侵入者②
さて、人間の元に向かうと言ってもこの泥人形の体はまずい。
なので、人肌とほぼ変わらないよう、変質させた真金を使い、人体を再現。
3日前ようやく進化し終えたスライムくんには、質素な服を参考にして、服代わりになってもらう。
スライムくんが進化した種族は『グリードスライム』
グリードと付いているように、ある程度の願いを叶える能力を持ち、強欲の化身たる俺の眷属という扱いになるらしい。
…ダンジョンマスターとしても、スライムくんは俺の眷属のはずなので、これで二重契約になるな。
いや、まぁどっちも主人は俺だから二重契約ではないのか。
まぁ、それは置いておいて、二重契約の影響によるものなのかは分からないが、スライムくんは、ナノとサターンのように、俺と合体できるようになっていた。
驚いことに、俺と合体するとスライムくんの物理無効 (地面接触時)が常時発動になるのだ!!
真金の服を着ても打撃系武器の攻撃一発で沈むだろう俺でも、スライムくんを着ていれば一安心である。
しかし弱点がある…受けたことはないが魔法攻撃には耐えられないだろう。
ナノから聞いた情報によると、10人に1人魔法使いがいる程度らしいので、まぁ、なんとかなる?かな?
ちなみに俺はダミーコアたちに初歩の魔法は教えてもらっているのだが…いかんせん不安は拭えない。
ま、まぁ、戦闘しに行くわけではないからそこは考えなくていいか。
話を戻すと、こけただけで体からボキッって音がするくらい脆い体なので、物理耐性がないと日常生活にすら支障をきたすのだ…
あ、これ普通じゃないね。異常だ!!
これでまた一つ異常になったぜ!!
っは!また脱線してしまった…
とにかく、スライムくんを着ていざ出発だ!!
「最近、門番長の娘さんの胸がまた大きくなってきてだな…」
「そうだなー」
「お前はどう思うよ。あの胸の大きさ」
「そうだなぁ、いいんじゃないか?」
「…」
「…」
「…そういや、最近できたあの食堂の子もかわいいよなぁ」
「そうだなー」
…えぇ。なにこのやる気のない門番…これは税金泥棒だわ。下ネタふってる方の門番は地味にかわいそうである。
なんか反応してやれ…と言いたいところだが、実は同じような会話を延々とループしている。
どっちもどっちだな…まぁ、それだけ暇なのだろう。
っと、門番の暇事情や、税金泥棒っぷりを見に来たわけではない。
さっさと潜入しよう。
「すいません…」
「ん、なんだ!?」
よほど暇だったのだろう。さっきから話を振られ続けていた方の門番が凄まじい速度で俺に反応する。
…ちょっと怖い…
「えっと…旅のものですが、昨日の朝方、持っていたもの全てが無くなっていたのです。近い町の方向もわからず彷徨っていたのですがようやくたどり着くことができました。町に入れてもらうことはできませんか?」
「…全部ってこたぁ身分証明できるもんもないのか」
「はい…」
「そうさなぁ…おい、相棒。ようやく仕事だ。こいつを見張っといてくれ。俺は役所に行ってくるわ」
「わーったよ。あ、ついでに窓口のヤヨエさんに明日一緒にディナーでもって言っといてくれや」
「いや、どうせ断られるだろ。面倒だ」
「数億分の1の確率くらいはあるだろ…?」
「少なくとも万にひとつもないな」
そんな会話をして、門番の1人は町の中へ戻っていった。
「それでな、門番長の娘さんが毎日差し入れを持ってきてくれるんだがな?俺の差し入れの方が、ハイネの差し入れよりもちょびっと多いんだよ…つまり、あの子は俺に惚れている!!」
「は、はぁ…そ、そうなんですね」
「食堂の娘もサービスですよって、言って俺に野菜炒めをくれるしな…ふっ、俺ってば罪な男」
「ソーデスネー」
直接言うつもりは毛頭ないが、それ、勘違いなのではなかろうか。後、食堂の方も、残飯処理をしているだけなのではなかろうか…
