第拾参話 冥獣四天王篇 第四部 暗黒の魔術師、遂に正体を明かす。
突如小文吾と毛野の前に現れた朱雀将軍親衛隊隊長、地獄の道化師。
一進一退の攻防が続くなか、地獄の道化師が怪しげな妖術を掛け、小文吾と毛野の動きを封じていったのだった。
「くっ、こんな時に導節殿がいてくれたら・・・。」
「はよ、導節はん来てくれへんやろか。」
『無駄だ、どうあがいても誰も来る筈があるまい。』
もはや窮地に追い込まれた小文吾と毛野。
「もう、駄目なのか・・・。」
「諦めたらあきまへん、小文吾はん。」
「毛野、お前は大丈夫なのか。」
「わいは大丈夫や、それよりこうなったら、八大童子の宝玉の力を使うしかないやろ。」
「そうかっ、その手があったか・・・。」
小文吾と毛野は、懐に忍ばせた八大童子の宝玉に念を込め、地獄の道化師の妖術を解き放とうとしていた。
「八大童子の宝玉よ、我等に力を貸してくれっ。」
小文吾と毛野が心の中で念じていると、突如八大童子の宝玉がまばゆい光を放ち、地獄の道化師に掛けられた術が破られ、動ける様になったのである。
『な、何ぃ〜っ。』
「よっしゃ〜、これで自由に動けるぜ。」
「なんや身体がきつ〜な感じすんねんけど、やっと解放したでぇ。」
『ば、馬鹿な・・・。我が妖術を簡単に討ち破るとは・・・。』
「当たり前だ、我等はそう簡単に貴様の妖術など掛かってなるものか。」
「せやっ、二度と同じ手は通じへんで。」
『それはどうかな・・・。』
「どう言う事だっ。」
「いい加減に悪あがきはやめなはれ。」
『悪あがきだと・・・、何度でも言うがいい。』そう言って、地獄の道化師は再び妖術を施し、なんと以前に倒した筈の妖怪・螳螂鬼を呼び寄せたのであった。
「な、そんな馬鹿な・・・。」
「なんや、この化け物は・・・。」
「導節様が以前に倒した妖怪・螳螂鬼だ。」
「なんやてっ・・・。」
『さぁ、妖怪・螳螂鬼よ。奴等を始末しろっ。』
すると、妖怪・螳螂鬼が小文吾と毛野に先制攻撃を仕掛けていったが、一瞬の隙を突いて妖怪・螳螂鬼をやっつけていったのだった。
「なかなかしぶとい奴だな、だがこれで終わりじゃないぜっ。」
「そや、わい等を甘く見ない方が身の為やで。」
『ほざかしいっ、かくなる上は奥の手を使うしかあるまいっ。』
すると、地獄の道化師は印を結んで術を唱え、異世界から怪鬼・酒呑童子を甦らせたのであった。
「何っ、そんな馬鹿な・・・。」
「酒呑童子が復活しおったで。」
『さぁ、酒呑童子よ・・・。今こそ奴等に復讐するのだ。』
『・・・・・・・・。』
『何をしている、早く奴等を始末しろっ。』
『・・・誰に向かって口を聞いているんだ。俺は誰の指図をも受けない。俺には俺のやり方があるのだ。』
「なんや知らんけど、小文吾はん、いっちょやってまおうやないか。」
「お、おう・・・。」
突然の出来事に、ただ呆然としたしていた小文吾と毛野だったが、暫くして正気に戻り、復活した酒呑童子に攻撃を仕掛けていったのだった。
「酒呑童子、もう一度地獄へ叩き落としてやるぜっ。」
「この前みたいに、同じ手は二度と通用せぇへんで。」
『愚かな、俺は今までの酒呑童子ではないぞ。』
そう言って、酒呑童子は魔断烈火剣を大きく振りかざし、小文吾と毛野に襲い掛かっていった。
「な、なんやこいつ・・・。大江山にいた時よりも強うなってるで。」
「それだけじゃない、魔力も数段上がっているぞ。」
『貴様等二人だけか・・・、他の連中はどうした・・・。』
「そんな事はどうでもいい・・・、何が何でもてめぇを再び地獄へ叩き落とす・・・。」
「せやっ、もう一度わいの術でお見舞いしたるさかいな。」
『・・・言いたい事はそれだけか。光の犬士どもよ・・・。』
「何っ・・・。」
『見せてやろう、我が究極の魔導妖術を・・・。』
すると、酒呑童子は最大の魔導妖術を施し、小文吾と毛野は大打撃を受けてしまうのであった。
「やはり、倒す事は出来ないのか・・・。」
