最終話 光と闇の戦い、天空八将神対怪魔将牙神。
その頃、幻魔城では玉梓が闇の大魔獣・怪魔将牙神の復活の儀式を行っていると、遂に怪魔将牙神が完全復活を遂げたのであった。
『おお、遂に復活しおったぞ。闇の大魔獣・怪魔将牙神が・・・。』
『おめでとうございます、玉梓様。これで、我等闇の一族も万々歳でございます。』
『怪魔将牙神さえ復活してしまえば、天空八将神であろうと敵うものか。それに、我等には最後の切り札があるからのう・・・。』
『玉梓様、冥獣四天王が滅びた今、こうやって四つの魂が集結し、怪魔将牙神として新たな命を手に入れたのですから、さぞかし満足でありましょうな。』
『ところで幻斎坊よ、何か変わった事は起きなかったかのう。』
『さあ、今のところ変わった事はございませんが、遂七日程前に天空八将神らしき気配が、新たなる力を手に入れたとの事でございますが・・・それが何か・・・。』
『いやっ、何でも無い・・・。』
と、そこへ玉梓の手下が間もなく天空八将神が幻魔城に接近していると報告していったのであった・・・。
『申し上げます、北西の方角より天空八将神がこちらに向かっております・・・。』
『何っ・・・、遂に来たか。』
『どうなさいますか、玉梓様・・・。』
『決まっておろう、全兵士を総動員させ、戦闘体制を整えるのじゃ。』
『御意、早速兵士を集め天空八将神を迎え討ちましょう。さぁ、闇の兵士どもよ、配置に就くのだっ・・・。』
集まった闇の兵士、その数十万八千人。
闇の僧侶・幻斎坊の命令に因り、城の全方位を囲む様な形で、天空八将神を迎え討つのであった。
一方、幻魔城に向かっていた導節達は、八頭の飛龍に跨がって一直線に急降下していき、幻魔城の城門近くまで着陸していったのである。
「此処が、幻魔城か・・・。」
「悪霊・玉梓は、この城の天守閣にいるんだな・・・。」
「あと、闇の僧侶・幻斎坊もいるしな。」
「なんやぁ、わい緊張して来たで。」
「私も、毛野殿と同じです。本当に、我々だけで奴等を倒す事が出来るのでしょうか。」
「心配するな、自信を持って戦えば、必ず勝つ事が出来る。自分を信じろ・・・。」
「分かりました。」
「さぁて、一丁暴れるかぁ・・・。」
「腕が鳴るぜっ。」
「いいか、誰一人命を落とすんじゃないぞ。」
「万事任せておけ。俺達は絶対に死なん。」
「ではっ、行くぞっ。」
導節達は幻魔城の城門を打ち破り、迫り来る幻魔城の兵士を蹴散らしながら城の中へと攻めていった。
「邪魔をする者は切り捨てても構わぬ。」
「うぉぉ〜っ、退けぇ〜・・・。」
死にとうなかったら、此処を退きなはれや。」
次々とやって来る幻魔城の兵士を倒し、遂に幻魔城の城内へと攻め入ったのだった。
「導節様っ、この城の中はとんでもない妖気を感じます。」
「気をつけろっ、何かが来るぞっ。」
と、城の天井から素早く動く巨大な黒い影が導節達を襲撃し、すかさず大角が術を施すと、その巨大な黒い影が落下していったのだ。
「こいつは、妖怪・紅蜘蛛だ。」
「何てデカい化け物なんだ・・・。」
「油断するなよ、どんな攻撃をするか分からないぞ。」
すると、いきなり妖怪・紅蜘蛛が口から糸を吐き、荘助の身体をぐるぐる巻きにしながら天井へ攀じ登っていくのだが、間一髪のところで信乃が術で紅蜘蛛の糸を焼き切り、荘助を助けたのである・・・。
「大丈夫か。」
「ええ、助かりました・・・。」
「それより、あの紅蜘蛛をやっつけないとヤバイんじゃないか。」
「導節、ここは一つ俺に任せてくれないか。」
「大角、お前一人で大丈夫か・・・。」
「心配するな、必ずあの化け物を退治してやるぜ・・・。」
「頼むぞっ。」
すると大角は、妖怪・紅蜘蛛の前に立ち塞がり、攻撃を仕掛けていくが、妖怪・紅蜘蛛も素早い攻撃で大角を翻弄させていったのだ。
「畜生、これじゃ狙いが定まらないじゃないか・・・。」
だが、大角は最後まで諦める事はなかった。
狙いを定めて術を放ち、妖怪・紅蜘蛛は見事倒されていくのであった。
「これで、先に進む事が出来るぞ。」
「いいか、玉梓は必ず天守閣にいる筈だ。隈なく隅々捜すんだ。」
