?!?
桂香さんの方を向くと、恥ずかしさからか顔を手で隠していた。
「わ、私、サークルの先輩しか友達と言える人がいなかったから、みんな卒業しちゃって、今友達が1人もいないのよ」
僕の周り友達いない人多くね????
「1人もいないって……俺友達じゃなかったのか……」
「あ、竜次くんがいたか。忘れてたわ」
忘れんなよ。
「それで、昨日2人が将棋サークルに来てくれたのがうれしくて」
「ちょっと待ってください」
めぐみんが桂香さんの話にストップを入れる。
「作戦会議に入ります!」
そう言って、僕を引っ張って部室の外に出た。
* * * * *
「けんちゃん! このままでは向こうのペースで友達にされちゃうよ! モンスターボールを投げるんじゃなくて、モンスターボールを投げられる側になっちゃうの! あたしたち今ポケモンになりかけてるんだよ!」
意味わからん。
まあそうか、えりかは自力で友達を作れって僕に言ったんだもんな。
向こうから言われたとしても自力と言えば自力だけど、ここは勇気を出してこちらから仕掛けないと、胸を張って友達を作ったとは言えない。
こんな試行錯誤、駆け引きしながらみんなを友達作っているんだろうな……。友達作り……奥が深いな。
「わかった! 部屋に入った瞬間、先制攻撃でこちらからしかける! そのあとの補佐は頼んだ! めぐみん!」
「おっけい、わかった! じゃあ、いくわよ!」
ガチャッ。部室のドアを開ける。
そして……
「桂香さん、竜次くん! 僕たちと友達になってください!!!!!!」
モンスターボールは投げられた。




