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第拾弐話 冥獣四天王篇 第参部 地獄からの使者

翌日の朝、導節達は太陽十字剣の材料を探しに出雲大社近くの山道に辿り着いた。


だが、その山道は昔処刑所だった為、誰も立ち入る事すら無く、辺りは邪気に満ちていたのだった。

「信乃、本当に太陽十字剣を造る材料がこの近くにあるんだろうな。」

「ええ、この辺りにあると聞いたのですが・・・。」

「でも、なんか薄気味悪いところだな。」

「何でもこの辺りは、罪人を処刑する場所だったとか・・・。」

「ほ、本当かよ・・・。」

「確かに、何かが出てきそうな雰囲気ですね。」

と、突然空が真っ暗になり、導節達の目の前に暗黒の魔術師が姿を現した。

『どうやら此処まで来たようだな、光の犬士達よ・・・。』

「き、貴様暗黒の魔術師・・・。」

「何しに来やがった・・・。」

『そう殺気立てるな、別にお前達をどうこうするつもりはない。』

「何だって・・・。」

「暗黒の魔術師、いったい何の用があって来たんだ。」

すると暗黒の魔術師は、

『お前達も知っての通り、冥獣四天王が復活した事は知っているな。』

「ああ・・・。」

『奴等はお前達を倒そうと画策している。』

「で、俺達に言いたいのはそれだけか。」

「待ってください、最後まで話しを聞きましょう。」

『その方が懸命だな、では話しの続きをしよう。今のお前達の力では、奴等を倒せまい。』

「それで、我々に何をしろと言うのだ。」

『簡単な事だ、一日も早く残りの犬士を捜し、冥獣四天王を倒す事だ。』

「そんなの分かっている、だが何処にいるのか見当がつかないんだ。」

「そうだ、どうやって捜せって言うんだよ。」

『・・・いいだろう、教えてやる。お主達が捜している犬士は、この近くの山奥の小屋に住んでいる。』

「本当か・・・。」

「嘘じゃないだろうな。もし、それが本当なら何故俺達に助言する。」

『別に助言するつもりは無い・・・、ただお主達の力が今まで以上に強さを増しているのを感じるのだ。』

「どう言う意味だ。」

『これまでの戦いで、お主達が強くなっているのを、まだ実感していないからだ。』

「ほんまなんか、でもなんでわい等が強うなってるん分かるんや。」

『さぁな、ただ何となくそう思うだけだ。』

と、暗黒の魔術師が導節赤い石の様な物を手渡していった。

「こいつは・・・。」

『お主達が捜していたのは、〔金剛太陽石〕と言う鉱物じゃないのか。』

「これを何処で・・・。」

『余計な詮索はするな、後はお主達に任せる・・・。』

そう言って、暗黒の魔術師は再び消えていったのである。

「導節・・・、暗黒の魔術師は俺達を試しているんじゃないのか。」

「そんな筈は無い、あいつは我々を助けているとしか思えないんだ。」

「相手は敵だぞ、敵の言う事なんか信用するのか。」

「そうですよ、暗黒の魔術師は我々を陥れようとしているに違いありません。」

「せや、あんなん信用しても、何の得もあらへんのやで。」

「確かにそうかも知れないが、私は暗黒の魔術師を信じる。」

「導節、お前正気か・・・。」

「ああ、正気だ。」

「とにかく、山奥の小屋に行ってみよう。」



暫くして、導節達は山奥の小屋に辿り着いたが、小屋の中には誰もおらず、静寂が漂っていた。

「誰もいないようだな。」

「本当に、此処に間違いないんだろうな。」

「ああ、間違いない。」

「それにしても、何だか閑散としてんなぁ。」

「そうですね。でも、部屋はちゃんと整理されてますし、難しい本がずらりと並んでいますね。」

「此処の住人って、どんな人なんだろうか。」

と、そこへ小屋の住人らしき人物が山奥から帰って来たのであった。

「あっ、客人が見えられたか・・・。」

「すいません、勝手に小屋に入ってしまいまして・・・。」

「いえ、それより貴方達は・・・。」

「申し遅れました、私は犬山導節といいます。」

「同じく、犬江新兵衛と申します。」

「私は犬塚信乃といいます。」

「俺は、犬飼現八と申す者。」

「拙者は犬田小文吾と言う者にございます。」

「わいは犬坂毛野いいますねん。」

「私は、犬川荘助と申す刀鍛治を生業としている者にございます。」

「そうですか、実は我々は魔物退治の旅をしているのです。」

「魔物退治・・・ですか?」

「ああ、俺達はそいつを追って全国を旅しているんだ。」

