第七話 廃寺に眠る秘宝
ドクロ法師の卑劣な攻撃に、窮地に追い込まれた新兵衛達。
「もはやこれまでか・・・。」
と、思われたその時だ。
「そこまでだっ、ドクロ法師。」
間一髪のところで導節と小文吾、智徳法師の三人がドクロ法師の前に現れたのだった。
『き、貴様は犬山導節・・・。』
「ドクロ法師、貴様の悪事もこれまでだっ。」
「もはや年貢の納め時だっ・・・、覚悟するんだな。」
『お、お前は智徳法師。この裏切り者めっ。』
「何が裏切り者だっ、貴様のせいで、危うく仲間を殺してしまうところだったぞ。」
と、その時新兵衛と信乃と現八が横たわっているのを発見し、急いで三人の元へ駆け寄っていったのである。
「新兵衛、信乃、現八、大丈夫か・・・。」
「ええ、私は大丈夫です・・・。」
「導節、俺達に構わず、ドクロ法師の奴を・・・。」
「導節様、奴は怪しげな術を使います。油断召されぬ様お気をつけ下され・・・。」
『おのれ、邪魔が入ってしまった様だな。仕方ない、貴様等全員纏めて始末してやるっ。』
ドクロ法師がいきなり導節達に襲い掛かっていき、すかさず導節は修験術を施していった。
「オンバサラ・ナウマク・ボダナン・インダラ・ソワカ!」
導節の修験術がドクロ法師に放っていくが、ドクロ法師は印を結んで術を唱えると、一瞬で姿を眩ましていくのであった。
「何っ、姿を眩ましただと・・・。」
「ドクロ法師め、何処へ消えやがった。」
「まだこの辺りにいる筈だ、油断するなよ。」
導節達が辺りを見回していると、何処からかドクロ法師の声が響き渡っていった。
『ふはは・・・、何処に目をつけているんだ。我は此処におるぞ。』
「おのれ、ドクロ法師。何処にいるんだ。」
するといきなり、導節達の背後に現れ、不意打ちを喰らわせていこうとしていったが、間一髪でドクロ法師の攻撃を避けていき、導節は修験術でドクロ法師を弾き飛ばしていった。
『ぐわっ・・・。』
「ドクロ法師、もはやこれまでだ。覚悟しろっ。」
『お、おのれこのままで済むと思うなよ・・・。』
そう言って、ドクロ法師はその場から姿を消していったが、負傷した新兵衛、信乃、現八の手当てを施していくのである。
「三人とも大丈夫か・・・。」
「ええ、しかしあと少しのところでドクロ法師を倒せたのに、とても残念でございます。」
「仕方が無い、だがいずれは奴を倒す機会がある。それまでの間、暫く身体を休めるといいだろう。」
「分かりました、導節様。」
「導節、これからどうするんだ。」
「・・・まだ分からない。」
「もはや、討つ手は無いのか。」
と、その時だった。
小文吾が突然何かを思い出したかの如く、導節達に話しをしていったのである。
「導節様、一つだけドクロ法師を倒す妙案を思い出したのでございます。」
「何っ、それは本当か。」
「はい、でも多少の危険は覚悟なさったほうが宜しいかと・・・。」
「構わぬ、我等は幾多の魔物と戦ってきた経験がある。それに比べれば、どんな危険が待ち構えようと、決して悔いは無い。」
「そうですか、それなら話しは早い。実は、この近くの古い廃寺があり、その廃寺の地下室に《照魔鏡》と呼ばれる法具が隠されていると言う伝説があるんだ。」
「私も聞いた事がございます。なんでも、その照魔鏡は、強力な妖力を持つ魔物を封じる鏡だとか・・・。」
「その鏡があれば、ドクロ法師を倒せると言うのだな。」
「ええ・・・。」
「その鏡がある廃寺の名前は・・・。」
「確か、養源寺と言う名前だった記憶がございます・・・。」
「養源寺か・・・、そこへ行けば照魔鏡があるのだな。」
「ええ、間違いありません。しかし、あの鏡には恐ろしい魔物が鏡を護っているらしく、その鏡を手にしよう者があれば、必ずその魔物の餌食になってしまうと言われているのです。」
すると導節は、少し考え事をしながらこう答えたのである。
「要するに、その魔物を倒せば鏡が手に入る・・・。簡単な事じゃないか。」
