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第31話 放送事故になってしまったのですが……

「みくるちゃんはホラーは大丈夫なんですか?」


「んー。あんまり得意じゃないよ?」


「でもその割には追われてるのにサクサク探索してますよね」


「こういうのは大丈夫だけど、急にわっ! って来てびっくりするやつは苦手だよ〜」


 そうして探索をしていくうちに主人公の装備が整っていく。初期装備のハンドガンでは心許ないと思っていたところ、マシンガンと弾を手に入れた。


「あ、ここに回復薬と防弾チョッキもありますね」


 これでちょっと安心だ。でも装備が強くなったからといって調子に乗ってはいけない。このゲームではストーリー全体を通して拾える弾の数に限りがあるので無駄撃ちしすぎると最悪ボスを相手にナイフ1本で戦うことになる。上手い人ならそういった縛りプレイもできるんだろうけど、流石に僕たちだと詰みに等しい。


「あすあす交代しよ〜」


「はいはい」


 普段のみくるさんの配信はゲーミングチェアに座りながらデスクトップパソコンで配信って感じなんだけど、僕と配信する時は少し背の低めのテーブルにノートパソコンを置いて、横長のソファに二人横並びで座りながらプレイしているのでこうやって途中で交代することができる。


 さて、コントローラーを受け取ったはいいけど実は僕もホラーゲームはあんまり得意じゃないんだよね。装備が整っているのはちょっとありがたい。僕は早速次の部屋に続くドアを開いた。


「うわっ! ちょっ!」

「……っ!」


 ドアを開けたらすぐ目の前に敵が待ち伏せていた。心の準備が全然できていなかったのもあって反射的でマシンガンを乱射してしまった。


「ふぅ……」


 た、倒したかな。なんならとっくに倒してたのに死体を撃ってたかもしれない。


「び、びっくりしたね〜!」


「心臓に悪いです」


 みくるさんがびっくりの拍子に僕の服の袖を掴んでいたのも心臓に悪い。


「ごめんねあすあす〜。なんか手厚く装備とか回復アイテムが置いてあったから実はそろそろ来るかもって思ってた〜」


 な、なるほど。それじゃあ無警戒にドアを開けた僕がバカみたいじゃないですか……。


「ん? そう思ってたんなら教えてくれれば良かったのでは?」


「でも配信的には言わない方が美味しいかな〜って」


 あ、取れ高か……。しまったなぁ。配信のことを全然考えてなかった。視聴者さんごめんなさい。もしかしたらコメント欄でアドバイスとかくれてたかもしれないのに。


『みくる氏が驚いた拍子にあすあすの服の袖掴んだの俺じゃなきゃ見逃しちゃうね』

『百合の波動を検知しました』

『ビジネス百合なんだよなぁ』


 いや多分無かったな。僕たちがコメント欄に反応しなくても勝手にキャッキャしてるのはもはや感心するよ。



 それから6時間ほどプレイしてようやくストーリーも終盤に差し掛かったというところ。中盤のボス戦で何度か負けたりはしたが、まぁ概ね順調と言えるだろう。しかし24時を回ったあたりで事件が起きた。


「んみゅう……」


 ムービーの途中、限界を迎えたみくるさんが僕に寄りかかるようにして寝落ちした。


「え、」


 天使………! じゃなくて、これ起こした方がいいのかな。一応耐久配信って名目だし、途中でやめるのは視聴者さんも許してくれないんじゃないか?


『【悲報】チャンネル主寝落ち』

『神回ktkrwww』

『おこちゃまは寝る時間でちゅよ〜www』

『大人も寝る時間なんだよなぁ』


 相変わらず緩いなぁ。これならどっちでも良さそうだ。まぁみくるさんも少しすれば起きるだろうしこのまま寝かせてあげようかな。


「すみません皆さん。みくるちゃんの寝顔は僕が独占させていただきます』


 でも流石に女の子の寝顔を晒し続けるのは可哀想なので起こさないようみくるさんの頭をそっと抱えて配信画面に映らない膝の方に持っていく。


『あすあすさんちょっとそれはイケメンすぎでは?』

『まーたあすあす関連の切り抜きがバズるのか』

『もうお前が彼氏でいいよ』

『おい嘘だろあすあす。ビジネス百合だよな? まさかガチのやつか?』

『それがありえるかもwww』

『お前もみくあす派にならないか?』

『あすみくだ。二度と間違えるな』


 盛り上がってるなぁ。けど下世話なカップリングはみくるさんに迷惑になるからちゃんと注意しておかないとね。


「僕はいいですけど、僕とみくるちゃんでカップリングするのはほどほどにお願いしますね。僕の存在がみくるちゃんのブランディングの邪魔になってしまうかもしれないので」


 こういうの、ガチのやつだと思われると活動の範囲が狭まる可能性があるからね。たとえば男性の配信者さんとちょっと絡むだけで炎上するとか、それでみくるさんが本当にやりたいことが出来なくなってしまうかもしれない。だからそういう意味ではビジネス百合とか言われてるくらいが丁度いいのかもね。


『ブランディングも何もそいつあすみくのファンアート拡散しまくってる当事者だぞ』

『ソロのファンアートよりも露骨なんよ』

『あすみくは公式やで』

『それでもワイはみくあす派なんや……』


 みくるさーーーん! いや、嬉しいんだけどね。


『まぁ幸せならOKよ』

『ワイらは最後まで見守るだけや』


 コメント欄では散々みくるさんのこと煽ってるけど、やっぱりみんなちゃんとみくるさんのことが好きなんだなぁ。


「みなさんがツンデレなのはよく分かりました。まぁ男のツンデレは需要ないんですけど」


『なんで急に刺してきた?』

『今いい事言ってたと思うんだけど!?』

『あすあすって時々ワイらの扱い雑になるよな』

『我々の業界ではご褒美です。ありがとうございます。¥5000』


「なんで……? 雑に扱ったのに」


『ホラゲより怖がってて草』

『ないすぱ。日本男児の大和魂を見た』

『お前こそが真のサムライよ』


 何が!? とりあえず同じ日本男児の僕をJapanese HENTAIに巻き込まないで!? 




 ……いやどう見ても女装して女子校通ってる方がHENTAIです。本当にありがとうございました。うん、これ以上考えるのはやめよう。


「では、引き続きクリアを目指していきましょう。あ、みくるちゃんを起こすと可哀想なので、ちょっと黙りますね」


『配信とは』

『同接0の配信とちゃうねんぞ!』

『これもう放送事故だろ』


 見にきてくれた視聴者さんには申し訳ないけどみくるさん第一です。

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