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第伍話 光の犬士、天に誓いて結束を契る

妖怪・猿神との決戦を迎えた導節一行。

あまりにも猿神の素早い攻撃に、手も足も出ない状態が続いた。

「くっ、動きが早すぎて打撃を与える事が出来やしない。」

「妖怪・猿神は、一見動きが鈍そうに見えますが、かなりの俊敏性を持つ妖怪なんです。」

「いったいどうすりゃいいんだ。」

「導節、此処は俺に任せてくれないか。」

「現八、いったいどうするつもりだ。」

「こいつで一気に型をつけてやる。」

現八は、龍虎餓狼剣を交差させ、全神経を集中させながら妖怪・猿神に向かって一気に必殺技を繰り出していったのだった。

「喰らえっ、必殺・裂風真空斬り(れっぷうしんくうぎり)。」

現八の必殺技・裂風真空斬りを繰り出していくが、妖怪・猿神の強靭な身体には全く通用しなかった。

「何っ、俺の必殺技が通用しない・・・。」

「こうなったら、我々の力を奴にぶつけるんだ。」

「ああ、全神経を集中させ、猿神に打撃を与えるぞ。」

それぞれ四人の得意な術や必殺技を繰り出していくが、猿神に全く打撃を与える事すら出来なかった。

「駄目だ、全く歯が立たない。」

「どうすればいいんだよ。」

「こうなったら、一旦退却するしかない。」

「ああ、その方が無難だからな。」

『そうはさせるかっ。』

妖怪・猿神が導節達四人を阻止しようと妖術を施すが、導節が煙玉を使ってなんとか逃げ出す事に成功したのであった。


「猿神の奴、何であんなに強いんだ。」

「俺の必殺技が通用しないなんて・・・、いったいどうなっているんだ。」

「恐らく、悪霊・玉梓の仕業だろう。こんな事を出来るのは、奴以外に他に無い。」

「導節殿、これからどうするんですか。」

「妖怪・猿神を倒す方法は今のところ無い。だが、必ず倒す方法がある筈だ。」

「・・・そうだ、確か猿神を倒す法具が龍宮神社りゅうぐうじんじゃ宝物殿ほうもつでんにある筈だ。」

「現八様、それは本当ですか。」

「ああ、だがその法具は普通の人では扱えない特別な法具だ。」

「いったい、どんな法具なんですか。」

「実際見た訳では無いが、何でもその法具は、いかなる強力な妖怪でも、一瞬にして滅ぼす法具なんだが、確か名前は〔魔封滅殺鏡まふうめっさつきょう〕と言うらしいんだ。」

「魔封滅殺鏡・・・。」

「とにかく、その魔封滅殺鏡を手に入れない事には・・・。」

「導節様、急いで魔封滅殺鏡を捜しましょう。」

「よし、急いで龍宮神社へ行こう。現八、案内してくれ。」

「分かった。」

導節達は、妖怪・猿神を倒す法具・魔封滅殺鏡を手に入れる為、龍宮神社へと急いだ。


一方その頃、妖怪・猿神はと言うと、魔神岩の洞窟に入ったまま、一向に表に出ようとはしなかった。

実は、妖怪・猿神が滅多に表に出ないのには理由があった。

妖怪・猿神の姿は、仮の姿をしており、真の姿は世にも恐ろしい人喰い妖怪で、特に若い娘の魂を喰らえば、百年の寿命が延びるとされていた為、滅多に本当の姿を見せる事は無いのである。

