第六話 闇の妖術使い・ドクロ法師登場!
妖怪・猿神を倒してから五日後の事、導節一行は五人目の仲間を捜しながら暗黒の魔術師の探索を始めていた。
「導節様、暗黒の魔術師はいったい何処にいるのでしょうか。」
「奴は神出鬼没の男だ、いつ何処に現れるのか・・・。」
「それよりも導節様、駿河の国に来たのはいいのですが、こんなところに人が住んでいるとは思われませんが・・・。」
「確かに、この辺りは誰一人住んでいないと言うのは、どうも合点がいきません。」
「まさか、闇の一族に関係があるんじゃないのか。」
「とにかく、この辺りを調べる必要があるな。」
早速導節達は、民家を一軒一軒調べていくのだが、何処にも人影は見られなかった。
「導節、何処にも人なんていないぞ。」
「確かに妙だな・・・、こいつは徹底的に調べる必要がある様だな。」
すると新兵衛が、地面に落ちていた一枚の紙切れを見つけ、導節に手渡したのである。
「導節様、地面にこんな物が・・・。」
「・・・こ、こいつは〔百鬼夜行符〕じゃないか。」
「百鬼夜行符・・・っていったい何々ですか。」
「百鬼夜行符は、異世界から魔物を呼び寄せる禁断の札。こいつを使えるのは、あの男しかいない。」
「導節殿、その者の名前は・・・。」
「闇の法術使い・智徳法師。」
「導節様、そいつは何者なんですか。」
「智徳法師は元々、妖怪退治を生業としていた法術使いだったが、ある日突然邪悪の心を持つ様になり、闇の法術使いに身を投じてしまった。」
「それで、原因はいったい何々だったんですか。」
「・・・邪悪の妖術使い・ドクロ法師の〔邪極裂破乃術〕のせいなんだ。」
「ドクロ法師・・・って、まさか、暗黒四天王の一人・・・。」
「そうだ、ドクロ法師は暗黒四天王の中でも、妖術に掛けては最強の妖怪だ。」
「ドクロ法師・・・、厄介な奴が現れやがったな。」
と、そこへ一人の大男がゆっくりと導節達に近づいて来た。
大男の名は犬田小文吾と名乗り、近くの山小屋に住んでいる大柄な男で、駿河の国一帯は、闇の法術使い・智徳法師が暴れ回っていると話していったのである。
「それで小文吾殿は、智徳法師の居場所を御存知なのですね。」
「ああ、奴ならこの近くの羅漢寺にいるぞ。」
「羅漢寺・・・か。」
「導節、このまま羅漢寺に乗り込むか。」
「待てっ、そう慌てるな。羅漢寺に乗り込んだところで、必ずしも智徳法師がいるとは限らないぞ。」
「しかし、ドクロ法師が何時現れても可笑しくない状況の中、何故智徳法師が闇の法術使いになったのか、それを調べるのが先決なのでは・・・。」
「・・・私が羅漢寺の状況を調べてみる。新兵衛達は此処で待機しているんだ。」
「導節様、我々も一緒に連れてって下さい。」
「駄目だ、もし万が一智徳法師かドクロ法師が現れたらどうするんだ。」
「・・・新兵衛、導節様の命令だ。此処は温和しく、導節様の指示に従うんだ。」
「分かりました。」
「導節、此処は俺達に任せて、羅漢寺の探索を頼むぞ。」
「ああ・・・。」
「導節殿、羅漢寺の前には巨大な岩が遮っている。あの岩を退かさない限り、中に入る事は出来ない。」
「小文吾殿、力を貸してくれぬか。」
「万事任せておけ、俺の手に掛かれば、どんな岩でも動かしてやる。」
「では行こう。新兵衛、信乃、現八、しっかり留守を頼むぞ。」
その頃、駿河の国の富士山の麓にある、羅漢寺と言う大きな寺院があり、その羅漢寺の前には、巨大な岩が行く手を阻むかの如く、近づく者を遮っていた。
「此処が、羅漢寺か・・・。」
「なんだか、物々しいところへ来てしまった様だな。」
「小文吾殿、この中に智徳法術がいるのだな。」
「ああ、間違い無い。奴はこの寺の奥にいる。」
