【用語】Keywords
新時代
:半世紀以上前、世界中に広がった政治・経済・文化のあらゆる面における大転換。
一言で表現するなら『皆が貧乏である事より、先ず富める者から富めばいい』
台頭し始めていたVRなどの各種の最新技術を梃子に、それまで平等や公正に心を砕いて
いた在り方から一転、自分達の繁栄の為には如何なる手段も採ることを辞さないといった
世界的な流れ、その為に執られた制度・意識改革の総称。
具体的には国内を幾つかの「集積都市」に再編成する合理化の徹底、富裕層への義務強化、
それと併行した富の再分配(ギリギリ生活できる程度のベーシックインカム)、人口対策
としての「多婚」制度の創設、及び国権の強化全般などが挙げられる。
言い換えれば、それまでの“綺麗事”を一蹴し、実利に社会を特化させていく動きである
とも表現できる。旧時代に闊歩していたリベラルへの辟易、反発からきたもの。
特に日本はそんな揺り戻しが強かった国の一つであり、改革に従った者達とそうでなかっ
た者達との格差が深刻になっている。
(尤もそうなることを承知で“集約”する道を選んだということなのだが)
集積都市
:従来国内に点在していたヒト・カネ・モノを特定の地域に集約し、特区として整備された
巨大都市圏のこと。物語の主な舞台である飛鳥崎市もその一つ。
新時代の始まりの折、これら街に移住して経済を回す住人達にはその最新鋭の技術でもっ
て造営・維持された各種インフラの恩恵がたんまりと与えられるが、一方で移住に応じな
かった者達は二の次にされている。その事で両者の溝は深い筈なのだが、少なくとも前者
は街にいる限り衣食住に困らない暮らしが保証されている為、表立って行政──国家権力
に反発する者は少ない。
多婚制
:新時代の改革の内、富裕層に向けて課せられた義務の一つ。ある程度の財力を持つ者なら
ばその規模に応じて一夫多妻ないし多夫一妻が認められている。これは社会の維持に必要
な(優秀な人間の)出生率の確保の他、養育という名目で社会に金を落として貰うことも
狙っている。また稼げさえすればいわゆるハーレムが可能というモチベにもなっている。
こうした新しい家族形態を持つに至った人々は通称“多婚さん”と呼ばれ、新時代から半
世紀以上経った現在はそれほど珍しいものでもなくなってきた。
コンシェル
:今日、人々の必須ツールとなっているデバイス(携行端末。いわゆるスマホの類)に必ず
インストールされている制御用AIプログラムの総称。汎用型のタイプもあるが、音声や
操作一つで様々な処理を行ってくれ、また何より所有者個々人の使用傾向に合わせて自在
にカスタマイズ可能なのが特徴。今や人々にとって欠かせない電脳の相棒である。
TA
:それぞれが育てたコンシェルを、ホログラム画面上のフィールドで戦わせて遊ぶVR技術
のゲーム。片手を覆う短銃型のツール「リアナイザ」にデバイスを挿入、表示される制御
用のホログラム画面を操作しつつ、引き金をひくことで自身のコンシェルが目の前に現れ
る臨場感、デバイス及びコンシェル自体の普及率の高さも相まって若年層を中心に爆発的
なヒットを飛ばしている。
……だがしかし、一方で秘密裏に改造リアナイザ(後述)と呼ばれる代物が出回っており、
そこには幾つもの不穏な噂が付きまとう。
越境種
:現実世界に侵食せんとする電脳の怪人達。本作の敵。
元々はコンシェルであり、TAを隠れ蓑に流通する改造リアナイザによって実体化、人間
の欲望と生体エネルギーを吸収していく事で成長し、完全な肉体を手に入れる事が出来る。
主な流れとしては、
「改造リアナイザで呼び出される」
「召喚主の願いを聞き、契約を結ぶ」
(※この時その履行内容や彼らの性質に依拠した姿形に変化、能力を得る)
「契約内容を(無理やりに)叶えるべく行動開始」
「それによって現実世界に影響力を与え、リアナイザに頼らぬ実体化──完全体となる」
ことを目標とする。
通常は完全体になった時点で引き金をひいていた召喚主は用済みであり、殺害され、その
改造リアナイザ(に入っているデバイス)ごと吸収されてしまう場合が多い。しかし中に
は人間に興味を抱き、生かしておく個体も存在するようだ。また完全体を得るまでのプロ
セスにあくまで人間の「願い」を利用するのは、元々人に資する為に生まれたコンシェル
の本能であるとも考えられている。
尚、元がコンシェルであるためなのか、通常の物理攻撃は一切通じない(逆は可能)
改造リアナイザ
:巷に流通しているリアナイザの内、コンシェル(アウター)を一時的ながら実体化させて
しまう機能を備えた代物。TAの流行を隠れ蓑に、各地の迷える人々に配られている事が
判明している。見た目は正規品のリアナイザと全く同じで、先ず素人には区別が付かない。