『くそっ、あともう少しのところで光の犬士共を倒せたものを・・・。』

と、そこへ闇の僧侶・幻斎坊が現れ、妖怪・猿神に話し掛けて来たのである。

『だいぶ苦戦している様だな、妖怪・猿神。』

『これは幻斎坊様・・・。』

『お主、光の八犬士共にてこづっている様だが・・・。』

『申し訳ありません、しかしながら幻斎坊様、奴等は必ず我が倒してご覧にいれます故、もう一度機会を与えて下さいませ。』

『分かっておる、お主の力は拙僧が認めておる。が、自信過剰になり過ぎて我を失う癖がある。そこが、お主の悪い癖だ。』

『はっ、幻斎坊様のおっしゃる通りでございます。』

『よいか、妖怪・猿神。この次は決して失敗するではないぞ。』

『万事承知致しました、必ずや光の八犬士共を始末してご覧にいれましょうぞ。』

『期待しておるぞ、妖怪・猿神・・・。』


その頃、導節一行は妖怪・猿神を倒す法具を求めて、龍宮神社にやってきた。

「此処が、龍宮神社か・・・。」

「何だか、不気味な所でございますね。」

「本当に、此処の宝物殿に猿神を倒す法具があるのか。」

「ああ、此処に間違いない。此処の宝物殿の中に、猿神を倒す法具・魔封滅殺鏡がある。」

と、そこへ龍宮神社の宮司・平賀早雲ひらがそううんが導節達の前に現れた。

「これは、犬飼現八様。本日はどの様な赴きで参られました。」

「早雲殿、実は大事な用があって参ったのだ。」

「現八様、そちらのお連れ様は・・・。」

「こちらは、犬山導節殿。その隣りが犬江新兵衛殿。そして、犬塚信乃殿にございます。」

「よくぞ参られました、では中へどうぞ。」

宮司・平賀早雲は、導節一行を神社の奥の部屋に案内し、現八はこれまでに起きた出来事を話していった。

「なるほど、ではその化け物を退治する為に、あの法具が必要だと言うのですね。」

「ああ、頼む・・・早雲殿。」

「しかしながら、あの鏡は先代の宮司から代々受け継いできた大事な法具。例え現八殿でも、こればかりはどうにもなりません。」

「早雲殿、これはこの世を救う為なんだ。頼む、この通りだ。」

「お願いでございます、早雲殿。」

「・・・分かり申した、そこまでおっしゃるのでしたら、宝物殿に納められている魔封滅殺鏡をお渡し致しましょう。ただし、この鏡は、善の者には陽の力が、悪の者には陰の力が発揮される鏡。もし、善の者がよこしまな事を考えれば、逆の効果を倦む事になる。気をつけて使われるがいい、現八殿。」