「とにかく、この岩を退かさない事には、中に入る事が出来ないからな。」
「よ〜し、俺の自慢の怪力で、この岩を退かしてやるぜ。」
小文吾が岩を退かそうとした瞬間、岩に掲げられている結界に阻まれ、動かす事が出来なかった。「くっ、結界が張られている様だな。」
「どうするつもりだ、導節殿。」
「こうなったら、術を使って結界を討ち破るしかあるまい。」
すると導節は、修験術を施し、結界を討ち破る呪文を唱え始めていった。
「オン・バサラ・ナウマク・ボダナン・インダラ・ソワカ!」
導節が術を唱え終わると、天空から一筋の雷鳴が轟き、羅漢寺の巨大な岩の結界を破壊していった。
「これで中に入る事が出来るぞ。」
「導節殿、気を付けて下され。どんな罠が仕掛けられているのか・・・。」
「心配するな、私はこれまでに幾多の修羅場をくぐり抜けたんだ。これくらいの事は馴れているんだ。」
「それを聞いて安心した、では参ろう。」
導節と小文吾の二人は、羅漢寺の内部に潜入し、探索を開始したのである。
「智徳法師の奴、何処にいるんだ。」
「奴は姿を消す術を使うらしいんだ。何処から姿を現すか、全く見当が着かない。」
「とにかく智徳法師を捜そう、奴は必ずこの何処かにいる筈だ。」
すると突然、爆音と共に闇の法術使い・智徳法師が導節と小文吾の前に姿を現した。
『ようこそ、地獄の一丁目へ・・・。』
「き、貴様智徳法師・・・。」
『犬山導節、まさかこんなところで逢うとはな・・・。』
「智徳法師、何故闇の法術使いに身を投じたんだ。」
『煩い、あの時貴様が奴を倒していたら、俺は今頃最強の修験者になっていたんだ。』
「だが、貴様が奴にとどめを刺さなかったから、奴を倒す事が出来なかった。」
「導節殿、奴とは何者なんですか。」
「・・・暗黒の魔術師。我々が追っている、謎の術師だ。」
『導節よ、あの時の恨みは決して忘れてはいない。こうなったら、この場で決着をつけようぞ。』「臨むところだ、智徳法師。どちらが最強の術師か・・・勝負だっ。」
導節と智徳法師の因縁の対決が遂に始まろうとしていたその時、突如現れた謎の黒装束を身に纏った男が導節達の前に現れたのである。
『無益な戦いはやめるんだ・・・。』
『だ、誰だ貴様は・・・。』
『我が名は、暗黒の魔術師。』
「何っ、暗黒の魔術師だと・・・。」
「遂に見つけたぞ、暗黒の魔術師。」
『貴様、我の邪魔をするな。』
『双方とも引けぃ・・・。導節よ、どうやら勘違いをしている様だ。』
「いったいどう言う事だ。」
『確かに、我はお主達の敵として追われる身ではあるが、それは敵を欺く作戦だ。』
「敵を欺く作戦だと・・・。」
『その通り、闇の一族の首領である玉梓を油断させる為の策略だ。』
「では何故我等を助ける。」
『これ以上犠牲者を増やしたくないからだ。』
『勝手な事を言ってんじゃねぇ、何が犠牲者を増やしたくないからだと・・・、そんなものは俺に通用しないんだよ。』
『ならば仕方ない、荒っぽい真似はしたくなかったんだが・・・、やむを得ん。』
すると暗黒の魔術師は、智徳法師に向かって術を唱え始めた。
『オン・コロコロ・キリセンマンダ・ボダナン・ナウマク・バサラ・ソワカ!』
暗黒の魔術師が術を唱え終えると、智徳法師の身体の周りに金色の光が包み込んでいき、暫くして智徳法師は全くの別人に変貌していくのであった。
「わ、私はいったい・・・、おお、導節じゃないか。」
「智徳法師、本当にあの智徳法師なのか。」
「ああ、やっと元に戻ったみたいだ。」
『導節、急いで仲間のところへ戻るんだ。』
「暗黒の魔術師、いったいどうしたと言うんだ。」
『闇の妖術使い・ドクロ法師がお主達の仲間のところへ向かっている様だ。』