また生体エネルギーを吸収される感触には中毒性があり、一度引き金をひいてしまうと自
ら脱するのが難しくなってしまう。
アウター達自身は「真造リアナイザ」と呼んでいるようだ。
召喚主
:改造リアナイザの引き金をひき、アウターを呼び出してしまった人間達の総称。
その願いに付け込まれ、面倒に巻き込まれたり、或いはアウターの持つ力に溺れたりなど
末路は様々。多くはそのアウターが完全体になった時点で抹殺されてしまう。
アウター達自身は「繰り手」と呼んでいるようだ。
蝕卓
:アウター達を取りまとめる謎の勢力。複数の上級アウターと「シン」と呼ばれる人物によ
って構成されている。
その役目は現出、完全体になったアウター達の把握と管理、改造リアナイザの流通、抵抗
勢力や都合の悪い存在の排除など。
構成員の席数は限られているようで、中にはこの末席に加わりたがるアウター達も少なく
はなく、同時に恐れられてもいる。
アウター対策チーム
:逸早く越境種の存在に気付き、秘密裏にこれを戦うこと使命としている組織。
物語の主人公・睦月はこの最終兵器として活動することになる。国内有数のITメーカー
であり、睦月の親友・皆人の実家「三条電機」グループが中心となって構成されている。
組織内は幾つかの役割分担があり、実働部隊である『リアナイザ隊』、情報収集・分析を
担当する『司令室』及び研究部門など、多くの人材が投入されている。
ただ彼らは単純な正義感の為に動いている訳ではなく、TA・リアナイザというIT技術
が犯した前代未聞の不祥事によって業界全体の信頼が失墜するのを恐れているから。故に
組織の存在は極秘事項であり、各界にもパイプを這わせて足元を固めている。
調律リアナイザ
:対策チームの実働部隊「リアナイザ隊」が用いるリアナイザ。元々は戦いの中で回収した
改造リアナイザであり、基本的な機能も同じだが、使用するコンシェル自体を人に害を加
えないよう調整してあるためアウター化することはない。
目には目を、という奴であり、当初はアウター達と直接戦う唯一の戦力だった。
だがしかしTAの場合と同様、召喚主はどだい生身であってこちらを直接狙われてしまえ
ばお終いという弱点を抱えているため、中々優勢に立てないでいた。
そこで組織の技術を結集して開発されたのが、睦月が使用する事になる対アウター用装甲
システム──通称・守護騎士である。
司令室
:対策チームの情報収集・分析部門。飛鳥崎の地下に広がる元シェルターを買い上げて建設
された秘密基地。市内の各地に出入りの為の隠し通路がある。
事実上の対策チームの拠点であり、市内を網羅する情報ネットワークで以ってアウター達
と戦う睦月をサポートする。
専門の職員達が交替で常駐しており、その総指揮を執る司令官は睦月の親友・皆人。
浅霧化成
:対策チーム傘下の企業の一つ。大手製薬メーカー。
睦月達がメディカルセンターに潜入する際、許可を取った上で名前を借りた。
四ツ谷自工
:対策チーム傘下の企業の一つ。中堅自動車メーカー。
睦月達が“セイバー”こと天満を罠に嵌める際、協力して貰った。
飛鳥崎市
:本作の主な舞台となる街。国内に複数ある集積都市の一つ。
旧時代より交易の要衝として栄えてきた街で、北に豊かな水と山系、南に抱え込むような
港湾地域を持つ。
現在は北に学校や住宅街、南に「ポートランド」と呼ばれる人工島を中心とした国内外の
企業の支社や向上、西から南にかけて商業区、中央から東にかけて警察や官庁が整備され
ている。他の集積都市の例に漏れず、街の人間と郊外の人間の格差が深刻である。
H&D社
:正式名はHappiness and Development Industry。米国発祥の巨大マンモスIT企業であり、
その東アジア支社を飛鳥崎のポートランドに構える。
TAの製造・販売元であり、アウターの出所を疑うのなら先ずここの筈だが、元々が相当
な秘密主義であり、その内情を知る者は少ない。
飛鳥崎学園
:睦月達の通う小中高一貫の国立のマンモス学校。通称「コクガク」。
最寄は同市北の千家谷駅。広く浅く生徒を受け入れ、それでいて次代の若者を育てようと
する気骨を持つ。南から順に小・中・高の校舎がグラウンドを挟んで並ぶ構造。
飛鳥崎西高校
:同市の西にある市立高校。コクガクと名前は似ているが、学校としての格は劣るようで、
しばしば不良達による暴力沙汰が発生している。
玄武台高校
:同市の西にある市立高校。通称「ブダイ」。各種スポーツによって名を挙げている。
とある兄弟が通っており、それが故に結果大きな事件を招くことになるのだが……。
清風女学院
:同士の東にある歴史の古い女子高。いわゆるお嬢様学校であり、市内外の有力者がバック
に付いている。藤城淡雪や、東條瑠璃子などが通っている。