そして、遂に導節達は天守閣に辿り着き、此処で初めて悪霊・玉梓と幻斎坊と対峙する事となったのだ。
『よくぞ此処まで辿り着いたな、天空八将神。』
「悪霊・玉梓、闇の僧侶・幻斎坊。貴様等の野望もこれまでだっ。」
「我等天空八将神が、貴様等を成敗にやってきた・・・。」
「潔く天の裁きを受けるがいい・・・。」
『ほほほ・・・、お主等たった八人で我等を倒すと申すか・・・。』
『所詮我等は無敵の軍団。たかが貴様等人間如きに、敵う筈もあるまい・・・。』
「喧しいっ、てめぇ等の悪事なんか先刻承知なんだよ。」
「せやでっ、あんさん等の野望なんか、わい等でキッチリ形をつけさせて貰いまっせ。」
「てめぇ等が闇の大魔獣を復活させていた事ぐらい、分かっていたんだよ・・・。」
「いい加減に諦めたらどうなんだ。」
「さぁ、さっさと返答するんだ。」
『お、おのれ小賢しい連中め・・・。数々の無礼雑言、断じて許さぬ。』
『来いっ、天空八将神。この場で決着をつけようぞ・・・。』
「望むところだっ。貴様等を再び封印してやるから覚悟しろ。」
遂に始まった天空八将神対悪霊・玉梓、闇の僧侶・幻斎坊との決戦が幕を開けようとしていた・・・。
導節達は悪霊・玉梓と闇の僧侶・幻斎坊の攻撃を避けながら術を繰り出し、果敢に挑むのだが、強靭な力を誇る悪霊・玉梓と幻斎坊には全く歯が立たず、苦戦を強いられていくのであった。
『ほほほ・・・、さっきの勢いはどうしたの。全然本気を出していないじゃない。』
「煩ぇ、まだまだこれからだぜ。」
「こんなの、ほんの序ノ口に過ぎないんだからな・・・。」
『ふっ、負け惜しみを言いおって・・・。所詮人間ってのは、その程度の力しか発揮出来ぬ生き物なのだからな。』
「喧しいっ、てめぇ等なんかに好き勝手な真似はさせないぜ。」
「わい等が本気になれば、貴様等を倒す事なんか出来るんやで。」
「こうなったら、一気に決着をつけようぜ。」
再び導節達は、悪霊・玉梓と幻斎坊に術を施し、一進一退の攻防が続いたのだったが、遂に打撃を与える事が出来たのである。
『お、おのれ・・・。よくもやってくれたな。』
『かくなる上は、貴様等を纏めて始末してやるっ・・・。』
そう言って、幻斎坊は闇の妖術を施し、導節達に打撃を与え弾き飛ばしていったのである。
「駄目だっ、近付くどころか奴等に打撃を与えられないや。」
「もはや、万事休すか・・・。」
「まだ諦めるんじゃない、最後まで戦うんだ。」
「そんなの分かっている。しかし、俺達はもう全ての力を出し切ったんだ・・・。」
「せやけど、わいも殆ど残ってへんで。」
「残る手立てはないのか・・・。」
「導節、こうなったら奥の手を使うしかないな・・・。」
「ああ、あの手があったか・・・。」
『な、何をするつもりじゃ・・・。』
「悪霊・玉梓、闇の僧侶・幻斎坊。これで貴様等の最後だっ。」
すると導節達は、最後の必殺技・天空爆裂八卦陣を放ち、遂に玉梓と幻斎坊は苦悶の声を上げながら滅び去ったのであった・・・。
「遂に、悪霊・玉梓と闇の僧侶・幻斎坊を倒したぞ。」
「けど、まだ戦いは続いているぞ。」
「最後の敵・怪魔将牙神がな・・・。」
と、その時だ。
城全体が激しい揺れを起こし、いきなり天守閣が一瞬に崩れ、導節達の目の前に巨大な黒い影が現れ始めた。
「あ、あれは・・・。」
「まさか・・・怪魔将牙神。」
「とうとう復活しやがったか・・・。」
「マジでちょっとやばいんじゃないのか。」
「こんなデカい化け物だなんて聞いていないぞ・・・。」
「物凄い邪気を感じるで・・・。」
「おいっ、導節。このままじゃ俺達遣られてしまうぞ。」
「慌てるな、俺達には天空の力があるんだ。力を合わせて戦えば、必ず勝てる・・・。」
「よっしゃ〜、みんな導節の言葉を信じようぜ・・・。」
『おお〜っ。』
いよいよ、最終決戦を迎えた天空八将神対闇の大魔獣・怪魔将牙神の戦い・・・。
強力な攻撃技を繰り出す怪魔将牙神を相手に、導節達天空八将神の連続技が冴え渡る。
「こいつ、めっちゃ強いで。」
「こんなに強いとは思わなかったぜ。」
「いいか、何としてでも怪魔将牙神に打撃を与えるんだ。」
激しい攻防が続く中、怪魔将牙神が口から灼熱の炎を吐き、導節達を焼き殺そうとしていた。