「そいつ等はこの世を闇に変えてしまおうとしている連中で、闇の一族と言う悪の軍団なのです。」

「闇の一族・・・。」

荘助はいきなり暗い表情を浮かべ、奥の部屋へと消えていったのである。

「なぁ、俺達気に障った事を言ったか。」

「闇の一族と云う言葉に、過剰な反応したみたいだが・・・。」

「・・・こいつは何か訳がありそうだな。」



その日の夜、導節は荘助の部屋を尋ね、理由を聞く事にした。

「荘助殿・・・。」

「あっ、これは導節様。まだ、起きてらしていたんですか。」

「ええ、どうも眠れないみたいなんです。」

「そうですか・・・。ところで導節様、私に何か御用でもおありなんですか。」

「実は、荘助殿が〔闇の一族〕と云う言葉を聞いて、何だか表情が強張っていた様子だったので、もし差し支えが無ければ話して頂けませんか。」

暫く無言が続いた荘助だったが、遂に重い口を開いていったのである。

「今から丁度二十年前、私の住んでいた村が魔物の軍団に襲われ、父と母は魔物に殺されてしまいました。」

「それが、闇の一族・・・。」

「闇の一族は私の両親の命を奪い、村を破壊された今、なにもかも奪われてしまいました。」

「それで、村を離れて山奥に居を移したと云うのですか。」

「はい・・・。」

「・・・荘助殿、私はこれまでに数多あまたの妖怪を倒して来ました。中でも闇の一族は、邪悪の力を持つ最強の妖怪軍団。それを束ねているのが、幻魔城城主・悪霊玉梓・・・。」

「・・・導節様、私は殺された両親の敵を討ちたいんです。」

「しかし、相手は恐ろしい妖怪軍団。貴方一人では闇の一族を倒すのは不可能です。」

「では、どうすれば・・・。」

すると導節は、懐から八大童子の宝玉を荘助に見せた。

「それはもしや・・・、八大童子の宝玉じゃありませんか。」

「ええ、我々は光の八犬士なのです。」

「光の八犬士・・・。昔、私の祖父から聞いた事があります。闇の一族に対抗出来る正義の使徒。それが、貴方達だったとは・・・。」

「それは多分、我々の先祖の事でしょう。」

「・・・導節様、実は貴方に見て頂きたい物がございます。」

そう言って、荘助は奥座敷から桐の箱を持ちだし、紐を解きながら蓋を開け、中から紫色の布に包まれていた水晶玉を導節に見せた。

その水晶玉には、《智》の文字が浮かび上がっていたのである。

「おお・・・、それは八大童子の宝玉。しかも、《智》の文字が入った水晶玉ではないか。」

「はい、私の祖父が持っていたとされる物にございます。」

「荘助殿、おそらくお主の祖父殿は、この水晶玉を荘助殿に託すつもりで残されたのかも知れませんよ。」

「祖父が、この水晶玉を・・・。」

荘助が八大童子の宝玉を手にした瞬間、突然まばゆい光を放っていったのだった。

「な、なんだこの光は・・・。」

「どうやら八大童子の宝玉が、荘助殿を光の八犬士として認めた様だ。」

「えっ、私が光の八犬士ですって・・・。」

「その水晶玉こそ、光の八犬士の証となる物。その宝玉を携えば、眠っていた力が発揮され、超人的能力を操る事が出来るでしょう。」

「・・・この水晶玉に、そんな力があったなんて。導節様、お願いでございます。私も一緒に戦わせて下さい。」

「荘助殿・・・。分かりました、一緒に戦いましょう。」

と、突然現八と新兵衛が導節のところへ駆け寄り、信乃が突然何者かに因って連れ掠われたと云う事を導節に話していったのだった。

「何っ、信乃が掠われただと・・・。」

「ああ、俺達が寝ている間に忽然と姿を消してしまったんだ。」

「導節様、申し訳ありません。私達がついていながら、こんな事になってしまって・・・。」

「それより、小文吾と毛乃の二人は・・・。」

「小文吾と毛乃の二人は、信乃を掠っていった奴の後を追跡しているみたいだが・・・。」

「あれからだいぶ時間が掛かっている様なんですが・・・。」

何か不安を感じた導節は、荘助に〔金剛太陽石〕を手渡し、この石で太陽十字剣を造って欲しいと頼んでいった。

「荘助殿、すまないがこれで剣を造って欲しいのだ。」

「これはもしや、金剛太陽石・・・。」

「刀鍛治である荘助殿にしか出来ない事なんだ。」

「・・・分かりました。それで、どの様な剣を造るのですか。」

「太陽十字剣と云う吸血鬼を滅ぼす聖剣を造って欲しい。」

「太陽十字剣って・・・、あの伝説の聖剣の事ですか。もはやこの世に存在しないと思っていましたが・・・。分かりました・・・、この犬川荘助、一世一代の大仕事をさせて貰います。」