会話して分かったことは、さっき町に入った方の門番の名前はハイネ。今ここで延々と勘違いのテンプレのような話を披露してくれている…してしまっている方の門番の名前はクライム。
わかりたくもなかったが、ハイネさんが生返事ばかりしていた理由もわかった。
…なんというか、聞いていていたたまれないのだ。
その後も延々と語られる勘違いっぽい話の数々。
時々町についての質問をしてみるのだが、「そんなことよりだな…」と話を元に戻してくる。
だいぶうんざりしてきたところにようやくハイネさんが魔女的な服装をした女性を連れて帰ってきた。
「クライム。フーカさん連れてきた。警備はこっちが引き継ぐわ」
「ほいさ。まぁでも、こっちは平和なもんだったぜー。お前と違って普通に反応してくれるからな!!」
「…なんというか、その。うちの相棒がすまないな…」
「いえ…大丈夫ですよ」
クライムは嫌味全開でハイネさんに返事をしていたが、ハイネさんはそれを無視して俺に同情の言葉をかけてくれた。
「…なぁ、なんで俺こんな扱」
「それで、フーカさん。鑑定結果は?」
「…」
「ふむ…少なくとも犯罪に加担した経歴はないよ。町に入れても平気だと思う」
あ、今鑑定されてたのね。俺。
ちなみに今は強欲の能力で鑑定結果を誤魔化している。
俺の上げた鑑定レベルでも見破ることはできなかったので、対策はバッチリである。
「そうですか。…意図しての事ではなかったとはいえ、相棒の雑談の相手をさせてしまったからな…何か俺に手伝えることがあったらぜひ頼ってくれ」
「それはありがたいです。早速ですが、身分証明書のようなものはもらえたりするのでしょうか?」
「あぁ、それはもちろんだ。おい、クライム。次はお前が仕事しろ」
「あいあい、わかりましたよっと。おい兄ちゃん。ついて来い、ギルドに行くぞ」
「?ギルド、ですか?役所とかではなくて」
「いえ、役所は、この町の自警団本部なだけであって発行できるのはせいぜいこの町に出入りすることができるようになる証明書くらいのものなのです。
対して、ギルドは全世界の町に入ることのできる身分証明書…いわゆる冒険者カードを発行してくれるのです。
恐らく今まであなたが持っていた身分証明書というのはステータスプレートのことでしょうが、再発行はこの町ではできませんし、ギルドで行ってもらったほうがいいでしょう
あ、それでは私はこの辺で戻らせていただきますね」
と、フーカさんは説明してくれたが…ステータスプレートとはなんぞや…でも、この場合聞いたりすると不審がられるだろうから聞きにくいなぁ
「鑑定お疲れ様でした。」
「いえいえ、これが仕事ですので」
「と、いうわけでだ。ほれ、さっさと行くぞー」
「は、はい」
町に入ってわかったのは、建築技術に関しては中世のヨーロッパ程度であるということ、生活については大部分が魔法で行われているということ、後は業値が低いということだ。
業値というのは、最近読み取れるようになったもので、他人に迷惑をかければかけるほど溜まっていく。
他にも存在値というのもあって、それが高い存在に迷惑をかけると、業値が急上昇するらしい。
「あ、フーカちゃん。今日夜飯一緒に行かね?」
「その申し出は大変ありがたいのですが、遠慮させていただきます」
「んー残念。まぁ、なんか困ったことがあったら言ってくれや。ハイネがなんとかするから」
「ふふっ…あ、着きましたね。では」
「じゃ、また」
「お疲れ様でした」
「さて…ギルドについたわけだが、その前にお前さんに忠告しておかなきゃならんことがあってだな」
「?何でしょうか」
「…ここの受付嬢は俺に惚れている…これ以上は言わなくてもわかるな?」
「アッハイ」
「よし、じゃ入るか」