「何っ・・・、新兵衛達が危ないっ。」
「導節殿、早く急がないと・・・。」
「導節、俺も連れてってくれ。全ての原因は、ドクロ法師が仕組んだ罠だ。」
「・・・分かった、一緒に戦おう。」
『導節、私は先を急ぐ故、ドクロ法師の事は頼んだぞ。』
「暗黒の魔術師、お主はいったい・・・。」
『いずれは分かるだろう・・・、それまで決して死ぬではないぞ。』
そう言うと、暗黒の魔術師は、その場から姿を消していったのである。
「導節、あの者はいったい・・・。」
「一言で言えば、我等の敵では無いと言う事だ。」
「導節殿、早く行かないと新兵衛達が・・・。」
「よし、急ぐぞっ。」
導節、小文吾、智徳法師の三人は、新兵衛達のいる麓の村へと急ぎ足で戻っていくのであった。
丁度同じ頃、導節達の帰りを待っていた新兵衛達は、あまりにも帰りが遅いので、もしや命を落としたのではと不安を感じたのである。
「導節様の帰りが遅い様ですが、何かあったのでしょうか。」
「導節に限って、その様な事は無い。第一、導節は冷静沈着な男だ。」
「しかし、万が一導節様の身に何かが起きたら・・・。」
「心配するな、導節なら必ず帰って来る。」
と、その時だ。新兵衛達の前に白い煙が拡がり、その煙の中から、妖怪・ドクロ法師が姿を現した。
「き、貴様は何者だ。」
『我が名は、妖怪・ドクロ法師。』
「何っ・・・、まさか闇の一族の刺客か。」
「こんな時に、導節がいないなんて・・・。」
『貴様等が、噂の光の犬士か・・・。玉梓様も、こんな雑魚どもを相手にせよとは・・・我も落ちぶれたものよのう。』
「何を言ってやがる・・・、てめぇなんか俺一人でぶちのめしてやるぜっ。」
『ふはは・・・、貴様等にこのドクロ法師様を倒す事など出来ぬ。』
「ならば、これでも喰らいやがれっ。」
現八が得意の必殺技でドクロ法師に攻撃を仕掛けていくが、ドクロ法師は一瞬姿を眩まし、隙をついて現八に妖術を浴びさせていくのであった。
「ぐわっ・・・。」
「現八ぃ・・・。」
「おのれ、ドクロ法師め。絶対に許さない・・・。」
新兵衛は、果敢にドクロ法師に斬り掛かっていくが、ドクロ法師は妖術を施し、新兵衛を弾き飛ばしていくのであった。
「新兵衛殿、現八殿、しっかりして下さい。」
「信乃殿、俺達に構わず奴を倒すんだ。」
「導節様が帰って来るまでに、ドクロ法師を・・・。」
「承知致した。」
信乃は得意の必殺技でドクロ法師に攻撃を仕掛けていった。
「飛天流奥義・爆裂雷鳴斬!」
信乃の繰り出した必殺剣・爆裂雷鳴斬がドクロ法師に命中していき、ドクロ法師は大打撃を受けてしまうのだった。
「どうだっ、さすがのドクロ法師も信乃の必殺技には敵わないだろう。」
「・・・ちょっと待てっ、ドクロ法師の様子が可笑しいぞっ。」
突然ドクロ法師の姿が、まるで霧の如く拡がっていき、信乃の身体を包み込んでいくのであった。「しまった・・・。」
「信乃殿ぉぉ・・・。」
「信乃様ぁぁ・・・。」
『ふはは・・・、引っ掛かったな。我が秘術・幽体煙離術の威力は・・・。』「くっ、か・・・身体が動けない・・・。」
「ドクロ法師、てめぇ卑怯だぞ。」
『卑怯だと・・・、ふんっ、貴様等を倒す為なら手段を選ばないのさ。』
「し、信乃殿・・・。」
「このままやられちまうのか、俺達は・・・。」
「こんな時、導節殿と小文吾殿がいてくれたら・・・。」
『こうなったら、貴様等三人纏めて始末してやる。』
ドクロ法師の卑劣な攻撃に、窮地に追い込まれた新兵衛、信乃、現八の三人。
果たして、導節と小文吾、智徳法師の三人は間に合うのだろうか・・・。
そしてこのあと、智徳法師の正体が明らかになる・・・。




