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第一話ドラフト会議

よろしくお願いします!

今年、日本を襲った猛暑も少しばかり鳴りを潜めて、幾分か過ごしやすくなってきた10月のある日、大学の一室で、大学の同僚に見守られながら、俺はテレビに張り付いていた。


今テレビでは2026ドラフト会議の様子が放送されている。


俺は中学から野球を始めて、他の人よりも幾分か才能があったのだろう。

他の人よりも早い球を投げられたし、強い打球も放つことができた。

野球推薦で高校、大学と進んで、大学ではピッチャー一本に絞ってやってきた。


そしてその集大成の4年生でエースに選ばれは俺は、全日本野球選手大会で、好成績を収めた事で、5球団から調査書が届いた。


これはもしかしたら指名があるかもしれないと考え、監督と両親と相談を重ねてプロ志望届けを提出した。


そして今日運命のドラフト会議である。


指名されるか、夜もあまり眠ることができなかったが、アドレナリンが出ているのか不思議と眠たくなかった。


たった今全球団のドラフト一位が全て確定した。


何球団か競合した選手がいたのでくじ引きになっていたが、その結果は全く頭に入ってこなかった。


そして2巡目が読み上げられ始める


何球団目だっただろうか、よく覚えていない。


俺はドラフト2位で、横浜大洋オーシャンズから指名された。


俺の名前高見澤勇人の名前が読み上げられた瞬間全員が声を上げて立ち上がり狂喜乱舞していた。

俺自身みんなに揉まれながら幸せな気持ちでいっぱいになった。


監督からも俺が監督をできている時にプロを出せるなんて……と感極まって泣いていた。


大学は俺の地元からかなり離れているのにも関わらず、駆けつけてくれていた両親からも大変祝福された。

間違いなくこの瞬間が人生で一番幸せだっただろう。


だがまだスタートラインに立ったばかりだ。


指名されるまでがゴールなどではなく、ここからプロ野球選手としての人生が始まるんだ。


その事を胸に刻み込んだ。



そのあとは大学の同僚が企画してくれていた、打ち上げに参加していた。

こんな事まで企画してもし指名漏れしていたらどうしていたんだろうなどと考えたが、結局指名されたので思いっきり主役として楽しんだ。


そして時はすぎて11月、球団スカウトとの挨拶の後、契約金や、年俸の話をした。あまり実感がわかなかったが、契約金のあまりの大きさに少し眩暈がしたことはよく覚えている。


そして少し経った12月下旬、新人選手入団会見が行われる。


ここで新人入団選手の背番号やユニホームが発表された。


俺の背番号は4をもらう事になった。

新人で一桁というのは珍しいのだが、ちょうど4を背負っていた選手が2年前に戦力外になり、ちょうど空いていたのだという。


憧れていたプロのユニホームに、Takamizawa と4という文字がデカデカと印刷されていた。


カメラに背を向けて、ユニホームをアピールしながら写真を撮ってもらう。


パシャパシャとシャッター音が響いている。

正直フラッシュが少し眩しくて視線をそらしてしまった。


そしたらふとその中で1人、自分への視線を感じた。振り向いてみると、メモを持って熱心に、何かを記入をしている。

仕事熱心だなぁと考えるくらいで、その場は特に何も考えずに、もう一度カメラ目線を送る。やはり眩しい。

そんなことを考えているうちに、写真撮影が終わった。


その後は個別にインタビューを受けたのだが、その中で先ほど熱視線を感じた、あのメモの人(名前がわからないのでとりあえずメモの人と呼ぶ)も含まれていた。


個別に対応していって、最後にメモの人が残っていた。


「大洋新聞スポーツ版担当の記者皆川志保と申します。皆川選手いくつか質問よろしいですか?」


「はい、もちろん」


最後の取材になったのはあのメモさんだった。

俺の取材の時もやはりメモを手に持っていた。


「このプロ野球という世界に対しての印象をお聞きしても良いですか?」


「そうですね……」


かなり難しい質問だ、さっきまでの人たちはプロになっての自覚は、とか対戦してみたい選手は、とかだったのに、皆川さんの質問は少し抽象的で難しかった。


そんな時ふと、皆川さんの顔を見た。

綺麗な人だなと率直にそう思った。


髪はショートの茶髪で少しウェーブがかかっている。

耳には控えめなピアスを身につけており、身長が少し低いせいで少し幼く見えるが、髪の印象やスーツによって、何か大人の雰囲気を漂わせている。


「……高見澤選手?私の顔に何かついていますか?」


「あ、いえそうですね、プロ野球に対しての印象ですよね!はい、選手に関してはあまりよくわからないんですけど、あんなに多くのお客さんの中で野球をできるのはとても羨ましいなと感じますね」


つい見つめ過ぎてしまった。なぜか目を離すことができなかった。


「なるほど」


メモさん改め高見澤さんはボールペンで素早く俺が話した事をメモしていく。


「次の質問なのですが、高見澤選手が入団会見で持っていたあのオオサンショウウオのぬいぐるみはどのような物なんでしょうか?」


「あー、あれですか。高校時代に友達からもらった思い出のものなんですよ。いつも枕元に置いて寝ているので、選手寮にも持って行こうかと思いまして」


「なるほど…良い友達に恵まれていたのですね」


「はいそうですね、今の自分があるのは学生時代を共にした仲間がいるからだと思っています。なのでみんなの分も活躍したいですね」


その後は3個くらい質問に答え、インタビューが終了したのち、選手寮へ案内された。


俺の部屋は302号室、思ったより広く、一人暮らしするには十分な広さだ。


さっそくオオサンショウウオのぬいぐるみを枕もとにセッティングして、ベットにダイブした。


ドラフト会議から毎日が目まぐるしく変動してきた。


学業との両立や、周りの環境の変化、大学のチーム内での立場、上げ出したらキリがない。


つい重い瞼を閉じて夢の世界に誘われそうになるのを阻止して、グッと体を起こす。

新人合同自主トレまでは3日ほど時間がある。


その間に寮生活にも慣れないといけない。


しかしその生活に心躍っている自分がいる。


そして勢いよく寮の部屋を飛び出した。


自分の人生が今大きく変化していく事を感じながら。








お読みくださりありがとうございます。

ヒロイン第一話にして、1人目です!

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