「忝ない、早雲殿。」

「これで、妖怪・猿神を倒す事が出来ますね、導節様。」

「ああ、この鏡さえ手に入れれば、例え猿神であろう、太刀打ち出来まい。」

「導節殿、急いで魔神岩へ行きましょう。」

「妖怪・猿神への逆襲だ。気を引き締めていこうぜ。」

「ああ、目指す相手は妖怪・猿神ただ一匹。何としてでも倒すぞ。」

『おぉ〜っ。』


それからどれくらいの時間が掛かっただろうか。

導節一行は再び魔神岩へと辿り着いたのである。

「いよいよ決戦の時が来た様ですね、導節様。」

「ああ、さっきまで奴には勝てなかったが、この次は何としてでも奴を倒す。」

「猿神の奴、今度こそ叩きのめしてやるっ。」

「導節様、魔封滅殺鏡があれば、もう恐い物はありませんね。」

「そうだな、みんな行くぞっ。」

遂に妖怪・猿神との決戦を迎えた導節一行。だが、猿神の姿は何処にも無く、再び洞窟の奥へと進んでいった。

「猿神は、洞窟の奥の部屋にいる筈だ。」

「でも、やけに静かですね。」

「まさか、何処かへ姿を眩ましたのでは・・・。」

「いや、そんな筈は無い。奴は必ずこの洞窟の中にいる。」

と、その時だ。突然大きな地響きが起こり、大きな岩を破壊し、その岩陰から妖怪・猿神が姿を現した。

『また来たな、光の八犬士の愚か者共。』

「妖怪・猿神、前は不覚を取ったが、今度は絶対に貴様を倒す。」

『ふんっ、貴様等の力は既に知れている。愚かな人間共に、我を倒すなど不可能な事だ。』

「それはどうかな、妖怪・猿神。」

「我等には、とっておきの秘密兵器があるんだ。」

『何っ、秘密兵器だと・・・。』

「ああ、貴様を倒す為の秘密兵器がな。」

「妖怪・猿神、我等光の犬士が天に代わって成敗致す故、潔く裁きを受けるがいい。」

『そう簡単に滅ぼされてたまるか、返り討ちにしてくれようぞ。』

遂に、光の犬士対妖怪・猿神の決戦の時を迎えようとしていた。

妖怪・猿神が怪力を屈指して導節達を攻撃していくが、導節達も負けじとそれぞれの得意な術や必殺技を繰り出していった。

「オン・アビリタ・ウンケン・ソワカ!」

「必殺・烈風真空斬りっ。」

「飛天流奥義・爆裂雷鳴斬。」

「秘剣・爆炎十文字斬り。」

導節達の必殺技や術を繰り出していくが、猿神には全く通用せず、逆に猿神の怪力技に因って打撃を受けてしまうのだった。

『無駄な事を・・・、貴様等の術や必殺技など、我には通用せぬ。』

「導節様、こうなったらあの鏡を使うしかありません。」

「・・・やむを得ん、信乃殿、あの鏡を使うぞ。」

「承知致した・・・、妖怪・猿神。魔封滅殺鏡の力を受けてみよっ。」

信乃は魔封滅殺鏡を妖怪・猿神に向けて呪文を唱えていった。

「魔封滅殺鏡よ、光の犬士の名の基に於いて命令を下す。邪悪なる妖怪・猿神に正義の裁きを与え給えっ。」

すると、魔封滅殺鏡がまばゆい光を放ち、妖怪・猿神は魔封滅殺鏡の力に因って強力な打撃を受けてしまうのである。

『何っ、魔封滅殺鏡だと・・・。』

「よっしゃ〜、奴に命中したぞ。」

「これで、猿神の奴を倒す事が出来る。」

「導節様、一気に勝負を決めましょう。」

「ああ、妖怪・猿神。これで貴様もお仕舞いだ。」

『うぬぬ・・・、こうなったら本当の姿を見せるしかあるまい。』

すると妖怪・猿神は、遂に本性を現し、世にも恐ろしい姿で導節達の前にその姿を現した。

「な、何だと・・・。」

「あれが、妖怪・猿神の本当の姿なのか・・・。」

「魔封滅殺鏡の光を浴びたのに・・・。」

「いや、あれだけ魔封滅殺鏡の光を浴びたんだ。諦めるのはまだ早い。」「そうだ、最後まで諦めたら駄目なんだ。」

「信乃殿の言う通りだ、最後まで諦めるな。」

「よ〜し、一気に決めてやるぜ。」

導節達は、最後の力を振り絞り、妖怪・猿神に戦い挑んでいった。

『妖怪・猿神、これでも喰らうがいい。』

導節達の力が一つとなり、妖怪・猿神に向かってそれぞれの必殺技を放っていき、遂に妖怪・猿神は苦悶の声を上げながら滅び去っていったのである。

「導節殿、まずは妖怪・猿神を退治する事が出来ましたね。」

「ああ、だが何時奴等が襲って来るか・・・、想像が付かない。」

「それよりも、一刻も早く五人目の同志を捜さなくては・・・。」

「それに、暗黒の魔術師の事も気になるし・・・。」

「・・・そうだ、早雲殿なら何か知っているのかもしれない。」

「よし、一度龍宮神社に戻って、早雲殿に聞いてみるしかないな。」

早速導節達は、暗黒の魔術師の事を聞く為、再び龍宮神社に戻っていった。

「暗黒の魔術師の事で聞きたい事があると申されるのか。」

「早雲殿、何か知っている事があったら教えてくれないか。」

「・・・そう言えば、だいぶ前に黒装束に黒覆面をした者が此処の神社に来た事があります。」

「何ですって。」

「早雲殿、その者はそのあと何処へ行ったのか、御存知無いですか。」

「さあ、その方は何も告げず姿を消してしまわれました。」

「・・・導節、これからどうするんだ。」

「・・・先に我々と同じ仲間を捜し、そのあと暗黒の魔術師を見つけ出し正体を暴いてやる。」

「導節様、こうしている間にも闇の一族の奴等が我々の邪魔をしようと画策しているに違いありません。」

「導節殿・・・。」

「新兵衛、信乃、現八、我々は今四人しかいない。だが、いずれ我々が八人全員揃った時、闇の一族の首領である悪霊・玉梓との最終決戦を迎えるだろう。」

「・・・光の宝玉が我等を護ってくれているんだ。」

「そうだ、俺達は決して最後まで諦めない。光の宝玉に誓って・・・。」

「ああ、光の宝玉がある限り、我等光の犬士は永遠に不滅だ。」

「よ〜し、気合いを入れて行くぜ。」

『お〜っ。』

宿敵・玉梓討伐を胸に秘め、決意を新たに誓う導節一行。果たして、この先どんな展開が待ち受けているのだろうか・・・。


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