第弐拾壱話 冥獣四天王篇 第拾弐部 決戦! 闇の天守閣 後編
冥獣四天王の一人、闇の風使い・白虎将軍の卑劣な攻撃に、窮地に追い込まれた導節達は、どうする事も出来ずにいたのだが、秘そかに反撃の機会を伺っていたのである。
「くそっ、術さえ使えたら・・・。」
「この状況じゃ、奴を倒すのは無理みたいだな・・・。」
「いや、必ず打開策が見つかる筈だ。そうでもしなきゃ、絶対奴には勝てないぞ。」
「せやで、あんなん使われたら、どうにもならへんで。」
「術や必殺技が封じられている今、どうやって奴を倒すかだよな。」
「でも何処かに、結界を破壊するカラクリを暴かないと・・・。」
「導節、何かいい解決策は無いのか・・・。」
「奴の張り巡らした結界を破壊する方法があれば、我々の術や必殺技が使えるんだが・・・。」
と、その時だ。
導節はある異変に気付き始めた。
天守閣の奥に鎮座されている怪しげな仏像から、目に見えない結界が縦横無尽に張り巡らしている事に気付いたのだった。
「そうかっ、全ての謎が解けたぞ。あの仏像から目に見えない結界を張り巡らしていて、俺達の術や必殺技を封じていたんだ。」
「そうと分かれば、こんなもん破壊してやるぜっ。」
『そうはさせないわよ。その結界の像は、何が何でも阻止してやるわ。』
闇の風使い・白虎将軍が結界の像を破壊されまいと、導節達を阻止しようとしたのだが、ほんの一瞬のうちに結界の像を現八と大角の二人が破壊していったのである。
「よっしゃ〜、これで術が使える様になったぜ・・・。」
「俺の必殺技も、なんとか取り戻す事が出来たぞ・・・。」
「闇の風使い・白虎将軍、これでお互い五分五分になった訳だ。」
『それはどうかな・・・。結界を破壊したくらいで、形勢が逆転した訳では無いわよ。』
「どう言う事だ・・・。確かにあの像は破壊した筈。それなのに、何故・・・。」
『さぁ、そんな事よりそろそろ決着をつけようじゃないの。どちらが勝つか・・・勝負よ。』
すると白虎将軍は、芭蕉扇を一仰ぎすると巨大な竜巻を起こし、一瞬にして導節達を吹き飛ばしていくが、すぐさま導節達は体制を整えて反撃を開始した。
「術さえ使えればこっちのもんだぜっ。喰らえっ、天空秘術・爆雷烈火弾っ。」
信乃が天空秘術・爆雷烈火弾を放つと、咄嗟に白虎将軍が芭蕉扇で弾き返し、逆に信乃のところへ術の威力で打撃を受けてしまうのであった。
「ならばこれでも喰らえっ、天空秘剣・龍虎爆裂斬。」
現八の天空秘剣である龍虎爆裂斬が炸裂していくのだが、またしても白虎将軍が芭蕉扇で弾き返し、現八は自ら放った必殺剣で打撃を受けてしまうのである。
『だから言ったじゃないの・・・。何度やってもこの私に打撃を与える事は出来ないって・・・。もう、いい加減に諦めたらどうなのよ。』
「うるせぇ、絶対諦めるものか・・・。」
「せやっ、わい等がそう簡単に諦める訳ないやろ。」
「どんな事があっても、我等天空八将神は貴様等を絶対に許さない。」
『絶対に許さないですって・・・。我は完璧主義な妖魔、どんな卑劣な手を使おうと、決して妥協はしないのよ。』
「だったら、その妥協を崩してやるぜっ。」
小文吾が果敢に白虎将軍に戦い挑むも、巨大な芭蕉扇で小文吾を吹き飛ばしていくのであった。
『もはや、貴様等に勝機は無くなった。潔く我が術で死に絶えるがよかろうぞ。』
「このまま遣られて堪るものか・・・。こうなったら、天空変身で戦うしかない。」
「よしっ、みんな変身だ・・・。」
すると導節達は、急いで変身の呪文を唱え、天空八将神に姿を変えていったのだった。
『遂に本当の姿を現した様ね、伝説の戦士・天空八将神。』
「変身してしまえば、こっちのもんだぜ。」
「俺達の真の力を見せてやるっ。」
「覚悟するんやな、白虎将軍・・・。」
『くぅ〜、なんて生意気な事を言う連中かしら・・・。もう、勘弁ならないわ。こうなったら、纏めて始末してあげるわ・・・。』
