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世界はやさしいね  作者: 玻璃乃月
13/31

第二章乃 いち

中学2年の2学期は、隣の学区に転入した。

兄と弟は、それぞれの匿われた分家の

近くの学校に編入された。

しばらくは虚脱した様に、

ただ流れる時間と共に過ごした。

それでも幼馴染の彼に引っ張られ、

冬コミで新刊販売もせず、コスプレもせず

色紙も描かず・・・ただ座っていただけなのに

なにか楽しく、

そうして心が動き出したのを感じた。

私は再び、絵筆を取る事にした。


夏コミの頃には、新刊を出した。

そろそろデジタルが主流になってきつつあったが、

まだまだ売上げは取れた。

このコミケから幼馴染の彼は、

私たちの2人サークルを脱退し、

私1人に売上げを任せると宣言した。

これからお金も必要なこともあるだろうと言い、

そして、それでも2人でやろうと言う私に

ケジメだからと返した。

お手伝いはしてくれるということなので、

編集Oの雑誌で募った売り子さんと同額で、

売り子に雇うことにした。

いつもの2人売り子ではなく、フルの5人売り子で

捌けた数が違い、それは売上げに直結した。


コミケの後、私はカナダにいた。

コミケで知り合った黒人通訳Jの家に

2週間のホームステイをするために。

黒人通訳Jは、フランス語と英語と

スウェーデン語と日本語が話せ、

妻と2人の娘を養う、健全なOTAKUだ。

私は、カナダの雄大な自然の中、

楠の上の空を取り戻した。

川で熊を向こうに見て、フライで鱒を狙い、

海でルアーで鮭を狙った。

夕飯は釣れた魚だったり、

近くのスーパーで買ってきたトナカイや

アザラシの肉料理だったりした。

スウェーデン系カナダ人奥様の

料理はとても美味しかった。

銃マニアでもあった黒人通訳Jの下、

リボルバー、オートマチック、ショットガン、

ライフル、果てはロケットランチャーまで

撃たせてもらった。

お気に入りは、往年の名銃パイソンだった。

最初は.38スペシャル弾で慣らし、

その後.357マグナム弾を撃たせてもらった。

肩と耳にビリビリと響いた。


日本に戻ると、再び進路について考える時期だった。

私は、なんとなく同人誌で食べていけるしと、

漫画を描きながらの引篭もり生活に入ろうかと思った。

しかし、もっとも強硬に反対したのは編集Oだった。

彼の主張は「もっと見聞を広げろ」の一言に尽きた。

私は人生で初めて、他人の意見を受け入れ

近くの公立高校に進学を決めた。

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