表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/56

敵の本音バレ

その情報は、最初はただの断片だった。


しかしスパイ網が持ち帰った“敵国側の会議記録”を精査すると、

ある共通点が浮かび上がった。


――どの国も、同じ言葉を繰り返している。


「自国の利益は別枠」

「秘密は四種を絶対に守れ」

「資源接続は侵入しても構わないが、核心は触れるな」


王都ドリトルの情報局は、そこで気づく。


これは単なる外交戦ではない。


“境界の侵入と、核心の不可侵”を同時にやる設計だ。


王の側近が顔をしかめる。


「つまり彼らは、全部壊すつもりではない」


スパイが頷く。


「はい」


「壊すのは“周辺だけ”です」


会議室が静まる。


水源、流通、土地、出資。


すべてが“周辺”として狙われていた理由がそこで繋がる。


だが同時に、別の事実も見えてくる。


敵国は本音を持っていた。


それは意外なほど単純だった。


――「自分の国だけは守る」


誰も完全な破壊を望んでいない。


しかし誰も完全な協調もしていない。


優利恵が小さく言う。


「……全部、同じだね」


ロイが聞き返す。


「何がですか?」


「うちも相手も」


「守りたいのは同じなのに、やり方だけ違う」


その頃、王は静かに地図を見ていた。


そこには「接触点」が無数に描かれている。


王は問う。


「敵は核心を守ると言っているのか」


情報局長が答える。


「はい。国家中枢・資源中核・意思決定領域は不可侵としています」


沈黙。


王は短く言う。


「ではこちらと同じだな」


周囲がざわつく。


「同じ、ですか?」


王は頷く。


「我々も守っている」


「違うのは、

 “どこを守るか”の定義だけだ」


その瞬間、

戦争という言葉の輪郭が少し変わる。


壊す戦争ではなく、

“守りの衝突”になっていた。


スパイはさらに報告を続ける。


「敵国側は、こうも言っています」


「“核心に触れない限り、接触は戦争ではない”と」


ロイが顔をしかめる。


「それって、グレーを広げる戦い方ですね」


優利恵は少し考える。


「うん……壊さない代わりに、

 じわじわ変えるやつ」


その時、王が口を開く。


「ロボットに伝えろ」


側近が答える。


「何をですか」


王は静かに言う。


「守る対象の“定義”を固定しろ」


「外側の解釈ではなく、

 内部の定義で縛る」


ダンジョンロボは、

すでに王都の中枢で稼働している。


出来ません

売りません

守ります


だが今、その意味は拡張される。


――守るのは物ではない

――守るのは接続ではない

――守るのは“定義そのもの”


夜。


ロボットの前に設計士が立つ。


王の命令を入力する。


「対象定義固定」


ロボットは一瞬だけ沈黙する。


そして内部で更新が走る。


――水源=不可侵領域

――流通=基幹機能

――土地=固定資産領域

――出資=構造維持契約

――接触=制限付き監視対象


再び三語が出力される。


出来ません

売りません

守ります


だがその意味は、

以前より重く、広くなっていた。


優利恵はその報告を聞いて言う。


「もう“戦い”じゃないね」


ロイが答える。


「定義の競争ですね」


夜の王都は静かだった。


外から見れば穏やか。


だが内側では、

“守るものの線引き”が更新され続けている。


そしてその中心には、

いつも変わらず鉄の機械が立っている。


出来ません

売りません

守ります


それは拒絶ではなく、

この国の“輪郭そのもの”になっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