「あ、あかん・・・。めっちゃ強過ぎるわ。」
『さあ、酒呑童子よ。とどめの一撃を・・・。』
『言われなくても分かっている。これでおしまいだ、光の犬士よ・・・。』
最強の力を誇る酒呑童子の前に、為す術を無くした小文吾と毛野。
もはやこれまでかと思われたその時、なんと暗黒の魔術師が酒呑童子の目の前に姿を現していったのである。
『貴様、我等の邪魔をしに来たのか・・・。』
『まさか、俺はただ・・・お前達のやり方があまりにも卑怯だから、この者達を手助けしようと思ったまでだ。』
『我等のやり方が卑怯だと・・・。ふざけるな、我等は玉梓様の命令に従っての事。よそ者が口を挟む義理はない筈だ。』
『要するに、問答無用って言う事なのか・・・。面白い、ならば貴様の実力を見せて貰おうか。』
『ふんっ、あとで後悔する事になるぞ。』
「暗黒の魔術師、何故俺達に力を貸す・・・。」『気が変わったのだ、いずれこう言うが起こる事を予測していた。小文吾、毛野、よく見ておくがいい。これが、俺の本当の姿だ・・・。』
なんと、暗黒の魔術師は自らの黒頭巾を外してしまい、素顔をさらけ出してしまうのだった。
「に、人間だと・・・。」
「いったいどないなってんねん。」
『奴の正体が、人間だったとはな・・・。』
「地獄の道化師、酒呑童子。確かに俺は人間だ。だが、俺の心に潜んでいる正義の心が目覚めちまったんだからな。」
「正義の・・・。」
「心・・・やてっ。」
『ふんっ、何が正義の心だ。貴様が誰であろうと、容赦はしない。』
『俺は、貴様が許せない・・・。必ず、お前を殺す。』
「やれるもんならやってみろ。貴様等の実力を試させて貰うぜ。」
すると謎の男が、地獄の道化師と酒呑童子に攻撃を仕掛けていき、たったの一撃でやっつけてしまうのであった。
「す、すげぇ・・・。」
「たった一撃で、地獄の道化師と酒呑童子を倒しおったでぇ。」
「だから言った筈だ、貴様等は俺を倒す事は出来ないと・・・。」
『き、貴様はいったい何者だ。』
「俺の名前は、犬村大角・・・。《義》の宝玉を持つ最後の犬士だ。」
「えっ、あの男が・・・光の犬士だと・・・。」
「と言う事は、わい等の仲間っちゅう事になるんか。」
「ああ、そう言う事になるな。小文吾殿、毛野殿、頼む、一緒に戦おう。我等光の犬士の力を奴等に見せつけるのだ。」
「大角殿・・・。」
「大角はん・・・、わい等も一緒に戦わせて貰いまっせ。」
「いくぞっ。」
「ああ、我等光の犬士の力を・・・。」
「思い知るがええで。」
『ふんっ、たった三人で挑もうと言うのか。』
『面白い・・・、だが貴様等が束になっても俺は決して滅びはしない。』「それはどうかな・・・、我等光の犬士は無敵の犬士。」
「決して最後まで諦めない・・・。」
「わい等の底力を・・・思い知るがええわ。」
小文吾・毛野・大角の三人は、地獄の道化師と酒呑童子に戦い挑んでいくが、無敵の力を誇る地獄の道化師と酒呑童子には全く歯が立たなかった。
「あかん、めっちゃ強いで・・・。」
「大角殿、何かいい方法は無いのか。」
「こうなったら、八大童子の宝玉の力を使うしかないな。」
「よっしゃ〜、一か八かやるしかないぜ。」
「せや、三人で力を合わせて、地獄の道化師と酒呑童子をやっつけたるで。」
「小文吾、毛野、行くぞっ。」
「おぉ〜。」
三人は八大童子の宝玉を握りしめ、術を唱え始めたのである。
『天空を守護せし八大童子よ、今こそ我等光の犬士に力を与えてくれ。』
すると、八大童子の宝玉がまばゆい光を放ち、今まで以上の力を手に入れたのだった。
「す、すげぇ・・・。」
「何だか、身体が熱く感じるで。」
「これが、八大童子の力なのか・・・。」
『な、何だと・・・。』
『あれが、八大童子の真の力・・・。』
「地獄の道化師、酒呑童子、これでてめぇ等もおしまいだ。」
「八大童子の力を手に入れた今、向かうところ敵無しやで。」
「潔く我等の裁きを受けるがいい。」
『小賢しい、光の犬士どもめ。』
