表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界はやさしいね  作者: 玻璃乃月
15/31

第二章乃 さん

漫研に所属したが、できるだけ関わらない様にしていた。

しかし、生徒会室より地学室に多くの時間居たのは、

変人教師Tの地学の講義が楽しかったから。

2年になれば、例の選択科目に地学も入るそうだ。

それまでは部活として、より実践的で雑多な

地学の様々を勉強できた。

地学部は、生徒会の全員が所属しており、

私の上級生に混じって、地層の話をしたり

天気図を描いたりした。


変人教師の変人たる所以は、

東北出ながら江戸弁を変なイントネーションで

喋るところと、生徒の個性を認めるところだろうか。

高校生にもなれば、子供とはいえ色々考えるものだ。

まして私は極端な人生を送ってきている、

だが、私に限らず、例えばヤンキーならヤンキーの

秀才なら秀才の人間性をまったく否定しない、

むしろ面白いと言う。

昨今の教師には無い資質だと思う。


漫研は、幽霊部員な私と絵を描けない脳筋男子を

含めてやっと規定人数5人に達するという弱小部だった。

来春に3年生2人が卒業すれば、自動的に廃部に

なることだろう。

間違ってコミケに一緒行くという事態にならないように

時々イラストを提供する程度の活動に留めた。

さて、年が明けて3年生が卒業すると、

漫研では緊急動議が持ち上がり、

3人では決が取れないのでと地学室に集る者たちで、

漫研部長を決める多数決が行われた。

唯一の上級生で決まりだろうと思ったが、嵌められた・・・

私以外の全員一致で、私を漫研部長に推したのだ。

完全に嵌められたが、後の祭りだった。

私の最初の仕事は、4月新入生の部活動勧誘集会で

演説することだった。


乗り気が無く、面倒と思った私は、適当に済ませようと思ったが

新入生数百人の集る体育館で、五十音順で最後の勧誘となる

漫研の呼出しが生徒会執行部で行われた時、

呼出しの失笑が聞こえ、それに釣られて新入生からも失笑が聞こえた時・・・

嵌められて部長になっただけの私の心に火が着いた。

始めはボソボソとありきたりな事を話し、何を言っているのかと

新入生たちが聞耳を立てた時


バシッ!!


マイクのある台を叩いた、マイクはその音を拾い、

新入生全員がビクッとしたのが判った。

私は強い声で畳み掛ける

「漫画・アニメを幼いと笑う者もいるだろう。

 だが、子供の頃漫画・アニメを見なかった者がいるだろうか?

 それに感動したことは無いだろうか?

 それは誰が作った?

 そう、子供を感動させたいと思う大人が作ったんだ。

 私たちは、漫研でそんな大人でありたいと思う。

 この想いを理解する者は、部室のドアを叩けば良かろう」


しーん・・・と静まり返る体育館内、私は静かに壇上から下りて

体育館を後にした。

(やっちゃった、やヴぇー)

だが、体育館の戸が閉まる寸前に

ウォォォーッ! と表現するしか無い様な大歓声と

拍手の波がやってきた。

アンコールの声も聞こえたが、さすがに恥ずかしくて足早に去った。

その日、そしてしばらくの間、地学室のドアを叩く音は鳴り止まなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