「どう言う事だ、導節。」
現八が怪訝な顔をしながら導節に話すと、更に導節はこう答えた。
「つまりこう言う事だよ、その魔物を我等の使い魔として使役してしまえばいいんだよ。」
「おい、正気で言っているのか・・・。」
「ああ、正気だ。」
「現八殿、導節様は我々の為に考えておられての事だ。あまり導節様を責めるな。」
信乃は現八を諭し、なだめていったのである。
「とにかく、養源寺に行って照魔鏡を手に入れない事には、いつまで経ってもドクロ法師を倒す事は出来ない。」
「そうだ、早いとこ照魔鏡を手に入れよう。」
「新兵衛、信乃、現八、小文吾。お前達は此処に残って鋭気を養いながら休んでいるんだ。」
「導節はどうするんだ。」
「私は智徳法師と共に、養源寺に向かう。」
「導節、今まで迷惑を掛けてしまった分を取り戻す為に、俺も導節と戦う。」
「智徳法師、ありがとう・・・。」
「導節様、必ず帰って来て下さいませ。」
新兵衛は導節を心配しながら声を掛けていくと、導節は、
「心配するな、私は必ず帰って来る。それまでの間、みんなの事を頼んだぞ。」
「分かりました、ではお気をつけて・・・。」
「うむ、では智徳法師・・・行こうか。」
「ああ、行こう。」
こうして、導節と智徳法師の二人は、照魔鏡を手に入れる為、急いで養源寺へと向かっていった。
その頃、幻魔城ではドクロ法師が玉梓にこれまでの経緯を報告していた。
『玉梓様に報告します、犬山導節始め光の犬士どもは、駿河の国に到着し、既に五人目の仲間を集めた模様にございます。』
『・・・とうとう光の犬士が五人も集まってしまったか。』
『はっ・・・。』
『しかしながら、奴等が束になっても、我等闇の軍団には敵わぬものか。』
すると幻斎坊は、
『玉梓様、こうなったら一気に奴等を始末なさった方が宜しいかと・・・。』
『待てっ、まだ奴等を始末するのはそのあとじゃ。』
『御意・・・。』
『ドクロ法師よ、そう言えば智徳法師の方はどうなっておるのじゃ。』
『そ、それがいつの間にか奴は正気に戻っており、我を裏切ってしまった様にございます。』
『なんとも不甲斐ない・・・。まあいい、いずれにせよ奴を始末するのはそのあとでも出来る。』
『申し訳ありません、この次は必ずや裏切り者の智徳法師めを・・・。』
『それから、ドクロ法師にこれを授ける。』
玉梓は、ドクロ法師に一枚の黒い札を手渡していった。
『玉梓様、この黒い札は・・・。』
『この黒い札は、人間の心を邪悪の心に変える〔邪心符〕と言う札じゃ。こいつを智徳法師の身体に宿らせれば、例え犬山導節であろうと、どうにもなるまい。』
『ではこの邪心符を智徳法師に使えば・・・。』
『左様、奴は我等の思うがまま。一気に光の犬士どもを叩き潰す事が出来ると言う訳じゃ。』
『なるほど、そうすれば智徳法師めは我の操り人形となる訳でございますな。』
『その通りじゃ、ドクロ法師よ。さあ、行くがいい・・・。』
『万事承知致しました。必ずや智徳法師を我の下部として操り、光の犬士どもを始末してご覧に入れましょうぞ・・・。』
一方、照魔鏡を手に入れる為、養源寺に向かっていた導節と智徳法師の二人は、雑草が生い茂っている小さな廃寺を見つけたのであった。
「導節、どうやら此処らしいな。」
「この寺の地下室に、照魔鏡があるのか。」
「気をつけろよ、どんな魔物が待ち構えているのか・・・。」
「なあに、いかなる魔物が襲ってこようと、我が修験術で退治してやる。」
「とにかく、中へ入ろう。」
暫くして、養源寺の内部に入っていった導節と智徳法師は、荒れ果てた状態の中を歩き進み、漸く地下室に通ずる隠し階段を発見したのである。
「この地下室に、照魔鏡があるのだな。」
「ああ、間違いなく照魔鏡は地下室の奥にある。」
導節と智徳法師は、ゆっくりと地下室の階段を降りていき、薄暗い地下室を歩いていくと、両脇には十二神将像がずらりと並んでおり、今にも動き出しそうな雰囲気に包まれていたのである。