いよいよ始まった最終決戦・・・。
闇の風使い・白虎将軍は巨大な芭蕉扇を自在に操り、導節達に目掛けて竜巻を起こし攻撃をしていくが、導節達は既に白虎将軍の行動を完全に読み切り、果敢に挑んでいくのであった。
「喰らえっ、天空秘剣・爆龍烈火斬!」
「天空秘術・雷鳴轟々破っ。」
信乃の必殺剣である爆龍烈火斬と、荘助の必殺技である雷鳴轟々破が白虎将軍に命中し、更に現八、毛野、大角、導節、小文吾、新兵衛の六人が続けざまに得意の必殺技や術で白虎将軍を 窮地に追い込んでいったのだ。
『なかなかやるわね、だが我の本当の力を見せてあげるわ。』
「何っ。」
「あれだけ遣られているのに、まだ魔力が残っているとは・・・。」
『さぁ、潔く地獄へ送ってあげるわ。』
白虎将軍が芭蕉扇で再び巨大な竜巻で導節達を滅ぼそうとしたその時、導節達の懐に忍ばせていた八大童子の宝玉がまばゆい光を放ち、導節達を包み込むかの様に護られていくのである。
『な、何っ。我が術を遮っただと・・・。』
「八大童子が、俺達を護ってくれたのか。」
「めっちゃ助かったわ。これで、心置きなく戦えるで。」
「闇の風使い・白虎将軍、今度こそてめぇを叩き潰してやるから覚悟しろっ。」
遂に導節達は、最後の手段である必殺技・天空八卦陣を繰り出し、闇の風使い・白虎将軍は苦悶の声を上げながら消滅していくのであった。
「遂にやったな、導節・・・。」
「残るは、闇の妖術師・青龍将軍。」
「奴を倒せば、冥獣四天王を全滅した事になる・・・。」
「と、同時に闇の大魔獣・怪魔将牙神が復活する・・・。」
「どちらも、避けられないと言う事なのか・・・。」
「みんな、諦めたらあかん。せっかく此処まで戦って来たんや。最後まで諦めずに、戦おうやないか。」
「そうだっ、毛野の言う通りだ。人間界を護るのが、俺達の役目じゃないのか。」
「例え、我等が命を失おうとも、最後まで闇の一族と戦うぞ。」
と、突然江戸城上空が真っ暗闇になり、何処からか甲高い声が導節達の耳に届いたのである。
『お初にお目に掛かる、我は闇の一族の首領・幻魔城城主・玉梓である・・・。』
「あれが、闇の一族の首領・玉梓か・・・。」
「何か、もの凄い邪気を感じるぜっ。」
『光の八犬士・・・、いや、天空八将神よ。冥獣四天王を三人倒したみたいだが、最後の一人である闇の妖術師・青龍将軍が控えているぞよ。』
「そんな事ぐらい分かっている。」
「我等は決して、闇の妖術師・青龍将軍には負ける訳にはいかないんだ・・・。」
『ほほほ・・・、なかなか威勢がいいわね。けど、どちらにしても避けられない運命にあるのじゃ。まぁ、せいぜい頑張るがよかろうぞ。』
「待てっ、玉梓・・・。逃がすものかっ。」
しかし、玉梓はいずこかへ消え去り、暫くして上空が明るくなっていったのである。
「くそっ、玉梓め。」
「まさか、あんなところで逢うとはな・・・。」
「おいっ、導節。奴に逢った事があるのか。」
「ああ、無限回廊を探索していた時、偶然玉梓が封印していた柩を見つけたんだ。姿は見なかったけど、あれは間違い無く悪霊・玉梓の声だった・・・。」
「けど、あんなのが出て来たら、どうにもならへんで。」
「大丈夫だよ、俺達には元始天尊様がついているんだ。」
「そうだよ、何も恐れる事は無いよ。」
「よ〜し、此処まで来たら後には引けないんだ。とことん最後まで戦おうぜ。」
「おいっ、あれを見てみろよ。」
現八は南東の方角からやって来る白獅子に跨がった黄金の鎧を身に纏った天空戦士を目撃したのである。
「まさかっ、闇の一族の手先か・・・。」
「いやっ、あれは違うぞ。恐らく、我等の味方に違いない・・・。」
暫くして、黄金の鎧を身に纏った天空戦士が導節達の前に姿を現し、天空界の守護神・封雷元帥が導節達を〔雷界殿〕に連れて来る様命じたと言うのだ。
『もしや、貴方達は天空八将神の方々ですね。』