『かくなる上は、最後の手段を講じるしかあるまい。』
「そうはさせるかっ。」
遂に、小文吾・毛野・大角の三人は、力を合わせ攻撃を仕掛けていった。
「必殺、三位一体攻撃っ。」
三人の必殺攻撃が炸裂し、遂に地獄の道化師と酒呑童子を撃破していったのである。
「遂にやったのか・・・。」
「わい等、あの酒呑童子を再び倒したんやな。」「全て大角殿のお陰・・・、何と礼を言ったらよいか・・・。」
「礼なんかいいさ、それより掠われた仲間を連れ戻さないと・・・。」
「ちょっと待ちいや、導節はん達を待たんといかんやないの。」
「そうだ、他の仲間と一緒に信乃殿を助けないと・・・。」
と、そこへ後から駆け付けた導節・新兵衛・現八の三人がやってきたのだった。
「小文吾、毛野、その男は何者だ。」
「導節殿、この方は犬村大角殿でございます。」
「わい等と同じ、光の犬士やで。」
「本当か・・・。」
「貴方が、犬山導節殿ですか。」
「ああ、しかし何処かで見た様な・・・はっ、まさかっ、暗黒の魔術師なのか。」
「ええ、以前はそうでしたが、こいつのお陰で心の奥に潜んでいた正義の心が目覚めたんです。」
すると大角は、懐の奥から《義》の宝玉を導節に見せた。
「あっ、それは《義》の文字が入った宝玉・・・。と、言う事は大角殿が、八人目の犬士。」
「俺が、八人目の犬士・・・。」
「では、光の犬士が全員揃った事になるのか。」
「やったな、導節。」
「現八、これで私の念願だった光の八犬士が揃ったんだ。」
と、その時後から荘助が導節のところへ駆け寄り、太陽十字剣が完成したと告げたのだ。
「導節様、遂に太陽十字剣が完成しました。」
「本当か、遂に完成したんだな。」
「これで、朱雀将軍を倒せるぜ。」
「導節殿、朱雀将軍って冥獣四天王の一人か。」
「ああ、奴を倒す唯一の聖剣が完成したんだ。」
「此処にいる七人で、朱雀将軍のいる鬼骨城へ乗り込むぞ。」
「そして、捕われの身となった信乃殿を絶対助ける。」
「せや、一刻も早く助けんとやばいで。」
「ああ、行こう。我等光の犬士の力を、冥獣四天王に思い知らせてやるぞっ。」
『おお〜っ。』
その頃、鬼骨城では朱雀将軍が信乃を張り付けにしてしまい、苦悶の表情をした信乃を苦しめいったのであった。
『さあ、信乃・・・いい加減に諦めなさい。貴方はもう私の物よ。』
「ふざけるな、誰が貴様なんかに・・・。」
『あ〜ら、随分気が強いのねぇ。だけど、貴方みたいな人間は初めてよ。大抵の人間って、すぐに命を落とすけど、貴方なら私の事を気に入ってくれると思ったのにぃ。』
「冗談じゃない、必ず私の仲間が助けに来る。その時が貴様の最後だ。」
『生意気ね、だったらこうしてやるわっ。』
そう言って、朱雀将軍は鞭の様な物を振りかざし、信乃を痛めつけていったのである。
「くっ、絶対諦めるものか・・・。」
『強情ねぇ、もっと痛めつけてやるわ。』
更に朱雀将軍は、信乃を痛めつけ、暫くして信乃は気絶してしまったのだった。
『あ〜ら、気を失っちゃったの・・・。ん〜、しょうがないわねぇ。』
そう言って、朱雀将軍は信乃に水を掛けていったが、信乃はゆっくりと目を開け、朱雀将軍を見つめていた。
『やっと気がついたのね。』
「・・・私は絶対諦めない。」
『それはどうかしら・・・。』
「必ず来るさ・・・、必ず私の仲間が助けに来る。」
『いい加減に諦めなさい・・・。』
「・・・・・・・。」
朱雀将軍の執拗な拷問に、苦悶の表情を浮かべる信乃だったが、必ず仲間が助けに来ると信じてじっと耐えていた。
そして、導節達の前に現れた暗黒の魔術師は、実は八犬士最後の一人、犬村大角だった事が判明した。
新たに犬村大角が加わり、光の八犬士がめでたく勢揃いする事になった。
そしていよいよ、光の八犬士対闇の吸血鬼・朱雀将軍との決戦を迎えようとしていた。
果たして、導節達は無事信乃を救出する事が出来るのだろうか・・・。
導節達の運命やいかに・・・。




