21 おれ達もう仲間だろ
パチッ、タンッ……パチッ、タンッ……。
将棋盤が駒で弾かれ、指した手がそのままタイマーを押す。
将棋サークル潜入2日目。
昨日は将棋談義で盛り上がったが(主にめぐみんが)、今は静かに対局をしている。
「あー負けた!」
将棋サークルの部長、香川桂香さんが悔しそうに声を上げる。
「ふっふっふ、なかなかやりますね桂香さん。しかし真の最強将棋女子はこのあたしよ!」
やっぱりめぐみん強いのな。
「私アマ初段だけどあなたは何段なの?」
桂香さんが問う。
「四段よ。って言っても道場じゃなくて将棋ウォーズっていうスマホ将棋アプリでの認定だけどね。一応連盟が公式に認めてるもので棋界トップの2人豊島竜王と渡辺名人、現役A級棋士でありながら将棋連盟の会長も勤める佐藤康光九段の直筆免状も持ってるわほんとは羽生九段が永世七冠を取った時の羽生竜王の直筆免状が欲しかったんだけどその時三段だったんよねで三段免状って5万円+税かかるでしょもうすぐ四段だから四段になってから貰おうと思ったんだけどその時には広瀬竜王になっててあの時高くても貰っておくべきだったわ羽生九段竜王か名人でタイトル通算100期はよ!!!」
あ、やばいポケモン倒しちゃう。
しかし桂香さんは昨日とは違った。
「将棋ウォーズ私もやってるから友達登録しよそうすれば家でも一緒に指せるし羽生九段最近は少し成績が落ちてるみたいだけど数々の偉業を成し遂げてきた羽生九段ならタイトル通算100期きっと成し遂げてくれる気がするわ私も羽生竜王or名人の免状欲しいしかし第33期竜王戦で惜しくも豊島竜王に敗れたけど50歳という年齢になってもまだまだタイトル戦に絡めてて現将棋界トップ4の藤井豊島渡辺永瀬に食らいついてるのほんと尊敬するわ」
あなたがめぐみんに食らいついてるのほんと尊敬するわ。
桂香さんは、めぐみんのオタク特有の早口には慣れたようで、オタク特有の早口返しの技を会得していた。さすがポケモン、技の覚えが早い。
めぐみんの見た目がさっぱりして打ち解けやすくなってるのもあるのかな。
めぐみんはスマホを取り出して桂香さんと友達登録しようと、将棋ウォーズのアプリを開いている。
「しかしネット将棋って便利だよね〜」
めぐみんが続ける。
「女子って男ばっかの将棋道場になんてなかなか通えないじゃない? 周りの目も気になるし。ネットなら自分の性別なんて関係ないし、仮に自分のリアルがいかにゴミでコミュ障で友達が1人もいなかろうがネットの中でさえ実力を発揮してれば優秀だと思われるもんねえ」
刺さるからやめて。
桂香さんが返答する。
「そうねえ仮に自分のリアルがいかにゴミでコミュ障で友達が1人もいなかろうがネットの中でさえ実力を発揮してれば優秀だと思われるのはネットのいいとこよねえ」
その返答いる!?!?!?
「ちょっと! 健太郎さん早く指してください」
僕と対局していた、今年から将棋サークルに入った新入生、名尾竜次君が次の一手を催促する。
「ああ、ごめん」
パチッ、タンッ。
次の一手を指し、ふと気になっていたことを思い出す。
「そういえば昨日から思ってたんだけど、このサークルって2人しかメンバーいないの?」
昨日からこの2人しか見ていない。
「何言ってんの」
桂香さんがこちらを向く。
「盤を挟んだんだからさ、君たち2人ももうメンバーでしょ?」
めぐみんと目が合う。
モンスターボール、投げるか?