「忝ない・・・。」

「導節、急いで信乃を助けないと・・・。」

「導節様・・・。」

「ああ・・・。新兵衛、現八、行くぞっ。」


丁度その頃、連れ掠われた信乃を追跡していた小文吾と毛野だったが、途中闇の一族の妖怪軍団が襲来し、二人の行く手を阻んでいったのだ。

「くっ、邪魔が入りやがったぜ。」

「ほんまやな、けったいな連中がうじゃうじゃ来おったで。」

「毛野、どうする?」

「決まってるやないか、一気に片っ端からやっつけるしかないやろ。」

「よ〜し、いっちょやるかぁ。」

「臨むところやぁ。」

小文吾と毛野は、迫り来る妖怪軍団を次々と蹴散らしていくが、あまりの多さに苦戦を強いられていくのであった。

「くそっ、これじゃどうにもならないぞ。」

「いったいどないするねん、小文吾はん。」

「こうなったら、術で応戦するしかないだろ。」

「せや、わい等の術で全滅させたるわ。」

再び小文吾と毛野は、得意の術で闇の一族の妖怪軍団を一気に全滅させていったのである。

『そこまでだっ、光の犬士どもよ・・・。』

突然小文吾と毛野の前に、謎の妖怪が姿を現していった。

「誰だっ、貴様は・・・。」

『我が名は朱雀将軍親衛隊隊長、地獄の道化師・・・。』

「朱雀将軍親衛隊・・・。」

「地獄の道化師・・・。」

『貴様等、仲間を助けようと後を追って来ているようだが、そう簡単に仲間のところには行かせる訳にはいかぬ。』

「なんやとっ・・・。」

「地獄の道化師、てめぇが信乃を掠ったのか・・・。」

『その通り、我は朱雀将軍様の命令により、貴様の仲間である犬塚信乃を掠ったのさ。』

「てめぇ、なんて事をしやがるんだ。」

「せや、あんた卑怯な真似すんなや。」

『卑怯だと・・・、何度でも言うがよかろう。だが、貴様等は此処で我に殺されるのだからな・・・。』

すると地獄の道化師は、小文吾と毛野に妖術を施し、大打撃を与えていくのである。

「くっ、なんて力なんだ・・・。」

「めっちゃ強いやんか・・・。」

『たいしたことないな・・・、光の八犬士の力はこの程度なのか。』

「へんっ、まだまだこんなもんじゃないぜっ。」

「せやっ、わい等が本気を出せば貴様なんか一発で倒したるわいっ。」

『ふふふ・・・、威勢だけはいいらしいなぁ。だが、此処までの様だな・・・。』

「どう言う事だっ・・・。」

『今から貴様達に、我が最強の妖術をお目に掛けよう・・・。』

すると地獄の道化師は、印を結んで術を施し、呪文を唱え始めた。

『オン・バサラ・キリーク・ナウマク・アーク・シャナウ・タンカン!』

地獄の道化師の妖術が小文吾と毛野に命中し、暫くして二人の身体が段々硬直していったのだった。

「か、身体が動けねぇ。」

「いったい何をしたんや。」

『ははは・・・、暫くの間そうしているがいい。時間が立てば、貴様等は完全に石になっていくんだからな・・・。』

「なんやと・・・。」

「俺達を石に変えようとしているのか。」

『その通り、貴様等みたいな邪魔者を始末してしまえば、全て万事上手く行くんだ・・・。』

「くっ、こんな時に導節様がいてくれたら・・・。」

「はよ、助けに来てぇや・・・導節はん。」


信乃を追跡しようとしていた小文吾と毛野の前に、突如現れた謎の妖怪・地獄の道化師。

行く手を阻む地獄の道化師の目的とは何か・・・。

果たして、小文吾と毛野の運命やいかに・・・。


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