しかし、導節達も負けじとそれぞれの得意な術で応戦するも、強靭な身体が全ての術を跳ね除けてしまうのであった。
「駄目だっ、あの頑丈な身体では俺達の術が通用しないぞ。」
「・・・仕方があるまい。こうなったら、最後の手段だ・・・。」
「最後の手段って、何をするつもりだ。」
すると導節は、八大童子の宝玉を使って怪魔将牙神の魔力を封印しようと考えていた。
「そんなの無理に決まっているだろう。」
「大丈夫だ、俺を信じろ・・・。」
「導節がそこまで言うのなら、やるしかないだろう。」
「せやっ、わいも導節はんを信じまっせ。」
「俺も・・・。」
「私も・・・。」
「みんな・・・。」
「よ〜し、八大童子の宝玉を一斉に怪魔将牙神に向けるんだ。」
導節達は、八大童子の宝玉を一斉に怪魔将牙神に向けた。
すると、八大童子の宝玉が金色の光を放ち、怪魔将牙神の魔力を一瞬にして封じる事が出来たのだ・・・。
「やったぁ、遂に怪魔将牙神の魔力を封じる事が出来たぞ。」
「あとは一気に攻めるのみ・・・。」
「勝負はこれからだぜ・・・。」
導節達が怪魔将牙神にとどめを刺そうとしたその時、怪魔将牙神の身体から紫色の煙を放出し始めた。
何と、その紫色の煙の正体は・・・身を隠す為の煙幕だったのである。
「畜生、あともう少しで怪魔将牙神にとどめを刺す事が出来たのに・・・。」
「これじゃ、手も足も出ないじゃないか。」
「・・・よしっ、俺に任せておけ。」
「小文吾、お前大丈夫なのか・・・。」
「ああ、俺の身体の中に眠る獣人の血が流れているんだ。こんな煙幕ぐらい、俺の力で吹き飛ばしてやるぜ。」
「頼むぞ、小文吾・・・。」
すると小文吾は、全神経を集中させ、徐々に獣人に変身していくのである・・・。
『うぉぉ〜っ。』
獣人に変身した小文吾は、力を込めて風を起こしながら怪魔将牙神の身体を包み込まれている紫色の煙を一気に吹き飛ばしていったのだった。
「でかしたぞ、小文吾・・・。」
「今度こそ、怪魔将牙神を倒してやるぜ。」
「いいか、みんな力を合わせて一気に決めるぞ・・・。」
そう言って、導節達は全精神を集中させ、怪魔将牙神に究極の必殺技を繰り出していったのであった。
『天空秘伝究極奥義・爆雷烈火八卦陣。』
導節達の放った究極奥義である爆雷烈火八卦陣が見事怪魔将牙神に命中し、遂に怪魔将牙神は大爆発を起こしながら消滅していったのであった。
と、同時に幻魔城は崩れ去っていき、導節達は急いで幻魔城から脱出していったのである。
「漸く、戦いは終わったんだな。」
「もう二度と、復活する事はあるまい・・・。」
「まぁ、それにしても長かったよなぁ。」
「本当ですよ。もう、こんな戦いは懲り懲りです・・・。」
「あっ、わいも今同じ考えをしとったんですわ・・・。」
「えっ、毛野もそんな事を考えていたのか。」
「あれっ、導節殿の姿が見えませんが・・・。」
「そう言えば、さっきから見当たらないんだけど、何処へ行ったんだろうな。」
すると、大角が他の仲間にこう告げたのだった。
「みんな聞いてくれ。導節は誰にも話すなと言っていたが、導節は旅に出ると言ってさっき出発したそうだ。」
「本当か・・・。」
「嘘だろ・・・。」
「何で言ってくれなかったんだよ。」
「導節も、相当悩んでいたらしいからな。」
「ほんまやで。だったら、導節はんの後を追い掛けようやないか。」
「それは無理だ。導節は修行の旅に出たんだ。そっとしておいてやろうじゃないか。」
「そうだな、その方が導節らしくていいんじゃないのかな。」
「じゃ、此処でお別れだ。また逢おうぜ。」
「ああ、達者でな・・・。」
「ほな、さいなら・・・。」
「皆さん、さようなら。・・・。」
「みんな、あばよ・・・。」
「では、失礼します。」
こうして、伝説の八犬士の戦いは幕を降ろした。
犬山導節、犬江新兵衛、犬飼現八、犬塚信乃、
犬坂毛乃、犬田小文吾
犬川荘助、犬村大角。
八人の犬士達は、それぞれの道を歩んでいき、いつか再会出来る日を楽しみにしていた。
時は戦国時代中期に起きた、幻想的かつ壮大な物語である。
魔界八犬伝《光に導かれし八玉の犬士》 完