「ああ、いかにも我々は天空八将神だが・・・。そう言うお主はいったい・・・。」
『申し遅れました、我は天空界の守護神・封雷元帥様に仕える天空戦士・趙遼紫龍と申す者にございます。』
「その趙遼紫龍殿が、我々にどんな御用で参られたのか・・・。」
『我の主である、封雷元帥様の命に因り、天空八将神の皆さんをお連れする様にとの事にございます。』
「俺達を、雷界殿へ連れてってくれると云うのか・・・。」
「何か、訳ありの様やけど・・・行ってみる価値はありそうやで。」
「趙遼殿、封雷元帥様のところへ案内してくれっ・・・。」
『分かりました。では早速、封雷元帥様のところへ案内致しますので、こちらの絨毯にお乗り下さい。』
そう言って、趙遼紫龍は大きな真紅の絨毯を拡げ、導節達はその絨毯の上に乗っていくと、す〜っと空中に浮かび上がり、そのまま趙遼紫龍と共に雷界殿へと向かっていった。
あれから、どのくらいの時間が経過したのだろうか。
導節達がいた人間界から遥か十万八千里離れたところにある幻想的な宮殿・雷界殿が目の前まで迫って来たのだった。
「あれが、雷界殿なのか・・・。」
「何か、凄いところへ来てしまった様な気がする・・・。」
「それにしても、随分荘厳な宮殿だな。」
「あの中に、封雷元帥様がいるのか・・・。」
「いったい、どんな神様なんやろなぁ。」
「何だか、緊張してきましたよ。」
「導節様・・・、いよいよ封雷元帥様に逢えるんですね。」
「ああ、俺も段々緊張して来たみたいだ・・・。みんな、気を引き締めて行くぞ。」
『皆さん、もうすぐ雷界殿に到着します。此処から先は、神聖な場所なので、失礼の無い様にお願いしますね。』
「分かりました。」
暫くして、導節達は雷界殿に到着し、趙遼紫龍が雷界殿の扉を開け、宮殿の奥へ進んで行くと、目の前の玉座に座っている雷界殿の主・封雷元帥が導節達を迎えいれたのである。
『よくぞ参られた、天空八将神達よ。我はこの雷界殿の主・封雷元帥と申す・・・。』
「お初にお目に掛かります。私は、天空八将神の一人・犬山導節と申します。此処に控えていますは、私の同志達にございます。」
『左様か・・・、お主達の活躍ぶりをこの水晶玉で見させて貰った。』
「ところで封雷元帥様、我々をこの雷界殿に呼んだのは、何やら重要な話しがあると見受け致しますが・・・。」
『さすがは犬山導節殿・・・。実は今から十年前に、雷界殿の宝物蔵から〔太極破斬剣〕と云う聖剣が何者かに盗まれてしまったのだ。』
「その太極破斬剣とは、いったいどんな代物なのですか。」
『太極破斬剣とは、かつて闇の大魔獣・怪魔将牙神を倒したとされる聖剣の事。その聖剣が盗まれた今、この雷界殿に非常事態を招いているのだ・・・。』
「それで、その太極破斬剣を盗んだ犯人は誰なんですか・・・。」
『さぁ、我にも全く見当がつかぬ・・・。とにかく、一刻も早く太極破斬剣を取り戻さないと・・・。』
「まさか、冥獣四天王が拘わっているって事は無いよな。」
「仮にそうだとしても、奴等が盗んだと云う証拠が無いじゃないか。」
「う〜ん、そいつは困ったな。」
「どうするよ、導節。絶対奴等が盗んだに違いないぜ。」
「せやでっ、闇の一族の連中の仕業に違いないっちゅうねん。」
「・・・よしっ、俺達が太極破斬剣を取り戻してみせるっ。」
『導節殿、それは本当か・・・。』
「ええ、例え盗んだ奴が誰であろうと、我等天空八将神が必ず取り戻してみせます。」
『おお、何とも頼もしい事を・・・。では、全てそなた達に託す。頼んだぞ、天空八将神よ・・・。』
「分かりました、万事お任せの程を・・・。」
奪われた太極破斬剣を取り戻すべく、雷界殿の主・封雷元帥の命令を受けた導節等天空八将神は、果たして無事取り戻す事が出来るのだろうか・・・。
更に、太極破斬剣を盗んだのは、いったい誰なのか・・・。
第弐拾弐話に続く・・・。