「導節、この十二神将像はかつて天界を守護していた、いわば護衛兵だったんだ。」
「いかなる魔物の大群をも、十二神将だけで蹴散らしていったんだからな。」
「おいっ、あれを見てみろよ。」
智徳法師が、地下室の奥にある厳重に封印されていた扉を発見した。
「此処が・・・、照魔鏡が納められている場所か・・・。」
「だが、封印のお札が貼られているみたいだぞ。」
そのお札には、まがまがしい絵が描かれており、近付く者を寄せ付けさせようとしなかった。
「・・・ん、気をつけろっ。」
突然扉の前に、全身毛むくじゃらの魔物が導節達の前に姿を現した。
『けけけ・・・、此処から先は行かせないぜ。』「貴様、何者だっ・・・。」
『我は妖怪・土蜘蛛なり。』
「遂に現れやがったな、だが我等に逢ったのが運のツキ・・・。」
「潔く天の裁きを受けるがいい。」
『此処の宝は誰にも渡さん。どうしても宝を手に入れたくば、我を倒してみろっ。』
するといきなり、土蜘蛛が口から糸を吐き、導節と智徳法師を襲撃していくが、導節はすかさず修験術を施していった。
「オン・バサラ・ナウマク・ボダナン・インダラ・ソワカ!」
導節の放った術が妖怪・土蜘蛛に命中し、続けざまに智徳法師がとどめの一撃を喰らわしていくのであった。
「天轟雷々・恕嚇如神!」
『そ、その術は・・・。まさかっ、お主は術使い・尾形宗久。』
「その通り、智徳法師とは仮の姿・・・。実は術使い・尾形宗久。」
『やはりそなただったか・・・、尾形左衛門博純の息子。』
「導節、驚いただろ。俺が尾形家の長男である事を・・・。」
「ああ、確かお前の父親は信濃の国の豪族だったと言う話しは聞いていたが、その息子がお前だったなんて・・・。」
「俺の父上は、ある日突然魔物に襲われ、命を落とした。当時幼かった俺は、一人の術使いに助けられ、十年近く術の修行をした。」
「それで、お前の父親を殺した犯人は誰なんだ。」
「そいつの名は、闇の僧侶・幻斎坊。」
『何だって・・・、それは本当か。』
「知っているのか、土蜘蛛よ。」
『ああ、闇の僧侶・幻斎坊は、とんでもない妖力を持つ恐ろしい術使いだ。これまでに、幻斎坊に挑んだ者はいたが、奴に敵う者は一人もいない。宗久よ、敵を取ると言うのなら、我の力を使うがいい。』
「いいのか、土蜘蛛よ。」
『ああ、我は幻斎坊の様な邪悪な力を持つ奴は許せない性質だからな。』
「忝ない、思う存分活用させて貰うぞ。」
『それから、この奥にある〔照魔鏡〕を持っていっていいぞ。』
「しかし・・・。」
『遠慮するな、今まで我は悪の限りを尽くしてきたが、今日から正義に目覚めたぞ。』
「土蜘蛛・・・。」
「導節、急いで照魔鏡を・・・。」
「ああ・・・。」
導節は扉の奥に進み、桐の箱に納められていた照魔鏡を手に入れたのである。
「これさえあれば、ドクロ法師の術を防ぐ事が出来る。」
「それだけでなく、ドクロ法師を一気に倒す事も出来る筈だ。」
『宗久殿、それが噂の照魔鏡なのか・・・。』
「ああ・・・。」
『だが気をつけろ、ドクロ法師は稀代の妖術使いだ。』
「分かっている、俺はそんなに軟じゃない。」
「宗久、あまり時間がないぞ。急いで戻らないと・・・。」
「そうだな、なんだか嫌な予感がするんだ。」
『宗久殿、こいつを受け取ってくれ。』
すると土蜘蛛は、宗久に一本の巻物を手渡したのである。
『その巻物は、我を召喚する為の大事な巻物。万が一、危険に晒された時は、いつでも我を呼ぶがよかろうぞ。』
「分かった・・・。導節、急ごう。」
「ああ、ドクロ法師が現れる前に・・・。」
無事照魔鏡を手に入れ、妖怪・土蜘蛛を式神として引き入れた導節と智徳法師こと尾形宗久は、急いで新兵衛達の元へと急いだ。
果たして、導節と宗久はドクロ法師が現れる前に間に合う事が出来るのだろうか・・・。




